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2010年6月22日(火)

米NEXONはA・RPGの3タイトルをE3出展、北米での成長を目指す

文:電撃オンライン

 米国現地時間の6月15日~17日にロサンゼルスで開催されたE3 2010(Electronic Entertainment Expo 2010)。そのE3でブースを構えていたNEXON Americaの副社長・Min Kim氏にインタビューした。

 ネクソンの北米法人・NEXON Americaは、E3に『Dungeon Fighter Online(邦題:アラド戦記)』『Dragon Nest』『Vindictus(邦題:マビノギ英雄伝)』の3タイトルを出展。現地では初のプリペイド課金方式の採用で成功を収めた、『メイプルストーリー』のメーカーとして知られる。E3でブースを大々的に構えていた理由などを、Min Kim氏に聞いた。

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──今年のE3にNEXON Americaとしては初めて、それもこれだけ大きなブースでの単独出展をされた理由を教えてください。

『米NEXONはA・RPGの3タイトルをE3出展、北米市場での成長を目指す』
▲NEXON America Vice PresidentのMin Kim氏

 いろんな人に同じ質問をされましたよ。E3はご存じの通りコンシューマゲームが主役のイベントですから。E3にブースを構えた理由はいくつかあります。まずタイミング的にベストだったということ。ネクソンには『Combat Arms』『メイプルストーリー』という長く愛されている良質なタイトルがありますが、いずれもいわゆる“ゲーマー”向きの作品とは言えません。

 しかし2010年のNEXON Americaには、今回E3に出展した3つのタイトル、『Dungeon Fighter Online』『Dragon Nest』『Vindictus』があります。北米では「基本プレイ無料のゲームは質が低い」と言われてきましたし、そう言われても仕方のない部分もありました。しかし、これらの3タイトルはそんな思い込みを打ち破るに十分な力を持っています。

 たとえば『Dungeon Fighter Online』は今さら言うまでもなく、アカウント数/同時接続者数で世界最大のオンラインゲームで、北米ではサービスが先週始まったばかりですが、反応はとてもよいです。『Vindictus』はValveのSourceエンジンを使った、ノンターゲットのアクションRPGで、コアゲーマーには大好評です。『Dragon Nest』は実に魅力的なグラフィックですね。この3本はすべてアクションRPGですが、今後このジャンルの市場は拡大していくと予想しています。

 アクションゲームの市場はクリックするだけのゲームよりはるかに大きく、広く受け入れられるもの。特に『Dungeon Fighter Online』での確かな手ごたえが、ゲーマーはアクション作品を欲しがっている、という確かな自信を我々に与えてくれました。この3タイトルがこれからの、NEXON Americaを代表する作品になるといえるでしょう。

──NEXON Americaを北米市場で有名にしたのは、間違いなく『メイプルストーリー』の成功でしょう。でもデモ機の展示もないんですね?

 それも何度も聞かれました(笑)。確かに『メイプルストーリー』は成功した作品ですが、ここはE3。E3は“男の子のためのゲームショウ”なんですよ。彼らが見たいのはすでに安定した作品ではなく、何か新しいゲームを常に探しているんです。そういう意味で『メイプルストーリー』の出展は、適切ではないでしょう。

 多くの人がこのNEXON Americaのブースを見て驚いています。だって彼らがイメージしているのは、やっぱり“『メイプルストーリー』のNEXON America”ですから。一般的なアメリカのゲーマーやジャーナリストは、NEXON Americaといえば、かわいくて簡単でチープな子ども向けの作品しか作らないメーカー、というイメージを強く抱いているんですよ。

 私自身は『メイプルストーリー』を素晴らしい作品だと思いますが、今回アクション中心の3タイトルを展示したことで、E3来場者のNEXON Americaに対するイメージは大きく変わったはずです。こんなにも幅広いジャンルの作品を我々が作れるということにね。メーカーのブランド力をどうやって上げていくか考えるのは、ゲームショウに出展するよい刺激であり、モチベーションになりますよ。

──3作品のうちキラータイトルになりうるのは、どれですか。

 アジア市場でいえば間違いなく『Dungeon Fighter Online』でしょう。何年も強い人気を誇っています。北米市場でも成功することは確かですが、キラータイトルとなるのは『Vindictus』だと思います。『Vindictus』は実に魅力的な作品なんですよ。『Vindictus』のようなゲームは、PCパッケージゲームを含め過去には存在していません。ブースを訪れるほとんどの人が、これが基本プレイ無料のゲームだと言うとびっくりしています。

 PCゲームの北米市場はどんどん小さくなっていますが、そこにはPCでゲームを遊びたいというプレイヤー層が必ずいます。オンラインゲームを遊ぶ目的には、コンシューマ機よりも適しており、PCはいまだに最大のゲーム用プラットフォームだと信じています。

──『Dungeon Fighter Online』は先週サービスがスタートしたとのことですが、残り2作品の北米でのサービス予定を教えてください。

 『Vindictus』は今秋、『Dragon Nest』は2011年を予定しています。特に『Vindictus』は韓国の次に北米でサービスインというのがポイントですね。通常は2番目、3番目のサービス国は中国、日本などアジア地域になりますから。しかし『Vindictus』に関してはゲームバランス、グラフィックなどのクオリティが北米のコアゲーマーを納得させるレベルに達しているという判断で、我々も韓国の次に北米プレイヤーの反応を見るためにそうしました。

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──すぐ近くで次世代MMOと名高い『TERA』も出展されていますね。強力なライバルとなりそうですか?

 『TERA』もすごく魅力的なタイトルですが、当社の3タイトルとはまったく方向性が違いますよ。『TERA』は美しいグラフィックス、広大な世界観など本当にビッグなMMORPG作品ですが、『Vindictus』や『Dragon Nest』は基本無料かつマイクロトランザクション型のゲームですから。(マイクロトランザクション=アイテム課金に近い、月額固定ではなくサービス内容によって課金を切り分けるシステム)

──北米のオンラインゲーム市場において、NEXON Americaはどういったポジションを狙っているのでしょうか。

 他のメーカーと大きく異なり、NEXON Americaのメインターゲット層は17歳~18歳。高校を卒業したばかりで、大学へ入る直前ぐらいのプレイヤーです。なぜなら、今の40代以上の人はPCでゲームを遊ぶことに慣れていません。オンラインではなくパッケージのスタンドアロン型でも一緒です。また、PCの操作そのものが苦手な人もいます。

 しかし、この17歳~18歳前後の世代は生まれたときからPCがある環境に育ち、『Club Penguin』(6歳~14歳程度のティーン層をターゲットにしたWebゲーム、イメージキャラがペンギン)のようなサービスを通じて、PCゲームに子どものときから親しんでいます。同時に、YouTubeやGoogle、Facebookのようなサービスを使いこなし、オンライン上でのコミュニティとコミュニケーション作りも、彼らにとってはすでに自然なことです。

──Min Kimさんご自身は、北米マーケットをどのように分析していらっしゃいますか?

 オンラインゲームに関して言えば非常に若い、まだ成熟しきってはいないと見ています。たとえばプリペイドカード。NEXON Americaは2007年1月に『メイプルストーリー』でこのシステムを初めて採用しました。ティーン層をメインターゲットにする『メイプルストーリー』にとって、プリペイド方式は唯一、お小遣いはもらっているしアイテムも買いたいが、クレジットカードが使えない世代に課金してもらう方法だったんです。

 また、ティーンにとってはPCパッケージゲームも魅力的とはいえません。なぜならお小遣いでやりくりする彼らにとって、59.99ドルもするゲームは買えないですよね。かといって月額15ドルの固定料金のオンラインゲームもお財布に厳しい。特に友だちと一緒に遊びたければ、友だちみんなが15ドルを支払わなくちゃいけないわけで。その点NEXON Americaの提供するゲームは、すべて基本無料のアイテム課金、プリペイド方式です。

 繰り返しになりますが、北米のオンラインゲーム市場は若く、これから成長していく過程にあります。今『Club Penguin』で遊んでいるような、8~10歳ぐらいの子どもが13歳ぐらいに成長したとき、PCオンラインゲームの市場は爆発的に拡大するでしょう。

──現在は韓国Nexonがサービス中のタイトルを持ってきていますが、今後パブリッシャーとしてNEXON America独自で、何かサービス提供される予定はありますか?

 もちろん考えていますし、E3出展にはそういったことも目的に含まれています。NEXON Americaをアピールするためにね。また地元、つまり北米の開発元の作品を運営することは、非常に重要だと考えています。どこの国でも地元企業が一番、その国のプレイヤーの好み、傾向を把握しているに決まってますから。一方で我々にはオンラインゲーム運営のノウハウがあります。ただ、今すぐというわけにはいきません。もう少し時間が必要でしょう。

 今後の北米市場で何が起きるか、見ていてほしいですね。NEXON AmericaはPCゲーム市場に新しい時代を開拓してみせますよ。

──ありがとうございました。

『米NEXONはA・RPGの3タイトルをE3出展、北米市場での成長を目指す』

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