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2009年3月25日(水)

【うみねこEP4対談】謎解き部と物語部を両立させられたらいいなと思っています

文:電撃オンライン

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――それを危惧して一度『Land of the golden witch』を止めたのでしょうか?

竜騎士07恐らく第3話で発表していたら、その段階にも至らない方が続出したと思います。私のナビゲーションが悪く、『EP2』で多くの方を迷走させてしまっていたので。いくらダンジョンを作るのが楽しいからといって、本気で迷わせる地下ダンジョンを作ったらダメですよね(笑)。もちろん簡単すぎるダンジョンは遊んでいておもしろくないですが、本気で難解なダンジョンは遊んでいてウンザリしますよね。『ファンタシースターIII』(1990年にセガが発売したメガドライブ用RPG。正式タイトルは『時の継承者 ファンタシースターIII』)はもう一度遊んでもいいと思うのですが、『ファンタシースターII』(1989年にセガが発売したメガドライブ用RPG。正式タイトルは『ファンタシースターII 還らざる時の終わりに』)をもう一度遊ぶのは、私はちょっと遠慮したいです(笑)。

BT『II』のダンジョンは凄まじかったですね。

竜騎士07『II』の最初のダンジョンの難易度は、『III』の最後のダンジョンより高いと思いますよ。部屋と部屋が通路でつながっているような一般的なダンジョンではなく、全部“本気ダンジョン”でしたね。幼稚園児が読むような迷路の本に描いてある完全な迷路で、しかも多重構造でアップダウンを繰り返すという……。

BTそうそうそうそう。どの階層もかなり複雑で。

竜騎士07困ったことに階段の上り下りではなくテレポータという考えで、階層すら把握できないんだよね。

BTまたマップがデカイんですよ。1つ1つのダンジョンが全部。

竜騎士07エンカウント率も高くて、ヘタに戦っちゃうと「どっちに向かって歩いてたっけ?」となるんです。さらに画面の手前にパイプなどのグラフィックがあって、画面を見づらくしていたんですよー。

BTまぁダンジョンの複雑さは、ある種の名物ではあったのですが。

竜騎士07それが『III』になったらすごく簡単になって(笑)。

BTそうですね。それはやはり、ちょっと難しすぎたと判断されたのでは。

竜騎士07『ファイナルファンタジーIII』(1990年にスクウェア(現スクウェア・エニックス)が発売したファミリーコンピュータ用RPG)のラストダンジョンも、最後のセーブポイントからラスボスまで1時間30分くらいで、即死級の中ボスが4、5匹いて……。それが『ファイナルファンタジーV』(1992年にスクウェア(現スクウェア・エニックス)が発売したスーパーファミコン用RPG)になったら最後のセーブポイントからボスまで15歩くらい(笑)。

KEIYAセーブポイントが近かったおかげで、仲間の死亡パターンを変えて全部の会話を見ることができました。『III』のダンジョンでこれはできないですね(笑)。

竜騎士07やりたくない、やりたくない(笑)。まあ今のは一例ですが。でもこれが連載のいいところですね。自分の未熟なところを、ユーザーさんからの反響でいろいろ変えていくことができるので。これはおもしろいことだと思います。私は決まっているルールをただ垂れ流すだけの役ではないので、そういうユーザーさんの反応を見て、物語の書き方や表現を変えてみるという化学反応を、自分でも楽しんでいます。「おや、みんな真相に近付きすぎたなぁ。ここで1回、煙に巻くような偽情報を流すよ」みたいな。これまでの皆さんの推理を順々に追っていくと、やがて最後に答えがわかったときに「あの段階でこれを推理していたのはすごい」というのがいくつかあるんですよ。すべての真相は決まっていて変えようがないので、真相に近付かれないためにいろいろな方法でかく乱しています(笑)。じつは“金蔵死亡説”については、私の予定では『EP5』で明かすつもりでした。しかし『EP3』発表後あたりから「金蔵はすでに死亡しているのでは?」という説が出てきてしまったので、「金蔵死亡説でさらに1話引っ張るのは冗長だな」と判断し、前倒しして『EP4』で明かしました。

KEIYA引きこもった人物の生死というのは、1つのカギになりやすいところなので、私も両パターンで考えて執筆していました。

竜騎士07書斎から出てこない老当主はいつ死んでいたのか? 「ガラスの割れた音がしたから、そのときが死亡時刻」というのは甘い話ですね。

KEIYA実際より前に殺人があったパターンと、後に殺人があったパターン。よく分類されていますよね。

竜騎士07それで本来は死んでいるハズの時間に生きていたかのように偽装して、というお話。いやー、私もいろいろな本を読んできましたが、そのへんの真相は本当にどれもおもしろいなあと思うんですよ。なんというか、私たちは会ったことも見たこともない人のことを、まるでよく知っているかのように語ることがあります。私たちは結構、物事の情報の信用度というモノを、かなり人に預けきっているのです。思った以上に私たちは、物事を見ているようで意外と見ていないので、そこをうまく利用すれば簡単にミステリーは作れるんじゃないかと思ったんですよ。他人の証言を、思った以上に鵜呑みにする生き物なので。大体、密室を作る作法というのは、大きく3種類くらいに分けられるんです。どれもこれも見せ方を変えているだけですけどね。“犯行時に犯人は室外型”、“密室に見せかけた型”、“密室殺人は起きていない型”だったかな?

KEIYA死体を部屋に投げ入れる、なんていうのは1つ目の分類に当てはまることが多いように思います。いろいろなトリックがありますよね。

竜騎士07みんなが“死んでいる”と思った時点ではまだ生きていて、そのあとのしかるべき段階で殺されるパターンとか……多くは、基本となる型の亜流なんです。

KEIYA部屋に押し入って早業殺人というのはそのパターンですね。みんなと行動をともにしていた犯人が密室を破り、被害者を素早く殺してしまう。直後にみんなが入ってきて、死体になったばかりの被害者を発見する。犯人は第1発見者を装いますね。密室が発見された時、被害者はまだ生きていた、と。

竜騎士07そういうパターンもありますね。密室殺人というのは、こういったいくつかのパターンから逃れられないとも言われているんですよ。あと分類の1つに“殺人が行われたのは密室構築の前か後か”という論法もあります。雪が降っていて、周りには足跡が1つしかないけど人が殺されていた。これは雪が降る前に殺されたのか……?

KEIYA“開かれた密室(完全に閉ざされた部屋ではないものの、人間の出入りが不可能と思われる現場を指す言葉。周囲に犯人の足跡がない雪上の死体、部屋の窓は開いていたが高所であるためそこからの出入りは不可能、といったパターンが代表的)”というやつですね。

竜騎士07そういうことです。トリックは私なりに分類して、いろいろな密室を作っていました。さまざまな密室を試してみたのですが、私のやっている密室はかなりシンプルな部類です。おおむね1種類のキーワードで、統一制があって解けるようには作ったつもりなので。っと、今日はミステリー中心で話が進んでいてよくないですね(笑)。まあでも、いっぱい密室が出てくるので、ぜひいろいろ考えていただけると楽しいと思います。『EP4』で大きなヒントがたくさん出てしまったので、そろそろ個別の密室は、確信は持てなくても答えが出るころかな。

――まだ完全に解答している人を見た記憶はないでしょうか?

竜騎士07個別の密室議論自体、あまり見たことがないですね。「密室は情報がない以上、推理不能」という方が多く、密室にトライしている人はあまり見ないです。

KEIYA『EP2』の密室でいまだに手こずっています。

竜騎士07どの密室ですか?

KEIYA『EP2』の密室は、全体的に難しかったです。

竜騎士07最初は礼拝堂で、次が朱志香と嘉音でしたね。

KEIYA朱志香の部屋は、とりあえず郷田を犯人と仮定すれば赤字を潜り抜けることはできるのですが。

竜騎士07あの部屋は使用人の誰かが犯人と仮定すれば、それほど難しくないですよね。『EP2』の中で戦人が「郷田を疑いたくない」と言い出したから難しくなっただけで。郷田か熊沢を犯人にすればとても簡単な密室です。

KEIYA夏妃の部屋も同様に「郷田が犯人なら」という仮定で連載時(電撃マ王で連載中の『うみねこ』考察記事・魔女狩りの宴)に執筆させていただいたのですが、まだ他の説が思いついていないんですよ。

竜騎士07なるほど。うんうん。『EP2』の密室も、結構よく作れましたね。個人的には『EP3』の連鎖密室が芸術品でした。

KEIYAやはりアレも何か裏がありそうですね。別の説を考えないといけないなと、思ってはいるのですが。

竜騎士07すでに観念的なヒントは結構出ました。さすがに「アイテムA・B・Cを足せば答が出ます」なんていうほど、ヌルい答ではないです。やはり最初に話した“ドラゴンのなぞなぞ”のような感じですね。『ひぐらし』では解答を“誰が読んでも誤解なくわかるように”しようとして、丁寧に書きすぎたという傾向がありました。なので『うみねこ』は“考える人にはわかるけれど、考えない人には……”となるようにしようかなと。そこで両者に差をつけたいです。「あの人が犯人で、こうしました。これが答えです」というのは『うみねこ』ではやりたくないんですよ。早い話が私が尊敬する『瓶詰の地獄』のように、読んだ後議論して「こういうことじゃない?」といって真相を導き出せる人たちが楽しめるようにしたいなぁと。でもそこは難しいですよね。導き出せる人にも導き出せない人にも楽しんでもらいたいし、そもそもエンターテインメント作品として、推理をしないでも楽しめるように書きたいし。これらの思いを私なりにうまく融合させた形が、『EP4』ラストの戦人とベアトのバトルですね。謎解きに挑戦した人も、してない人も楽しめるという形です。いやー、大変なバトルでした。ワルギリアとベアトリーチェが戦っているほうがはるかにラクなバトルですよ。ガキンガキンやっているだけですから。

BTそうですね。あのラストバトルは大変でしたね。

竜騎士07赤字も青字も次々と出るし、一度読んでもらった後、薄い部分と厚い部分を何行も修正したり。私の記憶ではクリンナップ中にも、まだテキストを増やしていた気がします。赤字は迂闊(うかつ)なところで使うと自分の首を絞めることになるので、使うのがとても難しいのですよ。

KEIYA諸刃の剣ですよね。あれは。

竜騎士07いやー。赤字なんて使っても、魔女によいことはないですからね(笑)。だから究極的に一番よいのは黙秘なんですよ。

KEIYA黙秘されたらお手上げですね(笑)。

竜騎士07ベアトは対話に応じているという時点で、少し甘いと思います。ベアトに“絶対に連続殺人を成し遂げる”という強い意志があったら、戦人とゲームごっこなんかする必要はないわけですし。どうしてベアトは甘いのか、何をしたいのかを探るには、チェス盤をひっくり返して考える必要があるでしょう。『EP1』の時点では“犯人は連続殺人か見立て殺人がしたいらしい”としか思えないから、チェス盤をひっくり返してもピンとこないけれど、『EP4』までの世界観をすべて足したうえでチェス盤をひっくり返してみると、そろそろ何かが薄っすらボンヤリと見えてくるのではないかなあ。

KEIYAそうですね。そんなところはあります。

竜騎士07それで私はそこまで意地悪ではないので、物語の世界観を薄っすらと見ていくと、なんとなく何かの輪郭が見えてくるようには作っています。例えば“実は譲治と紗音の婚約は右代宮家の財産を乗っ取るための偽装で、2人とも全然恋愛感情がない冷酷な仕事人だった”みたいな設定は隠していないです。今見てわかるような世界観で、作っているような作っていないようなウッヒッヒッヒ(笑)。みんなを騙(だま)せたら幸せです。

KEIYA気持ちよく騙してもらえれば(笑)。

竜騎士07実際、古典ミステリー物でも「○○さん、じつはアナタが△△年前に行方不明になった××さんだったのですね」というのは王道ですよね。

KEIYA「包帯を巻いた車椅子の人物は、実は彼女でした」みたいな。

竜騎士07身元を隠した人物は、おおむね途中で入れ替わっていますよね。

竜騎士07失踪したり、消息不明になったりした人物が死んでいるとは限らないし。

BTそうですね。

KEIYA火傷している人物も怪しいですね。

竜騎士07怪しい怪しい(笑)。帽子をかぶっているけれど、そこに火傷跡が本当にあるかどうかはわからない。火傷跡がないのに帽子で誤魔化している可能性もあるし。そう考えると横溝正史の作品は、硫酸で焼かれた女とか包帯の女とかいろいろ出てきますが、みんなよくできていますよね。シズル感たっぷりですもん。

KEIYA“仮面”というモチーフもおもしろいですよね。

竜騎士07そこを効果的に生かすと『20世紀少年』(ビッグコミックスピリッツに連載されていた浦沢直樹さんの漫画)になるんですよ。「トモダチの正体は誰?」のように。他のミステリー漫画でも、覆面の人物が出てくると疑わしいですよね。ただミステリー漫画の中には、登場人物紹介の時点で真犯人を大方暴けるという作品もありますよね。

KEIYA絵的な意味で。

竜騎士07そうそう(笑)。漫画家の演出的な伏線の張り方が統計的にバレていて、「こうやって紹介された人物は、大体の場合真犯人」みたいな。

――アニメなら、声優の豪華さで犯人がわかりますね。

竜騎士07そうそうそう!

KEIYA「トリックはわからないけど、犯人はわかった」という人が結構多いですよね。

竜騎士07だから映画のミステリーが一番気の毒。「こんなチョイ役に大物が抜擢(ばってき)される訳がない」って(笑)。

KEIYA完全にプレイヤー的な推理ですね。

竜騎士07そうそうそう。でも日本の推理って、それを認めているところがありますよね。「この作者はあのネタが好きだから、今回もアレだろう」みたいな。『うみねこ』を推理している人たちの中には、物語の世界がどうこうではなく「竜騎士が好きそうなのはアレだろう」といって、過去に私が列挙した作品から真相を予想している人もいますから。だから私、気付いたんですよ。「嘘をつくならインタビューだな」って(笑)。ここで『うみねこ』に関係ないミステリー作品の話をしたら、私の発言をもとに推理をしている人たちは全員そっちに向かうでしょう。でも本当に、ミステリーにはおもしろい作品がたくさんあるので、いっぱい読んでほしいですね。私は個人的に、昔のミステリーのほうがぶっ飛んだ内容の作品がいっぱいあっておもしろかったです。横溝作品の好きなところは、ミステリーの御作法違反が少しありながらも、ドキドキワクワクが止まらない部分。そういう作品が好きなんですよ。いくらパズルとしてよくできていても“マンションの一室で人が殺されています”だけではなんと言うか……。

KEIYA“何か雰囲気がほしい”ということですよね。

竜騎士07そうそうそう! そういうことですよ。ちょっとした図形のパズルも、ただ紙に書いて解くだけではやる気が出ませんが、『バイオハザード』(1996年にカプコンが発売したPS用A・AVG)のゲーム中に登場して「これを解けば秘密研究所へのエレベータが作動する」と言われれば、俄然(がぜん)やる気になりますよね。しかもそのボタンが錆(さ)びていて血がついているみたいな演出があれば、さらに興奮して夢中になりますよね!

KEIYAそうですね。『サイレントヒル2』(2001年にKONAMIが発売したPS2用A・AVG)では汚れているボタンの中に薄っすら色が変わっているものがあって、それに気づくと解答となる3桁の数字がわかる、という謎解きもありました。

竜騎士07『サイレントヒル』シリーズの謎は結構レベルが高いですよね。本気で考えないと解けない謎も多いと思います。そのような感じで私は演出重視派ですね。

KEIYA単発の事件ではなく、バックボーンの広がりを感じさせる何かがあると、かなり世界が違いますよね。

竜騎士07私はそこにミステリーの醍醐味ってあると思うんですよ。やはり演出やお膳立てはとても大事です。いかにも殺人が起こりそうな大正の雰囲気を残した洋館で、おかしな富豪のおかしな遺言状が出てきて……。読んでいてハラハラするじゃないですか。そういうのが私は大事だと思っています。そしてできたら犯人がわかった後に、「私にはこういう経緯があって、このような動機がありました」という事件の背景や設定もわかるとさらにおもしろいですね。ミステリーの中にはパズル要素を重視しすぎて、リアリティを欠いてしまった作品もあります。だから私が『うみねこ』で目指しているところは、とんでもない荒唐無稽(こうとうむけい)な異常殺人を、できれば最終的には人間の心と気持ちとちゃんとしたトリックで、すべて筋が通るように説明したいと思っています。『ひぐらし』のころから、そういう気持ちで作品を作っていますね。……あっまずい。こんなことを言ったらますます「魔女なんていません」と言っているみたいですね。ほら、『うみねこ』はファンタジーですからね。これからも魔法大戦をお楽しみください(笑)。

――ロノウェと朱志香のバトルは熱かったですね。

竜騎士07(笑)。そろそろ朱志香にマ●タースパークを撃たせてもよいころですね(笑)。本当は、ミステリーファンの人たちが、ミステリーを読まない人たちにおもしろさを教えてあげるといいと思うんですけどね。楽しい作品はいっぱいあるので。だから『コナン』がお茶の間に推理を呼び戻してくれたというのはよいことだと思っています。最近のTV番組の推理ドラマはほとんど探偵モノで、「この探偵すごい!」となって終わりですが、やはり知的ゲームを楽しめるのが推理ドラマの醍醐味。お茶の間に集まった家族が「あれはこうじゃないか?」などと延々と議論をする“噛み応え”が、どんな作品にもあるべきだと思います。ゲーム的な推理小説だと「まだ犯人わからないの? 俺はわかったぜ。あの部屋の引き出しを調べてみなよ」くらいしか語れません。できれば『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』のように、見終わったあとに友だちと一緒に「あのシーンにはこんな意味があったんじゃないか?」と語り倒したくなるような“噛み応え”が欲しいです。そういう意味では『エヴァンゲリオン』(1995年~1996年に放映されたアニメ作品。2007年9月には『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズの1作目となる『序』が公開された)はミステリーとして成立していると思いますよ。

KEIYA謎を語り合うのはおもしろいですよね。

竜騎士07謎を語り合う元ネタとして、『うみねこ』は“噛み応え”のある場所をいっぱい作ったつもりです。ただ、近年はこのような遊び方をする作品がほとんど見受けられないため、慣れていない人にとってはウチの作品は不親切に見えるでしょうね。でも親切丁寧な作品は世間にいっぱいあるので、ウチは思い切り不親切でもいいんじゃないかな。だから、たどり着ける人がいるようにする反面、何も考えずに読んだだけで答えがわかるように甘くはしたくないかな。そのさじ加減を私はとても悩んでいます。やはり“ちゃんとした答を最後に見せてあげたい”という気持ちはありますが、その答をできれば『ピタゴラスイッチ』(2002年からNHK教育テレビで放映中の子ども向け教育番組。ピタゴラ装置という、からくり装置を使って番組タイトルを完成させるコーナーが特に有名でDVD化もされている。ここで竜騎士07さんが語っている内容もピタゴラ装置のことを指す)みたいな見せ方にしたいなと。『ピタゴラスイッチ』は途中のフローチャートをすべて間引いたら“ボールが落ちて旗が立つ”だけで、おもしろくないですよね。これが、想像できないルート上をボールが通ったり、ドミノ倒しや風車などの仕掛けが満載だったりして最後に旗が立つからこそ、おもしろいじゃないですか。この“過程”をなるべく想像できないモノにして、結果的にボールは最後までたどり着くのだけど、人によっては「えっ、風車が回った後どうなるの?」みたいな。ボールが転がってしまえば誰にでもルートはわかるので、ボールが転がる前にルートを考えることが、推理の楽しさじゃないかなと。アトラクションに例えると、ライド型ではなくウォークスルー型ですね。自分の足で最後まで歩いた人だけがゴールできます。私は「道はこちらですよ」という誘導灯は点けますが、最後まで歩くのはユーザーさん自身。それで“踏破した”という感じを楽しんでもらいたいなと。いやー、富士急ハイランドの『戦慄迷宮』(富士急ハイランドに設置されているウォークスルー型お化け屋敷。現在は『戦慄迷宮4.0 血まみれの身体検査篇』が4月5日まで開催されている)に行きたいんですよ。ごめんなさい、『うみねこ』と関係ないですね(笑)。つまり『うみねこ』は、考えた人に“真相へ至るためのカギ”は与えるけれど、真相をそのまま公開するのはちょっと嫌ですね。「カギはこれです。箱はこの屋敷のどこかにあります。どうぞ探してください」みたいな感じにしたいなあ。でも同時に、謎解きはせず、エンターテインメントとして読んでいる人たちにも楽しんでもらいたい。『うみねこ』の“ミステリー”として楽しんでもらいたい謎解き部分と、“ファンタジー”として楽しんでもらいたい物語部分。この2つを、両立させられたらいいなと思っています。舵取りはとても難しいですが、『EP3』と『EP4』で“2つの世界観は同時に並び立つことが可能”というようなことは語られていますからね。

(C)竜騎士07/07th Expansion 肖像画/江草天仁

データ

▼『うみねこのなく頃に EP4』
■制作:07th Expansion
■対応機種:PC(対応機種:Windows XP)
■ジャンル:AVG
■価格:2,625円(税込)
※『EP4』には『EP1』~『EP3』の内容も収録。大手同人ショップの通信販売などで購入できる。
▼『最終考察 ひぐらしのなく頃に』
■発売元:アスキー・メディアワークス
■発売日:2008年3月27日
■価格:1,680円(税込)
 
■『最終考察 ひぐらしのなく頃に』の購入はこちら
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