2008年9月3日(水)
現在フジテレビ他で放送中のTVアニメ「二十面相の娘」。“チコ”役の平野綾さんと、“二十面相”役の内田夕夜氏のロングインタビューを掲載する。
本作は、義父母に命を狙われていた“チコ”が、怪盗“二十面相”やその仲間と出会い、「二十面相の遺産」と呼ばれる大きな謎をめぐる事件に巻き込まれていく物語だ。アフレコの収録は第20話まで進行中。以下に、第20話の収録を終えた2人の声をお届けする。
現在フジテレビ他で放送中のTVアニメ「二十面相の娘」。“チコ”役の平野綾さんと、“二十面相”役の内田夕夜氏のロングインタビューを掲載する。
本作は、義父母に命を狙われていた“チコ”が、怪盗“二十面相”やその仲間と出会い、「二十面相の遺産」と呼ばれる大きな謎をめぐる事件に巻き込まれていく物語だ。アフレコの収録は第20話まで進行中。以下に、第20話の収録を終えた2人の声をお届けする。
――アフレコはすでに終盤近くまで進んでいますが、ここまでの思い出やエピソードを教えていただけますか。まずは“チコ”について、平野さんからお願いします。
平野さん:はい。今思うと、最初の方の話数ではすごく緊張していて……。とにかく“チコ”という役を一生懸命集中して演じなきゃ、といった気持ちでいっぱいでした。だんだん共演者の皆さんとお話もできるようになって、スタジオにもやっと慣れてきたかな……って思った時には、二十面相一味のキャストの皆さんとの、お別れの話数(第6話)になっていたんです(笑)。もっと早い回から、一味の皆さんといろいろなお話をしたかったし、こんなに仲よくなるのなら一味の連帯感のような雰囲気をもっともっと最初から出すことができたのかもしれないなって……。
――3話目くらいからはとてもいいムードだったと思いますよ。作品の中でもスタジオの中でも、皆さんからかわいがられていましたし。
平野さん:そうですか。だったらよかった! ありがとうございます(笑)
――“チコ”にとって7話からは新しい展開に入りましたが、そのあたりのお気持ちはいかがでしたか?
平野さん:7話からは別の作品? というくらい、キャストの方も入れ代わったのが印象的でしたね。スタジオの中でも、私なりに、もう一度気持ちを引き締めて臨みました。
――“チコ”の成長について、どう思われますか?
平野さん:序盤でおじさん(“二十面相”)に生きる意味を教えてもらって、“チコ”は初めて自分の中にある可能性を見つけることができたんだと思います。そこから“チコ”がもともと持っていた芯の強さがだんだんと表に出てきて……。収録では同じ台詞でも“チコ”の成長の度合いによって言い回しを変えることを心がけていました。ちょうど先日のアフレコでも、ある台詞について“チコ”の持っている輝きをもっともっと大きく見せるには……ということを監督や音響監督さんとずいぶんと話しあったりしました。
――それはどのセリフですか?
平野さん:「私があなたを止めてみせる」(第20話)です。
――“チコ”が教授に対して言うセリフですね。
平野さん:はい、そうです。
――シリーズ後半に向けて平野さんの演技への集中力も増している……そんな感じでしょうか?
平野さん:最終的には“二十面相”に名前をつけてあげる……といったクライマックスのシーンまで、もっともっと“チコ”を演じる気持ちを高めなければいけないって思っています。ここにいたるまでの“チコ”がどういう風に成長してきたのかを、今もう一度、思い返しているところです。
――ありがとうございます。続いて、内田さんにうかがいます。まず、20話までを振り返りつつ、“二十面相”についてお話しください。
内田氏:私も平野さんと一緒で、6話での区切りのつけ方に少し驚きましたね。それ以降は、出演するキャストもガラッと変わってしまいますし……。“チコ”の成長がとても大切なテーマとなっているのですが、逆に“二十面相”は、最初から完成された存在でしたので、彼の持つ親しみやすくも気高いムードはブレずに演じていこうと思っていました。“チコ”との関係性で、“二十面相”の魅力や過去、苦悩などが語られていきますよね。“チコ”の目線に透明感がありましたので、その瞳に映し出される“二十面相”の姿には、ある種の誠実さがなければいけない。そこは気をつけて演じていました。
――先ほどお話された6話の二十面相一味壊滅以降、しばらく“二十面相”は姿を消してしまいますね。内田さん自身、そのあたりの話数ではスタジオにもいらっしゃってなかったのでしょうか?
内田氏:ええ、8話の「人間タンク」あたりからは、現場にうかがっていませんでした。
――“二十面相”は、タイトルにも名前がつくほどの大切な役柄です。数話とはいえ、アフレコに参加しなかった、そのあたりのお気持ちは?
内田氏:台本もいただいてましたし、原作も拝見しておりましたので、ストーリーそのものは知っていました。今ごろスタジオではこんなシーンやあんなシーンが……そして今週は“チコ”がこんな目にあっているな、と、その様子を想像はしていたんですよ(笑)。スタジオにいなくとも収録には参加していたつもりになって(笑)。ちょっと余談になりますが、私は「二十面相の娘」のメカデザインが大好きなのです。なので、アニメ版の「人間タンク」をいち早く見ることができなかったことが残念といえば残念でしたね。オンエアを見て「ああ! やっぱりアニメ版の「人間タンク」も格好いいな!」なんて思っていたんですよ(笑)。
――平野さんにうかがいますが、内田さん不在のアフレコスタジオはどんな感じだったんですか?
平野さん:いつもそこにいてくださる存在だと思っていましたから、なんだか不思議な感じでした。寂しかったです、いらっしゃらないと。やはり内田さんは二十面相一味のボスですから。
内田氏:ありがとうございます。よかった! そう言っていただけて(笑)。
――7、8、9話あたりは“チコ”の抑えた演技が印象的でしたが……。
平野さん:はい、“チコ”が日本に戻ってきて、自宅や学校などの日常生活の中でもう一度自分を取り戻す過程を見せる必要があったんだと思います。最初は6話あたりを引きずったお芝居をしてみたのですが、実際の収録ではもっと抑えた演技でも大丈夫!と、音響監督さんからアドバイスをいただきました。このあたりの繊細な“チコ”の心の移り変わりを皆さんにも感じとっていただけたらすごくうれしいです。
――13話の、飛行船のタラップで“二十面相”に対して「やっと……捕まえた」と言うシーンが印象的でした。ここでの演技はいかがでしたか?
平野さん:それまでの“チコ”は気持ちを張りつめて、なんとか自分を保っていたのだと思います。でもピンチの時におじさん(“二十面相”)が現れてくれて……。ここで“チコ”としては緊張感が一瞬緩んだんだのかな。それまではおじさんが生きているかどうかすらもわからなかったし。でも“チコ”は絶対に信じていたんだと思いますよ。思い返してみると、“チコ”っていつも絶対に何かを信じているんです。このあたりが“チコ”ってすごい娘だなって……いつも思いますね。“チコ”の願いが叶った、すごくいいシーンだったと思います。
――演技としては自然な感じでしたね。
平野さん:最初からこのシーンの“チコ”はこんな気持ちかなって……自然にセリフが言えました。ちょっと前の幼い“チコ”だったらもっと感情をあらわにしたのかもしれませんね。
――12話の“白髪鬼”とのエピソードの中で、“トメ”さんが石膏づめにされたのを発見したシーン。ここまで激しい“チコ”の絶叫は初めて見ました。大変迫力のある演技でしたが?
平野さん:収録している時は無我夢中でした。“チコ”の気持ちとしては自分を見失ってはいないものの、抑えきれない感情の高ぶりがあったのかな、と。後日オンエアを見て、私はあそこまで激しく叫んでいたんだ! って少しびっくりしちゃいました(笑)。
――今度は少女探偵団について。これは楽しいセッションになったと思いますが。
平野さん:少女探偵団のエピソードは「二十面相の娘」の中でも緊張感からちょっと解放されてる感じですよね。“春華”と“トメ”さんがいることで、“チコ”も日常生活での居場所が確認できているのだと思います。
――15話は、まるまるコメディ回といってもいい内容でした。演じている側としても、こういう話は息抜きになりますか?
平野さん:はい、楽しい回でした、とても! “春華”の妄想や思い込みで巻き込まれていくのって楽しいなって思いました。たまたまなのかもしれませんが、他の作品ですと私の方がトラブルメーカーになることが多かったので、とても新鮮でした。
――次に中盤の“白髪鬼”のエピソードですが、“白髪鬼”は女の情念をたぎらせて“二十面相”と“チコ”に対峙してきましたよね。
内田氏:“二十面相”個人を語る上で重要なエピソードになっていたと思います。それにしてもかなりの強敵でしたね(笑)。
――私のまわりでは、“白髪鬼”をあんな風にしてしまった“二十面相”は、男性としていかがなものか? といった意見もありました(笑)。
内田氏:はい……、それも二十面相の若さゆえというか……(一同笑)。すみません……失礼しました(笑)。真面目に話しますと、理想に燃えた若き“二十面相”は、研究者としての使命感が強かったのだと思います。研究者として彼が生きたのもそういう時代でしたし。“白髪鬼”とは、まず「理想」の部分で意気投合したのでしょう。“二十面相”の才能ゆえでしょうか、“白髪鬼”への気持ちも男性のそれではなく、研究所の若きリーダーとしての立ち振る舞いだったのかもしれませんね。しかし、後に“白髪鬼”は女性の部分が強くなってしまい、そこに齟齬(そご)が生まれてしまった、という感じでしょうか。
――“白髪鬼”に対して、誘惑とまではいかないまでも、時にやさしい言葉をかけていますよね。
内田氏:「今日は口紅を塗っているね。似合うよ」というセリフがあるのですが、そこは、自然なトーンのセリフにしようと思っていました。普段、口紅をしていない女性に対して、本当ならとてもデリケートな意味を持つセリフですが、必要以上に意味を持たせまいと。“二十面相”は最初から相手の愛情を引き出そうと、そのセリフを口にしている訳ではないですし。それを前提にしてアフレコに臨みました。
――艶っぽい台詞ではありますが、確かに“二十面相”のスマートさは出ていたと思います。
内田氏:そう思っていただけたらうれしいですが。でもやはり“二十面相”も若かったのでしょうね(笑)。
――平野さんはどう思われますか?
平野さん:女性ならあそこまで優しくされると……。それは好きになってしまうよねって、他の出演者さんとも話していたんです(笑)。いつもは尊敬しているおじさん(“二十面相”)ですが、その時ばかりは「ひどいよ! おじさん」って思っちゃいました。すみません(笑)。
――後半の「二十面相の娘」は、クライマックスに向けてポール・エリュアールの「よき正義」、そして「水の第四形態」と謎が続いていきます。実は、この「よき正義」の詩ですが、後半の謎を暗示するために、「二十面相の娘」のポスターに印刷をしてあるんです。お気付きでしたか?
内田氏:ええ、そのエリュアールの詩の収録があった時に、ふっと……そういえば、もしかしたらあのポスターにデザインされてあるあの文字って? と平野さんと顔を見あわせてスタジオのロビーに貼ってあるポスターを見に行ったんですよ。そしてポスターにこの詩を発見した時は本当にびっくりしました。「二十面相の娘」のポイントになる「謎」がこんなところにあったなんて、と。なんだか私たち出演者もスタッフの周到な策略に「やられた!」という感じでした。
――「二十面相の娘」の最大の謎、「水の第四形態」。世界を変えるほどの大きなこの力について、どう思われますか?
平野さん:序盤の3話ですでに「水の第四形態」という言葉が出てきて……。原作を拝見していたので、ここで早くも「水の第四形態」が出てきた! って必要以上にドキドキしていたんですよ。「二十面相の娘」の謎に対しての伏線、というか緻密さを感じました。後半に積み上げてきた「謎」がこの先どう決着を迎えるのか……とてもワクワクしています。
――3話の港のシーンはもちろんですが、“チコ”の目線の先に公園の噴水があったり、丘の上で遠くに海が見えたりと、実はポイントとなるようなシーンには「水」を配置しています。作品の「謎」はしっかり提示しようと考えていたんです。
内田:演じる側の我々もそれは感じていました。序盤からさまざまな形で暗示されている「謎」に、見てくださっている方が気づいてくれるとうれしいですね。「水の第四形態」に関しては、水が光になるのがすごく素敵な発想だと思いました。
――いよいよ物語もクライマックスになりますが。
平野さん:実は私自身も、もう一度、作品を1話から見直しているところなんです。今回「二十面相の娘」に出演させていただいて、お芝居の正解というものがひとつではなく、限りなくたくさんあることがよくわかりました。“チコ”を最後まで演じきることで、私自身も何かを掴めるだろうなって……。集中して最後まで演じていきたいと思っています。それにしても、ここ2話くらいの“チコ”はずっと走ってばかりで(笑)。先日も自宅でセリフの練習をしていて、夢中になりすぎて酸欠になっちゃったんです。本番で倒れてしまったらどうしよう……ってちょっとあせりました。
内田氏:少し話題はそれますが、スタジオではノイズが出ないようにキャストは皆、スリッパを履いているんです。でも平野さんは裸足でマイク前にいらっしゃる時があって(笑)。収録の前には、平野さんも普通にスリッパを履いてらっしゃるんですよ。それが本番でマイク前に行くと、なぜか裸足になっていらっしゃってて(一同笑)。私はその平野さんの気合いの入りっぷりが大好きなんですが(笑)。
――そうなんですか。平野さん、それはどうしてなんですか?
平野さん:つい本番前にスリッパを脱いでしまうんです(笑)。う~ん……一言で言うと気合いが入るんです。気のせいかもしれませんが、台詞を言う時に踏ん張りが効くような……(笑)。
内田氏:“チコ”と似てますよね。集中するということに挑む姿勢が。
平野さん:でも、なんだか恥ずかしいです(笑)。
――「二十面相の娘」は“チコ”の成長物語でもあるのですが、よく考えると“チコ”の成長の早さが尋常ではありませんよね。“二十面相”を飛び越してる時もあるように思えます。
内田氏:確かにそうですね。終盤に“二十面相”が教授に対して言うセリフがあります。
「あなたと私の違いは未来を託せる人間がいるかどうかだ」といったくだりですが。「二十面相の娘」は、文字通り“二十面相”の娘たる少女が主人公なわけです。娘はいつしか大人を乗り越えていくものだと思います。“二十面相”自身も未来を信じていて、その時々で同じ目的を持つ仲間に、理想を託してきました。託した仲間が成長するのは“二十面相”にとっては本望なのだと思いますよ。
――では最後に、作品を楽しみにしてくださっているファンの皆さんにメッセージをお願いします。
平野さん:すごくスケールの大きなクライマックスになりそうです。たくさんの謎が解決して“二十面相”と“チコ”の新しい関係が築かれた時、“チコ”がどれほどの成長をしているのか……ぜひ、一緒に見届けてくださるとうれしいです。どうぞよろしくお願いいたします。
内田氏:“二十面相”のセリフを引用してみますね。「未来を皆さんに託します」。どうぞ「二十面相の娘」のクライマックスを楽しみにしていてください。TV作品という性質上、ストーリーには終わりがあるのですが、“二十面相”や“チコ”が「遺す」であろう理想に終わりはありません。多くの皆さんにその「理想」を感じ取っていただけたらうれしいです。最後までよろしくお願いいたします。
――今日はいろいろなお話をありがとうございました。
平野さん&内田氏:はい、ありがとうございました!
平野さん:作品の大切なテーマにかかわるお話も多かったので……少し緊張しちゃいました(笑)
▲本作のDVDは、現在第2巻まで発売中だ。9月26日には第3巻が発売される。各巻には、キャストのインタビューなど映像特典も収録されているので、ファンはチェックしておこう。 |
(C)小原愼司・メディアファクトリー/「二十面相の娘」製作委員会
■TVアニメ「二十面相の娘」