News

2011年9月9日(金)

【まり探】始まりはアドベンチャーの否定から――CEDECで『ダンガンロンパ』開発陣が語る

文:電撃オンライン

 パシフィコ横浜・会議センターで、9月6日~8日にかけて開催されたゲーム技術者向けカンファレンス“CEDEC 2011”。最終日となる8日、スパイクのプロデューサー・寺澤善徳さんとシナリオライター・小高和剛さんによる、セッション“熱意を形にするプロジェクト~ダンガンロンパで目指したちょっとオンリーワンなゲーム”が行われた。

 このセッションは、PSP用ソフト『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生(以下、ダンガンロンパ)』(2010年11月25日発売)の企画立案から発売までの過程を、ビジネスマーケティングの視点から説明したもの。初期段階の資料やメーカー内で行われた会議の内容など、貴重な資料が多数公開された。

『ダンガンロンパ』 『ダンガンロンパ』
▲スパイク プロデュースグループ シニアプロデューサー・寺澤善徳さん(写真左)と、R&D プランニンググループ シナリオライター・小高和剛さん(写真右)。▲セッションの冒頭では、『ダンガンロンパ』をまだプレイしていない人に対し、モノクマの「おしおきしちゃうよ!」という音声が流れ、会場が笑いに包まれた。

●始まりはアドベンチャーを捨てるところから

 『ダンガンロンパ』の企画が立ち上がる直前、スパイク社内では『侍道』『喧嘩番長』に続くIPタイトルの確立が命題となっており、オリジナルタイトルを作る気運が高まっていたという。2007年10月~2009年10月の2年間で、続編・版権もの・移植ものばかりが発売され、オリジナルのタイトルが3作品しかリリースされなかったからだ。

 そんな中、小高さんは寺澤さんにオリジナルゲームの企画書を提出する。「自分を一番生かせるのがシナリオ」と考えた小高さんは、アドベンチャーゲームの企画を提案したという。何度かのやりとりを経て提出された企画書が、『DISTRUST 15少年少女殺戮期 もしくはボクらの7日間生存戦争』。この時点で、すでに『ダンガンロンパ』のコンセプトとなる“サイコポップ 学園推理ミステリー”の文字が書かれている。

『ダンガンロンパ』 『ダンガンロンパ』
▲小高さんから寺澤さんに送られた2通のメール。1通目に添付されている2つの企画は「おもしろいものではなかった(寺澤さん)」とのこと。
『ダンガンロンパ』 『ダンガンロンパ』
『ダンガンロンパ』 『ダンガンロンパ』 『ダンガンロンパ』
『ダンガンロンパ』 『ダンガンロンパ』 『ダンガンロンパ』
▲初期段階の企画書。

 この時の推理システムは、小高さんが「『人狼』のようなモノ」と説明するように、心理戦をメインにしたものだった。「このシステムにピンと来なかった」と話す寺澤さんは、アドベンチャーの市場が厳しいこの状況で、アドベンチャーゲームとしてより強いインパクトが欲しいと考える。そこから練り直した結果、寺澤さんが納得するものが上がってきたので、その企画書で社内プレゼンテーションを行ったという。

『ダンガンロンパ』 『ダンガンロンパ』
『ダンガンロンパ』 『ダンガンロンパ』
『ダンガンロンパ』 『ダンガンロンパ』 『ダンガンロンパ』
『ダンガンロンパ』 『ダンガンロンパ』 『ダンガンロンパ』
▲1回目の社内プレゼンテーションに使われた企画書。

 ところが評判は、「PSPでのアドベンチャーなので市場的にMAXは4万本弱」「おもしろそうだが、セールスポイントがわかりづらい」「他のタイトルのいいところ取りで独自性が薄い」「PSPの実稼動層である中高生を魅了する要素であるアドホックなどは必須」などさんざん。特に小高さんを落ち込ませた意見は、「開発費を下げて、もっと独自性が高くなればいい」だったとのこと。結局最初のプレゼンテーションでの社内の評価は、“おもしろそうだけど、ダメだね”だったようだ。

 それでもこの企画があきらめきれなかった小高さんは、アドベンチャーゲームである限り無理だと考え、“アドベンチャーを捨てること”を決意したという。そこで“ハイスピード推理アクション”というジャンルを考え出し、すべての資料から“アドベンチャー”という表記を排除。新たに考えたジャンル名に方向性を合わせ、2回目のプレゼンテーションに挑む。その時のタイトルは『処刑学園と絶望高校生』。新たなジャンル、2.5Dのモーショングラフィック、そして“超高校級”の仲間を多数決で処刑するシナリオ、この3つのウリにスキルややり込みなどのRPG的な要素も加えた内容だった。

『ダンガンロンパ』 『ダンガンロンパ』
『ダンガンロンパ』 『ダンガンロンパ』
『ダンガンロンパ』 『ダンガンロンパ』 『ダンガンロンパ』
『ダンガンロンパ』 『ダンガンロンパ』 『ダンガンロンパ』
『ダンガンロンパ』 『ダンガンロンパ』 『ダンガンロンパ』
▲2回目のプレゼンテーションの企画書。モノクマの体型がスリムになっている。

 これなら大丈夫だろうという小高さんの予想に反し、社内の評価は「いじめや集団的リンチにしか見えず、生理的に受け付けない」「グロはいらない」「結果的にMAX4万本は変わらない。悪ければ1~2万本しか売れない」など、以前よりもシビアなものに。だが小高さんをはじめとするスタッフのやる気はすでに固まっており、経営陣を熱意で説得した結果、承認が降りたという。このあたりに、スパイクというメーカーのフレキシブルな社風が感じられる。

 社内プレゼンテーションではさんざんな評価だったが、ゲーム性を伝えるための映像を制作したところ、かなりの高評価を得ることができ、無事に開発続行が承認。本格的に制作がスタートする。

→次のページは、プロモーション展開の苦労について(2ページ目へ)

(C)Spike All Rights Reserved.

1 2

データ

関連サイト