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開発の苦労と秘話が満載!! 『フラジール』スタッフが語るクリエイターとは?

2008年12月29日(月)

 12月26日、バンダイナムコゲームス本社・未来研究所で「【フラジール】を創ったクリエイターたちが語る「課外授業」授業では学べない【ゲームづくりの現場】」という講演会が行われた。

『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』

 この講演会は、2009年1月22日発売のWii用ソフト『FRAGILE~さよなら月の廃墟~(以下、フラジール)』を手がけたスタッフたちによるクリエイタートークセッション。制作プロデューサー・川島健太郎氏をはじめ、アートディレクターの原田恵子さん、メインプログラマーの安井宗史氏(トライクレッシェンド)らが、「ゲームとは?」、「ゲーム作りに必要なものとは?」、「『フラジール』で苦労したことは?」などについて語り、ゲームクリエイターを目指す専門学校生や大学生を中心とした若い受講生たちが耳を傾けた。

 この記事では、川島氏がゲーム制作を語った1時限目、3人の座談会が行われた2時限目、とオマケで同社のゲームに関連したクイズ大会の模様をお届けする。

→座談会はこちらから

→インタビューはこちら

『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』
・川島健太郎さんってどんな人?
 バンダイナムコゲームスで14年以上、家庭用ゲームを企画しているクリエイター。入社して早々はスーパーファミコン『プライムゴール3』、ニンテンドー64『ファミスタ64』を手がけ、2000年に発売されたPS2『7(セブン)~モールモースの騎兵隊~』以降は、PS2『ヴィーナス&ブレイブス ~魔女と女神と滅びの予言~』、本作『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』とRPGを作り続けている。


◇◆◇◆1時限目「ゲームから体験へ」◆◇◆◇


■エンターテイメントはなぜ必要か

『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』
開発者ブログにも載っているが、『フラジール』はマスターアップを迎えて、発売を残すだけの状態だ。これまでの苦労や開発秘話を知りたい人は、開発者ブログをチェックしよう。

 暗闇に包まれたステージを、『フラジール』さながらに受講生たちが懐中電灯で照らす、という演出から始まった講演。登場した川島氏は、講壇をスルーして傍らのオフィス用チェアに腰を下ろすと、ラクにいきましょう、と彼・彼女らに語りかける。家庭用ゲームの制作を、「体験によって、ユーザーに何らかの気持ちを味わってもらうゲームのデザイン」と結論した氏は、「そもそもエンターテイメントとは何か?」という話から切り出した。

 川島氏は、入社して5年くらい経った時期、「エンターテイメントはなくても生きていける。俺のやってることって無駄なんじゃないか?」という疑問にぶち当たったという。そこで辞書を調べると、「人を楽しませること」という答え。それまで「自分がおもしろい」ゲームを作ってきた氏は、「エンターテイメントが自分以外の誰かを幸せにするもの」なことに気付いて、ゲームを作ることの意味を再認識し、以来「できる限りたくさんのお客様に楽しんでもらうため」のゲームデザインを行ってきたそうだ。

『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』 『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』
極論すれば、ゲームを作る人間がどんなに不幸であっても、お客様が幸せであれば構わない、という川島氏。クリエイターの幸せは、ユーザーが喜んだ時に初めて訪れるのだと語る。


■ゲームではなく楽しい時間を売る

 すると話は当然、「お客様が楽しいゲームは何か?」ということになっていく。ここで挙げられたのが、日欧の家庭用ゲームユーザーに対する調査の結果で、それによるとユーザーは「1、ストーリー・キャラクター」、「2、世界観」、「3、ゲームシステム」の順番でゲームを認識するとのこと。

 『7(セブン)』を例に挙げた川島氏は、以前はゲームシステムを積み上げることで楽しんでもらえるゲームができると考えていたそうだが、それとは別に、ゲームシステムを重視したやり方に行き詰まりを感じていたという。

『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』
続いて、「忘れもしない、銀座にラーメンを食べに行った日……」と切り出した川島氏。氏は、食事や自動車といった商品が、そのもの自体だけではなく、それを買うことで得られた充実した時間こそが、お客の求める本質だと語る。

 その行き詰まりを打破したのが、行列のできたラーメン屋とガラガラのラーメン屋の2つを見比べた時。「せいぜい違うのは味くらいで、スープに麺の入っているラーメンというモノ自体は変わらないのに、なぜこうも人気が違うのか?」と疑問を感じた氏だったが、それは「お客はラーメンそのものだけを買っているのではない。評判の店に並んで入って、そこのラーメンを食べておいしかった、という満足した時間に金を支払っている」のだという答えに至ったそう。商品の物理的な充足ではなく、商品を買って得られた時間――「体験」に金を支払っているのだと。

 であれば、ゲームの仕組みやシステムは、ユーザーに楽しんでもらうための手段に過ぎず、ゲームを作る目的は「お客様にどんな気持ちになってもらうか?」、ユーザーの側からすれば「このゲームで遊ぶと、どんな気持ちを体験できるのか?」になると、川島氏は説明する。

『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』 『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』
ユーザーの感じる気持ちは一言で表せる方が、おもしろいゲームになるという。川島氏が例に挙げたのは、『バイオハザード』と『フラジール』。前者は「怖い」、後者は「切ない」と、たしかにわかりやすい。


■体験が仮想体験=ゲームを作る

 ユーザーに気持ちを生じさせるには、作り手が実際に体験して感じた気持ちをゲームに反映させるのが一番、ということで何度もロケ取材が行われたのが『フラジール』だ。

『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』 『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』
『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』 『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』
『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』 『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』
鬼怒川の川治ダムから、見学日に子供用の自転車や乳母車が出てきた謎の廃墟、首都圏外郭放水路など、さまざまなスポットで行われたロケ取材。首都圏外郭放水路などは、見学が比較的容易なので、興味があるなら見学を受け付けている今年度中に行ってみてはどうだろうか?

 「実際に行って感じたのが、とても足音が響くこと。こういう場所は行ってみないと、調べただけでは気付かないことがたくさんあります」と川島氏。見た目の雰囲気がマップグラフィックに反映されたのはもちろん、川島氏こだわりの環境音にもロケ取材の成果が反映されて、全体的に臨場感がかなり自信の持てるクオリティになったそうだ。

『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』 『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』
体験から生まれて、体験を提供するゲーム『フラジール』。クリアするまでには、30時間ほどかかるという。人生の中でその30時間はとても貴重で、その時間を有意義にすることが川島氏の目的だと話していた。

 こうして実際の「体験」が生んだ作り手の「気持ち」が、ゲームという「体験」を作り、それを遊んだユーザーは「気持ち」を生じさせる。昔は記号で表現していたゲーム。今では、そしてこれからはもっと、体験をベースとして作り、そこで感じたことをユーザーに仮想体験をさせるゲームが、おもしろい作品になると川島氏は受講生に力強く語った。

『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』 『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』
川島氏の持論ともいうべき「ゲームから体験へ」。ユーザーはおもしろい体験をゲームに求め、作り手は体験からおもしろいゲームを生み出す。「技術は後でもいいから、まずはいろいろな体験をしてみること」というのが川島氏から受講生に贈られた言葉だ。


■川島健太郎が「今」考えること

 また、川島氏が現在まとめている最中の考えも披露された。それは「アクションゲームから、リアクションゲームへ」という主流の推移。これは、これまで通り「超人の主人公が大活躍」するようなゲームでユーザーが共感できるのか? という疑問から生まれた考えだ。

 ユーザーに体験を提供するのが現在とこれからのゲームであるのは、上にも述べられた通り。ならば、主人公は一般の人と同じ目線が望ましく、「超人が行動をもって能動的に物語を進めていく」ゲームより、「ある状況に置かれた主人公が、そこからどう行動していくか?」を自らの体験として遊べるゲームの方が共感できる、と川島氏は話している。

『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』 『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』
ちなみに『フラジール』は、この考えを試行した第1作目だという。マンガなどの娯楽媒体では、もう随分前から言われ、同時に流行ってきた普通の人と等身大の「巻き込まれ型主人公」の話が、ゲームにもようやく訪れたのではないか、という川島氏の見解だ。


■RPGってお金がかかる

 セッションの最後は、ゲームのマネージメント部分を含めた話。川島氏は、ゲーム作りが、求められる内容の変化だけではなく、プロジェクトの規模もまったく違うものになっていると語る。例えばスーパーファミコンのソフトであれば、半年の期間で数千万円かければよかったものが、『フラジール』では約2年をかけて数億の金が動くビッグプロジェクトになっている。多数の要素を必要とするRPGでは、本気でおもしろいものを作ろうとするとこのプロジェクト規模になるのをを避けられず、今や失敗できないものになっているという。

『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』 『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』
ゲームで収入が生まれるのは、ソフトの利益や関連アイテムの利益など最後の段階のみ。開発や物流、広告宣伝など工程が多く、関連する労働力も多いために、ゲームが出るまでは膨大な赤字が続く。

 以上を踏まえて川島氏が言うのは、今のゲーム作りを感性、センス、才能だけで行ってはならないということ。確かにそういった部分が必要になるところもあり、川島氏が自分である程度のシナリオを書いた『フラジール』にも氏のテイストが反映されていると語るが、5億、10億の投資を必要するものに感覚を持ち込むことはできないと強く話している。

『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』 『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』
RPGを企画する際には、事実に基づいた考察を行った上で、そこにクリエティブを持ち込むよう強調する川島氏。市場調査を徹底する北米メーカーなどは、上の写真のように細かい分析を行うのが常だと例を示す。


■ゲーム作りは「なぜ」と「だから」

 川島氏はまとめとして、専門的な知識よりもまず、たくさんの体験を蓄積――世界中にある楽しいことと、その理由を1つでも多く見つけるよう受講生に話した。その上で、体験が「なぜ」おもしろかったのか考えて、それが分析できたら、何々「だから」おもしろかったという話を誰かにすること。「なぜ」でおもしろさの分析力を、「だから」でおもしろさを表現するコミュニケーション能力を鍛えることが、必ずゲーム作りに生かされる。その言葉に深く頷いた受講生たちは、その後の質疑応答でも積極的に質問を行っていた。

『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』 『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』
「なぜ」と「だから」で、より大事なのは「だから」だという。今のゲーム開発では、大人数のチームで作るのがほとんどなため、コミュニケーション能力が特に必要とされるそうだ。

→次頁は、スタッフが語る『フラジール』開発の苦労と秘訣!

(C) 2009 NBGI

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