2011年1月31日(月)
全国のゲーム屋さんが毎月1本、販売本数は大ヒットとはいかないものの、実際に遊んでみてこれはおもしろいというゲームを選ぶ“ゲーム屋さんが選んだ良作!”。その1月の良作に、チュンソフトから発売されたDS用タイトル『不思議のダンジョン 風来のシレン5 フォーチュンタワーと運命のダイス』が選ばれた。
そこで今回も、日本テレビゲーム商業組合・ゲーム販売研究会のアドバイザーでもあるライター・田下広夢氏に、その選定理由と魅力について語っていただいた。
▲『不思議のダンジョン 風来のシレン5 フォーチュンタワーと運命のダイス』 |
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ゲームユーザーの間では有名だけど遊んだことがないという人も意外と多い……『風来のシレン』シリーズはそんなゲームタイトルの筆頭かもしれません。ミスをするとレベルは1に戻って、アイテムはすべて没収、スタート地点からやり直し、というのが難しそうなイメージを与え、そのわりに、そのやり直しをしなきゃいけないゲームのどこがどうおもしろいのかは、イマイチ伝わっていないように思います。
『風来のシレン』と言えば、“1,000回遊べるRPG”というキャッチコピーがすごく有名ですが、そのゲーム体験を表現するなら、“1,000回倒れてもおもしろい”と言う方がより正確かもしれません。よいゲームというのは、プレイヤーがミスをした時、その真価が問われるんです。死んだからもう嫌になっちゃった、やり直すのが面倒だ、というのは普通のゲームです。よくできたゲームは、ミスをした時、「くそっ! もう1回!」とプレイヤーに言わせます。悔しくても、次はこうしてやる、今度はクリアしてやると、奮起させます。そして、『風来のシレン』は、それがたとえ1,000回目のミスであったとしても、そう思わせる、そんなゲームです。
『風来のシレン』はダンジョンを潜ったり、登ったりするゲームです。最大99階のダンジョンは、挑戦するごとにその形も、落ちている物も、敵の配置も変わります。時には、階段を降りたらモンスターに囲まれていたり、食べ物がなくて空腹で倒れてしまったり、見えないところから飛んでくる炎に丸焼きにされることも。逆に、思わぬところで強力な武器を拾ったり、状況を一変する道具を手に入れることもあります。
そんなことを言うと、なんだか運で決まってしまうゲームのようですよね。でも、それじゃあ1,000回どころか1回倒れても投げ出してしまいます。そうではないんです。何十階もあるダンジョンを潜れば、1度や2度の絶望的な状況には、必ず偶然、出会うんです。偶然ですが、必ずといっていいぐらいの確率でそういう状況に追い込まれます。それと同様に、攻略のカギとなる希望にも、必ず偶然、出会います。
ですからプレイヤーは、いつか出会う絶望に備えて、1階から準備をします。そしていつか出会う希望を信じて、どんな絶望の前でも1歩ずつ進みます。敵に囲まれる時のことを想定して道具を温存します、お腹がすいて1歩1歩体力が減る状況でも、くさったおにぎりをほうばり、落ちている草を食んで、進みます。1歩先に落とし穴があって下の階に脱出できるかもしれない、次のひと振りが会心の一撃になるかもしれない、隣の部屋に道具があるかもしれない。あらゆる可能性を検討して生き延びたプレイヤーに、幸運は突然訪れます。
そうやって、絶望に出会って、希望を信じて、あらゆる手を尽くして生き延び、ダンジョンを攻略する中、倒れてしまった時に、思うわけです。あの時こうすれば、今度はこのモンスターに気をつけよう。そして「くそっ! もう1回!」と、こうなるんですね。だからこそ、“1,000回遊べるRPG”なのです。
これだけおもしろいゲームでありながら、シリーズファン以外にはなかなか広がっていかないタイトルでもあります。“ゲーム屋さんが選んだ良作!”では、甲乙つけがたいゲームが並んだ時に、ひとつの視点として、シリーズタイトルよりは新規作を、という意見があります。おもしろいのに知られていないゲームをお店がオススメするべきだ、ということですね。
そういう意味では、『風来のシレン5』はスーパーファミコンから続くシリーズで、その名前は多くのユーザーから知られています。それでも、シリーズファン以外には中身が伝わっていない、というのが現状で、オススメする価値があるということで、今回、選ばれています。これを機会に、『風来のシレン』シリーズのおもしろさが再認識され、遊ぶ人が1人でも増えればと思います。
販売店での展開の一例。各店舗の写真は、昨年12月タイトルのPSPソフト『ダンガンロンパ』の店頭展開のもの。
▲【東京都/TVパニック赤羽店】大量のモノクマがユーザーを出迎える、にぎやかで妖しげなコーナー展開。『ダンガンロンパ』の雰囲気が、お店の人にも伝わってこういうコーナーになるんですね。 | ▲【愛知県/お宝創庫刈谷店】巨大モノクマPOPがドドーンとそびえて迫力あるコーナー。思わずたじろいでしまいそう。 |
▲【愛知県/USVファミーズ中村書店】メーカーの公式ポップの中で、店員さんお手製のダンボールによるポップが効いてます。 | ▲【東京都/ファミコンワールド ぱお羽村店】手作り感満載。こういう、いかにも店員さんが工作してコーナー作ってます、というお店って、何となく楽しげで居心地がいい気がします。 |
毎月の“ゲーム屋さんがえらんだ良作”タイトルは『電撃ゲームス』ゲームス データスコープ コーナーで連載中!
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