2010年12月3日(金)
スクウェア・エニックスから12月8日に発売される音楽CD『ニーア ゲシュタルト & レプリカント / 15 Nightmares & Arrange Tracks』。本CDの楽曲を手掛けた作曲家・岡部啓一さんにインタビューを行った。
今年4月に、Xbox 360とPS3による2プラットホームで発売されたA・RPG『ニーア ゲシュタルト』と『ニーア レプリカント』。このCDでは、ゲーム発売後に追加ダウンロードコンテンツとして配信された“15 Nightmares”のBGMを完全収録している。さらに、作曲家・岡部啓一さんによる完全監修の新録アレンジ音源がボーナストラックとして収録される予定だ。
以下で、ライター・サガコが行ってきた岡部啓一さんへのインタビューを掲載する。収録楽曲に対して、自らコメントしてもらっているので、ぜひご覧いただきたい。
おはようございます! 先週、7号の落書きを施した風鈴を箱にしまいこみ、「もう冬なのね……」なんつって感傷にひたっているサガコです。
▲「ニーアさーん、アレンジCDが発売されるんですよー」と話しているのは、DLCな鯉のぼりスタイルに身を包む7号さん。 |
さて、全国の『ニーア』ファンの皆様、お待たせいたしました! いよいよ12月8日に発売となるアレンジCD『ニーア ゲシュタルト & レプリカント / 15 Nightmares & Arrange Tracks』。楽曲を担当された岡部啓一さんのインタビューを、満を持して電撃オンライン独占でお届けいたします!
◆ 岡部啓一 プロフィール ◆
『ニーア レプリカント』、『ニーア ゲシュタルト』サウンドディレクター。1969年5月26日、兵庫県神戸市生まれ。旧株式会社ナムコにサウンドクリエイターとして入社。業務用ビデオゲームを中心に、さまざまなタイトルに携わる。2001年にナムコ退社後、フリーランスとして活動したのち、2004年に有限会社モナカを設立。若手の育成にも力を注いでいる。代表作は『ニーア』、『鉄拳』シリーズなど。
――ファン待望のアレンジCDが発売されるということで、いてもたってもいられず押しかけました。いろいろお話を聞かせてください!
ありがとうございます! アレンジCDがこうして世に送り出せるのも『ニーア レプリカント』と『ニーア ゲシュタルト』(以下、2つの作品を総称して『ニーア』)をプレイしていただいたユーザーの皆さんのおかげです。おかげさまでサントラCDもすごく評判がよくて、今回のアレンジCDのお話につなげることができました。
――『ニーア』から岡部サウンドを強く認識したユーザーもたくさんいると思うのですが、ご本人としては『ニーア』に携わったことで変化したことは?
いろんな現場で「『ニーア』の曲、聴きましたよ!」と言っていただけることが多くて、本当に驚きました。今までいろいろなゲームやアニメなどの楽曲を手掛けてきましたが、ここまで多方面でいろいろ言ってもらえる作品は初めてで、改めて『ニーア』の人気を実感しました。
――元々、アレンジCDの発売は当初から予定されていたのでしょうか?
『ニーア』の発売後のダウンロードコンテンツ(DLC)用に、各曲のアレンジ版を作ったんですが、それらを作ったタイミングでは現在発売中のサントラCDへの収録は予定されていなかったんです。ですが発表された途端に結構反響がありまして、それならということで、夏からアレンジ版の企画が本格的にスタートすることになりました。やるならしっかりとやりたかったので、他の仕事の片手間でこなすようなことはしたくありませんでした。じっくり取り組める時間を見繕った結果、発売までにかなりのお時間をいただくことになった点については、申し訳ないとも思っています。
――ですが、だからこそ11曲という曲数を実現できた部分もあるのでは?
そうですね。作る時間をしっかり取れた点もさることながら、個人的には時間を置いて自分の作ったサウンドを客観視できるようになれた点も大きかったです。ゲームとサントラCDが発売されたばかりのころは反省点ばかりが目について、ちっとも冷静になれませんでした。時間を置いたことでユーザーの皆さんの反響も承知した上でのアレンジに取り組めたので、商業作家の作品づくりとしては、よりよくバランスが取れたのではと思っています。
――商業作家としてのバランスというと?
商業作家という言葉に悪いイメージを持つ人も多いのかもしれませんが、僕自身はとてもいい意味で捉えています。作り手が求めるもの、ファンが求めるもの、自分が作りたい音。それらのバランスをとりながら、作品や物語を引き立てるための音楽を作るのが商業作家の使命です。そのためにはどうしても客観性、冷静さなどのバランスが重要となります。情熱と自己満足だけで音楽を作っていられるほど若くないというのもあるとは思うのですが(笑)。僕としてはやはり「『ニーア』を愛してくださっているファンの方が、どういうアレンジを聞いてみたいと思うだろうか?」ということを第一に考え、そこを大事にしながら音を作っていきました。
――とはいえ、岡部さんの主張が入っていないわけではないんですよね?
もちろん、僕のこだわりも随所に盛り込まれています。譲るところ、譲れないところをそれぞれ戦わせながら、よりよいアレンジを追及したつもりです。期待どおりのものが入っていてうれしい! というサプライズと、期待していたものとは違っていてうれしい! という裏切りのサプライズ、その2つを織り込めたと思います。
――ユーザーの愛が深い作品だけに、プレッシャーも大きいと思うのですが。
本当にそのとおりです。ヨコオさんの発注も厳しいので、胃が痛くなることもありますしね(笑)。だけど、こんなに愛されている作品にかかわれたことが奇跡のように思えて、うれしい気持ちも強いんです。
――というと?
まずヨコオタロウさんをはじめとする、開発スタッフさんたちが『ニーア』というタイトルに愛情を傾けて作ってくれた。さらにスクウェア・エニックスの担当の方々も『ニーア』を愛して、なるべくたくさんの人たちが遊んでくれるように努力してくださった。その頑張りが、ユーザーさんに届いた部分がとても大きかったと思うんです。おかげさまでサントラCDも好評でしたが、それもこれも皆さんの愛情に支えていただいたからこそ。なにせビジネスですので、評判だけでは次のステップを踏み出すことができません。ユーザーさんがちゃんとお金を出してソフトやサントラCDを買ってくださったからこそ、今回のアレンジCDが陽の目を見たのです。
――そう言っていただけると、お金をためてゲームやCDを買っている私たちユーザー側としてもうれしい限りです!
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