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2009年9月3日(木)

【CEDEC 2009】『ドラクエ』は藤子さんになれたらいい――堀井氏が基調講演

文:電撃オンライン

 9月1日~3日にパシフィコ横浜 会議センターで開催のゲーム技術者向けカンファレンス“CEDEC 2009(CESAデベロッパーズカンファレンス2009)”で、基調講演“国民的ゲームとは何か? ~ドラゴンクエストの場合~”が本日9月3日に行われた。

 この基調講演には、『ドラゴンクエスト(以下、ドラクエ)』シリーズ生みの親である堀井雄二氏、PS『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち(以下、ドラクエVII)』からシリーズに携わるスクウェア・エニックスの市村龍太郎氏、藤澤仁氏が登壇し、“なぜドラゴンクエストは人気を維持できるのか”、“ドラゴンクエストIXのゲームデザイン”、“これからのゲームはどうなっていくのか”という3点から主題について語った。

『ドラクエ』


1.なぜドラゴンクエストは人気を維持できるのか

『ドラクエ』

 7月11日にシリーズ最新作、DS『ドラゴンクエストIX 星空の守り人(以下、ドラクエIX)』が発売された『ドラクエ』。現在の売り上げは370万本以上を数え、市村氏も「このままいけば、国内売り上げでシリーズ最高である『ドラクエVII』の410万本を超える見込みです」と話している。市村氏は、以上の点とこれまでの売り上げグラフから、『ドラクエ』シリーズがシリーズを重ねて人気が衰えるどころか、その人気が右肩上がりにあることを説明。『ドラクエ』の人気をがどこにあるのかを探る上で、そもそも『ドラクエ』がどうやって誕生したのかを堀井氏に問う。

 堀井氏は、ファミコンでACTやSTGが流行っていた当時、「家庭用ゲーム機なら100円を集める必要はないから、RPGをできるんじゃないか」と考えたのが、『ドラクエ』を作ることになった始まりであると語る。しかし、ACTやSTGが全盛で、多くのファミコンユーザーがRPGに触れたことのない時代、まずユーザーに文字で遊ぶゲームに慣れてもらおうと世に送り出したのが、ファミコン版『ポートピア連続殺人事件』であるという。

 こうして『ドラクエ』を生み出す土台を作り上げた堀井氏だが、その制作時における最大のネックは容量。パーティ要素をはじめ、さまざまなRPG要素を削らざるをえなかった堀井氏は、1ビット単位で容量を計算しての制作を余儀なくされたのだとか。そんな中で、堀井氏が絶対的に重視したのが、“わかりやすさ”である。「アクションゲームであれば、(自分で何もしなくても)敵は襲ってくる。しかし、RPGは自分から動かなければ、何も起きない」と話す堀井氏は、説明書なしでも簡単に遊べるRPGを作るため、王様に出会って主人公が旅立っていく中で、自然とゲームのことを覚えられるようなデザイン――堀井氏いわく「ドラクエの文法」を作り上げたそうだ。

『ドラクエ』
▲わかりやすさに徹底してこだわる堀井氏。“どうぐや”という言葉1つとっても、“わかりやすい”という観点から慎重に考え抜かれたものであるという。

 “ゲームをやっていく中で必要なことを覚える”ということは、現在の『ドラクエ』にも引き継がれ、市村氏も藤澤氏も、チュートリアルっぽくせず、チュートリアルのように内容を覚えられる序盤作りをこだわり抜いていると語る。『ドラクエIX』での例をあげた藤澤氏は、セントシュタインにある教会で“しぐさ”を使うよう頼まれるクエストもその一環であり、『ドラクエIX』ではクエストを散りばめて必要なことを覚えられるような工夫を凝らしていると話した。

『ドラクエ』
▲藤澤氏も、「ここはわからない人がいてもいいのでは?」と思う場面もあるそうだが、「しかし『ドラクエ』では1%の人が困ったら、絶対数では4万人が困ることになる」と思い至り、堀井氏がもっとも重視する“わかりやすさ”を大事にしているとのこと。

 堀井氏は、とことん“わかりやすさ”にこだわる理由について、「文句を言ってくれる人はいいんですよ、ゲームをやってくれているので。一番怖いのは、わからなくて、私にはもう合わないとその後一切やってくれなくなること」と熱を込めて語る。逆に、「『ドラクエ』なら私にもできる」といってプレイしてくれるのが、とてもうれしいのだという。以上の話から、『ドラクエ』の人気を支え続ける大きな理由の1つとして、“わかりやすさ”があることがわかる。

→続いては、藤澤氏が『ドラクエIX』のゲームデザインを語る

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データ

▼『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』
■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応機種:DS
■ジャンル:RPG
■発売日:2009年7月11日
■価格:5,980円(税込)
 
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