2008年9月11日(木)
本日で最終日を迎える「CESA DEVELOPERS CONFERENCE 2008」において、プロデュースセッション「『龍が如く』が生み出すタイトルプロデュースの未来」の講演が行われた。
本セッションでは、『龍が如く』シリーズのプロデューサーとして知られるセガの名越稔洋氏が、自身の経験をもとにゲームのプロデュースについて語った。口頭のみでの講演となったが、セッション会場には多くの聴講者が集まり、真剣な眼差しで氏の話に耳を傾けていた。
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| 痩身に日焼けした肌、ファッショナブルな格好の名越氏。なんとこれは、「付き合ってた女の影響でこうなった」とのことで、聴講者の間からは大きな笑い。最近は日焼けサロン関係の取材も受け、「やったな」と思ったそうだ。 |
学生のころは、映像を学んでいたという名越氏。当時はゲームの専門学校もなく、周囲にゲーム業界を目指す人は1人もいなかったそうだ。そんな中でセガに入社した氏は、アミューズメント施設向けの業務用ゲーム機に携わり、その後コンシューマ作品を制作するようになったという。
そんな経歴からか、業務用ゲーム機の市場が現在苦境に立たされていることから話は始まった。現在の市場規模は、ピーク時のおよそ3分の1とのこと。「デートでゲームセンターに行こうと誘っても、エーと言われてしまうことが多い」、「みんなゲームをやろうよと言わなくなった」と話す氏は、ユーザーが特定のタイトルではなく、「ゲームそのもの」に目を向けてくれるようになるアプローチでタイトルをプロデュースする必要があると語る。
「突飛なものを作ればいいと言っているわけではない」と名越氏。しかしユーザーから「ゲームそのもの」が飽きられてきている現状にあって、同じようなものだけ作っていたのではますます飽きられてしまう。ところが会社は、開発費の高騰もあって、柱となるタイトルに予算を注ぎ込み、新しいものに投資しようとしない。柱となるタイトルは、もう先が見えている状態であり、新しいものへの研究・開発に資金をもっと使うべきだと名越氏は話している。
新しいもの――先を見据えたゲーム作りは、名越氏のこだわりの1つであるようだ。「3年先は誰にもわからないとよく言われる。けれど、本当にわからないんですかね?」そう疑問を投げかけた氏は、「まったく読めないものでもない。むしろ、それができなければプロデューサーをしても仕方がない」と答えた。
氏が海外のクリエイターに話を聞くと、彼らは日本とはまったく異なるアプローチで先読みをするのだという。氏によれば「日本では現状を分析してそこから未来を予測する人が多い」とのことだが、海外では、食産業などゲームとはまったく関係ない分野から未来の生活や経済環境を予測して、その中で自分たちのゲームがどの場所に位置するのかを考えるのだそうだ。「そのやり方をすれば必ず成功するわけじゃないし、絶対に正しいわけではない。けれど、未来は決してまったくわからないものではない」と先を見てゲームを作ることの重要性を語っていた。
では、名越氏の手掛けた『龍が如く』はどうなのか。「説教くさいソフトが作りたかった」と語る氏は、1作目を制作するちょっと前、若者のアンケートに「かっこいい大人がいない」というのを見て、その「かっこいい大人」を描きたかったと話す。氏の持論として、「必要な暴力はある」と考えているという。主人公“桐生一馬”は、その本当に必要な暴力は何かを語れる大人、業績から尊敬を受けるのではなく、心が尊敬できる大人として誕生した人物であるそうだ。
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| 「女性はまったく意識せずに作ったのに、たくさんの女性がプレイしてくれた。女性というのは、そういったものなのかもしれない」と笑う名越氏。ちなみにシリーズでは、3割以上のユーザーが45歳以上とのことで、「うれしかった」と素直に喜びを表していた。 |
その“桐生一馬”を描いた『龍が如く』。開発費の高騰から、ワールドワイドでの展開が叫ばれる昨今、氏はターゲットを徹底的に日本人へ絞ったと話す。海外のユーザーを意識すると、主人公の名前をいじるような段階から声を聞かねばならず、誰の声を聞いた、こっちの誰の声も聞いた、とあちこちの声を採り入れてしまうと、結局誰に向けたゲームなのかわからない作品になってしまうのが理由だ。ついにはターゲットを「日本人男性」にまで絞ったそうだが、実際にはユーザーの23%が女性であるという。
そのようにして制作された『龍が如く』だが、当時はまるで社内の理解を得られなかったそうだ。プロデューサー目標としてあげた売り上げ30万本という数字は誰にも信じてもらえず、社内評価ではもっとも少ない数で1万5千しか売れないという声もあったらしい。ただ、「このソフトが発売されたらどうなるのだろう、という興味は皆感じていたようだった」とのことで、なんとか発売することができたという。冷めた空気の中、発売された『龍が如く』の初回出荷は7万本。しかしこれが5日で市場から姿を消すと、「やばいぞ」ということになり、つぎつぎに増産した結果、35万本を売るに至っている。
こうして成功を収めた『龍が如く』は、現在『龍が如く3』が開発されているわけだが、シリーズを制作するチームは1つしかなく、約80人ほどのチームで作っているそうだ。『3』では、カメラも自由に動かせるようになり、ゲーム画面を見れば、遠くの店もひと目でわかるような、必要な情報が瞬間的に入り込んでくる描写が可能になったと話す名越氏。「PS3というハードを選んでよかったと思っている」と感想を漏らしていた。ちなみに『2』では、エンカウントバトルのたびにローディングが入っていた仕様も、『3』でシームレスとなったそうだ。
ちなみに最後には質疑応答の時間も設けられた。そこでは、『龍が如く』のシナリオが名越氏を含めた3人で作られ、一応の完成原稿(制作中での手直しが前提とのこと)は1カ月半であがったことなどが語られた。さらに「セガはPC事業に本腰を入れるのか?」という質問に対し、「全然やってます。しばらくすると出るんじゃないですか」と回答していた。
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| 名越氏の経験、『龍が如く』の制作についてさまざまな話が聞けたセッション。ちなみに暴力表現の問題とは切っても切り離せない同シリーズだが、「クスリと子どもが死ぬ、というキーワードだけは絶対に使いません」と話しており、単なる暴力を是としない、それを通して触れられる心を大事にしていることが語られた。 |
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