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2011年10月31日(月)

【インタビュー】初代『くにおくん』スタッフの思いが詰まった25周年記念作『熱血硬派くにおくん すぺしゃる』

文:電撃Nintendo

 1980年代、小学生からサラリーマンまでに絶大な人気を誇ったアクションゲーム『熱血硬派くにおくん』。第1作目は1986年にアーケード向けとして登場し、1987年にはファミコンに移植されて発売。その後、同作は『くにおくん』シリーズとしてシリーズ化され、『熱血高校ドッジボール部』(1987年)、『ダウンタウン熱血物語』(1989年)、『ダウンタウン熱血行進曲 それゆけ大運動会』(1990年)などがそれぞれ発売されている。

 今年(2011年)は、ちょうど『くにおくん』が誕生してから25周年にあたり、この記念すべき年に合わせてアークシステムワークスより『熱血硬派くにおくん すぺしゃる』が3DS用として12月15日に発売される。今回は、初代『熱血硬派くにおくん』の制作メンバーである岸本良久氏(企画)、緒方孝治氏(デザイナー)の2人、そして今作のディレクターを務めるアークシステムワークスの金子宝巨氏にお話をうかがった。また、今作に参加している当時のメンバーとしてはもう1人、サウンドの澤 和雄氏がいるのだが、今回は都合が合わずお話をうかがうことはできなかった。

▲左からアークシステムワークスの金子氏、デザイナーの緒方氏、企画の岸本氏。

人が戦うゲームが作りたいからテクノスジャパンに行った

 『くにおくん』の生みの親である岸本氏は、当時はデータイーストに所属していた。テクノスジャパンから1985年にアーケードで発売された『エキサイティングアワー』を見て、「人を動かして戦うゲームを作るならテクノスジャパンがダントツだ」と思った岸本氏は、『熱血硬派くにおくん』のもととなる企画書を持って、テクノスジャパンへと入社した。

岸本 データイーストでは『サンダーストーム』や『ロードブラスター』といったレーザーディスクゲームを担当していました。当時、人型のキャラを動かせるゲーム会社はテクノスジャパンしかなかったんです。テクノスジャパンは“格闘ゲームで頂点に立とう”ということを目標としていた会社でしたので、そういうゲームを作りたいと思っていた自分にはピッタリでした。

 テクノスジャパンに入社した岸本氏は、さっそく新作の制作にとりかかる。当初のタイトルは『熱血硬派』。しかしこれではタイトルとしては弱いと考えた岸本氏は、絶対に売れるという自信のもとに社長である瀧 邦夫(たき くにお)氏の名前を入れることを提案する。“売れなかったらクビ”と言われた岸本氏だったが、約4ヵ月の開発期間を経て発売してみると、好調なセールスを叩き出した。

▲アーケードで1986年に発売された『熱血硬派くにおくん』。全4面構成でラストステージでは、ドスを持ったヤクザの集団とも戦う。刺されるとどんなに体力があっても1ミスとなる。

岸本 緒方に10体くらい主人公キャラを描いてもらって、白い学ランのキャラにしようというところまでは決まっていたんですね。で、名前をどうしようかと。

緒方 当時は“◯◯くん”と付くタイトルが流行っていたんです。コナミの『新入社員とおるくん』とか……。それでこの作品もそういった名前にしようとしました。

岸本 そこでパッと社長の名前が浮かんだんです。“たき くにお”、“くにおくん”いいねぇコレ。ということで社長に相談しに行きました。

緒方 そのときは開発のメンバーは10人くらいだったんです。社長は開発にも近い存在でしたので、気軽に話しやすかったという部分はあります。

岸本 テクノスジャパンのゲームって、ゲーム内のキャラクターの名前を社内の人や知っている人から取るパターンが多かったんです。くにおのライバルである“りき”は、私の地元にいた怖い人から取りました(笑)。ちなみにりきとしんじの声は、ここにいる緒方が言っていたんですよ。「なめんなよ、このやろう」と「ふざけんなよ」だったかな? さらにみすずの声は当時親しかった女性にやってもらっていました(笑)。もちろん最新作はきちんと録り直していますよ。

緒方 あの当時はそういう自由な感じがありましたね。

▲ステージ3に登場するスケバンたちのボスとして待ち構えるみすず。

 現在のゲームではあまり見られない4ヵ月という短期間で完成した『熱血硬派くにおくん』だったが、『エキサイティングアワー』を作り終えた勢いのまま作られたという。しかし、現在のように開発機材が豊富に揃っているわけではなかったので、キャラクターのドットを打つのも一苦労だった。

岸本 昔の喫茶店やゲームセンターに置いてある、テーブル筐体ってありますよね。あれを使って、1つ1つポチポチとドットを打っていたんですよ。でも、ずっと腰を丸めて作業をしているものですから、すごく腰を痛める作業でしたね。しかも当時はセーブするメディアがテープでしたから、保存するのに30分かかったりしていました。あの機材を今のゲームスクールの生徒にやらせたら、たぶん1週間でみんないなくなりますね(笑)。

 『熱血硬派くにおくん』を発売したテクノスジャパンは、次に『双截龍(ダブルドラゴン)』を発売し、続けて『熱血高校ドッジボール部』を発売する。その後、ファミコンへの『熱血硬派くにおくん』、『熱血高校ドッジボール部』の移植などを行っていく。

▲まだまだリアルタッチなファミコン版『熱血硬派くにおくん』。移植にあわせてアーケード版からさまざまな要素が追加されている。▲ファミコン版『熱血高校ドッジボール部』。アーケード版では無個性だった仲間に名前と必殺シュートが設定され、キャラクターものとしての方向性が決まった作品でもある。

岸本 ここから『ダブルドラゴン』と『くにおくん』の2本立てで会社が進んでいくんですが、当時は最初からシリーズで行こうということではなかったんですよ。でも、『くにおくん』を出せば売れるというイメージが会社的にも世間的にも出てきてしまったので、どんどん作っていったという感じでしたね。

 また、ファミコンはアーケードと比べるとハードの性能は劣っていたが、それを克服するために編み出した2頭身キャラが2つの利点をもたらした。顔を大きく作れるので表情を出しやすいというのが1つ、アクションが簡略化できるうえに使い回しができるというのがもう1つである。

25周年記念作は当時のスタッフの企画から始まった→(2ページ目へ)

(C) Million Co.,Ltd / (C) ARC SYSTEM WORKS

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