PC版『空の軌跡FC』から『閃IV』真エンドまで。近藤社長が語る『軌跡』シリーズ15周年の思い出

そみん
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 6月29日に東京・市ヶ谷で行われたリアルイベント“軌跡シリーズ15周年記念祭 in 市ヶ谷”の特別ステージのレポートをお届けします。

なお、本イベントは、電撃オンラインchの2時間の特別番組として、“軌跡シリーズ15周年記念&新作始動(?)スペシャル放送”として動画配信も行われました。

軌跡シリーズ15周年記念&新作始動(?)スペシャル放送”について

 このステージでは、事前に行われた読者アンケートをもとに『空の軌跡』、『零・碧の軌跡』『閃の軌跡』と続く軌跡シリーズの15周年の振り返りや、日本ファルコムの近藤社長への質問コーナーが展開しました。

 くわえて、『閃の軌跡』のトワ役をつとめた声優の野中藍さんを交えて展開するゲストトークコーナーや、シリーズ最新作に関する新情報コーナーも用意されていました。

軌跡シリーズ15周年振り返りコーナー

 このコーナーでは、『軌跡』シリーズの15年の歴史を作品ごとに振り返ることに。『閃の軌跡』シリーズの振り返りでは、トワ役の野中藍さんからのコメントもありました。

『空の軌跡』シリーズについて

 2004年6月24日にPCで発売された『空の軌跡FC』から始まった『軌跡』シリーズの歴史。のちにPSPにも移植され、多くの家庭用ゲーム機でも展開をした人気作です。


 当時、『英雄伝説III~V』、いわゆる『ガガーブトリロジー』が終わった次なる『英雄伝説』として、過去シリーズのシステムの長所なども取り入れた作品として開発が進んだとのこと。

 主人公であるエステルのまっすぐさ、逆にいろいろと背景設定が複雑なヨシュアというコンビが特徴的ですが、近藤社長によると当初は男女が逆で、ヨシュアのポジションが女性キャラという案もあったそうです。

 結果的には女性主人公という、それまでの『英雄伝説』になかった見せ方で物語を描こうと、今の形になったとのこと。

 続いては2006年3月9日にPCで発売された『空の軌跡SC』について。

 当時、2001年ごろに『空の軌跡』を作っていた際、2004年ごろに開発状況を聞かれて50%という状況で、会社から「さすがに一度発売しよう」と言われて、まずは『FC』として発売することになったそうです。

 そんな事情があったため、『FC』発売当時は本当に『SC』が出せるかどうかわからない状況だったそうです。

 だからこそ逆に、『SC』の発売が決まった際は、ファンを絶対に裏切れない、その期待を大きく上回らないという気持ちから、ものすごい大ボリュームになったとのことでした。とはいえ、ボリュームありすぎでした(笑)。
(自分はPCでリアルタイムで遊んだので、『空の軌跡』の続きとして『SC』が正式発表された時は本当にうれしかったです!)

 この作品からは結社も本格的に登場し、近藤社長的にも帝国編の意識を始めて伏線を盛り込み始めたとのこと。まさか、こんなに早い段階から帝国編の構想が進んでいたとは!
(『3rd』からはかなり帝国編の存在が見え隠れしてましたけど)

 そして話題は、2007年6月28日にPCで発売された『空の軌跡 the 3rd(ザ・サード)』へと移ります。

 最初はファンディスク的な意味合いもあったため、多数のメンバーを自由に編成できる要素も盛り込んだそうです。

 また、鉄血宰相のギリアス・オズボーンが名前を見せ、本格的に帝国編への前振りを行い始めたとのこと。

 その結果、帝国編の前に、もっと外の視点から帝国を描いておきたいとい気持ちが生まれ、クロスベル編を挟み込むことになったそうです。

 そもそもは『空』の次が帝国編=『閃』となる予定だったため、この『3rd』がなければ、『零・碧の軌跡』は生まれなかったと、近藤社長も感慨深く語っていました。

『零・碧の軌跡』について

 日本ファルコムがコンシューマーゲーム機に本格参入した『零の軌跡』は、2010年9月30日にPSPで発売されました。

 PSP『空の軌跡FC』の初回本数は1万7千本。のちに数十万、ワールドワイドでは100万本以上売れたものの、日本ファルコムとしてはなぜ『空の軌跡』が最初は売れなかったのかをしっかりと考え、『零の軌跡』では最初から売りたいと強く考えたとのこと。

 そのため、コンシューマらしさを意識していろいろと変えようとした結果、社内の一部からは反発も出たそうですが、結果的には『零の軌跡』がしっかりと売れて、コンシューマとしての新たな『軌跡』シリーズの一歩を踏み出せたとのことでした。

 また、シナリオ的には、それまでの個よりも集団を描きたいという思いから警察という組織をフィーチャーし、さらにそこからはみ出す特務支援課という設定を考えていったとのこと。

 ちなみにヨアヒムが最後に語っていた言葉は、『閃の軌跡』のクリア後に見ると、わりと核心に迫っているとのこと。“世界の謎”と関係があるかも!? あとで見直さねば……。

 そして、2011年9月29日にPSPで発売された、『零の軌跡』の続編にあたる『碧の軌跡』の思い出について。

 ミシュラムワンダーランドにも行けるようになって、みっしーが一気にメジャーになった作品でもありますね(笑)。

 当時、ゆるキャラがブームで、社内では「ちょっとムカつくくらいがいいんじゃない?」という発想のもと、ああいう微妙な表情のキャラになったそうです。確かに、声もなかなか不思議な感じでした(笑)。

 幻焔計画やゼムリア通商会議など、のちのシリーズでもキーになるイベントだらけでしたが、『閃の軌跡』のシナリオとあわせて考えていたところも多かったそうで、この段階から整合性も含めて考えていたとのこと。

 ラスボスについては初見殺しのバニッシュについても話題にあがりましたが、プレイした際のインパクトや強キャラ感を出すことも含めたうえでのバランスで、あえてあの形に調整したそうです。

 近藤社長的にも、『空の軌跡』の時は特定のキャラを好きという声が多かったのに対して、『零・碧』は特務支援課というチーム全体に対してや、クロスベルという場所全体に対するファンの声が増えたのが特徴的だったと語っていました。

 それを受けて『閃の軌跡』のVII組のような多人数チームをしっかりと描く契機になったという意味でも、『零・碧』は『空』と『閃』をきちんとつなぐ作品になってくれたと、近藤社長も感慨深く振り返っていました。

『閃の軌跡』シリーズについて

 『軌跡』シリーズ内でも4作品と長期シリーズとなった『閃の軌跡』シリーズ。まずは2013年9月26日にPS3とPS Vitaで発売されたシリーズ1作目の『閃の軌跡』に関するトークから。

 いよいよ始まった帝国編ですが、当初の主人公は軍人にする予定だったとのこと。ただ、もっと異なる視点で、仲間との絆を深めながら物語を進めたいという考えから、トールズ士官学校の設定が詰まっていったそうです。

 バトルシステムがかなり変わりましたが、シナリオチームから仲間の絆をバトルにも組み込んでほしいという無茶ぶりを受けて、リンクアタックなどのシステムが考案されたとのこと。

 オズボーン宰相については、電車でリィンとすれ違った時のシーンのころから将来的な設定のための伏線は張っていたそうです。言われてみれば、たしかに!?

 続いては、2014年9月25日ににPS3とPS Vitaで発売された『閃の軌跡II』について。

 主人公が敗走するという衝撃的な『閃I』のエンディングの直後から始まる『閃II』の冒頭は印象的でした。

 近藤社長的にも、『閃』シリーズは連作となるため、つねに次回作への引きを強く意識してエンディングを作っていったとのこと。

 さまざまな魅力的なキャラクターが登場しましたが、やはり『閃II』といえばクロウの人気がすごいです。

 海外のイベントでも、ファンから日本語で「クロウを生き返らせてください」とお願いをされたこともあったそうです。

 ちなみに『閃II』の開発終盤時点では、シリーズが『III』で終わるか『IV』までかかるかわからなかったそうですが、いろいろと考えると帝国編で語るべきことが多かったため、ラストのクロスベルのエピソードを追加することで「ここまでは絶対に帝国編で描ききる」という決意表明の意味も込めて、あえて追加したそうです。

 次なる思い出トークでは、PS4にハードを移して2017年9月28日に発売された『閃の軌跡III』の話題に。

 物語が進んでリィンが教官になった『III』。近藤社長的にも、物語冒頭のリィンとトワの社会人的なセリフは印象に残っているそうです。

 また、『III』では旧VII組メンバーを全員出すのか削るのかの決断を迫られるシーンもあったとのこと。

 新VII組が登場し、マシンスペック的にプレイアブルキャラが増え続ける中でキャラの削減も視野にいれていたそうですが、絆の深さを描くかどうかをマシンスペックで決めていいのかという考えのもと、全員入れることにしたそうです。さすがですね!


 ファンの間で議論を呼んだラストシーンの衝撃展開については、逆にリィンがこれまでに築いてきた絆があるからこその復帰があることを踏まえて、あえてどん底まで落とすほどの展開にしたそうです。

 商品や物語としてのリスクはありつつ、物語として描きたいことを優先したそうですが、いちファンとしても非常に心を揺り動かされる作品として楽しめたため、その判断は正しかったかと!

 ラストは、2018年9月27日にPS4で発売された『閃の軌跡』シリーズの完結作『閃の軌跡IV -THE END OF SAGA-』についての振り返りが行われました。
 

 近藤社長的には、『IV』を出して、2001年から作り続けている作品の大きな山場である“帝国編”を描き終えて、ようやく1つの大きな肩の荷が下りたと感じたそうです。

 大きな区切りとなる作品となることから、登場キャラ数も減らさず、ミニゲームも妥協せず、とにかく力を入れて開発をしていったとのこと。

 容量やスケジュールという制約はありつつ、やれることをやったという意味では悔いがないと、近藤社長も力強く語っていました。

 近藤社長的には、オズボーンとイシュメルガの想いについても、長い時間をかけて描いただけあり、真のエンディングでのオズボーンとリィンの掛け合いなども含めて、かなりしっかり描けたという自負があるそうです。

 ちなみに、ノーマルエンドを見た後でないと真のエンディングを見られるという仕掛けについては、単なるゲームシステムだけでなく、シナリオ的な設定にかかわる伏線にもなっている……かもしれないとのこと。これは考察のヒントになりそうですね!

 帝国の謎が明かされ、次は“世界の謎”に関する物語が語られていくことになります。そのヒントや伏線は過去の『軌跡』シリーズにもちりばめられているそうなので、遊びなおすときはそういう細かい部分にも目を向けて遊びたいですね!

ファンからのコメントを野中藍さんが音読!

 ステージ中には、トワ役の野中藍さんがファンからのコメントを読み上げる場面も。どのコメントも愛や熱意が感じられ、今さらながら『軌跡』シリーズのファン層の厚さが感じられました!

●ハンドルネーム・KJさんからのコメント

 「学生の頃、卒論を書き終えた自分へのご褒美としてがっつりできるRPGを探していて、PSPの空の軌跡3部作セットを見つけ、PSP本体と同時に購入しました。

 それが初ファルコム作品でしたが、それ以降はゲームの音楽、ストーリーや世界観等の細部までこだわりが感じられるかという今まで気にしていなかった部分を重視してゲームを選ぶようになりました。

 あの時ファルコム作品に目を付けた自分を改めて褒めてやりたいです。」

●ハンドルネーム・マルリースさんからのコメント

 「イシュメルガ=ローゲ戦直前のメンバー編成画面。錚々たるメンバーたちの数々。ここまでの歩みが作り出した「軌跡」を象徴するかの様な瞬間でした。

 ゲームを始めて以来、編成画面で涙が止まらなかったのは初めてです。その後の戦闘中も終始涙が止まりませんでした。この作品に出会えたことと、ここまでのシリーズをやり尽くしてきたことを本当に良かったと思った瞬間です。」

●ハンドルネーム・watoさんからのコメント

 「私が軌跡シリーズを好きになってから12年経ちますが、その中でも2013年に実施した「トールズ士官学院オープンキャンパス」が最高の思い出です。

 新作をいち早くプレイしながら他の参加者さんとディスカッションしたり、近藤社長に直接発言をしたり、初めてjdk BANDのライブを体感しました。

 6年経った今でも夢のような楽しい時間だったので、またそういった機会を企画して下さい!」

 なお、『軌跡』シリーズ新作の新情報、日本ファルコムの近藤社長への質問コーナーといったイベントレポート後半は別記事でレポートしています。

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