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2010年8月3日(火)

【洋鯨亭 第22回】ゼニマックス・アジア、ローカライズへの心意気(後編)

文:電撃オンライン

 こんにちは。夏休み真っ只中、皆さん洋ゲーやっていますか? 洋鯨亭・亭主のRonです。9月はいろいろと大きめのタイトルが発売されますから、積みゲーがある方は今のうちに消化しておきましょう(私もですが)。

 さて今回も前回に引き続き、洋ゲーのローカライズについてのインタビュー後編です。ローカライズとは、単に翻訳を行うだけではありません。その国にあった表現方法に変更することも重要な作業です。後編は、その辺のお話についても言及されています。

 この後編も、引き続きゼニマックス・アジアでゼネラルマネージャー(GM)を務められる高橋徹氏にお話を伺いました。

【洋鯨亭 第22回】ゼニマックス・アジア、ローカライズへの心意気(後編)
▲ゼニマックス・アジアのGM・高橋氏。今回は、海外版との表現の違いやCERO(コンピュータエンターテインメントレーティング機構)との兼ね合いなどについてお話を伺った。

■日本版ローカライズをする際の表現変更の狙いとは

──海外タイトルが国内で販売される際、内容が変更される場合があります。これについてはどのようにお考えですか?

 実はよく言われているような、大きな規制があるわけではないんですよ。何かしらのルールにのっとって、強制的に内容を変えなければいけないというわけではないんですね。PS3/Xbox 360『Fallout 3』を例にすると、海外版から変更したのは原子爆弾を起爆させ街を1つ吹っ飛ばすといった内容のミッションのカットと、人間の身体が部位欠損する要素のカットですね。敵ミュータントの部位欠損はそのままありますし、『Fallout 3』に関しては必ずしも変更部分が多かったわけではないんです。

──なるほど。日本の核など、国によってはデリケートな問題がありますよね。

 そうですね。宗教的な理由による規制などもありますから。日本では身体欠損などが変更されることが多いですが、たとえばセーラー服の女の子の下着が見えるような描写は、間違いなく日本よりも海外のほうが規制が厳しいですからね。日本では普通に出せますから(笑)。文化の違いと言っていいでしょう。

──日本では大丈夫でも、海外ではダメという場合もありますね。では、ローカライズする際にCEROの年齢区分をどこに設定するかで悩むことはないですか?

 ありますね。そのままローカライズするとZ区分(18歳以上のみ対象)になってしまうタイトルをD区分(17歳以上対象)にしようと思うと、いろいろと表現を修正しないといけなくなりますから。変更内容で一番多いのは“攻撃してこない一般人に対して攻撃ができる”という点をなくすことです。つまり“無差別殺人ができてしまうかどうか”ですね。ここが一番重要視されています。

 ところが『Fallout 3』は一般人へ攻撃するかどうかでその後の展開が変わったりするため、ここを変更するとゲーム性そのものが変わってしまいますから。こういった点を変えるかどうかは、ウチだけではなく、各メーカーさんも悩んでいると思いますよ。これもCEROさんがダメといっているわけではありません。各メーカーが自主的な判断で対応している状況です。

──ということは、その表現内容が日本の市場にそぐわないからとか、売り上げに影響するからといったことからも判断されるのでしょうか。

 それは多分にあると思います。あとは会社の持っているカラーですとか、IR(投資家に向けて発信する会社の情報)的な部分を重視してですよね。といっても、最終的にはそれぞれの会社の判断によりますが。Z区分のタイトルにしてしまうと、一部の法人が商品を扱わなくなってしまったりと、販路が狭まるということもあります。たとえば、子供向けの玩具を主に扱っている様な店舗やGMS(総合スーパー)などの中に入っているようなお店では扱っていただけなくなりますね。他にも区分陳列が必要になり、通常よりも目に留まりにくくなりますから。

──Z区分にするだけで、ゲーム内容とは違う部分でいろいろと付随してくる問題があるわけですね。

 主に、セールス面についてですね。この場合、一番重要なのは“そのタイトルがどういう内容で、どんなユーザーさんをターゲットにしているか”ということです。そう考えると『Fallout 3』は高校生以下に向けて販売しようとは最初から思っていませんし、別にいくらでも区分陳列していただいて結構です、と。ゲーム性が変わってしまうような変更を加えてまで、無理に区分を変えようとはまったく考えなかったですね。

──そこは1本筋が通っていますね。

 それでも、不満はあるんですよ。CEROさんのZ指定というのは、一部の地方自治体では有害図書の扱いになるんですね。自治体レベルで判断すること自体が悪いというわけではないんですが、結局有害図書扱いになってしまうなら、表現に制限を加える必要がなくなってしまうと思うんです。なぜ法律的に認められている製品が、CEROさんのZ指定というだけで有害図書になるのかと。これを解消するためには、Zよりもさらに上の区分を作るとか、Zの下に新たな区分を設けるか、いっそ有害図書指定をやめていただきたいんですよね。その辺に歪(ひずみ)が出てきているんじゃないかな、と思っています。

──同じZ区分のタイトルでも、あまり過激な表現ではない作品もありますしね。

 そうですね。対象になる要素が1つでもあれば、Z区分になりますから。極端な話、対象要素が1カ所でも10カ所でも、すべてZ区分なんですね。『Fallout 3』は一般人への攻撃ができるというただ1点でZ区分になっていまして、それをなくせばD区分にできたわけです。

──そう考えると、Z区分にもいろいろあることがわかりますね。

 だからこそ、Z区分がいきなり有害図書指定になることには大いに疑問を感じますね。そもそも法律に反した内容の表現が含まれているわけではないのに、どうして内容を見ずにいきなり有害図書扱いにできるのかということですね。本当に中身を見てご判断されているのか、聞いてみたいです(苦笑)。

──機械的に“Z区分=有害図書指定”と判断されているのだとしたら、残念ですね。

 はい。もちろん売り方にも大きく影響が出てくる問題ですので。有害図書ということは、内容はぜんぜん違うのに、いわゆるエロ本と同じ扱いだし、そういうイメージで捉えられるわけですから。身体の部位欠損にしても、映画やマンガの表現にはよくあるのに、なぜゲームだけが厳しいのかと。たとえば、部位欠損がある表現を含んだ映画でも、普通にTVでコマーシャルは流せますよね。こういった扱いの違いに疑問を感じます。

→海外ゲームと国内ゲームの違い(2ページ目へ)

Fallout(R): New Vegas(C) 2010 Bethesda Softworks LLC, a ZeniMax Media company. Bethesda Softworks, ZeniMax and related logos are trademarks or registered trademarks of ZeniMax Media Inc. in the U.S. and/or other countries. Fallout, Fallout: New Vegas, and related logos are trademarks or registered trademarks of Bethesda Softworks LLC in the U.S. and/or other countries. Developed in association with Obsidian Entertainment Inc. Obsidian and related logos are trademarks or registered trademarks of Obsidian Entertainment Inc. All Rights Reserved.

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