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2008年6月26日(木)

PS3新規コンテンツ「Life」初お目見え ソニー経営方針説明会で平井氏がコメント

文:電撃オンライン

 本日6月26日、ソニーは東京都港区にある同社本社ビルにおいてて、「ソニーグループ 中期経営方針説明会(2008年度~2010年度)」を行った。

 この説明会には、ハワード・ストリンガー氏(取締役代表執行役会長兼CEO)、中鉢良治氏(取締役代表執行役社長兼エレクトロニクスCEO)、平井一夫氏(SCE代表取締役社長兼グループCEO)らが出席。2010年度までを目処にした目標として、

 
・すでに売上高1兆円を超える液晶TV、ゲーム、携帯電話、デジタルイメージングなどの事業に加えて、PCやBlu-ray Disc(以下、BD)関連商品、コンポーネント/半導体事業などを1兆円規模ビジネスに拡大していくこと。

・2010年度までに製品カテゴリーの90%をネットワーク機能内蔵およびワイヤレス対応にすること。

・2008年夏のPLAYSTATION Network上でのビデオ配信サービス開始を皮切りに、2010年度までに主要コンテンツを展開していく。

・BRICs諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国)における年間売上高を、2010年度末までに倍の2兆円規模に拡大すること。
 

 

 などを掲げた。これらの売上げアップの方策として、ソニーが掲げたのは「コアビジネスの強化」。具体的には、上で述べた1兆円超規模の事業強化と新たな1兆円規模事業の創出だ。ここでは特に、ゲーム部門における取り組みを、SCE社長・平井一夫氏のコメントとともにお伝えしていく。

写真は、ゲーム事業の展望について語る平井氏。

■現行ハードのビジネスレビュー■

 SCEが保有する3つの現行ハード(PS3/PS2/PSP)のうち、PS3について平井氏は「立ち上げに苦労したものの、第一義的にはゲーム機であるということを再確認、その原点を見つめ直しました」と言い、2007年度下半期販売台数が前年比200%の723万台に達したと報告。6月12日に発売されたKONAMIの『METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS』を一例に挙げ、「累計タイトル数が475を超え、さらに正しく「次世代クオリティ」と呼べるタイトルが出てきました」と、ようやくエンジンがかかりはじめてきたことをアピールした。

 また発売から4年目を迎えたPSPについては、2007年度下半期販売台数が918万台(前年同期比146%)であることを話した。2007年度末までに発売されたタイトル数は1,834で、この状況を「好調なビジネスを堅持しております」と評した。

■PSビジネスのカギ■

 本日の説明会で平井氏が「今後のPSビジネスにおける2つのカギ」と位置づけたのが「ノンゲームコンテンツ」「ネットワーク」。すでに発表されている今秋スタート予定のオンラインサービス「HOME」をはじめ、いくつかのコンテンツが発表された。

 ワールドワイドで、のべ980万人ものオンラインユーザー(全ユーザーの45%)を持つPS3。2008年6月24日現在、コンテンツ総ダウンロード件数は1億7千万件で、ダウンロード量は86ぺタバイト(1ペタは1,000テラ)に上るという。事業規模にすると約80億円で、平井氏は「飛躍的に成長していく土壌が築かれている」と見ており、今後成長していく分野であるとした。

 本日の説明会で具体的に紹介されたコンテンツは、以下の通り。

・「ビデオ配信サービス」

 2008年に開始予定のこのサービスは、PLAYSTATION Storeを通じて映像コンテンツを楽しめるもの。ダウンロード完了を待たずに、ダウンロード中から映像を流すことができ、配信予定のものにはSDクオリティのものだけでなくHDクオリティのものもあるとのこと。

「ビデオ配信サービス」の画像。サービス開始後の課題は、いかにコンテンツを保持し、増やしていくかになる。

・「ゲーム内動的広告」

 ゲーム内のビルボードなどを広告スペースとして提供する。ゲームのジャンルやプレイタイミングに応じて、広告をネットワークから挿入する形を考えているようで、平井氏は「2011年には全世界で1,000億円規模のマーケットに成長すると見る向きもある」と口にし、この分野を「新たなビジネスモデルとして育てていきたい」と話した。

・「Life with PlayStation」

 この説明会で初お披露目となった、PS3のネットワークコンテンツ「Life with PlayStation(以下、Life)」。「時間」と「場所」を基軸においたアプリケーションで、説明会では実機を使ってのデモプレイが行われた。今日発表されたものは、モニターに描かれた「地球(場所)」から「今(時間)」のニュースを見られるコンテンツ。ユーザーは、地球の全景から任意の場所を選択することで、その場所の最新ニュース情報をヘッドライン方式で入手できる。ニュースの詳細を知りたい場合はヘッドラインから記事全文を呼び出すことも可能だ。

「Life」の画面はこちら。PS3の描画能力が生かされており、雲の形は実際の天候に即して変わっていくらしい。

 気になるのは、平井氏の「第1弾として登場するのは場所に「地球」、時間に「今」を設定したライブチャンネルです」との発言だ。第1弾という表現から、第2弾以降も考えていることがうかがえる。どういった形で「Life」がユーザーの前に現れるのか?

・PSPのネットワーク強化

 PSPについては、PS3における「Life」のように具体的なコンテンツが明示されたわけではないが、ネットワーク機能の強化は実施すると発表された。欧州で行われている「GO!VIEW」、「GO!explore」、「GO!Messenger」などのように、ネットワークを介したコミュニケーションツールを対応させたり、PSPから直接「PLAYSTATION Store」にアクセスしたり、上でも述べた「ビデオ配信サービス」を、PS3のハードディスクからPSPにチェックアウトする形で持ち出せるようにしたりする予定だ。

■黒字化に向けた施策■

 本体コストの高さがかねてから指摘されていたPS3。今後は半導体の微細化や部品点数の削減によりコストダウンを狙っていく姿勢を見せている。また、本体製造にかかる費用以外にも、組織の見直しやSGA(販売および管理にかかるコスト)の見直しも図っていくとのこと。そして施策の最大ポイントとして平井氏が掲げるのは「魅力あるゲームコンテンツを発売すること」。PS3の基礎部分を強めることこそが、黒字化につながる最善の道であるとの考えだ。

 情報装置としての意味合いを強め、そこをとば口にゲームユーザーの拡大を狙うPS3とPSP。「PS3の基礎となるのはゲームです」と以前から話していた平井氏だが、これは「ゲームのみに拘泥する」という意味ではない。むしろ「ゲームコンソールはPS3の基本部分だが、ゲームしかやらないと制約をかけるわけではありません」と話しており、「ノンゲームコンテンツを出発点としてPS3を楽しんでくれているユーザーが、ゲームにも興味を持って遊んでくれれば何より」と考えを明かした。7月に開催される「E3」では、「ビデオ配信サービス」や「Life with PlayStation」などの開始時期や詳細が語られる予定となっている。今後PS3とPSPがどのような展開を見せるのか、これからPS3やPSPを購入しようと考えているユーザーは、注目しておくといいだろう。

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