2008年7月17日(木)
さてみなさん、ここまでお付き合いいただきありがとうございます。3度に渡りお送りしてきた「怒左右衛門の軌跡」もファイナルチャプターでございます。一応言っておきますと、ストーリー的に連続しているので、『英雄伝説 空の軌跡 FC(以下、FC)』、『英雄伝説 空の軌跡 SC(以下、SC)』の順に遊ぶことをオススメします。また、当インプレッションも同様です。じゃないと、何が書いてあるのかさっぱりわかりませんし、前作までのネタばれに相当する内容もあったりなかったりします。
■主人公交代
今回は、我らがUPG(ウルトラポジティブガール)“エステル”たんから、大阪弁神父“ケビン”へと主人公が変更になりました。まあ、彼女や“ヨシュア”のエピソードは語りつくされてしまったので、これは仕方ないのかもしれません。しかし、清く正しい“エステル”と違って、この大阪弁神父は、どうも黒そう。さしずめ昔の"ヨシュア"みたいに。あと、当たり前ですが、バックの組織も変わります。「ブレイサーギルド」は民間人のための開かれた組織でしたが、“ケビン”の所属する「七耀教会」は、こそこそと胡散臭い。ついでに秘密も多い。前回、「教会の影薄いよね」と書きましたが、実際目立たないように行動していたようです。そんな不透明さや、「外法狩り」という“ケビン”の2つ名もあって、よい子のためのジュブナイルからちょっとアダルティな方向に。まあ、あれです、漫画誌でいうところの『Young 空の軌跡』って感じで。
組織が変われば手帳も変わります。書いてあることはほとんど変わりませんが。 |
■変更点の話
『英雄伝説 空の軌跡 the 3rd』では、またまたシステムが変更(追加)されました。これまでの弱点属性だった地・水・火・風の4種に、幻、時、空の3種が追加されました。あと、これは『FC』の時からあるシステムですが、敵味方の戦闘順を表示する「ATバー」の横にある「攻撃力アップ」や、「クリティカル」などの「ATボーナス」にも、敵の姿を消す「バニッシュ」、「即死」、「ガード」などが追加されました。これらがランダムで付くおかげで、戦闘の緊張感が3割増しです。敵に「即死」なんかがついてしまうと、もうプチパニック。アーツの使用や、敵の行動順を遅らせることでこれらを味方につけることができるので、戦闘が一転「即死」争奪戦の様相を呈します。
また、ストーリーに関わる部分ですが、今回は、これまで通り「リベール王国」を舞台にしていますが、自由に歩き回れるわけではありません。「方石」という謎のアイテムによって、行く先々にワープするのです。前回いささかやりすぎとも思われた、行ったり来たりが非常にラクになったのです。それがよいことでもあり、世界を旅する感覚が薄れたという点で悪くもあり。まあ、散々歩いたので、もういいとも思いますが……。それと、買い物や「クオーツ」の調整などショップで行っていたことが、すべてモノリス風の端末に一元化されました。楽になりましたが、ショップの人と話をする楽しみはなくなりましたね。これもよしあし。いずれにしても、ずいぶんとストレスを軽減する措置がとられているようです。
なんだかもろもろあって、異次元に飛ばされてしまったというところから話はスタート。オートメーション化が進んでいる世界らしく、用は石碑がすべて何とかしてくれますし、移動もボタン1発。 |
■おのおののエピソードを掘り下げるシステム
今回の主人公は“ケビン”ですが、これまでのメインキャラクターもパーティメンバーとして登場。また、新登場のキャラクターとして“リース”という腹ペコシスターが追加されました。
冒険の舞台である「星層」には、「月」、「星」、「太陽」と3種類の部屋があり、「月」が長編エピソード、「星」が短編エピソード、「太陽」がミニゲームとそれぞれ性質を持っています。ここに条件にあったキャラクターを連れて行くと部屋に入れ、おのおのの語られざるストーリーを見ることができます。前作から今作に至るまでの中間エピソードだったり、はたまた思いっきり古いものだったりと、各キャラクターの知られざる一面を見ることができるのはうれしい限り。この部屋には何度も入ることができますので、見たいものは何度でも見られます。意外な人物の話があったりとファン感涙であることはもちろん、見終わるとアイテムやゲーム内の通貨である「ミラ」ももらえるので、ゲームを進めるためにも見ておきましょう。というのも、今回は特にクエストが存在しないので、「ミラ」を稼ぐ方法がモンスターを倒したときにもらえる「セピス」を売る以外ないのです。なので、ここでもらえる「ミラ」がないと、装備を整えられないのです。
戦闘や探索といった、いわゆるサブクエストが今回、部屋というカテゴリーになりました。シューティングゲームのようなミニゲームができたのも大きな変化です。 |
■パーティキャラはなんと16人
“ケビン”と“リース”、“エステル”と“ヨシュア”はもちろん、今作では、空賊団のボクっ娘“ジョゼット”、ミスター堅物“ミュラー”、ミス堅物“ユリア”の他、“リシャール”も参戦。“リシャール”さんは、『FC』以降どんどん待遇がよくなってうれしい限り。あと、“ティータ”の待遇のよさは異常。まあ、あんな娘がいたら僕も娘に欲しいですが。
今作では、イベント必須の固定キャラクター以外は自由に編成できます。必ずしも、パーティのバランスがよくなる訳ではありませんが、やはり“オリビエ”と“ミュラー”や、“クローゼ”と“ユリア”など、ゆかりの深いキャラクターでパーティを組みたいものです。微妙にネタばれですが、最後は16人を4つのパーティに分けての探索になりますので、みんな均等にレベルを上げておきましょう。
拠点に戻れば自由にパーティの編成ができるようになりました。また、装備も一括で変更できます。これは便利。 |
■さしずめ劇場版ですかね
『SC』までで、事件としての「リベール動乱」と、“ヨシュア”と“エステル”のボーイミーツガールストーリーは完結している訳です。その後に発売された本作は、登場人物たちが細かく網羅され、いろんなエピソードが見られるのはファンにはうれしく、ファンディスクと呼んでも差し支えないのかもしれません。ただ、どうしてもファンディスク=おまけというイメージが強いですし、ストーリーは『英雄伝説VII』につながるそうなので、インターミッションと呼ぶのが正しいのでしょうか?
今作のもろもろは、人によっては蛇足と感じるかもしれませんし、システムが『空の軌跡』っぽくないと思われるかもしれません。ただ、シリーズの骨格である、世界の探索を捨ててでも、語られたキャラクターのエピソードは矛盾も揺らぎもなくプレイヤーの胸に届きます。前二作ちょっと毛色が違いますが、今作は、『英雄伝説VI 空の軌跡』を補完する完結編としてTVアニメとその劇場版的立ち位置で燦然と輝くのです。(弩左右衛門)
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