2008年5月23日(金)
この4月より、フジテレビのノイタミナ枠他で放送がスタートしたTVアニメ「図書館戦争」。その作中で“手塚光”を演じる、鈴木達央氏にインタビューを行った。
「図書館戦争」(アスキー・メディアワークス刊)は、有川浩先生が原作、徒花スクモ先生がイラストを手掛ける同名小説シリーズをアニメ化した作品。人権を侵害する表現を取り締まるという建前で、「メディア良化法」が成立してから30年後の日本を舞台に、本を守るために「メディア良化委員会」と戦う「図書隊」の活躍が描かれていく。監督は「ウエルベールの物語 ~Sisters of Wellber~」の浜名孝行氏、制作は「攻殻機動隊 S.A.C.」シリーズのプロダクション I.Gが担当する。
画像は、インタビューを行った鈴木氏(左)と、鈴木氏が演じる“手塚”(右)のもの。 |
以下に、鈴木氏のインタビューを掲載していくので、本作を見ている人はぜひチェックしていただきたい。
――ではまず、鈴木さんが演じている“手塚”について教えてください。
鈴木:主人公“笠原郁”と一緒に、「ライブラリー・タスクフォース」という特殊部隊に配属される唯一の同期となっています。“笠原”が感情と行動が直結している直情タイプだとすれば、“手塚”は彼女とは逆に理論派というか、すべてを計算ずくで決めてから行動するタイプなんです。ですから、最初は“笠原”のことをものすごく気に食わないと思っています。感情論で動ける人間をどこかでうらやんでるフシがあるのかもしれませんが。「自分は“笠原”を認めない」なんて言いつつも、自分にはない部分を気づかせてくれる彼女のことが気になっていたりする……言ってみればシャイな男ですね。ただ、すごく優秀な訓練生でもあったので、作中ではそういうシーンもちらほら出てきます。
――そんな“手塚”と鈴木さんご自身が、似ているなと思う部分ってありますか?
鈴木:僕と“手塚”はとっても似ていますね。物ごとを生真面目に考えてしまうところなんかは、そっくりですね。実は“手塚”みたいな役をいつかは演じてみたいという思いが僕の中にずっとあって。“手塚”役のオーディションのお話をいただいた時も、内心「この役できたらいいな」って思っていたんですよ。ですが、まだまだ力足らずといいますか、いろいろと勉強しなければいけないところがあったので「とにかく頑張ろう!」という気持ちでオーディションに挑んで、結果こうして役をいただけたので、とてもありがたかったです。
――もしよろしければ、さらに具体的なお話を聞かせてもらえますか。
鈴木:そうですね、僕も彼も、いわゆる「枠からはみ出した考え方」が苦手なんですね。だいぶ感覚で動けるようになったとは思いますけれど。小さいころは僕も感覚で動いていたんですが、ある時期を境に頭で考えて動くようになっていったんですよ。そうした計算を働かせて動くことは、今でもよくありますね。
――そんなご自身に似ている“手塚”や、直情タイプの“郁”が、もし学校などの同期にいたとしたらどう思いますか?
鈴木:僕、絶対に世話役になると思うんで面倒くさいかもしれません(笑)。どっちの気持ちもよくわかるんですよ。さっきも言いましたけれど、意外と考えちゃうタイプなんで、2人の間に立って仲介役になっていそうですね(笑)。
――そうですか(笑)。確かに、あの2人の間に立つのは大変そうですね。では、好きなキャラクターを教えていただけますか?
鈴木:好きなキャラクターとなると、やっぱり“堂上”です。僕、1週間の間に“手塚”のことを考えている時間って、かなり多いんですよ。ですので、自然と考え方が彼とリンクしているところがあるんですね。だから、彼が“堂上”に抱く気持ちがすごくわかるんです。“手塚”は“堂上”に尊敬の念とともにあこがれの念がある。ちょっと話は変わりますけど、“手塚”のそれと近いものが“笠原”の中にもあって、だから“手塚”は彼女のことが気になっているんじゃないかなと思ったりします。それで、堂上のことを「いいな」と思うと同時に、“堂上”役を演じている前野君のことをうらやましいな、と思うこともあります。でも、それ以上にあこがれや尊敬の気持ちが自分の中で強いと思います。
――なるほど。続いて、作品の内容に関してお聞きします。まず、原作はお読みになられましたか?
鈴木:ハイ! 全4巻(※インタビュー時、「別冊 図書館戦争Ⅰ」は未発売)読破させていただきました。僕、最初に買った3巻までを2日で読破しちゃって「こりゃもう続きが気になってしょうがない!」って感じになっちゃったんですね。でも翌日は仕事で書店に行けなくて、さらに次の日も仕事だったんですけれど、終わったとたんにすぐ書店に「革命」を買いに行って、すぐ家に帰って一気に全部読みました。でも、次の日も仕事だったので、ものすごく眠くて仕方ありませんでした(笑)。
――かなりハマってしまった感じですね(笑)。
鈴木:ええ(笑)。読んでいて気づいたんですけれど、僕、有川先生の紡ぎだすセリフというか、会話のテンポや構成がすごく好きなんですよね。とても遊び心があるのに、押さえるべきポイントはしっかりと押さえていて。さらに、ところどころでおもしろい言葉が入っていたりして。そのセリフ術が、読んでいて気持ちいいし、おもしろいんですね。自分の生活の中でもどこかで使えないかなって、何回も何回も読み直していますね。
――セリフ部分が気になるのは、声の職業ならではの着眼点という気もしますね。そんな本作でお気に入りのシーンはありますか?
鈴木:気に入っているシーンというところで言うと、第4巻で“手塚”が感情を爆発させるシーンです。普段の理路整然として感情をあまり表に出さない“手塚”からは、とても想像できないようなシーンなんですけれど、これはもう、演じてみたくてしょうがない、と言いますか、1人で練習していました(笑)。ここは絶対にやりたいなって思ったので。現時点では、TVアニメでどのシリーズまでやれるのかは僕はわからないんですけど、“手塚”のそのシーンは、どういった形であれ表現してみたいです。
――“手塚”を語る上で外せないキャラクターの1人に、“柴崎”がいると思いますが、彼女について何か思うところがありましたら聞かせてください。
鈴木:いやぁ、「イイ女だなぁ」と率直に思います。原作を読んでいる時にも「こういう女性が身近にいたらいいな」と思いましたし、「なんで自分の周りには、あまりこういう女性がいないんだろう?」と、自分の境遇を恨んでみたりもしました。そういえば、“手塚”と“柴崎”のエピソードも「革命」にあったし……そうやって考えてみると、“手塚”のオイシイシーンって、全部後ろの方なんですよねえ(笑)。意外と押しに弱い“柴崎”と、彼女の心の機微にちっとも気づかない鈍感な“手塚”の組み合わせを見ていると、「おまえは本当にバカだなぁ」とヤキモキしたり。この2人は見ていておもしろいですね。
“手塚”として見ると“柴崎”はパートナーとしての意味合いが大きいんでしょうけど、僕個人からすると、彼女は“手塚”とは違った意味で頭のキレるキャラクターという印象です。でも、そこも含めてカワイイというか、愛らしいキャラクターですね。彼女は彼女なりにいろいろと思うところがあったんでしょうが、それを乗り越えて地に足をつけて生きている。近くにいたら友だちに、それこそよければ恋人になってもらいたいような……そんなキャラクターです。
――ありがとうございます。ここまではストーリーやキャラクターについて伺ってきましたが、続いて収録現場の印象を聞かせてください。
鈴木:和やかですね。始まってから数回しか収録していないんですが、そうとは思えないくらいいい空気ですよ。今日も収録があって、僕は別の現場で仕事をしてから駆けつけてきたんですが、不思議なことに、この現場に着くととても落ち着いた気持ちになっているんですよね。自分の心を、一番“手塚”になりやすいポジションに持っていける――そんな空気を皆さんがすでに作っていてくれるんですよね。みんな何かしらしゃべっていますし。それは「図書館戦争」のことであったり、全然関係ない話だったり。時には、アホな話もしていたり(笑)。
――アニメでの見どころは、どこになるでしょうか?
鈴木:各話見どころは盛りだくさんです。僕、あんまり他の人には言ってないんですけれど、「図書館戦争」に結構ハマってますね(笑)。原作もかなり読んでますし、公式サイトのブログも必ずチェックしてます(笑)。先ほども言いましたが、見どころは各話満載です。1つ1つの話が見落とせないし聞き落とせない作品です。それは、役者の演技に限ったことではなくて、音や演出、美術、小物などすべてに力が入っています。また、作品に関して言うとミリタリー要素もおもしろいでしょうし、各キャラクターの揺れ動く気持ちも注目してほしいポイントですし、特に“堂上”と“郁”の関係は見逃せないです。話が進んでいけば、各キャラクターをピックアップしたエピソードも出てきます。そのキャラクターによって変わる演出ですとか、映像にも注目してもらえるとうれしいです。いろいろな地域で放送されてますので、放送地域に住んでいる人は、ぜひご覧いただきたいですね。
この作品に限らず、アニメはいろんなスタッフが一丸となって作り上げているものです。昨今のアニメーション業界は、いろいろなところでクローズアップされていて、僕たち声優はありがたいことに表に立たせてもらっていますが、その後ろにはとても大勢の人がいます。ですから、それを、頭の片隅にでも置いてご覧いただければ幸いです。
――アニメとは話題が変わりますが、4月からスタートしているインターネットラジオステーション<音泉>で配信中のWebラジオ「関東図書基地 広報課 男子寮」についてお話を聞かせてください。
鈴木:ラジオに関して言いますと、かなりおもしろいことになります! 井上さんと沢城さんがパーソナリティを務める「女子寮」とはだいぶ番組の色が変わっています。全国の男子諸君をよろこばせようと画策中ですので、女子寮へのエゲツない質問などありましたら(笑)、ぜひ男子寮までお送りください。2人が答えに困るようなことをガンガン聞いてやろうと思っていますので(笑)。
――ラジオに出演するにあたって、前野さんに「痛いの平気?」などと質問されたとのことですが?
鈴木:前野君はラジオが初めてなんですよね。僕に任せるようなことを言ってましたが、任せてくれるのであれば、いろいろなことをやっちゃおうと思います!(笑) 「図書館戦争」をPRするという役割もありますが、聞いてくれたリスナーさんに「こいつらバカでおもしれ~」と笑ってもらえるような、バカな番組を目指したいですね。アニメを見た後に聞いてもらって、スカっとした気分になってもらえれば最高です。とりあえず初回の収録を終えたところなんですが、とにかくやかましいです(笑)。30分枠を超えちゃってますし。そんな感じで、メディア良化法に負けないラジオ番組を作っていきたいと思います!!
――アニメにラジオと盛りだくさんな本作ですが、では最後に「図書館戦争」を楽しみに見ているファンにメッセージをお願いします。
鈴木:このインタビューをご覧になっている方は、もう「図書館戦争」をご覧になられましたか? 僕は公私を混同してしまうくらい、いい作品にかかわれたという自負があります。僕にとって、この作品に参加できたことは誇れることだと思っています。なので、ぜひ皆さん見ていただいて、何か1つでも感じてもらえるものがあったらうれしいです。これからも「図書館戦争」をお願いいたします。
――ありがとうございました!
(C)有川 浩/アスキー・メディアワークス/図書館戦争製作委員会
■TVアニメ「図書館戦争」