2010年5月14日(金)
日本クラウンから5月12日に発売された音楽CD『Close to you』。この楽曲を手掛けたロックバンド・ALvino(アルヴィノ)のメンバーにインタビューを行った。
ALvinoは、ギタリストのKOJIと潤、ボーカリストの翔太という3人で構成されたスリーピースバンド。バンド名の“ALvino”はメンバーによる造語で、ALは“alchemy”、viは“vision”、noは“normal”を表している。
5月12日にリリースされた『Close to you』は、2009年9月に発売された3枚目のミニアルバム『capsule』以来となる待望のニューシングル。表題曲の『Close to you』は、TVアニメ『遊☆戯☆王5D’s(ファイブディーズ)』のエンディングテーマに採用されている。カップリング曲として『こもれび』と『My Mother’s Day』を収録したAタイプと、『こもれび』とプロモーションビデオDVDが入ったBタイプの2種類が発売される。
▲こちらが、3曲入りのCDを収録したAタイプ。 | ▲こちらが、2曲入りCDとプロモーションビデオDVDを収録したBタイプ。 |
インタビューでは、彼らがバンドを結成した経緯から最新楽曲の誕生秘話などを細かく迫っているので、ぜひご覧いただきたい。(インタビュー中は敬称略)
――まずは、今回の曲でALvinoを初めて聞く人のために、バンドを結成したいきさつを教えてください。
KOJI:俺とギタリストの潤は、以前にそれぞれ、La’cryma Christi(ラクリマ・クリスティー)とPIERROT(ピエロ)というバンドをやっていて、事務所が一緒だったんです。ただ、プライベートで交流はあったけど、音楽的な交流は少なかった。そんな時に、「作る音楽がちょっと似てる」ということを言われて、「空いてる時間に曲作りでもしてみようか」みたいな話があがったんですね。
そんなやりとりをしている中で曲がどんどん生まれてきたんですが、俺も潤も歌うタイプではなかったので、ボーカルを探しました。ボーカルオーディションというと聞こえはいいですが、どっちかというと発掘ですね(笑)。ライブハウスに行ったりとか、人に紹介してもらったりとか。でもボーカル探しは難しくて、丸1年くらい探していましたね。諦めかけたその時に、北海道でアマチュアで歌っていた翔太を紹介してもらい、この3人がそろいました。
――KOJIさんと潤さんの2人で、全国いろいろ探したのですか?
KOJI:東京都内から関東近郊はかなり行きました。MDで送ってもらったのは本当に全国的でしたね。あとは、名前伏せてメンバー募集もしました。「もしかしたらお宝が眠っているかも!」と思ってですね……まあ、うまくいきませんでしたけど(苦笑)。
――翔太さんは応募されたのですか? それとも2人が発掘したのですか?
翔太:プロを目指して函館でバンドしていた時、知り合いのラジオ局の人から曲を聞かせてもらったんです。身元を明かされずに曲だけだったんですが、すっごくいい曲でした。素直に「この曲を自分で歌いたい!」と思いましたね。その気持ちのままに、東京に行ってスタジオの中でオーディションみたいなものをしました。
――そこで、初めて2人に会った?
翔太:はい。歌う時に初めて紹介してもらいました。
――第一印象はどうでした?
翔太:北海道から飛行機に乗って出てくる時に、「プロでずっと10年くらいやっている人たち」という話を聞いて、いろんな妄想をしていたんです。プロの世界って、あんまり会話をしないというイメージだったんですが、すごく自然というか、壁を作らずに前から知ってるような感覚で接してくれたんですね。そういう感覚もよかったんですが、いい曲や歌に出会ったり聞いたりした時に、すごく目がキラキラするんですよ。それを見た時に、音楽が本当に好きな人なんだなっていうのを感じました。経験という面で2人に遅れをとらないか気になったんですけど、感覚的に近い位置でやれそうだと感じましたのを覚えています。
――なるほど。先ほど部屋に入る時、3人とも和やかな感じだったので、仲がいいんだろうなと感じました。
KOJI:音楽をやっている時の表情は怖いって言われるんですけど、楽器持ったり歌ったりしていたら、真剣になっちゃうんですよ。PVはもっと笑顔があってもいいかなと思うんですけど、でもついつい楽器を手にするとそういう顔になっちゃいますね(笑)。本当はいたってなごやかなんです。むしろ、和やかすぎるバンドなんで。
――では、今回のシングル『Close to you』についてお聞きします。この曲を作られたのは潤さんということですが、どういったきっかけでできたのでしょうか?
潤:去年、アコースティックツアーを3人で回っていたんですが、ライブで毎回新曲を1曲ずつやるのを自分たちのノルマにしていたんです。そんな中で生まれた曲が、『Close to you』とカップリングに入っている『My Mother’s Day』の原曲になるものでした。ツアーは、当日の朝まで曲を作ってギリギリでメンバーに渡して、その日に演奏するという、濃密だけど幸せな音楽漬けの時間でした。あと、ライブを見に来ている人の反応で、曲の感触を直で感じられるんですよ。この2曲は、作っていった曲の中でも評判がよかった2曲です。
――KOJIさんと翔太さんは、この曲を朝に聴いてその日に演奏されたんですよね? 最初に聞いた時は、どんな風な感想を持ちましたか?
翔太:アコースティックだったんですが、疾走感があって、前に向かう感じだなっていうのを感じました。すごく力強くて、前を向かしてもらえる曲だなって。
KOJI:ツアー中は毎回新曲をやっていて、ライブまでに曲を覚えないといけないじゃないですか? 曲を覚える時に動く脳があるんですよ。その脳は感情的な部分は少なくて、むしろ事務的にコードを入れていました。ただ、ライブでやった時にお客さんの反応がすごくよかったんですね。こっちも楽しい気持ちでプレイしていたら、それがまたお客さんに伝わった。その時に「この曲はやばいかも」って、感情的になりましたね。メロディの雰囲気や歌詞は今とは少し違ったんですけど、伝えたいテーマというものは大きく外れたものではなかったですし、とにかく盛り上がりました。
――アコースティックでも盛り上がったんですね。
KOJI:俺たちのアコースティックライブは、すごく盛り上がるんですよ。アコースティックっていうと、しっとりとした感じを想像されるかもしれないですけども、とんでもございません!(笑) ぜひ見にきてください。
――楽しみにしておきます。リリースされる『Close to you』は、ツアー中とはかなり違うものになっているのですか?
潤:その時は、その日しか聞けないという感じでやっていたので、その原曲を持ち帰ってきて手直ししたり、歌詞も変えたりしていたところ、『遊☆戯☆王ファイブディーズ』の話をいただきました。
KOJI:ツアーが終わったあたりで、『遊☆戯☆王』のタイアップが遠いところで聞こえたんですよ。まだ自分たちの手でつかんだというよりは、「それにエントリーしてみない?」というものだったので、作品の伝えたいことを調べていったんです。そうしたら自分たちが音楽で伝えたい“絆”や“友情”、“人と人とのつながり”というのが、そのまま作品のテーマになっていたんです。そこで潤が、そのテーマに合わせて歌詞を少し書き換えて、プレゼンに出しました。そしたら、採用していただいたという経緯ですね。
――やっぱり、テーマがマッチしていたのが評価されたのでしょうか?
KOJI:そうかもしれませんね。自分たちの伝えたいことと正反対であったら曲を作った潤も苦労したかもしれないですけど、自分たちと近いものを感じたから、「ピッタリはまるものを作れるはずだ!」って話ながら作っていましたね。
――曲を作る際、制作サイドからオーダーはありましたか? それとも、オーディションに参加するにあたって、自分たちで世界観を調べたんでしょうか?
潤:テーマとして友情と絆ということと、小・中学生の視聴者が多いので絆というキーワードはもらいました。
――『Close to you』は“君の側”という意味ですが、このタイトルをつけた理由を教えてもらえますか?
潤:アコースティックツアーは、いろんな場所でやったんです。普通のライブハウスだけではなくて、ライブスペースがあるカフェの延長上みたいところでやったり。距離的にすごく近かったんですけど、距離だけじゃなく、僕らの音楽を通して結ばれる、それこそ絆みたいなものがすごく近く感じられて、聞いてくれている方の側にALvinoの音楽がいつもあればうれしいなっていう気持ちも込めて、このタイトルにしました。
――KOJIさんは、どのフレーズが一番お気に入りですか?
KOJI:サビはもちろんいいんですけど……自分の中でうれしくなったのが、アニメが放映されて1週間もたたないうちに、知り合いの子どもが『Close to you』を歌っていたということを聞いたんですね。自分の中でいろいろな世代に共感を持ってもらいたかったし、メロディがキャッチーで伝わりやすいものにしたいと思って作ったので、それがそんなに早く受け入れられていることが、すごくうれしかったですね。
――翔太さんは、歌っていて一番楽しい部分はどこですか?
翔太:やっぱりサビですね。“大事なこと胸に刻み込んで、強い心はひとつだけなんだ”っていう言葉は、アニメのテーマと自分たちの音楽で伝えたかったことが一緒だから、生まれたもの。歌っていて、そこがすごくマッチしていたので楽しかったです。「いいタイミングでこの曲をリリースでき、しかも『遊☆戯☆王』のスタッフの人たちに出会えてよかったな」って思いながら歌っています。
――ちなみにエンディングの映像はチェックしましたか?
KOJI:見ましたよ。“ALvino”っていう文字が大きく出たのが、すごくうれしかったです。あと、アニメを作っている人たちが、自分たちの音に合わせて映像を作ってくれているので、音楽にあわせて絵が変わったり、キャラが動いたりする。放送の時に始めて見たんですが、その演出もすごくうれしかったですね。制作スタッフに電話したかったくらいですもん(笑)。それくらいに、テンションが上がりました。
翔太:まず、自分の声がテレビから聞こえてくることに感動しました。それと同時に、曲に対して絵を作ってくれているのに感動しましたね。ちょうどその回……というかアニメなんですが、悪い奴に仲間の女の子が卑怯な手で倒されるんですよ。だけど主人公たちのチームは、悪いことをやっているって言わないで、正々堂々バトルしようとするんですね。そこも“強い心は1つだけなんだ”という歌詞とピッタリだと思いながら聞いていました。
――この曲があってこそのエンディングみたいな感じですね。
翔太:アニメを作っている方と一緒にものを作れている感覚が、すごくうれしかったです。感動しました。
KOJI:これまでも翔太は、CDが発売されてPVが流れているのを見るたびに感動しているんですよ(笑)。
翔太:アハハハハ。前もライブが終わってメンバーでゴハンを食べていたら、テレビに自分が出てきて、「おおっ!!」と感動しましたね。
潤:僕は曲を作りながら、アニメをずっと見てたんですね。そしたら、結構ファンになっていて……昔、マンガでやっていた最初の『遊☆戯☆王』は読んでいたので、エンディングの映像を自分の中で絵を想像しながら、作っていました。ところが、できあがった映像は想像以上にシンクロしていて、DVDレコーダーに録ったエンディングを何回も見ていました(笑)。そのくらいよかったですね。
――ちなみにKOJIさんと翔太さんは『遊☆戯☆王』については、どれくらい知っていましたか?
KOJI:もちろん名前は知っていましたが、細かいゲームのやり方やストーリーは知らなかったです。マンガもアニメもちょこっとだけ見たことはあったんですけど、通して見ていなかったですね。
翔太:僕は下の弟がすごいはまっていて、カードを何百枚も持てるんですよ。カードを見ながら一緒に過ごしていましたし、街中でも『遊☆戯☆王』を耳にしていたので、採用されるかされないかの時はずっと緊張していました。
――きっと弟さんも、今回のタイアップを喜んでいると思いますよ。
翔太:そうですね(照れ)。最近、カードゲームをメンバー内でやっているんですが、弟にどうしたら強くなれるかを逐一聞いています!
KOJI:タイアップが決まってうれしかった時に、「もっと『遊☆戯☆王』を知りたいね」ってメンバーで話をして、3人でカードゲームのセットを買ったんですね。でも、翔太は弟に聞いているから、強いんですよ。ズルイです(笑)。
翔太:1回も2人には負けてないです。“シンクロ召還”っていうのがポイントなんですけども……横の2人にはあまり言いたくないんですけども、大会のデッキとかも参考にしながらカードを選んでいます。
KOJI:それを紹介しているサイトをすぐ見に行こう!(笑)
――ワハハハ。今日はカードを持っていないのですか?
KOJI:ツアーのカバンに入れてあります。ちょっと時間がある時とかに対戦するんですよ。子どもたちがハマルのはわかりましたね。男の子にはたまらないゲームです。
潤:あれが小学校の時にあったらヤバイよね? 学校に持っていきますよ! この歳でカードをすっげぇ買ってますもん。
(一同爆笑)
KOJI:一番今『遊☆戯☆王』にハマってるのは潤かもしれないですね。
翔太:まあ、枚数があれば強いかどうかは別ですけどね(笑)。
潤:いやいやいや、次は負けない……ということを毎回言ってたり。
KOJI:大人になると、なかなか仕事以外で集まって「ゲームをしよう」ってないじゃないですか? バンドをやっていると、仕事を一緒にして移動も同じだったりするから家族よりも過ごす時間が長いんです。なので、同じフィールドで勝負できるのはいいですね。
翔太:キャリアや年齢に関係なく、フラットに勝負ができるのもいいです。むしろ、ちょっと有利なぐらいで(笑)。
▲ALvinoの3人。左からKOJIさん、翔太さん、潤さん。 |