2008年11月22日(土)
ドラマCD「紅」が、マリン・エンタテインメントから12月20日に発売される。
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「紅」は、集英社スーパーダッシュ文庫から刊行されている片山憲太郎氏原作の小説で、現在アニメやコミックなど幅広く展開中だ。ドラマCDでは、“紅真九郎”役の沢城みゆきさん、“九鳳院紫”役の悠木碧さんといった、TVアニメ版と同じ豪華なキャスト陣による、オリジナルのストーリーが3話収録されている。
TVアニメの監督を手掛け、ドラマCDの監督・脚本も担当している松尾 衡(まつお こう)氏にインタビューを行った。ドラマCDの内容はもちろん、TVアニメ版の内容についてもさまざまな質問をぶつけている。後日掲載するインタビュー後半の記事では、キャスト陣のサイン色紙をプレゼントとして用意したので、ファンはぜひチェックしてほしい。
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| ▲TVアニメシリーズとして全12話が制作された「紅」。駆け出しの「揉め事処理屋」として働く高校1年生の少年“真九郎”と、彼が護衛することになった世界屈指の大財閥・九鳳院家の令嬢“紫”を中心に、アニメならではのエピソードも交えつつ物語が展開する。 | ||
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――ドラマCDの収録を終えての感想をお願いします。
松尾監督:とってもスムーズでしたね。思ったよりも早く終わりました。最初のテストでは少し心配になったんですが、本番がはじまったらちゃんとできていました。オーディションの時にカンのいい人を選んだんですが、まさにそれが出てくれたなと。仕事のカンって重要だなとつくづく思いましたね。
――ドラマCDに収録されている3つのエピソードを監督が書き下ろしていますが、テーマなどはありますか?
松尾監督:実は、2話は長すぎて全編書き直しているんですよ(苦笑)。大人数でワイワイやっているもの、そしてこじんまりとした中でトラブルが起こるものを作ろうと考えていました。TVのころからそうなんですけど、大仰なことをなるべく減らし、日常で起こりうる延長で、それプラスこういうことが起こったらおもしろいかもしれないなということをやろうと思いました。そういう意味では、非常に庶民的な話題や、10代のころに経験するであろうことをなるべく入れ込もうと。それに、ある程度事情のわかる人間が茶々を入れるといった構造にしようと思いました。そうしないと、若い人と年を取った人との交流が上手くできないんですよ。そこでのすれ違いや、ギャップから生まれるおもしろさみたいなことをTVシリーズのころから心掛けていたんです。それと、温泉に行く話を作ってくれと言われまして(笑)。企画書にそう書いてあったんですが、結局その場で結論が出ず、どうやって温泉に行く話にしようかと考えた結果、スパに行くという形になりました。結局スパに行ってないんですけど。これが僕流の萌えです(笑)。
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| ▲こちらはTVアニメ第2話と4話の、“真九郎”と“紫”が銭湯に行くシーン。残念ながら、温泉に行くことは叶わず。 | ||
――五月雨荘の前のラブホテルは、実際にモデルがあるのでしょうか?
松尾監督:ありますよ。舞台になってる五月雨荘の表の通りは大久保にあるんです。そこにはアパートはないんですが、ラブホテルはあるんですよ。で、この向かいにアパートを作ろうという話になったところからTVアニメの「紅」は始まったんです。TVシリーズでは入るわけにはいかないと思ってたんですよ。結局入ったんですけど(笑)。シリアスな話を作るところで使っちゃってるんです。昔、公安がスパイを送り込む時に、どこで打ち合わせをしたかというとラブホテルなんですよね。だからTVシリーズではそういう使い方をしたんですが、おもしろくないな、もっとおもしろい使い方はできないかなとずっと思っていて。今回それがうまくハマりましたね。会話のいくつか――たとえば、1話の序盤で“紅香”が2人に怒っているシーンとかは、TVシリーズで書いていたんですよ。でも入りきらなくて。そういう会話をいくつか盛り込ませてもらっています。
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| ▲ドラマCD第3話の舞台になるラブホテル。“弥生”が寂しそうに立っているのは、もはやお馴染みの光景だ。 | ||
――ガイドブックのインタビューで松尾監督が好きだと話していた、“弥生”の「将来はお嫁さんになって~」というセリフもその中の1つなのでしょうか?
松尾監督:そうですね。ウチのスタッフなんですが、27ぐらいの女性がああいうグチを言ってたんです(笑)。飲んでる時に聞いて、いいセリフだなと思って。それをいただいてセリフにして、本編に使ったんですけど、結局切っちゃったんです。あそこまで恥をさらして演技をしたのにと言われたので、今回形になるように使おうと思いました。あれがアニメを見ている層と、男の子たちにどのぐらい響く言葉かどうかわからないですけどね(笑)。
――今回のCDの内容は、TVでやり残したことや、やれなかったことが中心になっているんですか?
松尾監督:そうですね。楽しい話やホっとする話がなかなか作れなかったんです。序盤にいろいろ入れてはいたんですが、相当カットして削っているんですね。それがいくつかフラストレーションになっていたんでしょうね。
――TVシリーズが終わってから、やりたいと考えていたんですか?
松尾監督:シリーズ構成が決まって、ある程度シナリオが上がったところで、その中でどのくらい遊べるんだろうかとか、どういう楽しいエピソードが作れるんだろうかなどと、いっぱい考えたんですが、全然入らなかったんです。収録したけど切ったもの以外にも、シナリオの最初の段階にはあったけど切ったものとか、ものすごくたくさんあります。僕の悪いクセなんですが、なるべく普段の会話で話が作りたいんですよ。そうなるとちょっとした話がすごく長くなるんですよね。ドラマCDの1話でも、最初の“紅香”が怒っているシーンとか、もっと短くできるだろと(笑)。僕どうしてもダメなんですよね。多少早口になってしまってもいいから、「あ、こういう風に怒る人いるよな」って聞いてる人にリアリティを感じてもらいたいんです。だから、なるべくスタッフやキャストが普段している会話を聞いてるんですよ。収録中も、聞いててなるほどなと思ったところ――こういうこと言うんだ、こういうこと考えるんだといったようなところは後半に生かしていたんですが、そうすると余計に僕が序盤で考えていたところはどんどん削られて行っちゃうんですよね……。
――そういった細かい部分が出したくて、プレスコ方式を取ったのでしょうか。
松尾監督:アフレコでもできたかもしれませんが、おそらくアフレコだともっと尺が必要だったでしょうね。前のセリフに食っていくところが、アフレコだとどうしても間ができてしまう、あるいは被らずにそのまま後に続く形になってしまうと思うんです。食っていくところをやろうとすると別録りになると思うんですが、別録りだとどうしても空気感が出ないし、僕らがタイムシートを作るのもとても困難だし。だから、ドラマCDではできても、アフレコだとできないなと思うことはあるんです。プレスコだからこのセリフの分量はいけると思ったことはありますが、プレスコだからこのやり取りをいれようとは思いませんでした。
――ドラマCDの収録をしてみて、いかがでしたか?
松尾監督:本編はドラマCDと同じような状態で録っていたので、その延長線上でできると考えていました。ただ、分量は多いだろうなとは思っていましたね。これを普通のドラマCDのような収録をしていたら全然入らないんだろうなと。でもそれは一度TVで見ていますから、たぶんできるだろうと思っていました。僕にセリフを切られるのは、彼女たちも慣れているでしょうし……。
――DVDにカットされたシーンが特典として収録されていますが、先ほどもカットしたシーンはすごく多いとおっしゃっていましたよね。
松尾監督:あのDVDの特典映像を役者に見せた時、僕ものすごいバッシングを受けまして。最初に「切ることがある」とは言っていたんですけどね。「このセリフは不要だった」とかコメントを書いたら、だったら録るなって言われました(笑)。でも編集して初めてわかることもあるんですよ。
――特典映像のコメントを見ていると、編集でカットした部分も多かったみたいですね。
松尾監督:音だけだったら成立する間、映像があったら成立しない間というのがやっぱりあるんです。考えてから答えるような部分では、間があるじゃないですか。でもそれが半秒なり1秒なりあった時、映像では致命傷になることがあるんですよね。そういう時は切ります。それを一番うるさく言うのは沢城なんです。彼女は終わった後、ヘッドホンで音声を聞いているんですが、自分の息が切れてセリフとセリフに間が空いているのをおそらく感じているんです。今日も収録が終わった後、「この間って後で切られますか?」って聞かれました。そういう意識を持っていてくれれば、映像のやり方、音声のみのやり方、舞台でのやり方――そういったことを考えるキッカケになると思います。今回のキャストたちって、僕に対して容赦なくしゃべってくれるので、僕も思っていることをストレートに言えるから非常にやりやすいですね。映像が前提にあって役作りをするやり方がきっちりできていると思います。プレスコって初期のころ「ドラマCDみたいなものですか?」と言われたんですが、そうじゃないということをはっきり形にできましたね。
――作品を作る上で、TVシリーズとドラマCDとの大きな違いはどこになりますか?
松尾監督:シチュエーションを絵で見せられないというところですね。集英社さんにも「セリフの最初に名前を言ってくれ」と言われたんです。やっぱり僕はアニメの映像を作るのがメインだから、あぁそうかと思うことがよくありました。ラジオドラマなどをやってる人を見ると尊敬しますね。音だけだから好きにできるとは言いつつも、表現が難しいところはたくさんあるなと思いました。
――絵をつけたくはなりませんか?
松尾監督:絵が頭にはあるんですけど、不思議と作ろうとは思いませんでしたね。プレスコでも最初に絵を描いてますから、セリフもその絵を意識するんですけど、ドラマCDは完全に頭を切り替えられました。映像があると「ここで向き合って、ここで振り向くんだ」みたいな指示をするんですが、ドラマCDだとそれを役者に投げられるんですよ。そういう意味では楽でしたね。
――TVアニメの収録から大分時間が経っていますよね?
松尾監督:そうですね。TVアニメの最終回の収録が、3月の頭でしたから。
――最終回を終えてから今日の収録の間に、「紅」という作品に対して考え方や向き合い方が変わった部分はありますか?
松尾監督:今やっているタイトルで仕事のやり方や、かかわり方をすごく変えたんです。そのせいで収穫もあったけどフラストレーションもあって。今の作品(「夜桜四重奏」)では音響監督を立てているんですが、そのことによるロス――抵抗みたいなものを感じています。でも、音響監督がいないと気づけない部分もあるし、いないからスムーズに行く部分もあるし。今回のドラマCDでは音響監督を立てていないんですが、やってみて、もうちょっと今のやり方と向き合ってみようと思うキッカケになりました。そういう意味では、(TVシリーズの最終回から)いい間があったなと思いますね。独善的に、監督が自ら音響監督をやって指示していると、他の人たちが意見しにくくなっちゃうんですよね。だから、自分の敷居を下げて意見しやすい現場を作ることがすごく大事なんだと実感します。でも下げすぎると役者にバカにされるんですよね(笑)。
――今回のこのドラマCDでやり残したことはありませんか?
松尾監督:やりたかったことはすべて盛り込みましたね。もう僕の中でこのキャラクターたちって自由に動いてくれているので、よほどムチャを言われない限りはいくらでもやれますね。でも今回の「温泉」のようなムチャ振りがあるからおかしな発想もできるんですよね。他の意見って必要なんだなと思います。
――TVアニメの続編についてはいかがですか?
松尾監督:まずは小説とマンガにぜひとも頑張っていただいて(笑)。
――もし続編ができることになったら、やる気のほどはどうですか?
松尾監督:きっとできると思います。もしやるとしたら、これまでと違うアプローチをしたいですね。TVシリーズの後の話もできるだろうし、そこで“紫”がどうやってかかわってくるのか考えるだけでもおもしろいです。“紫”が外に出てみんなとわいわい遊ぶといったことがまったく描けなかったので、やってみたいですね。
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| ▲九鳳院家に追われているため、“紫”は五月雨荘にかくまわれていた。 | ||
(C)片山憲太郎・山本ヤマト/集英社・「紅」製作委員会
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