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2009年2月4日(水)

墓穴を掘るのもまた楽しい? すぎやまこういちさんとTMBQのコンサート開催

文:電撃オンライン

 東京・勝どきにある第一生命ホールにおいて2月26日に、東京メトロポリタン・ブラス・クインテットの演奏によるコンサート公演“すぎやまこういちと東京メトロポリタン・ブラス・クインテット”が開催された。

 このコンサートは、『ドラゴンクエスト』シリーズの音楽を手掛ける作曲家・すぎやまこういちさんが制作した楽曲を、東京都交響楽団のブラスセッションを担う5名で構成された金管五重奏団・東京メトロポリタン・ブラス・クインテットが演奏するというもの。

 公演は2部構成になっており、第1部では、競馬場で流れる楽曲やTVアニメ『伝説巨神イデオン』のエンディング曲『コスモスに君と』などのヒット曲、そして本公演が初公開となる新曲『金管五重奏組曲~東京メトロポリタン・ブラス・クインテットのために~』などが演奏される。第2部は、3月28日に発売される最新作『ドラゴンクエストIX 星空の守り人(以下、ドラゴンクエストIX)』の『序曲』や、『ドラゴンクエストV~天空の花嫁~(以下、ドラゴンクエストV)』の楽曲など、『ドラゴンクエスト』ファンにはたまらない楽曲で構成されている。

“すぎやまこういちと東京メトロポリタン・ブラス・クインテット”

 公演前に行われたインタビューで、すぎやまさんは本日のコンサートについて「僕の作曲家としてのいろいろな面を全部やる、総ざらいのような感じですね」と語り、「いつもと違うところは、いわゆる“純音楽”と呼ばれる新曲の初演があるところです。僕がやってきた音楽――『ドラゴンクエスト』をはじめとするゲームの音楽はもちろんのこと、CMの曲、ヒット曲、映画音楽、競馬場の音楽、その他さまざまな音楽、これはすべて注文を受けて作った音楽、一般的には実用音楽と言われてるものなんです。純音楽というのは誰の注文も受けないで自主的に作った音楽のことを言うんです。今日演奏する『金管五重奏組曲』は、東京メトロポリタン・ブラス・クインテットの素晴らしい音楽性に触発されて、彼らのために書いた純音楽です。今日が初めて演奏になるので、わくわくしています。2年ぐらい前から作り始めて去年完成したんです」と、うれしそうに話していた。

 本日の公演には『ドラゴンクエストV』の楽曲が多く盛り込まれており、すぎやまさんは「『ドラゴンクエストV』は、僕がもっとも多くクリアしたゲームですね(笑)。最初出た時、2回はやりましたね。浮気者のすぎやまとしては、ビアンカとフローラ、絶対両方と結婚するし。リメイク版が出たら3人になっちゃったから、これは3回やらないとしょうがないと思って(笑)。3回やりましたね」と本作への思い出を語っていた。

 『ドラゴンクエストIX』の『序曲』がストリーミング再生(※事前に録音した音源を使用すること)されることについては、「東京都交響楽団の演奏で、『序曲』だけはレコーディングしました。これはもう楽しみですよ。東京ゲームショウ2008で『IX』の『序曲』のイントロが変わったのを聴いて、インターネットなどで反響があったのを見ております。『IX』は携帯機で出るはじめての『ドラクエ』ということで、堀井さん自身が「新たな『ドラゴンクエスト』の始まりだ」というイメージを持っていらっしゃったんですよ。なので『序曲』を新しいものにしたいということでした。『III』から『IV』になった時、『序曲』もかなり大きくイメージが変わりましたよね。それと同じように、今回も新たなイメージがほしいということになったんです。これがねー、苦労しました。新たなイントロにいいのが浮かぶまでずいぶんかかって試行錯誤したんですが、最終的に「よし」と思えるものができました。スタッフの皆さんにも気に入っていただけてほっとしましたよ」とコメント。新たな『序曲』のイントロは、今回のコンサートでも演奏された。

 『ドラゴンクエストIX』はもうプレイしましたか? という記者からの質問には「僕もデバッガーの1人ですから、当然プレイしました。音についてのデバッグ作業を専門にやるスタッフって少ないんですよ。だから音に関するデバッグとしては、僕が頑張らないとと思いまして。ゲームが終わった後のスタッフロールにも、デバッガーとして僕の名前が入っています」と笑いながら話していたすぎやまさん。実際にゲームをプレイしてみた感想は、「これまでのシリーズはTVの前に座ってしかできなかったんですが、今回は仕事の合間などちょっとした時間にどこででもできるというのはいいなと思います。画面が小さいかなと心配だったんですが、やってみると全然そんなことはありませんでした。上下の2画面もうまく使っていますし。あとはそうですね、今ゲームって年配の方もプレイされるじゃないですか。そういう方を慮って、文字のフォントを大きくしてくれているんですよ。ゲームによっては、「おい! 年寄りを労わってないじゃない。読めないよ!」というものがあるんですね(笑)。でも、『IX』は僕でもやれる大きさになっている。『ドラゴンクエスト』シリーズはユーザーフレンドリーなところがいいですね」と、すぎやまさんならではの率直な印象を答えてくれた。

 最後にすぎやまさんは「『ドラゴンクエストIX』には、『I』から『VIII』までの曲が出てきます。そして新曲もあります。新曲だけで、CDにしたら2枚組になるほどありますよ。そんな新曲の中には、先ほど言った注文音楽じゃない音楽――僕自身がゲームを遊んでみて「このシーンにはこのシーンのための音楽がほしい!」と思って、堀井さんにお願いして作っちゃった曲もあります。我ながら相当気合い入っているなと思いますね(笑)。自分で申し出て曲数を増やしてしまい、墓穴を掘っちゃったんですが、それがまた楽しくもあります」と、『ドラゴンクエストIX』の曲についてもエピソードを教えてくれた。シリーズおなじみの曲については、「名前の入力の時の曲や、カジノの曲、海に出た時の曲……こういった曲も当然出てきます。こういう定番の曲が出てくると、「使い回しだ」、「手抜きだ」っておかしなことを言う人がいるんですよね……。でも『序曲』を使い回しだって文句言う人はいないんですよね(笑)。そんな定番の曲も、『IX』の曲もバッチリ入っていますので、楽しみにしていてください」と気合タップリに語っていた。

 すぎやまさんは、今後も全国のさまざまな会場で公演を控えている。8月5日に東京芸術劇場で、8月29日に京都コンサートホールで、9月21日には札幌コンサートホール kitara 大ホールでそれぞれコンサートが行われる。また9月12日・13日には東京・五反田のゆうぽーとホールで、バレエ『ドラゴン・クエスト』の公演も予定されている。すぎやまさんの音楽に触れてみたい人は、ぜひ足を運んでみるといいだろう。

“すぎやまこういちと東京メトロポリタン・ブラス・クインテット”
▲すぎやまさんが持っているのは、本日発売のCD『金管五重奏によるドラゴンクエスト Part.III』。『序曲のマーチ』をはじめとする全15曲が収録されている。

■“すぎやまこういちと東京メトロポリタン・ブラス・クインテット”演奏プログラム
<第1部>
・G1のファンファーレ
・モナリザの微笑
・コスモスに君と
・レット・イット・ビー
・金管五重奏組曲 ~東京・メトロポリタン・ブラス・クインテットのために~
 I 都会のヴィヴァーチェ
 II 廃墟の静寂
 III 子守唄と夢のかけら

<第二部>
・序曲 IX(『ドラゴンクエストIX』)
・序曲のマーチ(『ドラゴンクエスト』)
・王宮のトランペット(『ドラゴンクエストV』)
・高貴なるレクイエム~聖(『ドラゴンクエストV』)
・ヤンガス少年(『ドラゴンクエスト 少年ヤンガスと不思議のダンジョン』)
・ポッタル(『ドラゴンクエスト 少年ヤンガスと不思議のダンジョン』)
・結婚ワルツ(『ドラゴンクエストV』)

■『第23回ファミリークラシックコンサート~ドラゴンクエストの世界~』
【開催日時】2009年8月5日 18:00~
【開催会場】東京芸術劇場
【演奏】東京都交響楽団
【指揮とお話】すぎやまこういち

■『トーセ プレゼンツ ドラゴンクエスト スペシャルコンサート』
【開催日時】2009年8月29日 14:00~
【開催会場】京都コンサートホール
【演奏】京都市交響楽団
【指揮とお話】すぎやまこういち

■『「すぎやまこういちがやってきた!」~ヒット曲からドラゴンクエストまで~』
【開催日時】2009年9月21日(※開演時間未定)
【開催会場】札幌コンサートホール kitara 大ホール
【演奏】東京交響楽団
【指揮とお話】すぎやまこういち


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