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2010年11月4日(木)

【洋鯨亭 特別編】子作りもOK!? 王様になれるRPG『Fable III』レビュー

文:電撃オンライン

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■引き継がれる舞台と英雄という主人公

 『Fable』シリーズの主人公は、いずれも“英雄”になる運命を背負っています。3作品とも時代は違えど同じ世界を舞台にしていて、主人公が英雄としてどう生きるかというのが共通のテーマになっているんですね。

 各作品の時代が離れていることや主人公が違うということもあって、各作品におけるストーリーの関連性はやや薄く、前作がわかっていないと遊べないということはありません。それでも一応シリーズのキーになる人物はいますし、『III』にも『II』で登場した人物が何人か登場しますから、前作をプレイしておくと「あぁ、このキャラクターは、またこんなことをやっているのか」とニヤリとできる場面などに出会えます。

 これ以外にも、前作を遊んでいれば“時代の移り変わりによる景観の変化”が楽しめると思います。たとえば、下の写真はゲームの舞台であるアルビオン大陸の中心的な街・バウワーストーンです。

 3作品には同じ街がいくつか登場するのですが、『III』は『II』の50年後の世界ということで、その間に産業革命が起こり、街並みもより近代的になっています。

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▲写真の左は『II』でのバウワーストーンの中心部を撮ったもので、右の写真は『III』の同じ場所です。建物のデザインや街並みにも変化が見られますね。

 この街は買い物やクエストをこなすのに何度も立ち寄る冒険の拠点ですから、プレイしたことがある人は、ここの街並みやマップが自然と頭に入っているものと思います。ただ、前作をプレイした人が『III』で初めてこの街を訪れた際は、ちょっと戸惑うかもしれませんね。中学生の時によく遊んだ場所に大人になってから行ってみたら、家が建て替えられたりして当時の面影が薄くなっていた、というような感覚と同じでしょうか。

 私は『III』で初めてこの街に来たときは「あれ、このへんに鍛冶屋がなかったっけ?」とか「ここにあった本屋で犬のスキルの本、買ったなぁ」とか、まるで実際にある街のように新旧の街を比較してしまいました。

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▲こちらも『II』を遊んだ人にはおなじみのバウワーレイク。この高台から思わず湖を見下ろしてしまう人も多いんじゃないでしょうか。左の写真が『II』で右は同じ場所から写した『III』の写真です。

 さて、冒頭でも書きましたように、ゲームの序盤は主人公が革命を起こすまでが描かれます。このパートでは主人公が大陸の各地におもむき、いろいろな民族を説得して仲間に引き入れていくことになるんですね。

 各民族は主人公の兄でもある暴君に対して不満は抱いているものの、おいそれとリスクの高い革命に賛同するはずもありません。そこで主人公はさまざまなクエストをこなし、彼らからの信頼を勝ち取っていくことになります。

 このクエストではストーリーの本筋に関係がないものも選べるのですが、そういったものには『Fable』らしい、おバカな内容のものが多いです。あ、もちろんいい意味でおバカということですので、あしからず。

 ということで、せっかくですから序盤で私がおもしろいと思ったおバカクエストのBEST3をご紹介しましょう。

●第3位 クエスト内容:逃げ出したニワトリ探し
 ある村の農家から脱走したニワトリを発見して、柵の中に連れ戻すというクエスト。前作にも似たクエストがありましたが、本作はニワトリの連れ戻し方がかなりヘンです。なにしろ直接手で捕まえて柵(さく)に入れるわけではなくて、主人公がニワトリの格好をして仲間と思わせて、柵の中まで誘導するのですから。

 ここで忘れてはならないのは、主人公はれっきとした一国の王子ということです。あくまでも、王子なんですよ。その王子に向かってこんな姿を強要する村人も命知らずですが、引き受ける王子も相当人がいいというか、ノリがいいですね(笑)。

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▲ニワトリのスーツを着た主人公。この状態で鳴きまねをしたりニワトリっぽい動きをしたりしながら、ニワトリたちを油断させます。

●第2位 クエスト内容:ガーゴイルの石像探し
 ノームの置物が大好きで、たくさん集めている村人からの依頼をこなすクエスト。その依頼とは、紛失してしまったガーゴイルの石像を探し出すというものです。

 この石像を無事発見して村人のもとへ届けると、ガーゴイルの魔力によってノームの置物に魂が宿り、突然しゃべり出します。依頼人はこれを喜んでノームの置物と自作の歌を合唱するのですが、この歌詞がかなり適当な内容で、しかも合唱もバラバラになっていてかなりおかしいですよ(笑)。

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▲音程やテンポを無視して、自由気ままに歌うノームの置物。この後、プレイヤーはこのノームに悩まされることになるのですが……何が起こるのかは前作をプレイしたことがある人なら、ピンと来るかもしれません。

●第1位 クエスト内容:魔法使いのお手製RPGをプレイ
 これは、3人の魔法使いが作ったゲームに挑戦させられるクエストです。挑戦といっても、主人公がゲームのキャラクターを操作するのではなく、魔法で小さくされた主人公がゲームのキャラクターになるという、ややこしい設定です。

 つまり、ゲームインゲームですね。これが秀逸なのは、3人の魔法使いがテーブルトークRPGのように登場するキャラクターのセリフをその場であてていたり、未完成なゲーム内容を魔法を使って次々と作り変えていったりするところです。

 このへんのネタをあまり書いてしまうと楽しみがなくなってしまうのでこれ以上は言及しませんが、かなりおバカな内容で、笑えます。

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▲机の上にあるジオラマ風の模型の中で展開される、かなりやっつけ気味のRPG(笑)。ゲーム中でもそのことをネタにしていて、おもしろいんですよ。

■王としての務めと冒険者としてのクエスト

 ゲームの序盤が終わると、革命を成功させた主人公はアルビオンの王として国の政(まつりごと)を執っていきます。しかし暴政は終わりましたが、新たな敵として“闇の存在”が現れ、全国民の脅威になっていくんですね。

 しかも主人公が王になったからといって、必ずしも国がよくなるとは限りません。それは、意図してよい君主になれること、もしくは兄以上の暴君にもなれることを意味します。

 実は本作、王になってからが本当のメインパートなんですね。主人公は革命に成功したとはいえ、助けを借りた民族と交わした、とある約束の履行、財政の建て直し、着手すべき公共事業の見極めなど、取り組むべき課題が山積しています。

 これらの課題を、国のため、国民のためという基準で選び、実行していくのかどうかは、本当にプレイヤーの自由です。では、よい施策ばかりを実行していけばいいのかと言うとそう簡単ではなく、それに対するデメリットも当然出てくるわけです。

 それはズバリ、お金の問題です。つまり、何事も実行するにはお金がかかるんですね。お金がないと国民を闇の存在から守るための防衛費に資金を当てられなくなりますが、かといって防衛重視で国民の生活を軽視し、締め付け過ぎてしまうと自分の立場が危うくなります。

 結果的にはどちらも国民のための判断なのですが、防衛費を削減しすぎると直接的な死者が出ますから判断の難しいところです。このへんは戦国歴史シミュレーションっぽくて、本作もこのサジ加減に悩むのですが……それもまた楽しいんですよね。

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▲王になると、毎日のようにさまざまな提案に対してジャッジを下していかなければなりません。なお、国の資金がなくなった場合は、個人資産を切り崩して補填(ほてん)することもできます。

 王になってからはこういった重要な決定を次々と下していくことになりますが、もちろん革命前までのように、ぶらりと冒険に出ることもできます。危険な場所に護衛も付けずに単独で乗り込む王様というのもなかなかすごい設定ですが、主人公は英雄の血筋を引いているので、扱いが別格なのでしょう(笑)。

 冒険に出れば、主人公の前には盗賊やモンスターなどが現れ戦闘になります。戦闘では剣やハンマーなどの近接武器、短銃や長銃などの銃器、炎や氷を操る魔法の3種類の攻撃方法を使うことが可能です。これらは各攻撃が割り振られたボタンを押すだけで変更できるので、敵との間合いや発動時間を考えて繰り出せばコンボのように連続で攻撃を叩き込むことができます。

 攻撃方法のうち、魔法に関しては腕に付けたガントレットの種類によって属性が決まるという要素があります。ガントレットは左右の腕に違うものを装備できて、2つ装備すると魔法をミックスさせることも可能です。

 たとえば炎の魔法が使えるガントレットだけを装備した場合は、ファイアボールを撃つか自分の周囲に火柱を上げて攻撃ができます。この時に風の魔法が使えるガントレットも装備しておくと、炎の竜巻攻撃を繰り出すことができるようになる、といった具合です。

 あと、前作同様に戦闘には愛犬も少しだけ参加してくれます。前作よりも戦闘がハデになった分、犬の出番はやや少なくなっていますが、それでも一緒に戦ってくれる姿は頼りがいがあり、やはりかわいいものです。

 本作の犬の動きは前作以上の滑らかさで、主人公と遊んだり走ったりと実にイキイキと動くさまは、犬が好きな人は要注目のポイントでしょう。あいかわらず鋭いきゅう覚で埋もれた宝を発見してくれるところなども、本当に頼もしく感じると思います。

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▲プレイヤーでは絶対発見できない、地中にある宝物の場所を教えてくれる愛犬。よきパートナーです。

■『Fable III』はアルビオンで王様を演じるゲーム

 以上、かなり長々と書いて参りましたが、それでも『Fable』シリーズの魅力は書ききれません。ただ、本作はパッケージなどを見ると一見マジメで堅苦しい作品のようですが、予想外に自由度が高くおちゃらけた要素も盛り込まれたRPGであることはわかっていただけたのではないでしょうか。

 また、ピーターさんがイギリス人だからという部分もあるのかもしれませんが、ブリティッシュユーモアとは言わないまでも、ややブラックなネタも盛り込まれていますから、そういった点にも注目してほしいと思います。

 さて、文明の発展とともに変わりゆくアルビオン大陸を舞台に、3作にわたって異なる英雄の物語を綴っている『Fable』シリーズ。このシリーズは、プレイしているとゲームの世界に愛着が沸いてくるRPGだと思います。

 それは、プレイヤーがゲームの住人となり、町で暮らしたりオフライン・オンラインともにキャラクターとコミュニケーションしたりすることが色濃く表れたゲームだからかもしれません。そういう意味では、ロールプレイングゲームの本来の意味である“役割を演じる”ということを実感できる作品だと思います。

 Z指定のためプレイできる人には制限がありますが、その分オトナも楽しめる作品になっていますので、一風変わったRPGを楽しみたい方はぜひ遊んでみてください。ちなみに、電撃オンラインでは本作の特集ページも掲載中です。このコラムで気になった方は、そちらもぜひチェックしてみてくださいね。

■アンケートのお知らせ

 先日掲載した洋鯨亭第33回で洋ゲーに対する皆さんからの意見を聞こうと、アンケートを実施しています。なぜ洋ゲーをプレイするのか、しないのか、そういった部分へのご意見を、ぜひお聞かせください。締切は11月8日(月)いっぱいとなりますので、よろしくお願いいたします。

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