2009年6月5日(金)
セガがこの秋に発売するPS3/Xbox 360用ACT『ベヨネッタ』。Electronic Entertainment Expo 2009(以下、E3 2009)の会場で、本作の開発者にインタビューを行った。
『ベヨネッタ』は、セガとプラチナゲームズがタッグを組んで開発する“クライマックス・アクション”ゲーム。『デビル メイ クライ』や『大神』(どちらもカプコン)を手掛けたことで知られる神谷英樹さんがディレクターを担当し、爽快感抜群のド派手なアクションを簡単操作で楽しめる。
▲これまでにないタイプの主人公・ベヨネッタ。なおE3 2009会場では、本物かと思うほど雰囲気のあるコンパニオンが姿を見せ、注目を浴びていた。 |
今回のインタビューでは、神谷ディレクターと同じくプラチナゲームズの橋本祐介プロデューサーに、本作の魅力やゲームデザインに関する疑問など、さまざまな質問をぶつけたので、ご覧いただきたい。(インタビュー中は敬称略)
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――本作の戦闘について、ポイントを教えてもらえますか?
神谷:敵の攻撃をギリギリで回避すると“ウィッチタイム”というものが発動し、周りの環境がスローになります。敵の攻撃を回避して攻撃のチャンスを作る、というのが攻略の要ですね。本作でこだわったのは、触り心地、レスポンスなんです。これには本当に命をかけています。敵の攻撃をギリギリでかわすための土壌作りには、気をつかっています。
――“戦闘全体の触り心地”にこだわったということですか?
神谷:モニターの中にいるキャラクターとプレイヤーをつなぐのはコントローラ。そのレスポンスについて、ものすごくこだわっているので、キャラを動かしているだけでも、気持ちがいいという感触を味わえると思います。自分がアクションゲームをデザインする時は、防御を入れないという信念があるんです。防御を行うと、プレイヤーが操作できない時間ができてしまう。それをしたくないんですね。だから、回避を入れてすべての動きをキャンセルできるようにしている。この回避は、引きつけてから敵の攻撃を避ければ、こちらのチャンスになるシステムを組み込むことで、駆け引きを生み出しています。
――ステージを進めていくと、プレイヤーの行動が評価されますよね? あれは最高が“GOLD”なんでしょうか?
神谷:ステージの中に“チャプター”と呼ばれる区切りがあるんですが、チャプターごとに計算されます。そしてステージが終わった時に、総合点が表示される。そんなイメージですね。ゴールドの上にも評価がありますよ。
神谷&橋本:プラチナです!
橋本:はもっちゃったね(笑)。
――それはプラチナゲームズの名称からですか?
神谷:どうでしょう(笑)。
――戦闘以外の要素としては、世界観が印象的なんですが、主人公のベヨネッタはどのようにして作られたのですか?
神谷:新しいアクションゲームを作るにあたって、女性が主人公の作品をやったことがなかったので、挑戦してみたいと思ったんです。そこに、キャラクターの魅力として、女性らしさという味付けを加えていったという流れですね。
――具体的にどのような味付けを?
神谷:2段ジャンプをすると背中に蝶の羽が生えるとか、ロックオンマーカーはキスマークだったりとか、ダメージを受けたエフェクトは血じゃなくてバラの花びらとか、そういったところで彼女の魅力を引き立てようと。あと、音楽にジャズアレンジを加えることで、女性らしい華やかさを出したりもしています。
――魔女という設定はどこから?
神谷:想像を絶するような敵が襲ってくるものをやりたかったので、普通の人間ではダイナミックなアクションができない。そこに闇の力を使うという設定を加えた時に、「それって魔女だよね」ってすんなりきました。
――魔女というところをふくらませて、今の設定になったんですね。
神谷:「魔女を相手にするには、何がいいだろう」と考えていた時に、神の力を使うような存在。だったら、敵は天使だなと思いました。それで本作のような世界観が徐々にでき上がっていきましたね。すべてはアクションゲームで、女性を使おうと決めた時に動き出して、組み上がっていった感じですね。
――相手が天使ということですが、ややまがまがしい見た目ですよね? そこはあえてなんでしょうか?
橋本:神々しいだけだと普通の天使なんですが、敵ということにした場合、変化してくると思うんですね。たとえば爪や牙が生えて、凶悪な感じになるとか。そして、神々しくもあり、まがまがしいものにした時に、他のゲームと比べて、「おもしろい」と感じてもらえるようなデザインを集めました。
――何かボツ案になった天使のデザインなどあれば教えてください。
橋本:刀に首がついていて、本来の場所に首がない剣士の天使ですね。
神谷:クオリティ的にはすごく気に入っていたので、ボスにしていたんですが、スケジュールなどを加味した結果、そのステージがなくなってしまい、結果的にボツになりました。
――話が前後するんですが、ベヨネッタをデザインする上で気を付けたところはありますか?
橋本:女性のデザイナー2人で進めていきました。コンセプトは魔女でプレイヤーが操作する。これを軸に依頼していきましたね。
神谷:魔女なので、黒い服を着ている。あとは、戦う姿を演出するために、動きを誇張する何かが欲しいと思い、髪の毛をなびかせながら戦う魔女。ただ、古めかしい魔女ではなく、現代風の魔女にしようと相談しながら、進めていきました。女性のデザイナーにお願いしたのは、エレガントに戦うファッショナブルな女性にしたかったんです。それには、女性ならではの視点が欲しかった。その甲斐があって、アクセサリや服の材質、メイクまで、男性だったら思いつかないような角度からのデザインになっていると思います。
――プレイしていて背中が開いているというのが印象的でしたね。
神谷:これはデザイナーが初期からこだわっていたことです。背中をバッとあけてセクシーさを出したいと。胸をただ大きくして、露出を上げてセクシーにはしてほしくなかったんです。そういうものに頼らなくてもにじみ出ているようなものにしないと駄目。背中が開いているというのは、上品なやり方でドキッとするんですよね。
――他には、ホクロとメガネがインパクトありますよね?
神谷:キャラの味付けとして、態度が高圧的な大人の女性にしたかったんですよ、おねえキャラみたいな。その色気を演出するには、メガネだろうと最初から考えていました。雛形のデザインだとメガネはなかったんですが、黒い服でモデル体系の女性が戦うというあたりが固まった時に、メガネをつけました。そのデザインをチームの人間に見せたら、「いい」と「抵抗ある」という意見が半々だったんですよ。でも、自分の経験的にそういう時って成功するんですよ。強烈な手ごたえがあるから半々にわかれるんで。ホクロはその後に足しました(笑)。
――世界で初めてプレイアブル出展となった『ベヨネッタ』ですが、開発スタッフ以外が遊んでいるのを見て、どうでしたか?
神谷:実は、E3 2009開催期間中はずっと取材を受けているので、見てないんですよ。さっき10分の休憩の時にだけ、ダッシュで見に行きました。
橋本:短い時間ですが、注目されているという実感はありますね。
神谷:僕はプロモーション映像を出したりして、注目してもらっていると思っていたんですが、触り心地を大事にしているので、プレイアブルでどういう反応をしてもらえるのか、そこにはすごく興味がありますね。もちろん、ダイナミックな演出も見どころですが、「見せかけだけではないんだよ」というのを感じてもらえるので、評価されているのを聞くと自信になります。
――最後に日本で発売を楽しみにしているファンへメッセージをお願いします。
神谷:遠くアメリカという地でプレイアブル出展で申し訳ないなと感じています。ぜひ遊んでもらいたいと考えているので、楽しみにまっていてください。絶対に、期待は裏切りません! 僕たちは、「買ってね」ではなく「やってね」と言いたいです。やったら、このゲームは最後までやりたくなると思うはず。それくらいの自信があるので、ぜひ遊んでください。
橋本:ビデオゲームのアクションゲームの最高峰を目指して作ったゲームです。日本の人たちにも触ってもらえる機会を作りたいと考えています。期待してください。
神谷:ベヨをさわらせてあげますよ(笑)。
橋本:ぜひさわっちゃってください(笑)。
▲『ベヨネッタ』に心血を注いでいる神谷ディレクター(右)と、橋本プロデューサー(左)。2人が自信満々にアピールする本作に期待しておこう。 |
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