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2009年12月14日(月)

【あの思い出をもう一度……MMO卒業白書】第2回は『クロシーノ』

文:電撃オンライン

 新しく生まれるMMORPGがあれば、また一方で去り行くタイトルもある。サービス終了の裏側には開発/運営会社の様々な事情があるわけだが、そんなこととは無関係にただ一心にそのタイトルを愛し、遊び続けたプレイヤーたちがサービス最終日をどんな風に過ごしているのか。その様子を取材すべくオンラインゲーム(MMORPGに限らず)を心から愛する筆者が最終日にゲーム内を訪問。出会った一般プレイヤーさんと交流しつつ、そのタイトルへを振り返っての思い出話や愛を、心行くまでたっぷり語ってもらうのが『MMO卒業白書』の目的である。

 第2回はジークレストが運営を担当、11月30日にサービス終了となった『CroXino -クロシーノ-(以下、クロシーノ)』の最終日“レブレン”村の様子をお伝えしよう。

『クロシーノ』 『クロシーノ』 『クロシーノ』

■善と悪が織り成す世界『クロシーノ』

『クロシーノ』

 『クロシーノ』は堕天使デルトガッツと、英雄ユークリッドによる戦いの物語をベースにしたMMORPG。剣と魔法の純粋ファンタジーではなく、ある程度は機械文明も発達した世界という設定だ。プレイヤーはファイター、メイジ、ローグ、レンジャーの4クラスから選び、クエストを進めて成長していく。『クロシーノ』最大の特徴は、善・中立・悪に分かれたクエストやシナリオが存在した点だ。例えば、ある兵士から報告書を届ける依頼を受けるのだが、「絶対に中を読まないで!」と注意される。報告書を見るも見ないも自由だが、プレイヤーは自らの選択より徐々に善または悪の性向に偏っていく。

 性向によって受けられるクエスト、所属できるギルドに制限がかかる他、2009年冬にはキャラクターの見た目も変化するMMORPGとしては画期的なシステムの導入が予定されていたが、残念ながら実現には至らなかった。

■『クロシーノ』日本サービスの歩みを振り返る

 本タイトルは韓国で人気のPCパッケージゲーム『The Fate』をベースにNglim Softが開発を手がけ、日本での先行サービス開始の噂がささやかれたのが2008年のこと。当初のタイトルは『Fate Online』であった。同年10月にはジークレストによる国内運営が決定。正式タイトル『紡がれた運命 -Chain of Destiny-』としてクローズドベータテスト(CβT)を実施するも、2009年1月には突然タイトルを『CroXino -クロシーノ-』に変更。再度CβTが行われた。その後、2009年5月上旬にオープンベータテスト(OβT)を開始し、下旬には正式サービスがついにスタートした。

 ジークレスト代表取締役兼CEOの長沢潔氏(当時)は、メディア向けカンファレンスにて「クロシーノのあらゆるゲームシステムを日本向けにカスタマイズして提供する」とコメント。韓国製ではあるが日本プレイヤーを意識した点を強調していた。実際、『Fate Online』の頃はわりと濃い目の顔立ちだったキャラクターを、アニメ風に近いトゥーンレンダリングに変えたほか、エモーションにザブングル、髭男爵、小島よしおなどお笑い芸人の動きを実装し有料アイテムとして販売するなど、他タイトルには無いユニークかつ強烈なアイディアを積極的に取り入れていた。

 しかし、それからわずか4ヵ月後の9月30日には年内サービス終了の告知が行われ、予定通り11月30日をもって『クロシーノ』の歴史は幕を閉じた。

『クロシーノ』 『クロシーノ』
『クロシーノ』 『クロシーノ』
▲最初に遭遇するエリートモンスター“ピコピコ”を倒せなかったのが今でも悔しい。

■Lv10だけど頑張ったボス戦…そして涙のお別れと予想外のロスタイム突入

 サービス終了予定時刻は17:00ということで2時間前の15:00、新規キャラが必ず降り立つエネス地方レブレン村に、Lv10ローグキャラクターの“電撃さん”がログイン。Lv10だと、だいたいエネス地方で受けられるクエストが終わりかけ、そろそろ次なるルイアン地方へ移動を考え始めるぐらいのビギナーである。

 レブレン村の港前には、既にGMたちと『クロシーノ』を最後まで楽しもうとするプレイヤー数十名が集まり、思い出話に花を咲かせていた。そのうちGMモジャさんがLv40まであと少しと判明。残り時間を利用して皆で高レベルモンスター討伐に行き、GMモジャさんのLv40到達を狙おう! と盛り上がったのはよいのだが……何しろ電撃さんはLv10である。道中のモンスターから一撃くらっただけで即死間違いなしなので、贅沢なことにGMに護衛されながら現地まで走り続けることに。あの時周囲の敵を殲滅しながら案内してくれたGMリッキーさん、ありがとうございました。

『クロシーノ』 『クロシーノ』 『クロシーノ』
▲頑張ってアルボス退治の現場に到着したはいいが、範囲攻撃の射程距離がびっくりする程長く、遠くから見守る予定が5回ほど戦闘不能になりました。最後のほうは護衛も無く、Lv30台モンスターの隙間をびくびくしながら通り抜けてみたり。

 結局GMモジャさんのLv40達成は成功しなかったが、最後は再びレブレン村に集合してGMさんが一人ひとり、別れの挨拶を述べることに。「どうすればクロシーノの楽しさが伝わるのか、常に頭を悩ましていました」「GMとして皆さまと触れ合う貴重な体験がもてました」「クロシーノは今日で終わってしまいますが、今後は本格的に同人活動に打ち込みます」など思い思いのコメントに、集まった一般プレイヤーが愛あるヤジを飛ばすという、実にほほえましい光景が続く中、無常にも流れる“サービス終了まで、残り3分です”というシステムログ。あちこちで花火や魔法エフェクトが上がり、真っ白になる画面。みんなありがとう! 『クロシーノ』ありがとう! また会う日まで!

『クロシーノ』

 ……そして唐突に訪れるロスタイム。どこでどうロスタイムが発生したのか分からないが、とりあえずこのシステムログがプレイヤーの涙を一気に笑いに変え、さらに5分ほど別れを惜しむ時間が過ぎ、最後は“Server Down....”のメッセージとともに『クロシーノ』の世界が閉じられた。

 『クロシーノ』は発表当初から開発元韓国より早い日本での先行サービスや、日本向けカスタマイズを強調し期待値も高かっただけに、正式サービス開始から約半年でサービス終了という結論に至ったのは実に残念である。現在ジークレストでは可愛いカジュアル系MMO『トリックスター0 -ラブ-』を除けば、本格RPGタイトルが存在していない。『クロシーノ』を最後まで見守ってくれた熱心なファンのためにも、次に続くタイトルの登場に期待したい。(麻生ちはや)

『クロシーノ』 『クロシーノ』
『クロシーノ』 『クロシーノ』
『クロシーノ』
▲ゲーム内だけでなく、公式サイトの掲示板にもプレイヤーからは「初めてのMMORPGが『クロシーノ』で良かった」など、涙無しには読めない暖かいメッセージが多く寄せられていた。

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