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2009年2月18日(水)

『眼球奇譚』で電撃文庫MAGAZINE賞を獲得した16歳・鷹羽知先生インタビュー

文:電撃オンライン

 短編小説『眼球奇譚』で、第15回電撃小説大賞・電撃文庫MAGAZINE賞を受賞した鷹羽知先生のインタビューをお届けしていく。

▲写真は、インタビューに答えてくれた鷹羽先生(写真左)と、『眼球奇譚』が掲載されている『電撃文庫MAGAZINE Vol.6』の表紙(写真右)。ちなみにVol.6はすでに発売されているので、まだ読んでいない人は書店へGo!!

 『眼球奇譚』は、19世紀のロンドンを舞台に、切り裂きジャックの逸話を盛り込んだ作品。選考委員の高畑京一郎先生に、「ストーリーとイマジネーションの密度が圧倒的」と高く評価された。今回、そんな鷹羽先生と、担当編集の黒崎泰隆に話を伺ったので、興味がある人はご一読いただきたい。

――最初に、この話を書こうと思った経緯を教えてもらえますか。

鷹羽先生:もともと『眼球奇譚』は、投稿用に書いた話ではなかったんです。学校で所属している部活動の部誌に載せるためのものだったんです。それを、電撃大賞に送ったんです。

――電撃大賞に送ろうと思った理由は?

鷹羽先生:電撃大賞には、一昨年も投稿していて、投稿できないまでも作品を作るための努力はしていたんです。ですから“とりあえず何かを送ろう”というのが、毎年4月の習慣になっていまして。でも、昨年は長編を用意できなくて、いくつか書いた短編の中で自分の納得した形になったのがこの作品だったんですね。

――ちなみに、いつごろから電撃大賞に応募していたんですか?

鷹羽先生:途中でブランクがあったりするんですが……第12回から参加していますね。地味に、長いといえば長いのかもしれません。最初は、引っかかりもしませんでしたけど。

――なるほど。それで第15回にして受賞したワケですが、この作品を書く上で苦労したところは?

鷹羽先生:短編ですとプロットを立てずに書いていく人もいますけど、この作品はかなり情報量が多く脱線の少ない話だったので、プロットはしっかりと用意してから書き始めました。ですから苦労したところを挙げるとするなら、「プロットを立てるところ」ですね。あとは資料集めですね。

――資料とは、19世紀のロンドンに関するものですか?

鷹羽先生:そうですそうです。作中に切り裂きジャックが出ていますが、史実だとどうだったんだろうか? と思って。まずはウィキペディアを読んでみたり(笑)。

――なるほど(笑)。プロットに苦労したとのことですが、実際に制作に要した時間はどれくらいだったのでしょうか。

鷹羽先生:夏休み半分くらいだから、半月ですね。ゆっくり書いていました。

――切り裂きジャックを登場させたのは、なぜでしょう?

鷹羽先生:最初に「眼球が出てくる暗い話を書こう」というアイデアがあって、そこに引っかかりになるようなものを入れようとして19世紀を、そして19世紀ということで切り裂きジャックを入れました。

――実際に『眼球奇譚』を読んでみて、猟奇的なイメージを持たせるためということもあるように思えたのですが。

鷹羽先生:もちろん、そうした理由もあります。もう1つ理由を付け加えるとすれば、実際にあったもののほうが描写しやすそいと思ったからですね。

――お話を聞いていますと、最初から「眼球が出てくる暗い話」にしようと考えていたとのことですが、そもそも、眼球がお好きだった……んですか?

鷹羽先生:う~ん、お好きだったんだと思います(笑)。ハイ。

――やっぱり、好きだったんですね(笑)。

鷹羽先生:いえ、まぁ……いろいろとアヤしい趣味を持っていたりするわけなんですが(笑)。好きなものばっかりを小説にしているもので……。

――他にはどういう作品を書いているのでしょうか。

鷹羽先生:最近だと、暗めでグロい話が好きでよく書いているんですが、たまに恋愛モノに挑戦して挫折したり。なんにでも手を出すタイプなんですよ。

――恋愛モノですか! 『眼球奇譚』のイメージとは、だいぶ違いますけど……ちょっと読んでみたいですね。

鷹羽先生:でも周囲からは、「お前には青春っぽい恋愛モノなんかちゃんちゃらおかしいぜ!」なんて言われちゃったりするんですけどね。「黒い小説と白い小説なら、黒いほうがあってるよ」なんて言われて、「じゃあ黒いやつ書いてみるよ!」みたいな感じですね。

――はたから聞いていると、ずいぶんな感じですけど。ちなみに、今回の受賞について周囲の人たちはなんと言っていましたか?

鷹羽先生:後輩に、「作家って、2次元と3次元のボーダーぐらいにいるけど、先輩もそうなんですよね」って言われましたね。

――そう言われた時、鷹羽先生はどのように返しましたか?

鷹羽先生:「そ、そんなもんか……」と(笑)。あとは先輩が、大賞を受賞した川原さんのファンで、夜中に突然電話がかかってきて「スゲー怒りがこみあげてきた!」と言われました(笑)。

――同期の先生方と仲がいいと聞いていますが?

鷹羽先生:そうですね。年は離れていますけど、皆さん話しやすいですよ。サグさんは変な人です(笑)。

――何かおもしろいエピソードはありますか?

鷹羽先生:私が不利になりそうなので、具体的な話は控えます(笑)。皆とはネットでやり取りをしているのですが、中でもサグさんはおもしろい人ですね。向こうは向こうで私のことを変な人だと思っているんじゃないかと。そうそう! 「電撃オンラインのインタビューは変なところが採用されるよ!」って忠告されたので、注意しながら話します(笑)。

――えっ!? そんなウワサが流れてるんですか?

鷹羽先生:サグさんに言われましたよ。

――蒼山先生の時のインタビュアー(カネキング)は、筋金入りの変態だったので。今回は別の人間(てけおん)なので大丈夫ですよ。

鷹羽先生:サグさんも「波長が合ってヤバかった。まる裸にされた……」って言っていましたね。

――そういえば、授賞式で蒼山先生と「ロリはいくつから?」という話で盛り上がっていたと聞いていますが……。

鷹羽先生:……そんな話をしていましたね。確かに。

――どう答えたんですか?

鷹羽先生:私に不利な話ですよね(笑)!! 作品の話に行きましょう。

――では、残念ですが作品の話に戻りまして……。受賞の後に改稿作業に入ったかと思いますが、そちらはスムーズに進みましたか?

鷹羽先生:ちまちまと文章を直していましたね。書いたのが一昨年の夏で、直しを入れたのが去年の秋ごろなんですよ。1年近く経っていたせいか、私の中で文章が古くなってしまっていて、全体的に直しました。

――特にどのあたりを重点的に直したのでしょうか。

鷹羽先生:1文における描写の情報量が多く、イライラして減らしたりしましたね。期間にすると2カ月くらいですか。ちょっとグロい描写が増えたりしました。

黒崎:一番はラストですね。

鷹羽先生:そうですね。話の筋自体は変わっていませんけれど。

――なるほど……思いっきりネタバレな部分なんで、そこは実際に読んでいただきましょう。

鷹羽先生:そうですね(笑)。直しの話だと、静月さんが12月ごろに「矛盾が見つかった~」なんて言っていて、大変そうだなって思いました。年末の大掃除しながらネタを考えていたらしいですし。私は私で、体育の授業を受けながらネタを考えてましたけ。

――蒼山先生はお遍路参りをしてネタ考えていたようですしね。

鷹羽先生:おもしろいですよね~。ちなみに丸山さんと山口さんはネットだとひっそりとしています。実際に話すとおもしろいんですが。バカみたいに騒ぐのは、私と川原さんとサグさんですね。って、また作品の話と外れてきましたね(笑)。

――ではまた話を戻しまして、注目してもらいたいシーンはどこですか?

鷹羽先生:オチ……ですかね?

黒崎:えっ!? ……眼じゃないんですか?

鷹羽先生:あっ! 眼ですね! 眼球は好きなので、書いていて楽しいですね。

――では、受賞の決め手になったポイントは、どこだと思いますか?

鷹羽先生:やっぱり、短編として密度が濃かったことなんじゃないかと思います。モチーフが変わったテイストのものということもあるかと思いますが。そういうテイストになったのは、そもそもこの作品が電撃大賞に送ろうと思って書いたものじゃないからなんでしょうけどね。私、好きなものしか書けないんです。そうじゃないとあまり楽しめなくて。今、長編を書いていますけど、そっちも楽しいです。

――長編って、それは新作ですか?

鷹羽先生:ええ。そうです。

――どんな話になるんですか?

鷹羽先生:3つくらいポイントを取り出すとするなら「吉原」、「花魁」、「蛇」かな?

黒崎:えっ! 蛇なんて出てくるんですか!?

鷹羽先生:そのうち出そうかと。全体の雰囲気は赤い感じですね。

――赤いイメージで遊郭と聞かされると、火事といったイメージが浮かんでくるんですが……。

鷹羽先生:女の情念が……みたいなことですよね。そうではなくて、吉原が、軍隊のような力を持っていて、独立都市のようになっている設定なんですよ。女の情念的な話はないです。

黒崎:えっ!? そうなの!?

――なんだか担当さんも聞いていないような話らしいですが……、実際に読むのを楽しみにしています。

鷹羽先生:頑張ります(笑)。今、原稿の量が大変なことになっていますが。

黒崎:川上先生ほどではないですけどね。新人のデビュー作品にしては、多いほうだと思います。夏ごろを目処に出す予定なので、『眼球奇譚』を読んでくれた人は、期待していてください。

鷹羽先生:グッバイ睡眠!! って感じで書いています。

――授賞式の時には、受験が控えているからどうしようかとおっしゃっていた記憶があるんですが、受験勉強のほうはどうですか?

鷹羽先生:気付いたら長編書くことになっていて、「アレ?」って感じです。ちゃんとやっていますよ!

――それは勉強を?

鷹羽先生:勉強じゃないです(一同笑)。学校から17:00ごろに帰ってきて、それから22:00くらいまで寝て、朝まで実質8時間くらい書いてますね。

――ぶっ続けですか?

鷹羽先生:いえ、夜中にアニメ見たり。

黒崎:えっ!? 文章書いてないじゃん(笑)!!

――鋭い突っ込みが入りましたよ。

黒崎:でも、実際に改稿に入ったら、そんなヒマはないと思いますけどね。

鷹羽先生:……精進しま~す。

――先ほど黒崎さんが夏に発売と口にしていましたが、実感はありますか?

鷹羽先生:う~ん、あまり想像できないですね。「そんな立派な場所で発表してしまっていいの?」みたいな感覚なんです。

――続いて、好きな作品を教えてもらっていいですか?

鷹羽先生:船戸明里先生の『Under the Rose』(幻冬舎刊)ですね。すり切れるくらい読んでいます。テスト中にも読んでいますね。時折暗い展開があるんですけど、「この暗いのステキ」なんて思っていたら、ここに立っていたって感じですね。

――暗めな作品は、もともと好きだったんですか?

鷹羽先生:本棚を見ると、そんなこともないんですけどね。マンガは少年マンガも少女マンガも、青年マンガもいかがわしいマンガも読みます。

――先ほど、アニメも見ていると言っていましたが、どんな作品を?

鷹羽先生:その期に放映されるものは、とりあえず1話はチェックします。その後で、妹と会議を開いて継続する作品を決める感じ。実質見ているのは、週に1、2本です。夜に気分転換がてら見る感じですね。

――小説は誰の作品を読んでいますか?

鷹羽先生:全然読みませんね。2008年は両手の指の数を超えるか超えないかくらいです。

――文章を書くサークルに入っていることを考えると、それはちょっと意外でした。

鷹羽先生:昔は、「鷹羽は歩きながら本を読んでる」と言われるくらいに読んでいたんです。でも、あまり好みでない文体に出会うと頭の中で組み立て直しながら読んじゃうんですよ。読み方が独特なんじゃないかなっていうのが、言い訳です。

――昔からそうだったんですか?

鷹羽先生:創作を始めてからですね。それからは、そんな感じです。

――ペンネームの由来を教えていただけますか?

鷹羽先生:私の家紋が由来なんです。実は剣道をやっていて、“鷹の羽違い”がそうなんですけど、そこからきています。知は、自分の名前を一文字もらいました。それまで使っていた自分のペンネームのイタさに気付いた時期だったので、この名前にしました(笑)。

黒崎:それまでのペンネームはなんだったんですか?

――なんだったんですか?

鷹羽先生:まーまーまーまー。内緒ということで(笑)。

――ちょっぴり残念ですが……今度は作品のタイトルについて伺います。『眼球奇譚』というタイトルは、すでに綾辻行人さんの作品で出ていますが。

鷹羽先生:改稿の際にも直そうとは言われませんでした。書き終わって、タイトル付けて、しばらくしたら同じタイトルの作品があるって気が付きました。

黒崎:実際に本にすることがあるとしたら、さすがに変えなければいけないと思うんですけどね。とりあえず、もともとのタイトルがこうだということと、雑誌に載せるのであれば直さなくてもいいかと考えて、今回はこのタイトルのまま電撃文庫MAGAZINEに収録しました。

鷹羽先生:綾辻先生の作品はホラーなんですが、私の作品は、ホラーってワケではないんですよね。でも時雨沢先生が、「読んでいて怖かった」とおっしゃっていたので、少し意外でしたね。

――眼球自体、グロテスクなモチーフですからね。

鷹羽先生:時雨沢先生のコメントを聞いて、「眼球ってホラーのモチーフだったんだ」と気付いたくらいです。私自身の中でそんな意識はまったくありませんでした。

――なるほど。では、今度はイラストについて伺っていきます。もうイラストはご覧になりましたか?

鷹羽先生:はい。

黒崎:イラストは、フカヒレ先生が担当しています。商業で描くのは、この作品が初めてになりますね。

鷹羽先生:小説を書く時に、明確なビジュアルを決めずに進めていくので、ビックリしたというのが強いですね。

――前もってイメージを伝えたりはしなかったんですか?

鷹羽先生:そうですね。黒崎さんから突然見せていただいた感じです。

――ここまでいろいろな質問に答えていただきましたが、最後に読者の皆さんにひと言お願いします。

鷹羽先生:そういう話になりますよね~。この質問が一番答えづらいですね(笑)。楽しむ……ような小説じゃないですもんね。雰囲気を出したくて書いた小説なので、雰囲気を楽しんでいただければと思います。

――ありがとうございました!

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データ

▼『電撃文庫&電撃文庫MAGAZINE』
■メーカー:アスキー・メディアワークス
■発売日:2009年2月10日
■価格:720円(税込)
 
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