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2010年7月9日(金)

曲の歌詞に秘密が? 『セカンドノベル』サウンド担当たくまるさんインタビュー

文:電撃オンライン

曲の歌詞に秘密が? 『セカンドノベル』サウンド担当たくまるさんインタビュー

 日本一ソフトウェアより7月29日発売予定のPSP用AVG『セカンドノベル ~彼女の夏、15分の記憶~(以下、セカンドノベル)』。Web用体験版やPSP用体験版の配信により、その斬新なシステムと物語にユーザーの注目が集まっている。

 しかし、上記2点の注目ポイントはもちろんのこと、本作にはもう1つ大きなポイントがある。それが、数々のゲームBGMを担当してきた作曲家・たくまるさん制作による情緒的なサウンドだ。

 そこで電撃オンラインでは、たくまるさんへのインタビューを敢行! 音楽的な面からも、『セカンドノベル』の世界をぜひとも感じてもらいたい。




■物語のイメージがつまったBGMや主題歌に注目したい

――まずは、自己紹介をお願いします。

 “たくまる”と申します。音楽を作っている人です。普段は美少女ゲームのお仕事が多いです。最近のタイトルだと『恋姫†無双』シリーズなどに参加させていただいています。ゲームの他には、アニメや声優さん関連のCDなどを制作しているレーベル・チェンバースレコーズさんのコンピレーションCD(『ナツウタ2~きみと奏でる愛の歌~』、『雪降る歌3~冬の歌・永遠の詩~』他)などに楽曲提供させていただいています。

曲の歌詞に秘密が? 『セカンドノベル』サウンド担当たくまるさんインタビュー
▲今回インタビューにお答えいただいた、たくまるさん……の飼い猫。

――最近は山口県を拠点に活動なさっていますが、音楽制作に影響はありましたか?

 東京で活動していたころに比べると、田舎は時間の流れというか雰囲気的なものがゆったりしているせいか、精神的にのんびり制作活動が行えている気がします。まったりと締め切りに追われる感じです(笑)。このあたりは人それぞれだと思いますが、自分には合っているのかなと。

――なるほど。では本題に入りましょう。『セカンドノベル』の企画を最初に聞いた時、どのような印象を受けましたか?

 一番最初に、「今回はこんなゲームシステムなんですよ」と説明していただいたんですけど、そのゲームシステムを理解するのに知恵熱が出そうになりました(笑)。でもちゃんと聞くととてもおもしろそうなゲームシステムで、これは自分もプレイヤーとして遊んでみたいな、と思いました。シナリオについては……あぁどうしよう、印象がそのままネタバレになっちゃうから、ちょっと言いにくいんですけど、なんかこう、切ないんだけど、切ないだけじゃなくて、やるせないというか……とにかく大好きな感じです。

――楽曲制作を打診された時に、たくまるさんの中ですぐに音楽のイメージは沸きましたか?

 そうですね。わりとすんなりと出てきたような気がします。

――PC用Web体験版をプレイしましたが、本当に各シーンとBGMがマッチしていると感じました。これは、開発スタッフとの綿密な打ち合わせをした結果でしょうか?

 それはもう、テクスト。(『セカンドノベル』の制作会社)さんがうまく楽曲を使ってくださったというか、さじ加減の妙といいますか。曲作りの際に、ある程度はこんな雰囲気でっていう指定はありましたけど、そこから先の部分はかなり自由にやらせていただけました。プロット(大まかなあらすじ)やイラストなども早い段階でいろいろ見せていただけたので、イメージで苦労することはなかったです。なので逆に、打ち合わせ的なものをした記憶があまりないというか(笑)。

――あと、ピアノを中心としたサウンドが多い印象を受けました。これは、本作に対するたくまるさんのイメージなのでしょうか? それとも、開発陣の意向ですか?

 ピアノで、という希望があったものはいくつかあったのですが、いただいたシナリオを読みながら作っていたら、結果的にピアノが多めになった感じですね。

――とはいえ、シリアスなシーンで流れるピアノサウンドは、聴いていてつい涙が出そうになりました。BGMの制作で心掛けた点などはありますか?

 シリアスな曲は、風景的なものをイメージして作るようにしていました。たとえば悲しい曲でもウワーって泣いちゃうんじゃなくて、その後に広がっている寂しげな夕焼けのようなイメージで。たとえがわかりにくくて申し訳ないのですが、そういう存在の音楽になるようには心掛けています。

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▲各シーンで流れるBGMは、その情景のイメージにマッチした作りを心がけて作られている。

――では、楽曲制作はどのように行われているのでしょうか?

 楽器を使ったり鼻歌だったり、いろいろですね。あ、でも楽器の前にいない時のほうが、何かしらのネタが降ってくる率が高いような……。外を歩いている時とか、寝る寸前とか。こんな時に思い浮かぶなよー! と困るタイミングが多いかもしれないです(笑)。

――『セカンドノベル』の曲は、そうやってできていたんですね。では、楽曲制作に際してリテイクなどは結構ありましたか?

 いえ、実は全然ありませんでした。本当に自由に作らせていただけまして、ありがたいやらかたじけないやらで。

――いえいえ、創作活動に自由は必要です! 今回、ヒロインの彩野は“事故で記憶が15分しか保てない”という非常に悲劇的な状況にありますが、この要素は楽曲を制作をする際に影響しましたか?

 そうですね。それ(彩野の状態)が物語の中でどうなって行くのかも含めて、自分の中でイメージを構築していくのには欠かせない要素の1つでした。

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▲彩野の状態がどうなり、そして物語がどう展開していくのか……ぜひ実際にプレイして確かめてほしい。

――彩野がどうなっていくかは非常に気になるところですよね。次はちょっと変化球を。『セカンドノベル』という作品の楽曲制作に際し、「よし、プレイヤーを泣かせてやるぜ!」という狙いはありましたか? 自分は、しっかりと泣かされましたが!

 わーい、ありがとうございますー! それは素直にうれしいです。とはいえ狙った……というのとはちょっと違うんですが、切ないシーンの音楽は、援護射撃的にじんわりとあとから効いてくるようなものになればいいなと思っていました。

――確かに、じわじわと効いてきました。では、今回制作した楽曲の中で、どの曲がお気に入りでしょう?(回答している楽曲名をクリックすると、楽曲が視聴できます)

 『...find truth?』という曲が地味に好きです。本当に地味な曲なんですけど(笑)。シンプルなフレーズのピアノを、オーバーダブ(オーバーダビング=多重録音)で序々に重ね弾きしていって、最後は1本だけに戻るんですが、そのあたりがシナリオのテーマ的なものを表しているとかいないとか……。セピアとも白黒ともちょっと違う感じで、彩度の低い夕日感みたいなものが出せたんじゃないかと思っています。

 逆に濃い夕日だと『ぼくたちの行方』ですね。この曲はまぶしくて鮮やかで、そして残酷な夕日。残酷なんだけど優しくて暖かい……というような、エモーショナルな感じです。この2曲は、いろんな意味で対照的なイメージですが、気に入っています。

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▲夕焼けのシーンが、本作の1つのテーマとなりそうだ。

――続いて、主題歌についてもお聞かせください。今回、片霧烈火さんがボーカルを担当していますが、たくまるさんは片霧さんに歌い手としてどのような印象をお持ちですか?

 感受性がとても豊かというか、あれこれ説明しなくてもいい人ですね。曲のイメージをしっかり大事にしてくれつつ、歌うとしっかり“片霧烈火の歌”になって出てくる。これはすごいことだと思いますね。なによりも、楽しんで歌ってくれるのがうれしいですし、楽しいです。

――PVで主題歌の『残照』を聴いた時、真夏のむせ返るような暑さと、陽炎のようなはかなさが同居した、すごく本作にマッチした曲だと感じました。これは、たくまるさんの作曲者としての意図通りですか?

 わわ、これまたうれしいです! まさにそんなイメージです。

――そんな『残照』はギターを中心にしたロックナンバーですが、この案はたくまるさんから?

 いえ、そこはプロデューサーさんからですね。なくした記憶や思いといったものが、たたみかけるように交錯するイメージで、激しいドラムがあって……みたいな。サウンド的には、“青春”ではあるんですけど、いわゆるスッキリさわやかな青春とは違った感じといいますか、ノスタルジックではあるんだけども、どこかぽっかり穴があいたような不思議な寂しさのようななものを目指した感じです。

――まさに、本作のイメージですよね。では主題歌レコーディングの際、どのようなことを心掛けて片霧さんに歌入れをしていただきましたか?

 あえて言うとしたら、どこか“他人(ひと)ごと”のように歌ってもらったって感じでしょうか。なんでそうなのかは、ゲームを進めていっていただければ、おわかりいただけるかもしれません

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▲“他人(ひと)ごと”という言葉が、彩野と他の登場人物たちとの関係を意識させるが……。

――ちなみに主題歌を制作する際、片霧さんとの間でなにかおもしろいやり取りやエピソードなどはありましたか?

 んー……まあ、片霧さんなのでいつも何かしらおもしろいことはあるような気がするんですけど、そこは内緒ということで(笑)。

――わ、わかりました。では、たくまるさんにとってゲーム音楽とは?

 ゲームのBGMというのは、そのゲーム世界の空気のような存在なのかな、と思っています。アドベンチャーゲームだと、主役はあくまでも人物であったり、お話であったりだと思うんですよ。それを押しのけて、BGMがああだこうだと説明しちゃうのも違うと思うんですよね。

――なるほど。個人的には、『セカンドノベル』のサウンドはかなり素晴らしいと感じています。なんとかこの作品のBGMのよさを電撃オンライン読者に伝えたいのですが、何か音楽的なヒミツ情報や要素などはありますか?

 ありがとうございます! ヒミツ情報……ヒミツ……なんだろう…ヒミツ的なもの。あ、BGMじゃないんですけども、主題歌やエンディングテーマの歌詞には、作詞のsawamurahさんにお願いして、メッセージ的なものというか、ヒミツの意味を込めてもらったりしています。プレイ後にそのあたりを受け取ってもらえるとうれしいかも……。

――わかりました! ぜひ歌詞に注目したいと思います!! ちなみに、本作のサウンドトラックの企画などはあったりしますか? 個人的には、ぜひ出していただきたいのですが……。

 えと、なにやらそんなお話しもあるような感じですね。

――では、最後に『セカンドノベル』を楽しみにしているユーザーに、たくまるさんからのコメントをお願いします。

 失われた記憶と、さまざまな思いが交錯する、ミステリアスだけど切なくて、ほんのり苦いノスタルジー。そんな『セカンドノベル』の世界を、ぜひぜひお楽しみください!!

――ありがとうございました!

(C)2010 Nippon Ichi Software, Inc./TEXT.

データ

▼『セカンドノベル ~彼女の夏、15分の記憶~』
■メーカー:日本一ソフトウェア
■対応機種:PSP
■ジャンル:AVG
■発売日:2010年7月29日
■価格:UMD版 5,229円(税込)/ダウンロード版 4,000円(税込)

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