2011年9月2日(金)
電撃文庫の作家陣によるメールインタビューをお届けしていく“Spot the 電撃文庫”。第4回は、『レトロゲームマスター渋沢(以下、渋沢)』の作者・周防ツカサ先生のインタビューをお届けしていく。
▲彩季なお先生が描く本作のカバーイラスト。 |
本作は、優等生の堅物美少女と、彼女のレトロゲーム師匠(マスター)に就任した不良生徒が織り成す“ゆるゆる青春ゲームラブコメ”だ。入学以来主席の座をキープし続けている学級委員長・早坂(はやさか)ちひろは、不良生徒の渋沢(しぶさわ)を更生させるため、彼がサボりに使う旧宿直室にやってきていた──はずだったのだが、渋沢が持ち込んでいた旧式の家庭用ゲーム機の魅力にいつの間にかずっぽりハマってしまう。
それからというもの、ちひろは旧宿直室へと足しげく通うようになり、渋沢を質問攻めにしてくるのだった。渋沢は、そんな彼女にゲンナリしつつも師匠として彼女の導き方(?)を模索していくが……。
インタビューでは、ゲーム好きな人が読めば思わずニヤリとしてしまう本作が生まれた経緯や、小説を書く時のこだわりについて伺った。ファンはぜひチェックしてもらいたい。
――この作品を書いたキッカケを教えてください。
別のシリーズになりますが、『ギャルゲーマスター椎名(以下、椎名)』という作品を書いていまして、ある日、担当編集の1人である三木一馬さんが「『マスター』シリーズ第2弾を!」と言い出したんです。今でも発言の真意は謎ですが、「第2弾! イエーイ!」とうかつにもその提案に乗ってしまい……。ひと言で言えば罠ですね。
ただ“レトロゲーム”という題材を選んだのは自分です。原稿もかなり自由に書かせてもらえました。ちなみに『椎名』と『渋沢』はタイトルこそ似ていますが、ストーリーやキャラクターはそれぞれ独立していますので、『椎名』を読まないと『渋沢』の内容がわからないということはありません。『オバケのQ太郎』と『ドラえもん』くらい違います。
――本作の特徴や注目してほしいポイントはどこですか?
優等生の堅物委員長とクラスきっての不良を密室に閉じ込め、1台のゲーム機を与えると、一体どういった化学反応が起きるか……というのが本作のコンセプトです。タイトル通り、レトロゲームネタも満載ですので、そこにも期待していただけたらと思います。
80年代のゲームが中心なので、今の10代の人たちにはなじみがないかもしれません。ですが、昔のゲーム事情が垣間見えるシーンが結構あるので、ゲームの歴史を追体験できるんじゃないかな……と10代の方にもアピールしておきます。
――作品を書く上で、どんなところに悩みましたか?
作品とは直接関係ありませんが、本のカバーのところの著者近影(プロフィール欄)の画像をドット絵にしよう! と思い立ち、作業に入ったのですが、絵心がないのでかなり悩みました。そういえば、もう1人の担当編集である土屋智之さんから「このドット絵使ってもいい?」と言われまして、何に使うのかと思ったら、章と章の間の扉に使われていました(笑)。余談ですが、その画像は著者近影の画像とはちょっと違います。
――執筆にかかった期間はどれくらいでしたか?
『渋沢』は『電撃文庫MAGAZINE』の連載を経て文庫化した作品で、空いている時間に雑誌掲載分の原稿を執筆する形を取っていました。ですので、企画から文庫化にいたるまで1年かかっています。実際の執筆期間は半年もかかってないと思います。
――特にお気に入りのシーンはどの部分ですか?
冒頭が気に入っています。特に派手な展開というわけではないのですが、この冒頭のまったりした会話のやり取りがすべての基本になっているので、これが書けていなかったら作品全体の雰囲気がまったく違うものになっていたかもしれません。
――主人公やヒロインについて聞かせてください。
ではヒロインの委員長について。優等生で堅物、と聞くとツンデレっぽいキャラを思い浮かべるかもしれませんが、そういう性格のキャラだと主人公と一緒になってゲームで遊ぶというシチュエーションが成立しないので、いろいろと手を加えまして、結果、ちょっと天然の入ったちょっと地味目の女の子になりました。「地味だけどカワイイ! 俺、委員長と水さえあれば生きていける!」というのが土屋さんの評価です。
――今後はどのように展開していくんでしょうか?
一応シリーズ展開する予定ですが、ネタありきな作品なので大長編にするのは無理ですね(笑)。
→小説を書く時のこだわりやアイデアを出す秘訣は……?(2ページ目へ)
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表紙イラスト/ 彩季なお