2008年7月3日(木)
7月24日に『英雄伝説 空の軌跡 the 3rd』が出ることだし、『ヴァンテージマスター』やるならこれもやれと、いきなり渡されたROM2本。PSP用ソフト『英雄伝説 空の軌跡FC』と『SC』。ふーん『英雄伝説』なんだ。でも、俺、15年以上前にまだ『ドラゴンスレイヤー』ってついていたころの『1』と『2』しかやってないよと思いながら、プレイしてみてびっくり。よくできてるじゃねーか。と、いうわけで『FC』から『3rd』に至るまでの弩左右衛門の軌跡をお届けします。
■初見の感想
いきなり2本渡されてどっちが1かも分からない俺。仕方ないのでネットで調べたら『~First Chapter』と『~Second Chapter』だとわかりました。わかりましたけどわかりにくいな。途中からやる人のことも考えてくれよとROMをスロットイン。主人公は“エステル”って女の子と“ヨシュア”って男の子。しかし、今日び滅多に見ないほど“エステル”はポジティブな性格。しかも恋に対しては超のつくほどオクテ。最近、「可愛いけれど××」みたいな精神構造が個性的なヒロインとばかりお付き合いしていたので、逆に新鮮。昔はこんな子多かったよね。
■ついで、基本システムとストーリーの話
お話は「導力器(オーブメント)」という謎の動力源で産業革命を迎えたくらいの「ゼムリア大陸」という世界が舞台。ちなみに「オーブメント」は古代文明の遺産だったりします。そんな世界で、主人公達は「遊撃士(ブレイサー)」と呼ばれる警備員みたいな仕事の見習いとして、正遊撃士を目指しながら各地を旅するのがメインストーリーです。敵を倒すともらえる「セピス」と呼ばれる宝石のようなものを集めて「クオーツ」に調整してもらい、「携帯オーブメント」のスロットに装備することで、自分のステータスを上げたり、はたまた、敵を見つけるとか、敵に遭遇しても戦闘にならないとかいろいろ便利な機能を付加していくわけです。わかりにくいかもしれませんが、要は某有名RPGの「マテリア」みたいなものだと思ってください。ついでにもうちょっと説明すると、スロットは6つあってそこにどんなクオーツをはめ込むかで、使える魔法が変わったりします。まあ、本シリーズの肝となるものなわけですな。
「クオーツ」を使用するためにはスロットを空けることが必要です。また、キャラクターによってはスロットルに特定の属性の「クオーツ」のみ使用できる場合があります。 |
戦闘後、経験値のほか「セピス」を手に入れられます。これは、「クオーツ」の合成に使えるほか、町で売ればお金に変えることもできます。町によって交換レートは変わります。 |
■システムにあふれる愛
さて、マップに出てみれば移動速度がかなり速い。かといって速すぎない。なんとも絶妙のさじ加減。さすが老舗の蓄積と唸ってしまいますが、ユーザーフレンドリーなのはそれだけでない。ルートのポイント、ポイントには標識が立ってるし、ついうっかりテキストを読み飛ばしても次に行く場所、するべきことを噛んで含めるように教えてくれる親切設計。さらに、必須のイベント戦闘以外は、ランダムエンカウントではなく、マップに敵影が表示されるし、序盤で「鷹目」というクオーツを手に入れれば、どこに敵がいるかも教えてくれる。さらに望まないエンカウント戦闘に入ってしまっても「退却」コマンドで100%戦闘回避できるなど、ストレス軽減への作り手の親切心は並みじゃない。もっというと必須となるイベント戦闘だけで、ゲームを進めるための必要経験値がもらえるバランス。開発者は俺の親ですか!
どこに行くべきか&自分がどこにいるかよくわかる標識。おかげであまり迷いません。 |
目的を忘れたら△ボタンと上ボタンで呼び出せるギルド手帳を見ましょう。現在のクエストに関して何をすべきで、どこまでしたかわかります。 |
■「クエスト」というシステム
ゲームのメインストーリーだけを追うなら無視してもいいのですが、主人公たち遊撃士は各地にある協会の支部で「クエスト」と呼ばれる仕事を請け負うことができます。ここでお金と「セピス」、敵と戦闘すれば経験値を稼げます。お使い色が強い本作で、ともすれば投げ出してしまいがちな「お使い」を選べるのは画期的といわざるを得ません。全部やれば無論ご褒美もあったりするので、やり込み要素はこのシステムに逃がしているわけですね。その心遣いが憎い。やり込みといえば、いろいろ手に入れることのできる食材を使っての料理や、各地で買ったりもらったりできる書物なんかをちまちま探すのも楽しい。これを無視しても特にゲームの進行を妨げないので、自分の気分で選べるのがうれしい配慮です。ちなみに「クエスト」やっとくとこの世界の地理がよくわかるようになります。
クエスト掲示板には、さまざまな依頼が掲示されます。戦闘の発生するものが多いですが、中には護衛、探し物などといった平和(?)なものもあります。 |
■そして愛あふれるストーリー
大まかなイントロは先ほど書きましたが、要はボーイミーツガールな成長物語なわけです。各地を旅しながらいろんな人とふれあい成長していく主人公たち。さらに、詳しく書くとネタバレになるので書きませんが、既に故人となってる人以外死にません。物語を盛り上げるために演出目的で殺される人がいない。真の悪人も『FC』には出てこない。バカはいますが……。この世界に生きるひとびとは、自身のなすべきこと、生きることに精一杯向き合っている。なんて健全なストーリーなのでしょう。物語の根幹は良質のジュブナイルなんですね。ここら辺にも制作者の愛を感じます。ただ、一点“エステル”の口癖「モチのロン」だけはちょっとね……。
娘にただのヒゲ親父扱いされているカシウスの偉大さは旅の中で語られ、おいしいところはすべて持ってきます。最初は父の背中を追うことからスタートして、大きな事件に巻き込まれていく流れは非常にスムーズです。果たして『SC』では父を越えられるのか!? |
■とりあえずSCに続く……
最近歳をとってちょっと涙腺のゆるくなった俺としては、『FC』の最後は切なくてウルッときました。気になる人は自分で確かめてください。また、RPGの愛着度はプレイ時間に比例します。世界を歩き回っていろんな人に出会う、“エステル”たちと共に冒険をしている感覚ですみずみまで本作を楽しんだ時、この愛すべき世界への想いは忘れられないものになるでしょう。システム的にもドラマ的にもすごく新しいというものではありませんし、派手なものでもありませんが、新しいもの、派手なものが必ずしもよいものではないことはみなさんご存知かと思います。初心者もヘビーユーザーもまとめて受け止められる懐の広い世界とシステムは万人にすすめられる、王道RPGと呼ぶにふさわしいものです。
などと書きつつ話は『SC』に続きます。(弩左右衛門)
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