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2010年4月29日(木)

【ケイブ・コラム第3回】新川はるか氏がオンラインゲームの運営について語る!

『haruka』
▲新川はるか氏は『真・女神転生IMAGINE』の運営プロデューサー。その名前から女性と間違えられることも多いとか……。

 もう桜の時期も終わっているはずなのに、真冬並みの寒さに見舞まわれたり、かと思えば翌日は春うららだったりで、そろそろこの世の終焉を感じ始めています。
 しかし、よくよく考えてみれば昔は肉まんだって冬の風物詩だったはずです。そう思うと、この気候の乱れもそのうち“当たり前”になっていくんだ、なんて恐ろしい。そんな妄想ばっかりの新川です。皆さん、ご無沙汰しておりました。

 前回の更新から、だいぶ日数を経てしまいました。やはり社交辞令だったとしても「自由に書いてください」と言われてしまうと、自分の中でユルい感覚ができてしまい「まー、いいかあ」的な展開に陥りがちです。
 今回もそれとほぼ同義だったのですが、とある知人より「君は誰に向けて原稿を書いているのか? 電撃さんに対しては契約のようなものかもしれないが、君自身はユーザーに向けて発信しているはずだ。彼ら彼女らに対して、君自身が不義理を働くのか」と諌められました。自分の未熟を恥じるとともに、今後は少なくとも月イチくらいの間隔で、こんなコラムでよろしければ皆様にご提供できるよう、心を入れ替えて励みたいと思います。


 さて、いつだったかの「オンラインゲーム&コミュニティサービスカンファレンス(通称OGC)で「伝えること(手段)が大切なのではなく、伝わる事(結果)が大切なのだ」という内容で講演したことがあります。

 要するに、ただの自己満足で終わらないように、ということを言いたかったのですが、それを押さえた上で、今度は誤解が生じずに、かつ効率的な伝達手段としての技術が必要となってきます。前回の予告通り、今回は“直感的な表現”について、話してみようと思います。

 まあ、結論から言うと「わかりやすいこと」でしかないんですが(笑)。いや、目的を遂行するためのテクニックなら幾つかあるのですが、外してはいけないポイントが一つあるので、まずはそこから入ります。

 自分が抱えているコンテンツである『真・女神転生 IMAGINE』でも最重要視している問題として「ゲーム内外を問わず、とにかくわかりづらい」というものがあります。

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▲『IMAGINE』は、名作RPG『真・女神転生』シリーズの世界観やゲームシステムを継承したオンラインRPGだ。

 どんなに魅力的な新実装を入れたとしても、それがどうすれば、どうなり、どういうメリットをもたらし(あるいは、デメリットをもたらし)、どういう結果が待っているのか、これらが「まず、やってみないことにはわからない」。これでは、その楽しさは半減どころか、やってすらもらえない可能性すらあります。その後、いくらワクワクする展開が待っていようと、初動で「死に実装」と判断されてしまいます。

 例えば……。

 ちょっと前から、サポート宛に届いたご意見やデータを見ていると、どうも初期のイベントをクリアできずにゲームそのものを辞めてしまっているプレイヤーがいるのです。初期のクエストといえば、さほどレベルが必要でもないし、どちらかというと作業感覚なものが多く、そういった意味では謎解き要素もあまりないし……。これには、当時の開発責任者と首をかしげたものです。

 その内容は「悪魔(敵)を一体、仲魔(仲間)にしてもってくる」というもの。5分もあれば終わるものだし、何故ここでつまづくのだろう……。他にもわかりにくいクエストは山のようにあるのに……。

 で、話を紐解いていくと、一つの事実に突き当たりました。「どうやって仲魔にするの?」と。ほとんどのプレイヤーは、その方法がわからないため、イベントをクリアすることができないでいたのです。そして、お問い合わせの一つで発覚したこの疑惑は、『IMAGINE』も『女神転生』(以下メガテン)シリーズもまったく知らない人にプレイさせることで、事実と判明しました。

 重大な事を我々は忘れていたのです。「悪魔と交渉して仲魔にする」このルーチンは、『メガテン』シリーズを体験したことのある方なら、必ず知っている点です。そして、我々は『真・女神転生』を冠したオンラインゲームを作っているという事実から、すべてのプレイヤーが『メガテン』ユーザーであると思ってしまったのです。

『新川はるか氏』 『新川はるか氏』 『新川はるか氏』
▲約200種類に及ぶ悪魔が登場する。遭遇した悪魔と会話し、交渉が成立すると仲魔になる。ただし、悪魔たちはひと癖もふた癖もある個性的な奴らばかり。数回の会話で仲魔になってくれることは珍しいのだ。

 そう考えると、なるほど、『メガテン』でお馴染みのデジタルデバイス・COMPを用いて、当初は敵である悪魔たちと“会話”することで、頼りになる仲間、つまり“仲魔”になるということは、最初にちょろっと説明しているだけで、まったく体験させていません。これでは、方法がどうとかいう以前に、プレイヤーの中で「自分が何をすればいいのか」というイメージが湧いてきません。能動的にプレイする上で、一番大切な理由がなくなってしまうのです。

 イメージがつかないことと、謎解きとして提供するのとは別のはずです。ここを混同していると、とかく自己満足に陥ってしまう。


 昨今、「スーパーマリオは、やっぱりすごい!」などと言う話をよく耳にします。とりあえず右に進む、クリボーが迫ってくるからジャンプをする。ゲーム開始後、10秒足らずの間で、プレイヤーは基本コマンドを覚えてしまう。付け加えて、なんだったかの記事で見たのですが『スーパーマリオ』や『ゼルダの伝説』のプロデューサーであり、現在は任天堂代表取締役である宮本茂さん曰く「マリオに出てくるオブジェクトとかキャラクターは全部、見ただけでその機能が説明されていないといけない」そうです。

 トゲが付いていたら触っちゃダメとか、燃えているものに触れてはいけないとか、そういうレベルにまで落とし込むようです。「ただの絵柄として表現されているものは駄目なんですね」と締めくくっていましたが、「なるほど!」と思いました。
 反射的に「やばい!避けなきゃ!」とプレイヤーが自発的に行動に起こすこと、これを狙ってやることが“わかりやすく”“直感的な”ゲームなんでしょう。

 RPGで考えると「道で襲われている女の子を見つけました、どうしますか?」と問われれば、事の真偽はともかく、まず助けてみたくなる。実は、その子が生き別れた妹だろうが、地球の命運を握る巫女だろうが、影の黒幕だろうが、超電磁砲を撃つエスパーだろうが、あるいは関わったら自分がとばっちりを受けることが確定していようが、とにかくまずは「助ける(関わる)」事を、プレイヤーは選択するのです。

 時代を経て、なお色褪せない名作を今一度プレイし、当たり前のように行われてきた「基本どころ」を、掘り返してみるべきなのかもしれません。


 末尾になってしまいましたが、『真・女神転生 IMAGINE』も3周年を迎えました。これも、一重に皆さんのおかげであると思っています。まだまだ魅力的な企画が進行中であり、4年目はおろか5年目、6年目へと突き進んでいくつもりですが、まずは皆さんに「ありがとう!」を。そして、今後とも『真・女神転生 IMAGINE』をよろしくお願いいたします。

『imagine』
▲5月13日まで期間限定イベント『 Depth Devil Desire 』を実施中! 魔階深層部に出現する恐るべき“魔人”が出現するようだ。はたして魔人の正体とは? 『真・女神転生 IMAGINE』は基本プレイ料金無料なので、興味がある人は大型連休中にプレイしてみては!?

(C) ATLUS / (C)CAVE

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