2009年4月4日(土)
■語られない設定もしっかり作られています
──8話で出てきた『ライドバック』の前史にあたる“アリゾナ戦役”ついて伺えますか? 原作ではあまり描かれていないので、ファンとしてはやはり気になるところです。
高橋:まず、アニメ版も原作同様、“超大国が滅びて、日本は大地震があった”という世界設定を踏襲しています。ただ、そのきっかけは大きな戦争とではなく、今の経済破綻の延長に自壊する超大国を想定してます。たとえばドルが崩壊して世界が大混乱になる、その混乱に乗じて一介のテロ組織に過ぎなかった“GGP”が頭角をあらわして、超大国にとどめをさすことになった。というような世界を設定しました。
──それが“アリゾナ戦役”というわけですね。
高橋:そうです。それで、その時に“ライドバック”が使われたらしい。みんな“アリゾナ戦役”という名前はなんとなく知っているのですが、“ライドバック”の存在までは知らない。“ノルマンディ上陸作戦”という名前くらいは誰でも知っていると思うのですが、そこで使われた兵器の名前まで普通の女子大生は知らない。それに近い感覚だと思います。
──“ライドバック”のおかげで“GGP”はアメリカに勝てたという感じなのですか?
高橋:“アリゾナ戦役”は、軍事的な意味合いそのものよりも、アメリカの軍事拠点を押さえたという“組織としてのPR”の面が強い設定です。これで勢いに乗った“GGP”が、結果として超大国を滅ぼして世界を牛耳ったという感じですね。
──設定的に、“ライドバック”は軍事目的で“GGP”が開発したものなのでしょうか?
高橋:“ライドバック”自体は、元からあったという設定です。キリー・マッキャノンという女性の天才科学者が、すでにあった“ライドバック”にすごく革新的な制御系エンジンを搭載して、戦闘で使えるレベルにした。名前でしか本編に登場しないんですが…。その博士がとある軍事拠点に幽閉されていた、その拠点を押さえると同時に博士を助けるというのが“アリゾナ戦役”のもう1つの目的でした。
──この“アリゾナ戦役”には、“ライドバック”部の部長・岡倉も参加していたんですよね。
高橋:岡倉は、戦争後に日本に帰ってきて、博士から受け継いだ“ライドバック”の技術を研究しているという設定です。博士が開発したプログラムの流れをくんだのが“フェーゴ”なのですが、それにたまたま“ライドバック”部に入ってきた琳がうっかり乗ってしまって、さあ大変みたいな状況だったのが1話です。
──かなり細かいところまで設定されているようですが、どこかで公開される予定だったのでしょうか?
高橋:実は、初期段階ではその辺を説明するために0話を作るという話もありました。ですが、放送日が決まって本編の制作が本格化していく中で結局なくなってしまいました(苦笑)。
──その0話は、放映前にやる予定だったのですか?
高橋:そうですね。本編へのつかみとして、3DCGを使ったアクションを見せようという話だったのですが、主人公である琳が0話そのものにほとんど絡んでこないのでやめましょうという話になりました。ただ、ひょっとしたらDVDのオマケになんらかの形で付くかもしれません(笑)。
──それはちょっと楽しみですね。さて、長々とお話をお聞きしてしまいましたが、最後に監督的に注目してほしいポイントについて伺えますか?
高橋:スケジュールの限られたTVアニメで3DCGを使用する技法として何か新しいことができないかなという思いで『ライドバック』でいろいろとチャレンジしています。ぜひそのあたりに注目していただければうれしいですね。
(C)カサハラテツロー・小学館/「ライドバック」製作委員会
■TVアニメ『RIDEBACK(ライドバック)』