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2010年4月24日(土)

新キャラってどんなヤツ!? ワロスコンボまだあるの!? 『スパIV』の小野Pを直撃!

文:電撃オンライン

――話を戻して、『スパIV』のシステム面についてお伺いします。公式のブログに、旧キャラクターの調整をする時は“手触り感が同じになるように”とよく書かれているのですが、小野さんが考える“手触り感”とは具体的にどういったものなのでしょう。

小野さん:よくバトルプランナーに「君らがイケてると思っている手触り感はイケてない」と言うんです。ゲームそのものが違いますから、現役バリバリの人が首を傾げるのは仕方のないことだと思うんですよ。それよりも、昔遊んでいた人が「こんな動きがあった!」と自分の思い出と一致させられるような動き。それが旧キャラに必要な手触り感だと思っています。思い出は人によって違うので、なかなか難しいんですけどね。あと、よく寄せられる要望の1つに“簡易入力を止めてくれ”といったものがありますよね。(『ストIV』は、少し入力があいまいでもコマンドを受け付けてくれる“簡易入力”仕様になっている。たとえば右、下、右下と昇龍拳コマンドを入力する際に、下、右下、下と入力しても昇龍拳が出る)

――よく話題に上がりますね。

小野さん:『ストII』を昔遊んでいたプレイヤーって、ブランクもあってなかなか自分の思ったようにキャラクターを動かせないと思うんです。なので、自分の記憶通りにキャラクターを動かして、手触り感を感じてもらえるようにするためにも、簡易入力を取り入れています。思い出を一致させるのが難しいと今お話しましたが、難しいからこそ、入力でつまずいてほしくないんですよ。上級プレイヤーからは技が暴発してしまうと言われるのですが、そこは初心者に配慮して、暴発しないように練習してほしいと思うんです。それがわれわれからのお願いでもあります。初心者が増えることによってゲームも盛り上がると思いますから……。初心者と上級者、その最大公約数を取ったのが、今のこの操作感覚なのかなと思っています。

――今回ウルコンが各キャラ2つになりましたが、公式ブログに「豪鬼のウルコンIIの評判が悪い」と取り上げられていましたよね。ぶっちゃけた話、確かに豪鬼についてはあまりいい評判を聞かないのですが、追加されたウルコンについてはいかがでしょう?

小野さん:ウルコンIIは、『III』で各キャラのスーパーアーツが鉄板になってしまっている現状を知った上でチャレンジしようと思ったんです。対戦相手に向けて使い分けができる、もしくはプレイヤーごとのプレイスタイルに合うものを選べる、そういうものを目指しました。たとえばジュリの場合は、相手が待ちキャラを使うならオリコンのようなことができるウルコンIを、飛び込みが多い相手にはウルコンIIを使うなどですね。とはいえ、実際ウルコンIIの反応を見ると、あまり評判がよくないものがあるんですよね(笑)。

――当て身系のウルコンなどもそうですよね。たとえば、『ストIII 3rd』のレミーのスーパーアーツIII“傷心のノクテュルヌ”が使われない理由の1つに“暗転後に出る当て身”というのもありますし……。

小野さん:スタッフとしては、一応すべてのウルコンにちゃんとした使い道を用意して、自信を持って送り出しているつもりです。単発では使えない技でも、他の技と組み合わせることで生きるようなデザインにしているものもあります。『ストIV』で不利だと言われていたガイルやバルログなどのタメ系のウルコンについても見直していますし。われわれとしても、『III』を踏まえて作ったので、まずは食わずぎらいをせず、ひと通り使ってみてほしいですね。それがスタッフからのメッセージです。それでどうしても使えないようなら切り捨ててくださって構いません!

――ブログを読んでいて、ユーザーさんからコメントが付けられるオフィシャルブログは珍しいなと思いました。しかも今のような“評判が悪い点”やサガットの“ワロスコンボ(※)”などについても、包み隠さず受け止めていますよね。やはり格闘ゲームは、他のゲームに比べてユーザーさんとの距離が近いのでしょうか。

(※【タイガーアッパーカット(EXセービングキャンセル前ダッシュ)→ステップハイキック→タイガーデストラクション】のコンボの通称。簡単なわりにすさまじいダメージを叩き出すことや、タイガーアッパーカットの相打ちからも決められるコンボ確定状況の多さなどからこう呼ばれることになった)

小野さん:『ストIV』自体、ユーザーさんの声が多かったから制作できたものなんです。今までに何度もお話した通り、『ストリートファイター』シリーズを復活させる話を出した時に、社内の反応はあまりよくなかったんですよ。でもそれをずっと支えてくれたのは、プレイヤーの皆さんの声なんです。なので、それをシャットアウトするのはあり得ないと思っています。格闘ゲームは、コミュニケーションのツールの1つなので、主人公はキャラクターではなく、そのキャラクターを使うプレイヤーの皆さんなんです。主人公の声を聞かないわけにはいきませんよね。でもプレイヤーの皆さんの意見を聞くのに座談会を開くわけにもいきませんので、あのようにブログにコメントを付けられるようにしています。われわれからプレイヤーの皆さんへの感謝であり、開発手法ともいえるのかもしれません。

『スーパーストリートファイターIV』

――家庭用『ストIV』の売り上げについてはどう受け止めていますか?

小野さん:海外は、『スーパーストリートファイターII HD』(※『Super Street Fighter II Turbo HD Remix』)のダウンロード数などを見て、ある程度売れそうな気配を感じていたのですが、日本での反応は正直思っていた以上でした。予想を上回る反響をいただき、家庭用のゲーム機で『ストリートファイターII』を遊んでいた人たちの期待に応えられたのかなと思っています。昇龍拳や波動拳を出すだけで楽しい『ストII』の原点を、ちゃんと届けられたかなと。同時に、待っていてくれた人たちがこんなにいたということがわかり、まだ日本でもやっていけるなと安心しました。

――今年も公式大会が開催されましたが、ユーザーの盛り上がりを見てどう思われますか?

小野さん:今回の地方予選は、ユーザーイベントと言ってもいいぐらい、現地の人たちに協力してもらったんです。『ストIV』の大会は、さまざまなところでユーザーの皆さんの手で開かれていて、今回の公式大会もその延長線上にあるものとして盛り上げていただけました。今回は3人1チームだったのですが、地方予選でも20~30組のチームが集まり、関東予選(2)では40組を越えました。こういう現状を見ると、アーケードユーザーの熱もまだまだ冷めていないなと思います。実力も去年に比べて格段に上がっており、やり込んでもらえたのだと感じました。格闘ゲームって、負けた方がお金を払わなければならないという厳しいシステムなのですが、それでもこれだけ遊んでもらえて、とてもうれしく、ありがたく思っています。

『スーパーストリートファイターIV』

――大会は熱い試合の連続でしたよね。

小野さん:予選から一貫してなんですが、予想を覆す試合展をひん繁に見ることができた大会だったのではないでしょうか。3on3という性質上、ワンサイドマッチにならない良い試合展開を見ることができましたし、大会にフォーカスを当てても、最後の最後までわからないカードが多く存在しました。プレイヤーの皆さんは、自分のキャラはもちろんのこと、相手になるであろうキャラに対しての対策と研究が昨年以上にできていて、非常に見応えがあったことは間違いないでしょう。

――ガイルやバルログなど、いわゆる弱キャラも含めて全キャラクターを壇上で見られたのには驚きました。

小野さん:キャラ愛と、各プレイヤーの研究心と、情熱ですね。どうしても、相性の良い相手が多いキャラと、相性の悪い相手が多いキャラが出てくるのですが、後者を扱うプレイヤーがこういう壇上に集まると、ちょっと並々ならない愛情を感じますよね。

――『ストIV』も研究が盛んですよね。大会の直前にもウルコンのガード不能ネタ(※)が見つかっていましたし、まだまだやり込まれ続けているのだなと思いました。

(※特殊な状況において、ウルコンの暗転中に、相手がガードできなくなる現象を利用したテクニック。たとえば、起き上がりに飛び道具を重ねてウルコンを発動させると、飛び道具がガード不能になる。キャラクターによっては、続くウルコンを確実にヒットさせられる)

小野さん:ありましたね(笑)。開発段階でわかってはいたのですが、実際にガード不能を狙うとなると、フレーム的に非常にシビアだったんです。失敗すると手痛い反撃を受けてしまうのでリスキーですし。これが見つかったことで、もしもゲームバランスが崩壊してしまうような凶悪なコンボが生まれてしまったら調整しようと思っていますが……。この現象については、『スパIV』でも調整を入れていないので可能です。ただサガットのワロスコンボのように、一度見つかると一気に広まってしまう可能性もあるんですよね。開発陣としては、ワロスコンボはもう少し弱いかなと思っていたのですが、プレイヤーのやり込みがそれを上回り、ちょっと強すぎるかなと思えるレベルになってしまいました。

――ワロスコンボは、稼働初期からサガットの基本コンボになっていましたからね……。

小野さん:そうですね。ただ大会を見ていると、サガットで勝ち抜く人って少ないんです。『ストリートファイター』のいいところって、強いキャラに対する反骨精神だと思うんですよ。『ストリートファイターII’』でベガが使えるようになり、あの強いキャラをどうすればいいんだろうとみんなで必死に考えて、半年ぐらいで最強の座から引きずり下ろしましたよね。あの精神がまだ受け継がれていると思うんです。『スパIV』ではサガットに対して、ワロスコンボなどやれることはそのままにしつつ攻撃力などに調整を入れましたけど、キャラクターの相性にデコボコがあるのが『ストリートファイター』のおもしろさでもあると僕は考えています。今回の大会は団体戦なので、どこで誰を出すか作戦を練るのも楽しみの1つだったのではないでしょうか。

→対戦動画をたっぷり鑑賞! 
『スパIV』の目玉は“リプレイチャンネル”!!(4ページ目へ)

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データ

▼『スーパーストリートファイターIV』
■メーカー:カプコン
■対応機種:PS3/Xbox 360
■ジャンル:FTG
■発売日:2010年4月28日
■価格:通常版 4,990円(税込)/コレクターズ・パッケージ 5,990円(税込)(イーカプコン限定版は通常版 6,490円(税込)/コレクターズ・パッケージ 7,490円(税込))
 
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