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2010年11月25日(木)

『みんなで牧場物語』ができるまで、オンライン版ならではの魅力を聞いてきた

文:電撃オンライン

 マーベラスエンターテイメントがあの『牧場物語』の新作を、今度はブラウザゲームで発表した。すでに2度のクローズドベータテストが行われた『みんなで牧場物語(以下、みん牧)』は、既存作品が持つ独特の温かみはそのままに、箱庭ゲームとして自分だけの“島”をコツコツ育てる楽しみに注力した作品らしい。さかのぼれば1996年の初代『牧場物語』から愛されてきた本作品が、ブラウザゲームになることでどう変化したのか? 詳しい話をマーベラスエンターテイメント 『みん牧』プロデューサー平田真氏、ONE-UP 『みん牧』ディレクター 稲本崇氏、同プロデューサー廣田隆行氏の3人に聞いてきた。

『みんなで牧場物語』
▲左からONE-UP 稲本崇氏、マーベラスエンターテイメント 平田真氏、ONE-UP廣田隆行氏。

――本日はよろしくお願いいたします。あの『牧場物語』がブラウザゲームになると最初に聞いたときは、個人的にもかなり驚きました。まず、『みんなで牧場物語』のポジションですが、『牧場物語』シリーズの最新作という扱いになるのでしょうか? それとも番外編ですか?

『みんなで牧場物語』

マーベラスエンターテイメント 平田真氏(以下、平田):うーん……『牧場物語』が持つコンセプトや作り方の思想は当然、『みんなで牧場物語』でも共有しています。しかし、企画のあり方などはコンシューマ版とブラウザゲームではまったく異なります。メインストリームはやはりコンシューマ版になるので、『みん牧』はそれと平行した作品です。

――では次に、開発までの経緯を教えてください。

平田:皆さんご存知の通り、弊社はコンシューマゲームの開発を行ってきました。ですから、オンライン事業については新規参入ということで、「なぜ今から?」と思われるかもしれませんが、実は準備自体はかなり前から進んでいたんです。その頃から、「オンライン事業に参入するなら、第1弾は『牧場物語』だ」と、社内で話は決まっていました。

 ただ、オンラインゲームは作り方もノウハウも違いますから、ネットワークゲームに精通している会社にアドバイスをいただきながら作っていこうとなりました。そのタイミングでONE-UPの社長、椎葉忠志さんにお会いしたんです。当時ONE-UPさんは『ブラウザ三国志』を開発中だったことと、ちょうど『Travian』の流行やソーシャルアプリに注目が集まっていた時期で、椎葉さんからオンラインゲームにはこういう形もありますよ、と。

 ブラウザゲームの面倒な手続きが要らない、ブラウザさえ立ち上げれば遊べる気軽さは、ほんわかと親しみやすい『牧場物語』という作品と相性がよいということにまとまり、『みん牧』という企画が始まりました。

――企画と開発が実際に動き出したのは、それぞれいつ頃でしたか。

平田:いつ頃でしたっけ(笑)

ONE-UP 稲本崇氏(以下、稲本):去年の夏過ぎぐらいです。初めてお話をうかがったときに「FLASHベースで行きましょう」とこちらから提案しました。3Dグラフィックでアバター衣装を魅力的に表現、という方法もありますが、『牧場物語』はコンセプトからいっても2Dでよいだろうと思いましたから。ただ、あの頃は誰もFLASHで作ったゲームがビジネスとして成り立つなんて、思っていなかったんですよ。弊社はmixiやGREE、Facebookなどのソーシャルアプリの流行、さらには『ブラウザ三国志』へのプレイヤーの反応を見て、FLASHベースのブラウザゲームには可能性があると感じていました。

――やはり『Travian』は日本市場におけるブラウザゲームの開拓者なんですねぇ。

平田:日本語版『Travian』のサービスが始まったのは、もう少し前の2008年なんですが、今と違いチュートリアルも無い状態でした。『Travian』は実に面白いブラウザゲームだと思いますが、同時にこれが本当に広くプレイヤーに受け入れられるジャンルかと言うと、ちょっと懐疑的でした。ソーシャルアプリという言葉もまだ、日本では使われない時期でしたから。ただ、その後の動きを見てブラウザゲームの持つパワーには着目していましたよ。

――さきほど、コンシューマ版『牧場物語』と世界観は共有しているが、作り方のコンセプトは異なると平田さんがおっしゃいましたね。具体的に『みん牧』のコンセプトを教えてください。

平田:コンシューマ版に比べて世界観を固め過ぎない、というのがコンセプトです。『みんなで牧場物語』には、主人公キャラクターなどが出てきません。牧場の開拓はコロボックルという精霊がすべて行い、プレイヤー自身は見えない存在なんですね。お気に入りのキャラクターとの結婚といったストーリー、イベントが起きない分、より自由度が高く世界が広がっているのがブラウザ版の特徴です。

 なぜそうしたかと言えば、オンラインゲームで同じようなことをしていても、それは単なる移植版になってしまいますから。

『みんなで牧場物語』 『みんなで牧場物語』 『みんなで牧場物語』

――実際に2度のクローズドベータテストを経て、プレイヤーからの反応はいかがでしたか。第1回は募集人数5,000名でしたがすぐに埋まりましたか。

平田:あっという間というほどではありませんでしたが、当初の予想通りの人数は集まりました。

――初日は開始から40分程度で、すぐに長時間の緊急メンテナンスがありました。あれは一体何が原因だったのでしょう?

ONE-UP 廣田隆行氏(以下、廣田):想定していたよりもサーバへの負荷が高くなり、ゲームを進められないという声が多くなり、そのまま継続するよりは一旦サービスを止めて修正すべきと考えて、緊急メンテナンスを行いました。

平田:プレイヤーの反応は予想よりよかったと思います。『牧場物語』という名前から、ベータテストに参加した方は違ったゲームを想像して来た、と思っていましたが、案外「これはこれで、いいんじゃない?」というご意見をいただけて、ホっとしました。もう少し「こんなの『牧場物語』じゃないよ」という声が多いかなと、予想していたので。

廣田:確かにそこは我々も、ビックリしましたね。コンシューマ版の『牧場物語』とは当然操作方法からして違うわけで、戸惑われる方もいると思っていました。ブラウザ版はブラウザ版として、コロボックルのかわいさを楽しんでもらえたようです。

――逆にプレイヤーから直して欲しいという意見・要望が多かったのはどこでしょう。

平田:簡単に言ってしまえば、バグとラグの修正ですね。クローズドベータテストとは言え、きちんとしたサービスを提供するには不十分なクオリティだったことは、申し訳ありませんでした。ただ、第2回クローズドベータテストでは、だいぶ修正できていたと思います。

――私自身も2度のベータテストに参加しましたが、クエストツリーのページはもう少し見やすく、開きやすくならないでしょうか。

平田:そういうご意見もいただきました。

稲本:クエストページも含め、ユーザーインタフェースの改善は、なるべく早いタイミングで行っていきます。

――ちなみにクエストは全部でいくつぐらい実装される予定でしょう。

稲本:できるだけ増やしたいと思っていますが、OBTではCBTで実装されていたものの2~3倍は入れる予定です。

――いきなり先の話になりますが、クエストをすべてクリアしてしまったプレイヤーは、プレイ目標というかモチベーションをどこに持てるような、設計になるんですか?

『みんなで牧場物語』

稲本:プレイヤー全体の進捗状況に合わせて、クエストは終わらないぐらいのペースで随時追加していく予定です。万が一プレイヤーの消費速度が上回っても、牧場の飾りつけという楽しみ方があります。様々なパターンの飾りつけができるように、こちらも準備しています。

――島はあれ以上、面積は広がらないんですか?

廣田:そこはまだ、構想中です。色々アイディアはありまして、島自体の面積を広げる他にも複数の島を持てる、空中や地下室を持てるなどなど……。何らかの方法はとりますが、どれが一番『牧場物語』にあってるのかを検討しているところです。

――オンラインゲームに熱中する方は、本当に開発の予想を遥かに上回る速度でコンテンツを消費していきます。中には、作物の収穫タイミングに目覚まし時計をかけるようなプレイヤーさんもいたり……。1日に植えられる作物の上限といった形で、何かプレイのやりこみを抑制する機能を入れる予定はありますか。

稲本:むしろやり込みプレイをする人と、1日数十分程度のアクセスしかしない人の間で、どれだけの差をつけるかというバランスの調整をしています。また、何に力をいれて成長させるかによって島に個性が出るようにします。あるプレイヤーはここに注力、別のプレイヤーはこちらに時間を割くといった形にすれば、プレイ時間による差別化というよりも、自分なりの遊び方ができるでしょう。

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