2009年8月6日(木)
――そもそも、『流行り神』シリーズの制作に至ったきっかけは?
簗瀨:新川(『1』のプロデューサー、現日本一ソフトウェア代表取締役社長・新川宗平氏)が、「アドベンチャーゲームが作りたい!」とプロジェクトを立ち上げたのがきっかけです。企画が立ち上がった当時は、まだ都市伝説ブームは来ていなかったのですが、都市伝説がおもしろいと思っていたので、都市伝説を題材にしたアドベンチャーゲームにしようと企画が進みました。
――最初から都市伝説を題材にしようと考えていたんですね。
簗瀨:ちょうど『1』が発売されるころに、都市伝説がいろいろ流行り出して、アドベンチャーファンだけではなく、都市伝説が好きな人にも注目してもらえて、すごくいいタイミングで発売できました。
――警視庁の刑事が主人公として登場するのも、最初から設定として考えていたのでしょうか。
簗瀨:いえ、そこは違うんです。実は、『1』の初期設定では、霧崎水明が主人公として作られたキャラクターらしいんです。僕が開発にかかわるころのプロットでは、すでに風海が主人公だったのですが……。
――一番初めの段階では、霧崎水明が主人公だったんですか! ということは、警察が舞台ではなかった?
簗瀨:設定的には、主人公・霧崎水明とその弟が登場するというのが、企画原案にあったようです。霧崎のポジションは、学者という設定でしたね。ただ、やはり弟は警察官という設定で、今のようにときどきアドバイザーとして頼るという形ではなく、常に事件にかかわる探偵役のような感じで主人公としていました。
――なるほど。
簗瀨:今でも、霧崎が主人公のまま制作が進んでいたら、シリーズがどうなっていたんだろうと考えますね。そうしたらまた、今とはまったく異なるゲームができていたんじゃないかなと思います。
▲霧崎水明が主人公だったら……、今よりもシブいストーリーになっていたかもしれない? |
――心霊的なものを扱うゲームですが、制作前に“お払い”などはしているのでしょうか。
簗瀨:『1』を制作する際にしました。ですが、主要のメンバーだけで先にお払いをしてしまって、参加しなかった人間から非難ごうごうでしたよ。「なんでお前たちだけ助かろうとしているんだ」って(笑)。ただ、『3』の時はお払いしていないですね……。僕1人で恐山に行って、「メンバーがみんな無事でありますように」とお祈りはしてきました。
――制作中に怪異事件があったり、怖い思いをしたことはありますか?
簗瀨:『1』の時は結構ありましたね……。立て続けにメンバーが事故にあったり、僕も車で後ろから追突されたり、デザイナーが原因不明の高熱に倒れてしまったり、データが不思議な形で壊れるとか、いろいろひどい目にあいましたね。『3』の時は、ちょうど社屋が新しくなりまして、それ以降はあまりないですね。『1』、『2』の時も、会社の建物が変わっているのですけど、どちらも会社で泊り込みするとひどい目にあってて……。
――具体的にどのようなことがあったんですか?
簗瀨:『2』を制作していた時に、仮眠していてふっと気付いたら、自分の周りを子ネコがぶわーっと囲んでジッと僕のことを見ているんですよ。それまでも会社で仮眠を取ると、よく金縛りにあっていたのですが、その子ネコに囲まれた時も金縛りになってしまって。このネコは一体なんだろうと思っていたら、一回り大きな親ネコ?のようなネコが出てきて「これは食われるわ」って思いましたね(笑)。そうしたら、周りにいた子ネコたちが一斉にかみ付いてきたんですよ。「かみ付かれた!」と思った痛みで目が覚めました。
――そんな体験を……。ご自身に霊感があると思いますか?
簗瀨:うーん、ないとは思っているんですけどね。ただ、変なことをよく体験しますね。会社から帰る前に、全員いなくなったからカギを閉めようと思って、最後に電気のチェックをしていたんですよ。その時、自分のすぐ後ろで咳払いが聞こえて。「えっ?」と思ったんですが、後ろを振り向いても誰もいない。怖くなって会社中の電気を全部つけたのですが、やっぱり誰もいなくて……。そのまま逃げ帰りましたね。霊感なのかはわかりませんけど、そういった体験を時々します。
――ズバリ、オカルトを信じていますか?
簗瀨:オカルトですか。あると思いますよ。まだ解明できてなくても、何かあると思います。科学の力では、解明できないものもありますから。
――他のAVGにはない『流行り神』の魅力はなんだと思いますか?
簗瀨:“カリッジポイント”や“推理ロジック”などのシステムや、風海純也の立ち位置も含めて、プレイヤーが参加する、自分がなりきる、その世界にいるというのを、なんとか際立たせるように『流行り神』を作ってきたので、その点は他のタイトルにはない売りになると考えています。
▲“カリッジポイント”(左画像)と“推理ロジック”(右画像)。 |
――シリーズファンに楽しんでほしい、本作の見どころやポイントはありますか?
簗瀨:小暮に対して皆さんが期待しているところは、ご満足していただけるんじゃないかなと(笑)。今回も大活躍します! それと、今までは無色透明だった風海純也に、完結編ということでかなりスポットが当たります。そこを楽しみにしてほしいですね。
――それでは最後に、『流行り神3』をこれからプレイするユーザーにメッセージをお願いします。
簗瀨:事件の被害者、加害者、そしてそれを捜査する風海たち、全員を踏まえて人間のつながり、ヒューマンドラマというのが物語の根幹にあると思います。人があってこそ事件が起きる。事件を通じての人間の思いとか、このキャラクターたちは今何を思っているのか、笑っていたり、怒っていたり、泣いていたり、怖がっていたり、そういうものを楽しみながら、一緒に体験してもらいたいと思います。
――ありがとうございました。
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