2008年5月3日(土)
コミック版の最終巻となる第2巻が3月27日に発売された「sola」。その作画を務めた阿倍野ちゃこ先生にインタビューを行なった。
左がコミック第1巻の表紙。右が3月27日に発売された第2巻の表紙だ。 |
「sola」は、原案を久弥直樹氏が、キャラクター原案を七尾奈留さんが手掛けたTVアニメで、チバテレビなどで2007年4~6月に全13話が放送された。空を撮るのが好きな少年“森宮依人”と、“依人”が出会う少女“四方茉莉”、そして“依人”の姉“森宮蒼乃”による、謎めいた物語が描かれる。コミック版「sola」は、TVアニメの放送に先駆けて月刊コミック誌「電撃大王」(アスキー・メディアワークス刊)で連載されたもの。原作とは異なるコミックオリジナルのプロローグ・エンディングが描かれるなど、人気を博した。また、5月30日にはこのコミックをもとにしたドラマCDの発売も予定されている。
今回、さまざまな展開を見せてきた「sola」について、コミック版の作画を務めた阿倍野先生にインタビューを行い、さまざまなエピソードについて語っていただいたので、3回に渡って掲載する。
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――まずは、「sola」のコミックス版を手掛けることが決まった時のお話を聞かせていただけますか?
阿倍野先生:実は、「お願いできませんか」と依頼をいただくほんの2週間ぐらい前に、他の雑誌の月刊連載のお話をお受けしたばっかりだったんです。しかも、連載時期もかぶってしまっていたので、「残念ですが……」と一度はお断りしました。「時期が合ったらお願いします」とおっしゃっていただけましたが、まさか本当にもう一度お話をいただけるとは思いませんでした。ビックリしましたし、うれしかったです。
――そして、アニメ版に先駆けて電撃大王で連載が始まりましたが、コミック版で描かれているプロローグ編はアニメ版1話よりも前のエピソードになっていますよね。
阿倍野先生:「果たしてこれでいいのかな?」と思いながら手探りで描いていました。“蒼乃”と“依人”の会話など、ネームを見ていただいた久弥さんに直していただいたところも結構あります。
――かなり苦労をされたんですね。
阿倍野先生:でも、あらかじめ編集部や久弥さんとやりとりさせていただいていたので、久弥さんの考えや、キャラクターへのアプローチなどを綿密に伺うことができました。そのおかげで、自分もキャラクターのイメージが定着できたので、よかったです。
――実際に漫画を描かれるにあたって、意識したり気を付けたりしたところはありますか?
阿倍野先生:やはり、久弥さんがシナリオを書かれているという点を意識しましたね。以前、久弥さんがシナリオを書かれたPCゲームの『Kanon』という作品をプレイしたことがあって、風景や空気感を含めた描写がとてもキレイな作品を創られる方だな、という印象を強く持っていました。「sola」もそういった作品になるのかな、キャラクターメインの漫画にはしない方がいいのかな、と考えていました。
――久弥さんからアドバイスはありましたか?
阿倍野先生:主にキャラクターのセリフの言い回しと、設定・演出の部分でアドバイスをもらっています。私としても頑張って「久弥さんならこうするかな?」と思って描いてはいるんですが、どうしてもズレが生じるところはありますので。
編集部を通して毎回ネームを送らせていただいて、そのたびに丁寧にアドバイスしていただきました。「このシーンではこのキャラクターにこう話させた方が、心情が垣間見えてよいのではないでしょうか」といった具合ですね。
漫画で描いたキャラクターやシーンを「ここが違う」とおっしゃるのではなく、「ここをこうすればさらによくなる」というアドバイスをいただくことが多かったです。今回初めて一緒に仕事をさせていただいたにもかかわらず、このように接していただいて本当にありがたく、うれしかったです。
――阿倍野さんから見て、久弥さんはどのような方だと感じましたか?
阿倍野先生:作品の文体やキャラクターの描き方から感じていた「ピュアで優しい方」というイメージそのままの方でした。「繊細で切ないけど優しい、心温まるお話を描かれるのはこういう方なんだな」と、お会いした時に感じました。今回、久弥さんの中で長年温めてこられた設定の中でやらせていただいたんですけれど、それを強く押すのではなく「いろいろと自由にやってください」と心広く作品を預けていただけたのはうれしかったですね。懐の広さというものをすごく感じました。
(第2回に続く)
コミック版をベースに新たなストーリーが展開するドラマCD版「sola」が、5月30日に発売される。アニメ版そのままのキャストを起用し、シナリオは久弥直樹氏の完全監修となっている。 |
(C)sola project