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2009年7月23日(木)

明日発売『最終考察 うみねこのなく頃に』から竜騎士07×KEIYA対談をお届け

文:電撃オンライン

 アスキー・メディアワークスから明日7月24日に発売される『最終考察 うみねこのなく頃に Witch -hunting for Episode 1-4』。本書に掲載されている特別対談の一部を抜粋してお届けする。

 『最終考察 うみねこのなく頃に』は、竜騎士07さんの作品『うみねこのなく頃に』の考察企画“魔女狩りの宴”を『電撃マ王』で連載しているKEIYAさんが、膨大な時間を費やして推理・考察した内容をまとめたもの。『EP1』~『EP4』に対応しており、著者が実際にプレイした際の思考を追う“ファーストプレイメモ”、実際にまとめた推理・考察を項目別に記した“総合考察”、原作者・竜騎士07さんとの特別対談、豪華作家陣が原作の名場面を再現した美麗イラストなどを収録している。

 今回、電撃オンラインでは5月に行われたKEIYAさんと竜騎士07さんとの特別対談を抜粋して掲載する。この対談の完全版は『最終考察 うみねこのなく頃に』に掲載しているので、興味を持った方はぜひ購入していただきたい。(対談中は敬称略)

『最終考察 うみねこのなく頃に Witch -hunting for Episode 1-4』

【注意!!】以降の対談には『うみねこのなく頃に』EP4までのネタバレが含まれています。



■迷っているうちが一番楽しい作品です

KEIYA今回の書籍のために改めて考察をやり直していて気付いたのは、『EP1』から張られていた伏線の多さです。例えばアブサンのことは『EP1』が発表された直後に調べていたのですが、ニガヨモギの花言葉“不在”は“金蔵の死を暗示している”と考えながら読んでいました。その後、『EP4』で彼の死は赤字で宣言されましたよね。こういった伏線が他にもたくさん隠されているように感じます。

竜騎士07楽しまれているようで何よりです(笑)。

KEIYA真里亞が頻繁に話す「約束は守る」という台詞は、『EP4』で描かれた物語のバックボーンにかかっているのではないかと思って、いろいろ考えさせていただきました。

竜騎士07どうでしょうね(笑)。今まさに『EP5』を執筆中です。そろそろいくつかの謎について答えを公開してもいいんじゃないかと思い始めているのですが、以前の対談(うみねこEP4対談を参照)でも話した通り、その答えの描き方は『ひぐらし』のように「これが答えでした」とはしたくないんですよ。なぜならば『うみねこ』では“思考ゲーム”、“議論”を楽しんでもらいたいからです。なぞなぞの本で問題の次のページに答えが書いてあったら、それを見た瞬間に思考が止まってしまうじゃないですか。そうではなく、答えに至っている人は「自分は正解しているんだ」と確信できるにもかかわらず、答えがわかっていない人には大きなヒントになるような、答えの公開の仕方を目指しています。例えばなぞなぞの答えが“りんご”だったと仮定して、ページをめくって“赤くて丸い物”と書いてあったら、りんごと思った人は「あ、やっぱり」と確信するわけです。逆にわからなかった人は「赤くて丸い物とは何だ?」と、ヒントになります。こういう書き方を目指したいですね。だからKEIYAさんみたいに熱心に考察されている方は、『EP5』以降もさらに楽しんでいただけると思います。『EP5』ではいくつかの謎について核心的な情報が出てくるのですが、答えに行き着いている方から見れば「こういう風に煙に巻くのか」みたいな感じで、むしろヒントを読むことで煙に巻かれてしまうかもしれません。

KEIYA解釈次第で答えが何通りかに見えるのではないかという予感があります。

竜騎士07もちろんそういうこともありますね。同じヒントでも答えの導き方が複数あるように。青字がよい例ですね。状況証拠から何通りもの犯行例が考えられるケースもありますから。そのあたりは、思考ゲームをお楽しみいただきたいです。しかし同時に、未だ迷っている人や自分の説に自信がない方には、さらに迷ってもらおうかなとも思っています。迷っているうちが一番楽しい作品ですから。今回はエグい仕掛けがあって、ある種の核心まで至っている人ならば引っかからないと思うのですが、核心に至っていない人が見ると「アレ?」と思われてしまうでしょうね。これ以上はまだ、言いたいけれど言えないです(笑)。とにかく今回から、これまでとは角度の違うヒントが出てきます。これまでのベアトリーチェというのは、ヒントレベル1、レベル2、レベル3のように、徐々にヒントは増えていてもすべて同じ角度からのヒントでした。今度は明らかに違う角度からのヒントが登場するので、謎が立体的に見える人もいる……かもしれない。でもそうならないように執筆していきます(笑)。


■読者の皆さんは想像よりはるかに手強かった

KEIYA『EP4』公開から約5カ月が経過しましたが、公式掲示板やファンサイトの反応を見て、どのような印象をお持ちですか?

竜騎士07皆さん頑張って推理されていると思います。ヒントが多くなってきたこともあり、かなりおもしろい推理をされている方も見受けられますね。「惜しい!」という人も結構いらっしゃいます。この物語で一番大きな心臓に辿り着ける方は……まだいないような気がしますが。ただその心臓に至る取っ掛かりをいくつか見つけている方はいますね。しかしその取っ掛かりに足を掛けてよじ登り、もう一段上に行った人はいないみたいです。

KEIYA以前も「パーツ単位で見ると正解に近い人はいる」と、話されていましたね。

竜騎士07そうですね。パーツ単位で見ればかなりよいところまで進んでいます。ただしこの物語はルールが複数あるため、1つの取っ掛かりに足を掛けただけでは真相に届きません。

KEIYA考察していて「何人かの意思が絡まり合っているんじゃないか?」と感じたんです。だから1つの見方では解けないんだろうなと思っています。

竜騎士07複数のことがわからないと、“誰が・どうして・どうやって”は解明できないと思います。1つ言えることは、現在までに出ている推理・考察はかなり真相の外郭を埋めているため、今からプレイする方々がネット上の情報や『真相解明読本』(双葉社の書籍)にまとめられた推理、そしてKEIYAさんの考察などを読めば、かなり有益な説のいくつかを無意識に拾うことができるということです。もちろん間違っている推理もたくさん存在するため、その中から真実を見極めることは非常に困難だと思いますが。何しろ“本格”とも“ミステリー”とも断っていない作品ですからね。

KEIYAそのあたりのニュアンスも含めて、疑問や質問が寄せられたりはしませんか?

竜騎士07もちろん質問は届きますよ。ただフェア性の見地から、個別にお返事をすることはできないのですが。これまでにもおもしろい推理がたくさん届いています。

KEIYA『ひぐらしのなく頃に』の鬼隠し編のときは、100通中1通だけが真相を当てていたそうですね。

竜騎士07はい。その1通が真相の肝を撃ち抜いてきました。『うみねこ』では残念ながら、まだそのようなクリティカルヒットはないですね。『ひぐらし』の反省を生かして作った作品ですから、簡単にはバレないと思います。

KEIYA『ひぐらし』のときは私も一度、鬼隠し編と綿流し編についてメールを送らせていただきました。懐かしいですね。

竜騎士07あのころは「100人の方にプレイしてもらえたらラッキー」と思っていましたからね。今はあのころの数百倍のユーザーさんを相手にしています。恐ろしいことです。しかもその何万という方々はネットを駆使して情報交換しているわけですから。そんな方々とすでに2年間も遊ばせてもらいましたが、非常に楽しいです。もちろん恐ろしくもありますが。若さとエネルギーがないとできない企画ですね。もう一度『うみねこ』のような企画をやりましょうと言われたら、今度は怖くてできないかもしれないなぁ。いやー早く皆さんと、これまでの考察を並べながら「『EP●』の段階でよくアレに気付きましたね」みたいな話がしたいです(笑)。

KEIYAネタバレ解禁の対談を完結後によろしくお願いします(笑)。

竜騎士07そうですね。楽しみです(笑)。


■『うみねこ』では動機の推理も楽しめます

竜騎士07“フーダニット(誰が犯人か?)”、“ハウダニット(どのように犯行を行ったのか?)”、“ホワイダニット(なぜ犯行を行ったのか?)”というのが推理の3点セットと言われています。フーダニットもハウダニットも推理するのは困難ですが、最も難しいのはホワイダニット。一般に日本のミステリー小説では、ここがおざなりになることが多いです。犯人とトリックを見破ったら犯人が観念し、自分の不幸な過去話から殺人に至るまでの動機を自白してくれるというのが日本のミステリーのパターンなので。『うみねこ』ではホワイダニットも少しは楽しんでもらえるようにデザインしたつもりなので、楽しんでもらえるとうれしいです。ただそれについて、明確なヒントが示されているとは限りません。でも『EP3』や『EP4』を見る限り、明らかにベアトリーチェは戦人に解いてほしいと願っている。人間に解いてほしいと願っている。なぞなぞを出題する者は、やはり相手に解いてもらいたいから出題するんですよ。修学旅行のバス内で友だちになぞなぞを出して、友だちが「難しくてよくわからない。やめよう。それよりも」なんて別の話に変えられたら、とてもさびしくなりませんか? 「わかった、●●だ」または「わからない。答えを教えて」と言って欲しいですよね。だからベアトリーチェは少なくてもこの謎に挑んでほしいと願って出題しているのは間違いないので、どういう気持ちがあるのかを考えてもらいたいです。何しろ究極の完全犯罪は、誰にもバレないように森の中などでひっそり行うことですから。ベアトリーチェはこの事件に何を求めて、何のためにやっているのか……。

KEIYAそのあたりは『EP4』の終盤の謎とも、かなり密接にかかわりそうですね。

竜騎士07ああ、そうですね。『EP5』でも結構ヒントが出ます。『EP6』や『EP7』で核心的な答えが出たときに、どうか『EP1』から遡(さかのぼ)ってプレイし、「この段階で伏線があったのか!」というのをぜひ楽しんでいただきたい。RPGで新しい鍵を手に入れたら、最初の城から戻って開かなかった扉の向こうの宝箱を確かめるように(笑)。『うみねこ』は特にそれが楽しいですよ。現時点でも、『EP1』に遡ると意味が分かることが多いですからね。でもまだ『EP1』には、開けられない宝箱がいくつか用意してありますよ。『EP5』、『EP6』、『EP7』あたりをプレイしてから『EP1』に戻ると「これ、核心じゃん!」「紙一重じゃないの!」みたいなことを思ってもらえるのではないかなと。リピートして読むことが楽しい物語になっています。もうじきアニメが始まるじゃないですか。ある種の確信を持たれた方がアニメを見ると、「ああ!」と手を打つことが多いかもしれないです。

――今お話が出たアニメ版や、コミック版の『うみねこ』でも“推理する楽しさ”というのは味わえるのでしょうか?

竜騎士07もちろんです。そのあたりはとても厳しく監修しています。『ひぐらし』では表現的な問題もあり、「どうぞご自由に」という部分もありました。しかし今回は“誤解のない表現”に関しては相当厳しくチェックしているので、推理もかなり楽しめると思います。

KEIYAそうすると、例えばアニメしか見ていない人でも推理は可能ということでしょうか?

竜騎士07アニメと原作ではやはり情報量に圧倒的な差があるので、“ヒントの量”だけから言ったら原作を遊ぶのが一番でしょうね。ただ先ほども言ったように映像と文字のミステリーでは伏線の注目度が違うので、原作では気にならなかったのにアニメでは非常に違和感を感じる箇所なんてのもあるかもしれません。それで原作に戻って同じシーンを読み返すと急に不信感が湧いてくるケースなんていうのも……。逆も然りで、映像では何も感じなくても文字で読んだら「なぜここは表現が厚いのか?」と感じる人もいるかもしれない。だから複合的に見た方が、何かの役に立つかもしれませんね。

――あえて他メディアに難易度をつけるとしたら、原作よりも難しいですか、簡単ですか?

竜騎士07謎解きの難易度を決める最初の要素はヒントの量、情報量だと思うんですよ。その見地だけからいったら、実は原作が最も難易度が低いと断言できるかもしれません。ご存じの通り、コミックやアニメではどうしても尺が短くなるじゃないですか。原作と一言一句同じ台詞、同じ描写というわけにはいかないため、必然的に情報量は少なくなります。そのため情報量的には、絶対に原作の方が難易度は低いでしょう。その代わりに原作は誤誘導も多いですが(笑)。でもそう考えると、差し引きゼロでトントンなのかな。『ひぐらし』のときと同じように、ご自身の入りやすいメディアから『うみねこ』を楽しんでいただければと思います。そしてさらに他メディアを見ることで情報が多角的に入ってくると、何かに近づける、かもしれませんね。

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この対談の完全版は『最終考察 うみねこのなく頃に』でお楽しみください。
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(C)07th Expansion/竜騎士07
カバーイラスト/ふゆの春秋

データ

▼『うみねこのなく頃に EP4』
■制作:07th Expansion
■対応機種:PC(対応機種:Windows XP)
■ジャンル:AVG
■価格:2,625円(税込)
※『EP4』には『EP1』~『EP3』の内容も収録。大手同人ショップの通信販売などで購入できる。
▼『最終考察 うみねこのなく頃に Witch -hunting for Episode 1-4』
■発売元:アスキー・メディアワークス
■発売日:2009年7月24日
■価格:1,890円(税込)
 
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