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2010年3月23日(火)

危険なアレコレも飛び出した!? “アルトネリコ ファン感謝祭 ~PHASE2~”が開催

文:ゲゲン

『アルトネリコ』の夢を実現させたR.A.H.の裏側をまるごと公開!

 つづいては、“R.A.H.システムトーク”のゲストとして、CRI・ミドルウェアの代表取締役専務CTO・押見正雄さんがゲストとして登場。発表当時から注目を集めた楽曲自動生成システム“ADAMS(アダプティブミュージックシステム)”の裏側と、それを『3』の“R.A.H.(Realtime Active Hymmnetics)システム”としてどのように昇華させたのかを、開発者自らが語る貴重なコーナーとなった。

アルトネリコ ファン感謝祭 ~PHASE2~ アルトネリコ ファン感謝祭 ~PHASE2~
▲CRI・ミドルウェアの押見さん。▲手もとのノートパソコンを使い、押見さんが自ら技術を解説。開発画面や内部パラメータの挙動が見られる、とても貴重な機会だ。

 シリーズの当初より、リアルタイムに楽曲を変化させられたらと思っていた開発陣の思いが、シリーズ3作目にしてやっと実現。それに大いに貢献をしたCRI・ミドルウェアの“ADAMS”だが、2年ほど前に土屋さんから構想を聞かされた押見さんは「楽曲はきれいにつながるのか?」と感じたそうだ。しかし開発陣の思いに心を打たれ、また、楽曲を聴いているうちに「やるしかない」と思うようになり、技術開発に力を入れたと語った。

 なお、使う波形がリアルタイムに変わるだけでなく、波形を加工して転調(カラオケでいうキーの上げ下げ)をしたり、テンポを変更したりするのが“R.A.H.システム”。波形の加工にはFFT(高速フーリエ)変換というアルゴリズムが用いられているが、そのまま加工しただけでは、歌声が子どもの声みたいになったり、スロー再生時のようにもごもごしてしまったりという問題も残る。そこで、もともとの歌声として認識される形(フォルマント)を保持することにも注力したそうだ。

アルトネリコ ファン感謝祭 ~PHASE2~
▲『3』の戦闘画面。楽曲の状態などを表す右下の波形は、音楽と一緒にリアルタイムに生成・変化する。

 開発は大変で苦しいものだったそうだが、その中にも、開発しながら素敵な楽曲を聴ける楽しみがあったとは押見さんの談。押見さんは最後に「(縁の下の力持ちである)技術者集団であるCRI・ミドルウェアとしては、素晴らしいタイトルに出会えることは感無量」と語った。なかなか表に出ることがないミドルウェア技術だが、その存在によって多くのゲームが成り立っていると実感できるひと時となった。

気になるダウンロードコンテンツの情報が明らかに!

 続くコーナーは、シナリオを担当する原田早也さんと、富松元気さんを迎えての“シナリオトーク”だ。原田さんは『3』のシナリオのメイン部分を担当し、富松さんはコスモスフィア、バイナリ野、調合、トークマター関係の会話などを担当している。

アルトネリコ ファン感謝祭 ~PHASE2~
▲シナリオを担当した原田さん(写真中央)と富松さん(写真右から2番目)。

 原田さんは、普段はアニメなどの脚本を執筆しているそうだが、今回初めてゲームシナリオのメイン部分を、ほぼまるまる書いたという。慣れない作業で大変だったが、貴重な経験ができたと語っていた。また、リッカリョーシャと光五条の恋愛部分は、ヒロインと主人公の恋愛模様に比べて、許される範囲でリアルな感じを意識して描いているそうで、特に印象に残った執筆作業だったそう。

アルトネリコ ファン感謝祭 ~PHASE2~ アルトネリコ ファン感謝祭 ~PHASE2~
▲パーティメンバーである五条(左)と、アルキア研究所の副所長・リッカ(右)。富松さんによれば「光五条は変態でしょう(笑)」だそう。主人公たちは超必殺技を使うと服を脱ぎだし、五条はふんどし姿になるのだが、それが大いに印象に残っているようだ。『アルトネリコ』シリーズでメガネをかけている男性キャラは変態ばかりでは? という疑惑も持ち上がり、話が盛り上がった。

 富松さんはシリーズを通してシナリオにかかわっている。ちなみに公式サイトで提供されているコンテンツ“トウコウスフィア”は、土屋さんと富松さんの合作だという話を初披露。ほぼ毎週のように更新される人気コンテンツの裏側が垣間見えた瞬間だった。また富松さんは、超必殺技を使うと主人公たちが服を脱ぐが、これについてパーティ間で話題になるため、そこでの会話部分、特に五条が脱ぐ理由を考えるのに苦労したようだ。

 続いて話題は、どのヒロインが好きかに移る。原田さんはサキが個人的には好みだと明かしたが、富松さんのお気に入りは(10年後の)アカネだと判明。富松さんは『2』のレイシャが好きなことを過去に公言しているが、今回のこだわりポイントは胸の大きさではないと語った。ポイントは“素敵な年上になるのではないか”という思いがあるからだそう。

 ここで富松さんが、どれぐらいレイシャが好きかがよくわかる逸話が紹介された。河内さんによると、『2』のドラマCD3巻の企画がまとまらないうちから、ドラマCD3巻の話として、富松さんが誰に頼まれるともなく、率先してレイシャの脚本を書いてきてしまったとのこと。これには河内さんも大いに驚いたそうだ。

 コーナーの最後には「どのキャラも長い間かかわって、我が子のようにかわいいので、ぜひ何度もプレイして楽しんでほしい(原田さん)」「ゲームは終わってしまったが、ダウンロードコンテンツ(DLC)や、今後のトウコウスフィアにも注目してほしい(富松さん)」と語り、2人はステージを後にした。

 そしてここで河内さんから、DLCの詳細が明かされることとなった。DLCの主役はアルルで、そこに多重人格のキャラたちが絡んでくるストーリーとなるそうだ。舞台はバイナリ野になるが、新しいヒューマが手に入るという新情報も飛び出した。公開日はまだ未定とのことなので、楽しみに待っていよう。

シリーズを重ねるごとに進化するアニメ部分に迫る

 続いてのゲストは、アニメを担当する株式会社ポイント・ピクチャーズの髙津幸央さん。アニメ部分に関する“ムービートーク”が展開されることとなり、本作より導入されて人気を博した“フリップスフィア”のアニメーションの話題で盛り上がった。なお、アニメ部分の制作に関しては、土屋さんから方向性だけは伝えられるそうだが、デザインなどについてはすべて髙津さんの感性で制作されているとのこと。

アルトネリコ ファン感謝祭 ~PHASE2~
▲『3』のアニメーションパートを担当する、株式会社ポイント・ピクチャーズの髙津さん。『1』のころからアニメ部分の制作に携わっている。

 アニメ制作では通常、絵コンテ(ラフ画によるアニメの設計書のようなもの)を作ってから原画を仕上げ、そして実際にアニメーションにするのだが、制作期間がギリギリだったこともあり、原画を仕上げて、そこから逆に絵コンテ(すでに本番のムービーに近いものだった)を土屋さんに見せたという裏話も飛び出した。制作側の確かな実力と、発注側の信頼があるからこそ成り立つ手法といえる。

アルトネリコ ファン感謝祭 ~PHASE2~
▲サキの“フリップスフィア”で登場した馬は、実は髙津さん手製の実物があることが判明。制作期間は3日ぐらいとのことだが、これを使用したアニメは、実写との見事な融合を見せている。また、スズノミヤの“フリップスフィア”の制作手順も一部公開された。

 他にもおもしろい話として話題に挙がったのが、『2』のオープニングを作った時のこと。制作を始める時になっても、『2』の主題歌『謳う丘~Harmonics FRELIA~』の完成版が間に合わず、土屋さんが自ら歌い加工した仮歌を髙津さんに渡し、それをもとにして作ったそうだ。

 この音声データが実際に会場で披露されたのだが、クリプトン・フューチャー・メディア社の『初音ミク』に代表される、ボーカロイドで特に手を加えず作った歌声のような、合成音的で、女性の声に聞こえなくはないといったものだった。しかし、土屋さんが歌っていることを知っている髙津さんからすると、土屋さんの顔が浮かんで仕方なかったとのことで、これが観客の笑いを誘っていた。

 そして、『2』で仮歌を作る作業が大変だった経験も踏まえ、土屋さんが『3』の『謳う丘~Harmonics TILIA~』の仮歌を作る際には、実際に『初音ミク』を用いて労力をカットしたそうだ。そして、『初音ミク』のおかげで歌のクオリティが上がったものを髙津さんに渡したそうだが、髙津さんはこれも土屋さんの声だと思っていたとか。

 また、アニメでたびたび登場し、『3』のオープニングでは圧倒的な美しさだった“鳥が飛び立つシーン”について、土屋さんがこれを絶賛。鳥が好きだという土屋さんは「至福の時を過ごせた」と語るが、実はシリーズ開発当初に、土屋さんが鳥について話していたことが髙津さんの中で強い印象として残っていたそうで、それもあり髙津さんは「これでもか」と鳥を盛り込んだそうだ。

アルトネリコ ファン感謝祭 ~PHASE2~ アルトネリコ ファン感謝祭 ~PHASE2~
▲オープニングの1カット。左のシーンをはじめ、鳥が飛び立つカットがとても印象的なムービーとなっている。右は、“白飛び”が懸念されたシーン。

 最後に、オープニングアニメの途中で、白く半透明のモノリスのようなものが画面を満たす真っ白なシーンで、さらに白い“ヒュムノス文字”が流れるところが話題に挙がった。ポイント・ピクチャーズの社長は“白飛び(白が強すぎて画面が白で潰れること)”が起きないかを心配していたそうだが、絶妙な出来栄えと、TVの表示能力が格段に進歩していたこともあって、懸念されていた事態は起きなかったことを明かした。

>> いろんな意味でアツくなった3Dパートの開発秘話!(3ページ目へ)

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※画面は開発中のものです。
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■ファン感謝祭 概要
【開催日時】2010年3月21日(日)13:30~15:30予定(開場13:00)(※終了)
【開催会場】ベルサール秋葉原 B1ホール(東京・秋葉原)

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