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2010年12月20日(月)

時間移動モノのRPG『ラジアントヒストリア』レビュー。乱立する死亡フラグをへし折れ!

文:電撃オンライン

 アトラスから、11月3日に発売されたDS用ソフト『ラジアントヒストリア』。本作のプレイレポートを、ライターの白井えるがお届けします。

『ラジアントヒストリア』

 初めまして、ライターの白井えるです。『ラジアントヒストリア』は時間移動をテーマとしたDS用のRPGです。皆さんは、本作の“死亡フラグをへし折るRPG”というTV-CMを見て、どんなゲームなんだろうと気になったことでしょう。

 この記事では、そんな本作をまだ遊んでいない人のためにレビューをお届けしたい思います。

開始早々フラグがビンビンに立っています

 物語の舞台となるのは、人間と獣人が生活している“ヴァンクール大陸”というファンタジー世界。この世界では、百数十年ほど前から大陸全体で砂漠化が始まっていて、残された緑の土地を“アリステル”と“グランオルグ”という2つの国が奪い合っている危機的な状況にあります。

 主人公・ストックは、そんなアリステルの密偵。ストックは、ひょんなことから“白示録(びゃくしろく)”という謎の本を手に入れ、情報部の上司にグランオルグの機密情報を持った密偵の護衛任務を命じられます。

 その機密情報は、手に入れれば自国の不利な状況を一変できるかもしれない、かなり重要なもの。そのためグランオルグは密偵を逃がすまいと部隊を展開しており、任務は過酷さが予想されます。そんなわけで、情報部のエースであるストックにお鉢が回ってきたわけですね。

『ラジアントヒストリア』 『ラジアントヒストリア』
▲上司のハイスから任務を言いわたされるストック。情報部でも随一の腕前を持つ彼は、ハイスからは特に目をかけられていて、いつも危険な任務を任されています。

 さすがにストック1人では厳しいためか、2人の仲間と任務にあたることになりました。その仲間とは、正義感が強くさばさばした女性・レイニーと慎重で堅実な男性・マルコの2人。

 初めて出会った3人はすぐに打ち解け、レイニーにいたっては若干デレる場面もあります。出会って10分程度でレイニーフラグを立てちゃうストックさん、パネェっす。

『ラジアントヒストリア』 『ラジアントヒストリア』
▲マルコは見た目が小さいので、ホビット族か? なんて思いましたが、どうやら普通の人間みたいです。

 レイニーフラグが立ったのはいいですが、任務の道中「お互い背中を任せられる関係になりたい」とか、情報部の前に所属していた傭兵団が壊滅したちょっと重い過去話、その出来事に対しての決意などを語り、バンバン死亡フラグを立てていくレイニー。

 案の定、ストックたちの情報が敵に漏れていて、保護するはずの密偵は殺され、レイニーとマルコも開始30分で死亡してしまいました! ちなみに、レイニーの最期の言葉は「あんたはあたしが守ってみせる!」です……。最後の最後まで死亡フラグを立て続けたレイニーさん、パネェっす。

『ラジアントヒストリア』 『ラジアントヒストリア』
▲待ち伏せされていたストックたちは、“死神”という2つ名を持つ敵に倒されてしましました。

 レイニーとマルコが殺されて、もはや絶体絶命! このままストックが殺されてゲームオーバーになってしまうのか!? なんてことはなく、重傷を追うものの川に飛び込んでなんとか逃げることができました。

 ここから本作のテーマ“時間移動”を感じられるイベントが始まります。川に飛び込み意識を失ったストックは、“ヒストリア”と呼ばれる時の狭間の世界で、謎の双子・リプティとティオに出会います。

 ヒストリアで双子から聞かされたのは、“世界がもうすぐ滅ぶ”ことと“白示録を使えば過去に戻ることができる”という衝撃の事実。そして双子は、白示録を使って世界を救ってほしいとストックに頼みます。ここからストックの時間移動の旅が始まるのです。

『ラジアントヒストリア』 『ラジアントヒストリア』
▲迷い込んだ時の狭間・ヒストリアで謎の双子と出会い、ストックの運命は大きく変わることに。

 過去に戻る力を手にしたストックは、先ほど死んでしまったレイニーとマルコが死ぬ前の時間に戻ります。現在のストックは敵に情報が漏れていることを知っているわけですから、待ち伏せされている道以外のルートを選択でき、無事にアリステルに帰還することができました。

 このように“あの時、あの場所で、もし別の選択をしていたら……?”という僕らの夢を体言したのが本作なのです。死ぬはずだった人間を助けたり、どうしようもない状況を覆していくのが時間移動モノの燃えるところですよね! 僕もあの時、あの娘にちゃんと返事をしておけば……あ、そんな体験はありませんでしたね。すみません、ただの妄想でした。

『ラジアントヒストリア』 『ラジアントヒストリア』
▲仲間を助けるため、ヒストリアにある階段を駆け上がるストック。これはアツい演出ですね!

過去だけじゃない! 正伝と異伝、2つの世界を行き来して世界の運命を変える

 本作のおもしろいところは、ただ単に過去に戻るゲームではないというところ。プロローグが終わると、ストックはこのまま情報部に所属し続けるか、それとも軍に入るかを選ぶことになります。この選択により、世界は“正伝(情報部ルート)”と“異伝(軍ルート)”という2つの可能性に分かれます。

 2つの世界では、それぞれ仲間になるキャラクターの順番が違ったり、1つのルートでは見えなかった話の裏側などを見ることができます。また、1つのルートを進めていると絶対に先に進めなくなる瞬間が何度も出てきます。

 進めなくなる理由は、あるアイテムが必要だけどこちらの世界では手に入らない、とある人物に会わないといけないのにどうしても会えない……などさまざま。そんな時にもう1つの世界に移動して、解決方法を見つけて進めていきます。

 もちろん、世界間を移動できるのはストック1人だけなので、仲間たちに「なんでそんなことを知っているの?」とか言われたりして、主人公が選ばれし者・特別な存在だと感じられて楽しいですね。主人公が人知れず歴史を変えていく展開に思わずニヤニヤしてしまいます。

 このように、過去と現在、そして平行世界を行き来しながら、仲間たちの死や絶望的な状況を回避し、“分岐する歴史”の中からあるべき姿へと歴史を導いていくことが、ゲームの目的になります。

『ラジアントヒストリア』
▲画像中心の青い扉があるのが、正伝と異伝の別れ道。世界によって起こるイベントが異なるので、まったく違うストーリー展開を楽しむことができますよ!

 また、時間移動モノをプレイしていると、何度も同じイベントを見せられてうんざり! なんてことも多いと思いますが、本作ではXボタンでメッセージの高速スキップが、スタートボタンでイベントシーン自体のスキップが可能です。

 物語の中では重要な選択肢が本当に頻繁(ひんぱん)に出てきて、間違えるとすぐにパラレルエンドになってしまい、どうしても同じイベントを見ることになりますが、この機能のおかげでストレスなくサクサク物語を進めることができます。

『ラジアントヒストリア』 『ラジアントヒストリア』
▲選択肢は、どっちが死亡フラグか? というような考え方をすると、迷うことなく正解がわかると思います。でも、パラレルエンドも多種多様ですし、ゲームの達成度にもかかわるので一度は見ておくといいでしょう。

時間移動だけじゃなく、戦闘システムも特徴的

 『ラジアントヒストリア』の戦闘は、シンボルエンカウント制を採用しています。僕みたいな敵をガンガンよけて、物語をどんどん進めたい人間には非常にありがたい仕様ですね。でも、あんまりよけすぎても、中盤でボスに勝てなくなってくるので注意が必要です。なお、Yボタンで敵シンボルを切りつけることができ、切りつけて敵が気絶すれば、先制攻撃ができるようになります。

『ラジアントヒストリア』 『ラジアントヒストリア』
▲敵以外に、フィールドの障害物も切りつけることができます。障害物を取り除けば道ができ、その先にある宝箱からアイテムを入手できます。

 本作のバトルシステムは“グリッドシステム”というもの採用していて、かなり特徴的。敵キャラクターは3×3の9グリッドの中に配置されていて、敵の位置によって与える&くらうダメージが変化します。各キャラクターは、敵を奥のグリッドに吹き飛ばす、左右に飛ばす、手前にひきつける、空中に吹き飛ばすなどのスキルを持っています。なので、攻撃力が高い敵は後列に吹き飛ばし、位置に関係なくダメージを与えられる魔法で攻撃するなど、戦略性の高いバトルが楽しめます。

 また、通常1つのグリッドには1体の敵キャラクターしか存在できないのですが、上記のスキルを使うと1つのグリッドに複数の敵をまとめることができ、一度に複数の敵にダメージを与えることも可能です。ただ決定ボタンを淡々と押していく戦闘ではなく、考えて味方のダメージを最小限に抑えたり、戦闘時間を短縮したりできるのがおもしろかったですね。

『ラジアントヒストリア』 『ラジアントヒストリア』 『ラジアントヒストリア』
▲それぞれ別のグリッドにいる敵をスキルを使ってひとまとめにして、大技を複数の敵に叩き込むと爽快です!

 グリッド以外にも特徴的なのが、行動のチェンジという概念。各キャラクターは、1人につき1回まで敵味方関係なく行動順を交換(チェンジ)することができます。ストックならあと一撃で倒せるけど、今はマルコのターンだから倒せずに反撃をくらってしまう……。そんな時は、マルコとストックの行動順をチェンジすれば、ダメージをくらわずに倒すことができます。

 他にも、どんどん敵と味方の行動順をチェンジしていって、10回連続で味方が攻撃できる、なんてことも可能です。続けて攻撃が当たればコンボが発生して獲得経験値が上昇しますし、ダメージ値にコンボ数補正がかかるので、チェンジは本作でかなり重要なシステムです。

『ラジアントヒストリア』 『ラジアントヒストリア』
▲チェンジを積極的に行うと、ずっと味方が攻撃し続ける怒涛のラッシュを繰り出せます。ダメージも上がって経験値も上がるという二度おいしいシステム。

“おもしろさに誠実なRPGとは何か?”をテーマに制作された良作RPG

 ド派手なグラフィックや豪華な声優陣などの付加価値ではなく、アトラスが今一度“おもしろさに誠実なRPGとは何か?”というテーマのもとに制作した、非常に丁寧な仕上がりの作品です。

 簡単に人が死んでしまうような、2国間の戦争が描かれた重めのシナリオや、ストレスレスなシステム、特徴的でおもしろいバトルなど、王道に忠実でありつつも、それだけに収まらない良作RPGだと感じました。DSでおもしろいRPGを探している人には、ぜひともプレイしてほしい1本ですね。時間移動と歴史改変のシナリオは本当に止め時が見つかりません。ぶっ続けでプレイしてしまうこと請け合いです!(白井える)

(C)ATLUS CO.,LTD .2010

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