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『テイルズ オブ ヴェスペリア』インタビュー前編 痛快ストーリーで貫く「正義」

2008年4月12日(土)

 バンダイナムコゲームスが2008年内の発売を予定しているXbox 360用RPG『テイルズ オブ ヴェスペリア』について、本作に携わるプロデューサーにインタビューを行った。

 『テイルズ オブ ヴェスペリア』は、シリーズ累計販売本数1,000万本以上を誇る人気RPG『テイルズ オブ』シリーズの最新作。「正義」を貫き通すことの大切さを題材としたストーリーが展開し、シナリオやイベントムービーは過去最大のボリュームで収録されているという。

 今回は、プロデューサーの郷田努氏と、制作プロデューサーの樋口義人氏の2人に、本作の開発経緯や見どころ、キャラクターについていろいろとお話を伺ってきた。シリーズ最高のクオリティとボリュームを誇る『テイルズ オブ ヴェスペリア』が、どのようにして作られているのか、それを知りたい人は以下のインタビューに目を通してほしい。

左が樋口義人氏、右が郷田努氏。

■シリーズ最新作『テイルズ オブ ヴェスペリア』

――シリーズを通して、タイトルは物語性を象徴したものが冠されていますが、今回はどのようにして付けられたのでしょうか?

樋口氏:「Vesper」という単語をもじった形になっています。「Vesper」には、宵の明星やきら星といった意味がありまして。この単語を用いたもともとの意味は、主人公の“ユーリ”が世界や周りの人間にとってのきら星のようになってほしい、という願いがあります。

――「正義」という言葉を物語のキーワードに選んだ理由を。

樋口氏:もともと、シナリオのキーワードに「信念」というのがありまして、「信念を貫き通す覚悟って大事だよね」というテーマがあったんです。それで「信念」でもよかったんですが、それでは言葉として弱いので、ちょっとベタですがストレートな表現として「正義」にしました。「正義」にわざわざカッコ(「」)をつけたのは、単に一般的な正義の意味である「これが正しいですよ」の意味に勘違いされたくなかったからです。人が複数いればそれぞれの「正義」があるという、その人にとっての「正義」を大事にしたかったので、カッコ付きの「正義」を用いてます。

――北米での発売も決定してますが、海外を意識したところはありますか?

郷田氏:結構ありますね。今回、『テイルズ オブ』シリーズでは初めてとなることもやっています。その反面、過去のシリーズから突飛なことをやっているかというと、それもないです。『テイルズ オブ』シリーズの正統進化として作っています。HD対応のゲームになった場合、「『テイルズ オブ』という作品はこうなるよね」という形ですね。『テイルズ オブ』らしさは変わっていないので、お客様にも安心して遊んでいただけると思います。

――HD対応のXbox 360で作ることになって表現や描写はどのように変わりましたか?

樋口氏:一番大きいのは空気感が出せるようになったことですね。エフェクトや光の処理が、かなりのところまでできるようになりました。あとは、街並みが広がる奥行きの感じも表現できますね。映像表現は、今までと明らかに変わったところです。

――そういった描写も演出に取り入れられているのでしょうか?

樋口氏:取り入れてますね。細かい話ですけれど、カメラを寝かせられるようになったんですよ。今までは、カメラを寝かせると、作ってないところが見えてしまうような限界があったんですけど、今回は倒してもずっと奥まで見えるので演出の幅が広がっていますね。あとはキャラクターの表現です。

郷田氏:旧世代機でもやろうと思えばできたんでしょうけど、物量の問題で不可能だったようなこともやってます。キャラクターの表情も、今回初めてフルポリゴンでやっていますよ。目玉も入っていますし。

樋口氏:今回、顔の表情がいろいろ付けられていいですね。今までテクスチャーでやっていたのですが、より自然にできるようになりました。『テイルズ オブ』シリーズの方向性は変えられないんですけど、自然な表現と描写のバリエーションが増えてます。影についても、『テイルズ オブ ジ アビス(以下、アビス)』では、厳密にはトゥーン・シェーディングではなく描き影なんです。トゥーン・シェーディングは意外とハードの制限があるのですが、今回はそれを無理なく採り入れることができました。全体的に表現力がかなり上がっています。

■オープニングはさらにハイクオリティに

――オープニングアニメーションはProduction I.G制作とのことですが、アニメーションムービーはどのようになっていますか?

樋口氏:ボリュームは尺でいうと今までで1番でしょうね。体制としては、いつもと同じようにやっているのですが、今回はハイビジョンなので解像度が1,280×720のアニメーションになります。そういった意味も含めたクオリティでいうと、シリーズ最高のものとなります。

郷田氏:アニメーションにはCGも混ざっています。今回は特に多いですね。過去の『テイルズ オブ』にもCGが混ざってるものはありますが、割合的にCGとセルアニメの合成になっている部分が多いですよ。たぶん家庭用ゲームで初めて、HDアニメーションを収録した作品になると思います。その他にCGのムービーもあるので、それを合わせると明らかにシリーズで1番のムービーの量になります。

――オープンニングには、いつも有名なアーティストを起用されていますが、今回はどのような楽曲になりますか?

樋口氏:ワールドワイドで歌が歌える方にお願いしています。今回『テイルズ オブ』では初めて、北米版のOPも英語の歌詞を同じアーティストさんが歌っていますよ。発表されたら、いろいろな意味でびっくりすると思いますよ。

郷田氏:もちろんいろいろな候補の方がいました。でも、ゲームのテーマが重要なものだと考えているので、それをちゃんと表現していただけるアーティストさんにお願いしています。きちんとシナリオも説明して、このゲームのためだけに日本語の詞も、英語の詞も、曲自体も書き下ろしていただきました。もちろん、アーティストの方にもファンがたくさんいるので、そういった方たちが聞いても素晴らしい曲ですし、ゲームの側面から聞いていただければ、「ああ、なるほどね」と納得できる曲になっています。

■『テイルズ オブ ヴェスペリア』のストーリーとキャラクター

――『テイルズ オブ ヴェスペリア』ではどのようなストーリーが展開されていきますか?

樋口氏:いつもだと、主人公の成長物語というのがありますが、今回は“ユーリ”がある程度完成されている人格で、“ユーリ”が仲間となるキャラクターに影響を与えていきます。キャラクターの成長を描く点では、“ユーリ”の影響を受けた仲間たちが成長していく物語になっています。今回は、そういったことでちょっと切り口が違うシナリオの作りをしてますね。1人1人のキャラクターを深く掘り下げながら物語が進んでいくという点では、ちゃんと『テイルズ オブ』になっていますけど。

郷田氏:あと樋口は、今回「時代劇っぽい」と言ってるんですけど、痛快なストーリーになっています。深い部分もテーマとしてはありますが、物語としてはプレイ感がすごくよいと思います。プレイしていて気持ちよく進めるし、ストーリーにも入っていけるし、キャラの魅力も見えてきますし。その痛快なストーリーに、テーマである「正義」がつながっています。痛快な話の中に、いろいろな「正義」はあるけれども、“ユーリ”という人間が自分の信念に従って「正義」を貫いていくという展開をします。それを見たお客様の中には、“ユーリ”が正解という方もいれば、違うキャラクターの「正義」が正解という方もいると思います。ゲームプレイが終わった後は、そういった話がユーザーの間で盛り上がるのではないでしょうか。

――作品のテーマと“ユーリ”は、どちらが先にできあがったのでしょうか?

樋口氏:やはりテーマが先ですよね。ほぼ同時期ですけど。最初に考える時はだいたい、「今までにいなかった人がいいよね」って話になるんですよ。それに味付けをして、だんだん丸められていくんですけど。だから、テーマが完成したころには、“ユーリ”のキャラクター像もだいたい完成していました。

――人間としてある程度完成した“ユーリ”が主人公ということで、今までの『テイルズ オブ』とは違う味付けになりますか?

樋口氏:やっぱり違いますね。細かい部分になってしまうかもしれませんが、“ユーリ”の行動やセリフが、大人なんですよ。「僕が21歳の時はこんなんじゃなかったよ」って思いますけど(笑)。今回は「主人公が成長」というよりは、「仲間で成長していこう」というノリです。

――“ユーリ”が所属していたという「騎士団」は、物語ではどのような立ち位置ですか?

樋口氏:中世の騎士団と同じで、本来は弱い人たちを守る存在です。それこそ本来は、土木工事もやるべきだし、魔物がいればもちろん戦うべきだし。近衛兵みたいな人たちもいるんですけど、それとはまた別に階級にも上から下まであります。下のほうの騎士は街の警備などの仕事をしています。

郷田氏:ですが、国が1つしかないこともあって、組織の腐敗が進んでいるんですよ。なので作中の描かれ方としては、悪のように描かれています。その中で、「腐ってやがる」と飛び出していったのが“ユーリ”です。

――そのころから“ユーリ”は自分の信念に従って生きてきたんですね。

樋口氏:その過程で、彼には何かあったんでしょうね。何かあって、何かを悟って、何にも属していないんですよ。とにかく自分が生まれ育った地域の人たちと平和に生きていく。下町の用心棒っていうのが設定にありますけど、そういう人になってます。

――“ユーリ”は、イラストで刀のような武器を持っていますよね。

樋口氏:今回は、もともと違った毛色であるとか、海外であるとかの話があったので、和風テイストを少し入れてみたいと思っていました。ですから、キャラクターのキービジュアルとして主人公には刀を持たせようと。“ユーリ”の装備に刀を用意しています。ただ、刀だけだとゲームとしては武器のバリエーションが少なくなってしまうので、通常の片手剣や斧も持たせるようにしています。

――ヒロインの“エステル”ですが、彼女は生まれた時から城の中にいるのですか?

樋口氏:はい。ある事情があって軟禁されています。ただ本が好きですし、城の外のことも話では聞いているので、半分ゆがんでいますけど城の外の状況も知ってはいます。

郷田氏:知識だけなら、普通の人よりかなり博識ですね。

樋口氏:あと、外にまったく出たことがないワケではなく、街の中くらいは見たことがあります。1人では絶対に出られないので、お忍びのような形ですけど。この世界の人たちはみんなそうなんですけど、生まれ育った街を出ることがほぼありません。街の中で完結しているのと、街の外は非常に危険であるという理由で。ただ“エステル”は、それよりもさらに狭い範囲で生きてきました。

――“ユーリ”に対するヒロインということで、“エステル”はやはりめざましい成長を遂げますか?

樋口氏:めざましいでしょうね、あの娘は。「何も知らないけど頭でっかち」なタイプですから。よくも悪くも暴走しがちですよ。そのあたりがかわいいと思う方もいるでしょうし、ツッコミたくなる方もいると思います。

――“エステル”は治療術が得意とのことですが、イラストを見るとメイスのような武器と盾を装備しています。バトルでは前衛もこなせるのでしょうか。

樋口氏:“エステル”は魔法剣士なので、両方いけます。

郷田氏:“エステル”にしかできないこともいっぱいあります。本作にはスキルシステムというのがありまして、“エステル”専用のおもしろいスキルもありますよ。

――“エステル”が使える接近戦用の必殺技などは?

樋口氏:あります。『アビス』の“ティア”もそうですよね。あのキャラクターは、接近戦もできるように調整されていたんです。皆さん、回復ばかりさせていたみたいですが(笑)。お客さんの戦い方次第になりますが、“エステル”は接近戦も回復役もこなせるキャラクターになっています。

――経験のある“ユーリ”と世間知らずの“エステル”は対比的ですが、2人はどのような関係を築くのでしょうか。

郷田氏:漫才のボケとツッコミみたいな感じですね。“エステル”はすごい博識なんですけど、“ユーリ”は知識上のことはあまり気にしてない。“エステル”は結構ボケキャラなので、ツッコミが“ユーリ”みたいな感じになってます。最初よくわからないところから始まりますが、だんだん打ち解けていく過程で“エステル”って名前で呼ぶようになりますし。彼女の本名は“エステリーゼ”なんですけどね。

樋口氏:“ユーリ”を今までと違うキャラクターに設定をしているので、そういった関係になりましたね。今までの主人公は、もちろん狙ってそうしてあるんですが、だいたい弱いじゃないですか。弱いというか、ダメなヤツが世界を救うっていうストーリーですよね。“ユーリ”はそういう意味では、内面が成長していてます。今回のターゲットや、海外を意識していたのもあるので、そういった主人公の方が受けるだろうと思って設定しました。それに対するヒロインとなると、“ティア”みたいなキャラクターだとおもしろくないので、カウンターとして“エステル”のようなキャラクターにしました。

郷田氏:あと、主人公の年齢が高いじゃないですか。そのあたりも多少海外を意識しているのもありますし、『テイルズ オブ』のファンの方も、ずっとシリーズをプレイしてきて20歳を超えたお客様も結構いますから、そういった方たちにも楽しんでもらえるような主人公像を作っています。

樋口氏:一番最初は「ダークヒーローみたいのをやりやいよね」というのがありまして。髪や服の色が黒っぽく設定されているのもその影響です。時代の影に隠れた暗躍する主人公というのをやりたかったんです。ただ、暗躍する主人公というのをまんまやってしまうと、ゲームのシナリオとして成立しにくいので、物語は“ユーリ”を追う形で進行します。

――現在公開されているムービーでは、大勢のキャラクターが登場していますが、物語にかかわってくるキャラクターはどのくらいいるのでしょうか?

樋口氏:いわゆるパーティキャラクターは今までと同じくらいです。その他、最近の『テイルズ オブ』ではサブキャラクターの人気も出てきていますので、そういったキャラクターもいますよ。

郷田氏:そういったサブキャラクターは『アビス』くらいはいますね。『アビス』に登場した六神将のような、物語で重要なポジションにいるNPCもいます。キャラクターの声優さんに関しても、もう収録が終わっている状態です。

樋口氏:パーティメンバーでは、ムービーに登場している赤っぽい服を着てゴーグルを付けた女の子と、リーゼントっぽい男の子の2人は仲間になりますし、操作できます。あと、ムービーにも出ていますが“犬”ですね。あの“犬”は、メインシナリオに絡んできて、なおかつパーティに入って操作できるキャラクターです。

■パーティのマスコットは“犬”

――“犬”はどのようにストーリーに絡んできますか?

樋口氏:“ユーリ”の友だちなんです。「ワン」とか「ワォーン」とかしか言わない、犬以上でも以下でもない、正真正銘の犬です。マスコットキャラクターが物語に与える影響って大きいので、わりと重要なポジションです。

郷田氏:彼も“ユーリ”たちが言ってることは理解してますね。

樋口氏:やっぱり「飼い主の言葉を理解して動く犬」というのにおもしろさがあると思います。「犬が戦ったらおもしろいよね」っていう単純なところから生まれました。

――“ユーリ”と“犬”の出会いはいつごろですか?

樋口氏:それはゲームでは語られない昔話ですね。ゲームが始まった瞬間に彼は“ユーリ”と一緒にいて、パーティメンバーとして当たり前のようにいます。“エステル”と出会うよりも前に、“ユーリ”と彼は一緒にいます。

――では、初期のパーティは“ユーリ”と“犬”に“エステル”を加えた3人になるのですか?

郷田氏:でも割と早いタイミングで大人数になりますよ。「犬と旅をするRPG」と言っていたくらい、彼には愛着があります。

樋口氏:タイトル画面にも出てますからね、愛が詰まってます(笑)。彼は見どころですよ。ちょっとマニアックな要素がいっぱい入っていておもしろいですね。

――“ユーリ”と“エステル”の出会いの時も、“犬”はどんどん首を突っ込んでくるのですか?

樋口氏:“エステル”との出会いの時は、彼はちょっと席を外しているのですが、でもその後に合流します。彼も突っ込んできますし、“エステル”は犬という動物をあまり見たことがないので、“エステル”もちょっかいを出していきます。“エステル”と彼の絡みもたくさんありますよ。普通にスキットでも会話しますし。

――かなり和みますね。

樋口氏:和みますよ。彼が主役のスキットとかも結構あります。パーティキャラクターなので、彼も主役にせざるを得ないですよね。

――今まで『テイルズ オブ』に犬は登場したことがありませんが、必殺技は用意されているのでしょうか?

樋口氏:それはもういろいろあります。「瞬迅犬」みたいな技も考えられますよね(笑)。

 キャラクターを中心にお話をうかがったインタビュー前編中編では、世界観を中心にインタビューを行ったので、お2人の話からこだわりの世界観を感じてほしい。

(C)藤島康介
(C)2008 NBGI

データ

▼『テイルズ オブ ヴェスペリア』
■メーカー:バンダイナムコゲームス
■対応機種:Xbox 360
■ジャンル:RPG
■発売日:2008年予定
■価格:未定

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