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御剣は主人公ではなかった!? 『逆転検事』開発スタッフ3人にインタビューを敢行

2009年6月25日(木)

『逆転検事』

 カプコンから5月28日に発売されたDS用AVG『逆転検事』の開発スタッフにインタビューを行った。

 『逆転検事』は、同社の人気AVG『逆転』シリーズの最新作。弁護士が主人公だったこれまでのシリーズ作品とは異なり、今作では検事・御剣怜侍が主人公に。また、舞台を法廷から事件現場へと移し、検事側から事件の真相に迫っている。

 今回インタビューを行ったのは、プロデューサー・江城元秀さん、ディレクター・山﨑剛さん、キャラクターデザイナー・岩元辰郎さんの3人。『逆転検事』の開発経緯から、好きなキャラクター、そして今後の展望まで、さまざまなことを聞いているのでチェックしてもらいたい。

『逆転検事』
左から、プロデューサー・江城元秀さん、ディレクター・山﨑剛さん、キャラクターデザイナー・岩元辰郎さん。

■最初の主人公は『逆転裁判4』のあのキャラ!?

――ソフトが発売された現在の心境や、ユーザーの反応などを教えてください。

江城:ユーザーからは好意的な意見が多かったので、純粋にうれしいです。チームとして自信はありましたが、システムを変えているのが受け入れられるかどうか見えなかったので。でも、多くの方に「遊びやすかった」と言っていただき、ホッとしています。あと、本作から始められた方が『逆転裁判』シリーズにも興味を持っていただいたようで、そのこともうれしいですね。

岩元:僕らがクリアしなきゃいけないのは、ゲームをしっかり仕上げること。でもその上で、遊んでくれた人が『逆転裁判』の各作品に手を出してもらえればいいとは思っていました。

山﨑:『逆転検事』は、『逆転裁判』シリーズが好きなスタッフが集まって作った作品ですので、キャラクターの魅力や世界観を壊さないように非常に気を遣いました。それがもともとシリーズ作品が好きだったファンの方に支持していただけているなら、本当にうれしいですね。

――実際に、シリーズの廉価版は売れているようですね。

山﨑:そういう店舗さんもあるようですね。本当によかったです。

江城イーカプコン限定販売の『逆転検事 LIMITED EDITION』にDSカードケースが入っているんですが、そこには『逆転裁判』シリーズの全作品と『逆転裁判事典』(※『逆転裁判4』限定版に同梱)、そして『逆転検事』を収納できるんです。そうしていただければ、すべて入れて持ち歩ける!

岩元:江城さんはかなりこだわっていましたね。「ケースの表面にはロゴは入れない!」とか。

江城:DSカードケースは外に持ち運ぶもの。なので、外で使っていても違和感がないもの、恥ずかしくないものにしようと思っていました。

――『逆転裁判』からのスピンオフ、新たにシリーズを立ち上げようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?

江城:『逆転裁判3』ベストプライス版の制作終盤に、「『逆転裁判』の世界観で、新しい遊びができないかな」と考えたんですね。法廷だとこれまでと変わらないので、新しいミステリーアドベンチャーができないかなと。それを、『逆転裁判4』の開発をちょうど終えたばかりの山﨑に話したんですよ。

『逆転検事』

山﨑:ちょうど『逆転裁判4』の制作を終えたころに「『逆転』シリーズの世界を使った、法廷が舞台じゃないゲームを作ろうと思っている」と聞きまして。法廷以外が舞台なら、事件現場を捜査するミステリーゲームがいいだろうと考えました。……実は一番最初に僕が出した企画書は、『逆転裁判4』の登場人物である宝月茜が主人公だったんです。彼女の若いころと現在の両方が舞台で、若いころには『逆転裁判3』までのキャラクターが、現在の方には『逆転裁判4』のキャラクターが出てくるという内容でした。ゲーム的にはカガク捜査を使ったゲームにしようと。それに対して江城から、「ユーザーが一番求めている主人公は誰だろう?」という提示があって議論した結果、御剣怜侍を主人公にすることになりました。それにともない、ゲーム的な切り口もカガク捜査から、御剣のロジカルな推理を体験するゲームという方向性に変更したんです。

――岩元さんはどの段階から制作にかかわっていたのでしょうか?

江城:『逆転裁判3』ベストプライス版のジャケットイラストを依頼した時に、あいさつと一緒に企画があることだけお伝えしていました。

岩元:企画立ち上げの時に声だけかけていただきました。まだ具体的には決まっていなかったので、「具体的になってから」という感じでしたが。

――最初から岩元さんを起用することは決まっていたのでしょうか?

江城:僕の中では決定していました。やるならキャラクターデザインは岩元さんでと。

岩元:こんなに大変になると知っていたら、もうちょっと考えましたね(一同笑)。

江城:最初はもう少し規模が小さいゲームになる予定だったんです。私はオリジナルゲームで初プロデュース、山﨑は初ディレクターということもあって、チャレンジタイトルとして立ち上げた。ところが昨年4月に行った発表会でお披露目したところ、ありがたいことに反響が大きくて……しっかりした内容にしようということで、さまざまなテコ入れを行いました。

山﨑:主人公が、初期の茜から御剣に変わりゲームの方向性も変えたため、当初はなかなかゲームの中身がしっかり固まらなかったんですよ。その状態でサンプルROMを作って社内でプレイしてもらったところ、「つまらなくはないけど、これを作るなら『逆転裁判』の新作を作っても一緒では?」、「主人公が御剣の必要がない」という意見が挙がりました。さらに発表会での「御剣が主人公だ!」ということに対しての反響がすごくてですね……「これはやばいぞ」と(苦笑)。

岩元:普通広げすぎた風呂敷を畳むということはあるんですが、『逆転検事』では風呂敷を大きくする作業が必要になったんですよ。それで、「これは、最初に聞いていた風呂敷のサイズとはだいぶ違うぞ!」って(笑)。3人とも発表会の会場にいてお客さんの反応を見ていたんですが、後日「あのリアクションみたら、いろいろ広げないとダメですよね?」と半ば強引に告げられました。

――発表会がきっかけで、ゲーム内容を変更したということですか?

岩元:リアクションを見て、これまでのものを捨てて、風呂敷をデカくしました。

江城:小さいキャラクターを動かしていくとか、ビジュアルとかは変えませんでしたが、シナリオやトリックは再考し直しました。

――発表会で、御剣がイルカとしゃべっているイラストが公開されましたよね。あのシーン、作中になかったように思えたのですが……。

岩元:あれ? 見ませんでしたか? ステージをすみずみまで見てないんじゃないですか?

山﨑:……ウソはつかないでください(笑)。あれは削った要素なんです。

江城:登場する予定だったんですが、シナリオとトリックを変えていく段階で必要なくなってしまったんですよ。

山﨑:もともとは第3話の1ステージとして考えていました。発表会の後に“ロジック”というシステムが入ったことでシナリオの流れが大きく変わったんです。その結果必要なくなってしまいました。……イルカに話しかけるのは入れたかったんですけどね。

『逆転検事』 『逆転検事』
追加されたロジックの要素。2つの情報をまとめて、新たな情報を手に入れられる。

岩元:僕もシナリオを読んでいて「これはいらないかな?」と思っていました。「発表したから頑張って出す」では意味がないんですよ。ビジュアルのインパクトは大きかったんですが、個人的にはそこまで好きなネタではなかったんですよね(笑)。

江城:僕も反対でした。でもユーザーの反響はすごかったようで、我々が少数派だったのでしょうかね(笑)。

――ソフトが発売された今、開発当時を振り返ってみていかがですか?

江城:現場の思いと、自分の思いは違うと思うんですが、いいチームだったと思います。佳境になるとどうしてもギクシャクするんですね。ヘタしたら互いにけなし合ったり。でも今回は、忙しいメンバーをフォローする人が多かったんですよ。その雰囲気がいい感じで循環していき、それがクオリティに反映された。個人的には「もっとやりたい」というスタッフを止めるのが大変だったくらいです。それくらいモチベーションは高かったですね。

岩元:必要だからいれなきゃいけない、だから頑張る。そんな感じが個々からもすごく出ていました。いいチームだったという実感はありますね。

山﨑:いいチームだったのに、どうして現場はあんなにしんどかったのか……(笑)。でも、モチベーションが高かったからこそ、自分たちでハードルを上げていたという印象はあります。だからこそ、クオリティも上がっていったのだと思います。

■キャラクターのパターンは2つあった!?

――今回初めてキャラクターを動かすシステムが採用されていますが、どういった経緯でこのシステムを入れることになったのでしょうか。

江城:理由は2つありまして、1つはアクション的な要素を入れたいと思っていたため。もう1つは山﨑のほうで、現場を捜査するというところにこだわっていたからです。

山﨑:現場を調べるという操作性に着目したかったのと、『逆転』シリーズの魅力のひとつであるキャラクターという要素を、今までにはない方法で表現したかったんです。それで、デフォルメされたキャラを出そうと。あとは、これまでのシリーズと見た目を変えたかったというのもありますね。

岩元:僕ももともと、見下ろしタイプのゲームはやってみたかったんです。開発中は、キャラクターの大きさや頭身もいろいろ調整しました。「キャラの表情がもっと見えたほうがいい」とか、「3頭身くらいにしよう」とか。僕としては、アップカットがあったので顔の表情にこだわるよりも、リアルサイズのほうがいいと思っていました。それがちょうどはまったので、現在の大きさになりました。

山﨑:広いところを動き回らせたいというのもあって、キャラをすごく小さくしてみたりしました。あと、キャラの大きさを2段階にするという案もありましたね。室内と屋外で大きさを変えようと、とりあえず“ひょうたん湖公園”のマップを作ってみて、そこで実際にキャラを動かしてみたりしました。

『逆転検事』 『逆転検事』 『逆転検事』
御剣を操作して、証拠品を探す本作。これまでの『逆転』シリーズではなかった要素だ。

――その“ひょうたん湖公園”のマップ、ぜひ見てみたいです(笑)。では、入れたかったけど入れられなかった要素などはありますか?

山﨑:ないと思います。余計なので削ったという形が多いですね。カットしたのは、イルカのステージとそこにいたキャラくらいです。

江城:入れたかったという要素は、本作に関してはほとんど入れました。その分、現場が大炎上となりすごく苦労しましたが(苦笑)。「あればなおよし」くらいで、ほとんどないですね。

岩元:やろうと思ったら、なんぼでもクオリティは上げられたけど、締め切りをもらわないといつまでも作り続けてしまうので。

――制作する上で、気を付けたことはありますか?

江城:『逆転裁判』は、法廷に特化したすごく秀逸なシステムなんですよ。現場を調べて証拠を獲得し、法廷でつきつけるというところがファンに支持されているのですが、今回それをあえてミニキャラを操作して現場を調べるというシステムにしました。1つ間違うと、すごく複雑だと思われかねない。そこに対するストレスがないように、すごく気を遣いました。

岩元:操作方法を新しくした時は大変でしたね。移動中に何かモノにひっかからないようにするとか、ついてくる他のキャラクターが迷わないようにするとか。

江城:他には、ユーザーが調べたくなるような、行きたくなるような絵作りにこだわりました。実は最初の段階では、調べる場所の近くに行くとビックリマークが出るという形にしていて、僕はそれを推していたんですよ。でも山﨑は「それをすると、マークを探すゲームになるので、イヤだ」と言って折れなかったんですね。現場を捜査するゲームなので、興味を引くものを置いて能動的に見に行くようにしたいと。そこに関しては「わかりにくい」と言われないか、最後まで怖かったです。

岩元:確かに、山﨑くんの気持ちもわかるんですが、現場のスタッフに負担がかかわるので、賛成はしていませんでした。でもその甲斐があってか、アイデアやモブキャラ(主要キャラクター以外)に関しては、制作していく上でスタッフの熟練度がドンドン磨かれていきましたね。

山﨑:ゲームの世界観を大事に作っているので、これまでのシリーズを作ったことがない人にチームに参加していただくときは、その人のセンスが『逆転』シリーズのものとは少し違うことがあります。そんなときは、グラフィックや笑いのベクトルを修正していくことが必要で、それに関しては、岩元さんにもかなり協力していただきました。

岩元:笑いの方向性は難しいよねえ。

山﨑:もちろんテキストもそうですし、イラストもそうです。『逆転』シリーズが持つ世界観を大事にしつつ、新しいものを作る。そこに尽力しました。

――作品の時系列としては『逆転裁判3』の後の話になるんでしょうか?

山﨑:成歩堂龍一と一緒に『逆転裁判3』まで過ごしてきた後の御剣でないと、「真実を追究することが私の仕事」というセリフは出てこないんです。もし、『逆転裁判』の最初のころの御剣を主人公にしたら、無罪の人でも「絶対に有罪にしてやる」というゲームになっていたかもしれませんね。

『逆転検事』

――御剣怜侍の魅力とはなんでしょうか?

山﨑:チーム内でもいつもいっていることなんですが、クールでかっこいい天才検事だけど、どこか抜けているところや不器用な部分があるという2面性ですね。どちらもあるからこそ両方際立つ。今回は、そこを意識しながら書きました。

岩元:“かっこいい”をドーンとやって、“抜けている”をドーンとやって、その距離をちゃんと取ってあげれば、画面の中で目立つと思うんですよ。ただかっこいいだけでなく、ただ間抜けではない。それはチーム内でも繰り返していました。

山﨑:『逆転裁判』では、成歩堂あっての御剣というのが強かったんですが、過去が描かれたりいろいろな成長を通して『逆転裁判3』で最終的に御剣というキャラが単体で立つまでになったという気がします。だから、それを引き継いで本作の主人公である御剣がいるというイメージです。

――今作は、どの事件もすごく短い期間で解決していますよね。こういう作りにしたのには理由があるのでしょうか?

山﨑:主人公が御剣というのがありますね。彼は忙しいので、これくらいのスピードで事件を解決していくかなって。成歩堂なら月に1本が限界かと思うんですが(一同笑)。

岩元:ジェットコースター的な流れで、というのは当初から言われていました。でも、本当に1日1事件くらいの勢いで解決していましたよね(笑)。

『逆転検事』 『逆転検事』 『逆転検事』
さまざまな場所にて、事件を解決していく御剣刑事。このスピードも彼ならでは?

次のページでは、好きなキャラについて3人が熱弁!!

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