2009年3月29日(日)
日本一ソフトウェアより発売中のPSP用AVG『夢想灯籠(むそうとうろう)』。特集ページ内で毎日掲載されている開発スタッフのコメントを、まとめてお届けする。
日本一ソフトウェア、フォグ、ブロッコリーの3社が共同で開発する和風伝奇系AVG『夢想灯籠』。現在、電撃オンライン『春の日本一祭り』では、本作の開発スタッフによるコメントを日替わりで掲載している。
今回は、3月23日~27日に掲載されたコメントをまとめたので、見逃した人はぜひチェックしてほしい。
「夢想灯籠で表現したかったことと、ユーザーに伝えたかったメッセージ」
フォグ プロデューサー 宗清紀之
祝! 発売!! 『夢想灯籠』にハマって、今日会社を休んじゃった人がいたらゴメンナサイ。
さて、今日はまじめにいきます。今回は、プロデューサー発言の王道“表現したかったことと伝えたいメッセージ”を書きます! …。……。………。自分で宣言しておいていうのもなんだが、なんて難しいお題だ……。困った……。こんな時は、難しい能書きが言える“プロデューサー・ネオ宗清”を呼び出さなければなりません(3月7日のコメントを読まなかった人には意味不明)。
……『夢想灯籠』は、従来のAVGの常識をあえて無視した演出手法に挑戦したので、ユーザーの方にはぜひそのダイナミックでエキサイティングに時代をワープしてビジネスのスキームがファンダメンタルズで●▲×※……。ああ、もう限界。箇条書きにします。
・表現したかったこと──赤と黒の世界
・みんなに伝えたいこと──新しい力(若いスタッフ)の情熱を感じてほしい
以上です。ではまた!
「絵コンテ作りの話題と開発秘話」
グラフィックディレクター 神林中
毎度どうも、グラフィックディレクターの神林です。またお呼びがかかったので、臆面もなく書きなぐります。すみません。
今回、僕の仕事のかなり大きな部分を占めていたのが、絵コンテの作成作業でした。わかりやすくいえば、演出の方針作りです。『夢想灯籠』の仕事をしている最中に、しょっちゅう「こんなに絵コンテを描くゲームは珍しい」と言われたのですが、そんなに絵コンテって作らないんですかね。ゲームも一応映像の1ジャンルなのだし、絵コンテは作られるべきだと僕は思ってるのですけど。
しばしば説明なしで使われますが、絵コンテとは“絵入りコンティニュティ”の略で、絵とそれに伴うあらゆる情報が一望できるようにした資料のことをいいます。設定もレイアウトも原画も彩色も仕上げも、基本的にはこれを出発点にします。
今回の『夢想灯籠』では、アニメーションに近い形の絵コンテを作りました。それぞれのシーンの絵や動きと、どういう状況かを示す文章、絵を描く上で強調したいポイントなどを、必要と思われるぶんだけメモとして書き留めてあります。そういう意味では、確かにゲーム用のコンテとしては珍しいタイプかもしれません。でも、コンテ作業自体は普通なんじゃないかと思います。というか、今回のような大量の絵素材を扱うゲームでは、どういう絵があるのか、どういう演出がされているのかを把握するための最初の設計図として、コンテがないと困ると思うのです。行き当たりばったりで演出するとかありえませんしね。尺が短いならともかく。
とりわけ僕は“レイアウト至上主義”なので、絶対的にコンテを切らないと整理できません。あと、根本的にコンテ作業が好きなんです。少なくとも演出上は、類似したレイアウトを避けたり、あるいはあえて類似したレイアウトをとったりする上で、絵コンテは必須だと言えます。“字コンテ”という急造の代用品もこの業界にはありますが、それではダメです。
特に今回は、絵を主導に情感を描写する部分もあったので、“カット(絵1枚ぶんと考えてください)”単位ではなく“シークエンス(カットやシーンの連続でできる流れ)”として考えるために、自動的に流れが一通り把握できるこのシステムは非常に有効だったと思います。ただ、調子に乗って描き飛ばしてたら凄まじい量になっていて、描いても描いても終わらない。最終的にはコンテ用紙の通番が劇場版アニメーション1本くらいの枚数になっててがく然としました。まあ、よしあしですね。
PSPの画面比率16:9――いわゆるビスタサイズの強みである空間の広がり表現は、コンテの段階でほぼ実験完了していたので、1画面に人物を複数収めるのが楽なこと楽なこと。思い通りに作業が進むので、積極的に使っていたくらいです。
逆に空間が見えすぎてしまうので、ややキャラクターに寄ったミドルショットは、少々持て余すという部分があり、このゲームにおいて主に会話で多用されますが、カットインは機能的にミドルショットの代用と位置づけていました。それもコンテで設計した部分です。
本来はあまりないことなのですが、このゲームの絵コンテは、画面内のキャラクターやオブジェクトの配置などを伝えるためのレイアウトシートとしても使用したので、必要な空間の情報やお芝居のキモになる部分などはすべて描きました。一部は設定と化してる部分もあって、ちょっとコンテの領域を越えちゃってる感じがするのですが、指針になるものが何もかもないよりはマシだと思いたいものです。恐ろしいことに、そういう現場もありますから。絵コンテなしでの演出は、僕は怖くてできません。
「今までのフォグ開発タイトルと比べて、『夢想灯籠』のBGMでとりわけ意識したこと」
音楽・音響 椎名建矢
祝・発売! こんにちは、音楽担当の椎名です。皆さんは、もう『夢想灯籠』をお買い求めいただけましたか? まだの方は、すぐに近くのゲーム屋さんへGO! 「すでに楽しんでるよ」という方は、ぜひぜひ音楽にも注目してやってくださいませ。
さて、フォグのゲームで重視されるものの1つに、やはり音楽があると思います。なぜかって、自分もフォグ開発ゲームの大ファンだからなんですね(結構な昔から、現在進行形でそうです)。
およそ10年前、今回の『夢想灯籠』と同じく、フォグから和風伝奇のAVG『久遠の絆』というゲームが発売されました。この音楽がもうスゴくてですね、自分も鼻水をたらしたガキなりに音楽の力を感じ取ったものです(これについて書き出すと止まらなくなるので以下自粛)。
そういったフォグ開発のタイトルとの違いを自分で挙げますと、“メロディを前面に出すのではなく、楽器本来の持つ印象とハーモニー、そして空気感で場面を演出している”ことでしょうか。もちろん全部の曲がノーメロディというわけではありませんが、例えば打楽器だけで構成した曲とか、極低音とノイズで構築した曲などがありますし、メロディを乗せている曲でも、まるでその場で鳴っているような“アンビエント感”を重視した曲設計を行ないました。プレイ中には、そういう部分にもアンテナを向けていただけるとうれしいですね。
あ、あとは今までよりもテクノ成分が多いんじゃないかと思います(これでも和テイストな話なので結構控えめにしたんですが)。
無事に発売まで辿り着いた『夢想灯籠』。気に入っていただけたなら、作り手としてこれに勝る喜びはありません。それでは、またお目にかかれる日を楽しみにしています。
引き続き後半でも、開発スタッフのコメントを掲載! さらに、残念ながらボツとなってしまったキャラクターのラフ画もまとめて公開する!!
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