News

2010年6月17日(木)

欧米テイストを強く意識したPS3/Xbox 360『TROY無双』開発者インタビュー

文:電撃オンライン

 PS3/Xbox 360で発売される、コーエーテクモゲームスの新作『TROY無双』。本作について、コーエーテクモゲームス・常務執行役員の鈴木亮浩氏と、コーエーテクモカナダ・開発部門マネージャーの門脇宏氏のお2人に話を聞いた。

 『TROY無双』は、名前からしてインパクトのある作品だが、なぜトロイ戦争をテーマに選んだのか、従来シリーズとの違いはどこにあるのかなどをお聞きした。本作については体験レポートも掲載しているので、インタビューとあわせてチェックしてほしい。(インタビュー中の名前は敬称略)

『TROY無双』
▲左が門脇宏氏、右が鈴木亮浩氏。

──まず、『無双』シリーズ最新作の題材になぜトロイ戦争を選んだのか、教えていただけますか? ギリシア・ローマ時代ということであれば、他にも歴史的にはもっと有名な戦争がいくつかありますよね。

門脇 本タイトルは『無双』シリーズの中でも、初めて西洋の題材を扱っているわけですが、他にも色々候補はありました。『TROY無双』はホメロスの叙事詩『イーリアス』を題材にしてまして、日本ではあまりなじみがないかもしれませんが、欧米においては世界最古にして最高峰の西洋文学として非常に有名です。

 コチラで文学を専攻している学生ならば物語を知っていて当然ですし、作品として尊敬もしている。そうでなくても、国語の時間に必ず取り上げるし、子ども向けの読み物でもメジャーです。誰でもおおよそのあらすじぐらいはわかるんですね。ですので、我々が最初に選ぶ西洋の題材としてトロイ戦争は、まさにうってつけだと考えたわけです。

 それとギリシア神話というモチーフは、実際のゲーム内でいろいろとギミックに落とし込みやすいという理由もありました。

──日本人で言うなら、昔話『桃太郎』クラスですか。

門脇 そうですね(笑)。特にアキレウスの話やトロイの木馬の部分は『桃太郎』並みにメジャーでしょう。

──発売時期は北米と欧州が同時で今年の秋、日本はそれから数カ月後の予定と聞いています。しかし、欧米ほど『イリアス』が文学作品として浸透しておらず、トロイの木馬ぐらいなら聞いたことあるかも……というプレイヤーが大多数の日本での反応は気になりませんか?

『TROY無双』

鈴木 確かにトロイの木馬といったら、コンピュータウイルスとしての方がメジャーですよね。ただ、日本では正直、トロイ戦争という題材で売り込もうとは思っていません。どちらかといえば、従来の『無双』ファン向けに、今までとはちょっと違う『無双』シリーズ最新作として提供する予定です。トロイ戦争というテーマに親しんでいただくのは、その後でしょう。

──では、具体的なゲーム内容をお聞きします。プレイヤーがスタート時に選べるのは、ギリシア側かトロイ側でプレイするかですね? キャラクターによって基本能力値は違うのでしょうか。

門脇 能力値というより、アクションと持っている技、移動速度などの戦闘スタイルが個々に違います。あとはギリシアとトロイでミッションの内容は変わります。また、キャラクターの強化については、シナリオ中に時々ターゲットミッションが提示され、これをクリアするとスキルアイテムをドロップします。強化スキルの種類は100をちょっと下回るぐらいで、キャラクターのインベントリにスキルをセットしていくイメージですね。

──トロイ側で遊ぶと、やっぱりトロイの木馬はでてくるんですか。

門脇 そこは実際にプレイして確かめてください。プレイヤーはストーリーに沿って1つずつミッションをプレイし、クリアすると次のシナリオが解除されるという流れで、物語を追いかけていきます。『イーリアス』は本当にリスペクトされている文学作品なので、かなり丁寧に作りこみましたよ。きちんと物語を知っている方がもし『TROY無双』に触れていただければ、「うまくゲームに落とし込んだな」と思っていただけるはずです。

鈴木 ゲーム内ムービーもカナダ人の監督にお願いして、物語性を感じられるように作りました。

『TROY無双』 『TROY無双』

──確かに、先ほどのミッション体験プレイでも要所要所で、まるで映画のワンシーンのような背景がありました。普通にプレイしている時でもそれは感じました。ところで従来作品が持つ“無双らしさ”については、どういった部分が引き継がれているんでしょう。

門脇 『TROY無双』も無双ファミリーの1つですので、シリーズコンセプトである“一騎当千の爽快感”に沿って作っています。ちょっと日本人が思う爽快感と、欧米人が感じるところは違いますので、その差はあるかもしれません。

──欧米人と日本人での爽快感は、具体的にどう違うのでしょう?

門脇 何と言いますか……たとえば日本人の感覚ですと刀や薙刀を華麗に振って、大勢の敵をスパッと切るのが爽快だと思います。しかし欧米人の場合、棍棒や切れ味の悪い刀で肉や骨を一撃でつぶすという攻撃。手にその感触が残る攻撃スタイルにスカッとすると。ですから『TROY無双』も切る攻撃より、刺す攻撃方法に特徴を持たせました。

──従来の無双作品と比べて、古代ギリシアとトロイ戦争がテーマゆえに、変わった部分というのは手ごたえの部分だけですか?

鈴木 システム面でいえばジャンプがなくなりました。これはジャンプさせる意義が『TROY戦争』にはそもそもないからです。それと盾を使ったスタン攻撃を入れたかったというのも理由です。ただ、一番大きな理由は「変えて何か新しいことをしたかった」からでしょうね。そこからスタートしています。

──武器や防具の時代考証には苦労されましたか?

『TROY無双』

門脇 このプロジェクトが始まったばかりのころ、私とデザイナーが一緒にトルコとギリシャに取材旅行に行き、博物館などで写真をたくさん撮りました(笑)。また、キャラクターの名前や発音については、外部の専門家にお願いして忠実に再現するよう試みています。

 『TROY無双』はコンバットアクションそのものから、ストーリーテリング、グラフィックの演出に至るまで、すべてカナダのローカルスタッフと欧米のゲームデザイナーが、欧米テイストを込めて、『無双』の進化の1つの形として作っていますので、そこに注目してほしいです。本当に血生臭い、大人のためのゲームですよ。

──血しぶきの表現はすごかったです。あれは日本語版でも変更なしですか?

鈴木 いえ、その問題があるため世界同時発売ではなく、日本語版の発売が欧米より数カ月後になっています。

──先ほど『TROY無双』は無双シリーズでありながら、進化の枝分かれの1つとお話されましたが、これが進化の第1歩ならば次はどんな題材を考えていらっしゃいますか。

鈴木 それはさすがに気が早すぎる話です(笑)。内部的にはいろいろ企画が出てますが、それはまた先の話ということで。

──それでは最後に、日本語版の発売を待っている読者に向けてコメントをお願いします。

門脇 ぜひ、この欧米テイストあふれる新しい『無双』を楽しんでいただきたいと思います。期待していてください。

鈴木 今までにない『無双』をということで、ものすごくリアルで過激な表現がありますが、ゲームシステムも大きく変わっていますので、従来作品のファンの方も新しい『無双』を楽しんでいただけると思います。

──ありがとうございました。

(C) TECMO KOEI GAMES Co., Ltd. All rights reserved.

データ

▼『TROY無双』
■メーカー:コーエーテクモゲームス
■対応機種:PS3/Xbox 360
■ジャンル:ACT
■発売日:未定
■価格:未定

関連サイト