2008年10月1日(水)
9月25日にスティングより発売されたDS用ソフト『ナイツ・イン・ザ・ナイトメア(以下、KiN)』。本作のゲームデザインを担当した伊藤真一氏からお話を伺ったので、その様子をお届けする。
『KiN』は、スティングのS・RPG『Riviera ~約束の地リヴィエラ~』や『ユグドラ・ユニオン』に続く「Dept.Heaven Episodes」シリーズの最新作。プレイヤーは、タッチペンを使って、リアルタイムでユニットに指示を出しながら、古城の奪還を目的とした激しい戦いを繰り広げることとなる。
今回、電撃オンラインでは伊藤氏にインタビューを敢行。本作制作までの経緯やこだわり、さらにはスティングファンなら見逃せない情報を語っていただいていたので、ぜひ最後まで読み進めてほしい。
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(インタビュー中は敬称略)
■『KiN』開発までの経緯
――まずは、開発の経緯をお伺いしたいと思います。本作の開発は、いつ頃からされていたのでしょうか?
伊藤:2年くらい前からですね。新作タイトルをPSPかDSで開発しようとしていたんですが、ちょうど『ユグドラ・ユニオン』のPSP移植の話が出ていまして、PSP用の開発機材はそちらで使うことが確定していたんです。そんなわけで、DSで制作することにしました(笑)。
――開発機器の使用状況がきっかけになっていただなんて(笑)
伊藤:もちろん、せっかくDSで作るのであれば、ハードの特長を生かしたゲームシステムにしたいと思って、タッチペンと2画面を使ったゲームを考えました。それで「ピクトチャット」をいじっていた時に、「このタッチペンの軌跡は、ゲームに利用できるんじゃないかな」と思ったのが始まりでしたね。
――では、タッチペンの利用の構想というのは、その時点から考えていたのですか?
伊藤:そうですね。カーソルをタッチペンで操作するという根本的な部分は、その時に考えていました。ですが、タッチペンで操作するたびにレスポンスを待つというシステムでは、ボタンでやった方が早いと思われるかもしれません。だったら、カーソルに襲ってくる敵がいる、といった具合にカーソルを動かしている間にもゲームに絡む要素が必要だろうと考えました。そういう視点から要素を詰めていった結果、敵の弾をよけたり、ユニットに命令を与えたりといった要素が追加されていったという感じです。
――敵の弾をよけるといえば、敵の攻撃対象がカーソルである「ウィスプ」だというのは、かなり珍しいと思うのですが?
伊藤:従来のゲームだと、敵は味方のキャラクターを攻撃すると思うんですよ。カーソルではなくて(笑)。正直、タッチペンで味方のキャラクターを選択して、戦闘中リアルタイムに動かすというのは、かなり難しい作業じゃないですか。これを、どう解決したらプレイヤーにストレスを与えない作りにできるかと、タッチペンをいじりながら考えていたんですね。そうしたら、ふと自分の目線がペン先にいっていることに気づかされたんです。じゃあ、敵がここに襲ってくれば、目線を散らさずに自然とかわせるんじゃないかなと思ったのがきっかけですね。敵が弾を撃ってきてそれをよけるゲームというのは、STGを始めとして昔からありますし、プレイヤー的にもわかりやすいんじゃないかと思って、こういう形にしました。
――「かすりボーナス(敵の攻撃をギリギリでかわすと経験値が獲得できる)」がありますが、あれも非常にSTGっぽいですよね。
伊藤:ゲームとしては、うまくなったらうまくなったなりのボーナスが欲しくなりますよね。ただよけるんじゃなくて「俺はこんなこともできる」みたいな。それで、STGによくある「かすりボーナス」みたいな要素があったら、果敢にチャレンジする人もいるんじゃないかな、と思って搭載しました。
■タッチペンの操作は何度も調整
――独特なシステムですので、さまざまな面で苦労されたと思いますが、特に苦労した点はありますか?
伊藤:本当に細かい話なんですが、タッチペンをどう操作したら、ゲームの内部的に「こう入力した」と判定するかの調節にすごく苦労しました。あまり過敏に反応してしまってもダメなんですよ。例えば、カーソルがキャラクターに触れると「アクティベーション(※1)」するのですが、弾をよけるときにうっかりキャラクターに触ったせいで、意図せず「アクティベーション」してしまうのはまずいわけです。ゲームの根幹になるタッチペンの操作がストレスの原因になってしまうと、全部が台無しになってしまうので。ですから、1フレーム単位で何度も何度も調整しています。試行錯誤の繰り返しでした。それくらいこだわったので、ストレスなく「ウィスプ」を動かしてもらえるという自信はあります。
※1 「アクティベーション」
タッチペンでユニットにタッチすることで、命令を出せる状態にすること。これによって敵に攻撃が加えられるようになるが、ターンの残り時間が減少する。
――初心者向けや中級者向けといった具合に、チュートリアルが分けられていますが、その理由は?
伊藤:『KiN』は操作が特殊なので、すべての要素を覚えてプレイするというのは、かなり大変なんじゃないかと思います。ですから初心者向けのチュートリアルでは、ゲームの基本的な操作方法だけで、あえて伝えていない要素もあるんですよ。実際、「ノーマル」の序盤や「イージー」では、そういった要素を使わなくてもクリアできるように調整してあります。一方で「ノーマル」の後半や「ハード」には、「特定の操作を知っていると、効率よくプレイができる」といった要素が入っています。プレイヤー自身のスキルやプレイ状況に合わせて徐々に覚えていってもらおうと思って、チュートリアルを分けて用意しました。キャラクターの成長だけではなくて、プレイヤー自身の成長もゲームの中に組み込みたかったので、今回はいろんな要素を盛り込んだシステムになっています。バランス調整はいつも以上に時間も人数もかけていますし。
――確かにもう一度プレイした時には、もっとうまくできるんじゃないかって気になりますね。
伊藤:2回目になると、1回目の時よりも多くの経験値を稼いだり、すごく短い時間でクリアできたりと、「上達した感」が体感できるんじゃないかなと思います。
■ゲームシステムに合わせて世界観を構築
──ところで、セーブが1つしかできないのは理由があるのでしょうか?
伊藤:実は、最初は3個くらいあったんですよ。でも、キャラクターの能力を引き継ぐ「トランソウル(※2)」だとかアイテムの強化だとか、プレイによって変化する要素が多すぎて、セーブデータが膨大になってしまいました。いろんなものをセーブしなくてはいけなくなってしまったので、1個でもデータ量的に限界でしたね。本当は、ゲームを途中で中断できるようにしたかったのですが、中断データも結構な容量になってしまったので、実現できませんでした。そこは非常に残念でしたね。
※2 「トランソウル」
戦闘中に減少したユニットの能力値「VIT」を回復させるために、他のユニットの魂を使うこと。魂を継承したユニットの能力値は、使われた魂の影響を受けて変化する。なお、魂を使ったユニットは消滅する。
──なるほど。ただ、「1回セーブしたらもう後に引けないよ」という緊張感は、世界観に合っている気がします。
伊藤:ひたすら前に進むしかない! という感じはありますね。容量的な問題で、セーブが1つしかできないということから、世界観を「騎士たちは自分の命を犠牲にしても進まなくちゃいけないんだ」という方向に変えたんですよ。
――すると、セーブデータというかシステム的な部分が世界観の構築を後押ししたと言うことですか?
伊藤:それはあります。もちろん、大雑把な設定は最初からある程度決めていました。ですが、細かい部分に関しては、システムに合わせて付け足していった感じですね。例えば、「カーソルを光の玉にする」と決めた時に、舞台が夜の古城だったら絵的にキレイですし、魂のない騎士に魂を分け与えることで話を進めるのであれば、騎士にタッチするという操作も自然に感じられるかなと。最初からダークな雰囲気でいこうとか、シリアスな設定にしようと思っていたわけではなく、カーソルが「ウィスプ」だったり、セーブ数の制約だったりといった変えられないゲーム部分から、「このゲーム内容を納得させられるようなシチュエーション」ということで、今の世界観を構築していきました。これまで作ってきたゲームすべてに言えるのですが、システムを固めていく段階で、「この要素を説明するには、こういう設定があった方がよりわかりやすいだろう」というものを付け足していってます。一般的にRPGはストーリー優先で作られることが多く、ウチのような作り方は珍しいかもしれませんが、システムから組み立てていけるので、独自色の強いシステムが作りやすく、自分的にはすごく助かっています。
──システム優先なところが、ファンに受け入れられているのかもしれませんね。
伊藤:そういった部分を支持してもらえているのは、ありがたいですね。
次のページでは、ゲーム内容により深く突っ込んだ話や裏話を掲載! さらに、幻の「Dept.Heaven Episode III」の情報も!? 本作をプレイ中の人やスティングファンは、ぜひチェックしてみてほしい!
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