2011年11月30日(水)
――先ほど話題に上った『ダンガンロンパ』と『STEINS;GATE』は販売本数10万本の大台を超えた稀有なAVGですが、売れにくいAVGというジャンルで、どうすれば売れるのか? お考えをお聞きしたいです。
そういうことを偉そうに言えるほどの立場ではないので……うーん、そうですね。どうしたらいいか? とは常に考えていて、『ルートダブル』で試したことは“わかりやすい題材”にする、ということです。プレイしてみないとどんな話かわからないのではなくて、プレイする前から自分の興味の対象となる、おもしろそうだと思えて期待がすぐに沸く題材にしたかったんです。
あとは、実際に“おもしろい作品”になっていることも重要ですよね。“おもしろい=必ず売れる”、ということではありませんが、おもしろくないものは売れ続けませんから。内容がよければ他人に勧めてもらえる期待が高まります。先の2作品は、プロモーションの成果だけじゃなく、おもしろいという評判が広がって売れ続けた部分も大きいと思います。それと、誰かと“楽しく語り合える作品”にすることも大事かと思います。そういうものを目指して、今回『ルートダブル』を作っています。
――ゲームの中ですべてを完結させてしまうと、語り合いにくいかなと個人的には思います。
「おもしろかったー! でも全部スッキリしたからハイ次!!」となってしまいますからね。なので、結末をきっちり用意して、大きな主軸の部分はすべて解決するけど、細かい部分で想像の余地があるのはやっぱり必要だと思います。作品のテーマ・設定・ストーリーなどすべての情報を100とすると、97~98ぐらいであえて止める。ただ、隠すのではなくてほのめかす、あるいは複数の可能性を提示することが必要です。制作側には答えはあるのですが、あえて正道を明言しないことで語り合えるんだと思います。ゲームをプレイし終えた時に、「誰かとこのゲームについて語り合いたいー!」と、そんな気持ちになってもらいたいですね。
――これを発売前に知ってもらうのは難しいですよね。
そうですね。プレイしてみてください! というところなのですが……。
――でもプレイしてくれないんですよ(笑)。
ゲームの値段が高いというのも、1つの障害なんだと思います。これがライトノベルであれば、1冊600円ぐらいですから「表紙がかわいいからとりあえず読んでみよう」となり、失敗しても「まぁいいか」と思えます。
また、時間の問題も関係していると思います。映画であれば2時間ですが、AVGの場合は本当におもしろいかどうかは、最後まで読んでみなければわからない作品もありますから……。
――最初から最後まで、常におもしろいAVGなんてめったにありませんからね。
とりあえず、手に取ってもらう工夫として、ユーザーが引っかかりを持ってくれそうなものは、たくさん入れたつもりです。魅力的なキャラクターだったり、設定、選択肢がないシステム、スピード感のあるストーリー展開などですね。とにかく、手に取ってみないと気になってしょうがなくなるものをいろいろと入れています。
Bルートのトリッキーな設定なんかも、その1つですね。普通、昔のゲームであれば、発売前にBルートの構成などは言わないと思います。プレイしてみて、「なんだこれは!?」とリアルタイムで設定に触れてもらいます。でも、僕はあえてそこを事前にお伝えすることで「気になるでしょ?」と訴えかけます。ひょっとしたら、そのせいで真相の一端にたどり着くユーザーがいるかもしれません。それでも、手に取ってもらえなければ意味がないですから。
――前編と中編、そしてここまででたくさんの魅力などを伺いましたが、最後にまだお話されていない注目ポイントなどあれば、お聞かせください。
『ルートダブル』にはどうしても難しい言葉や概念がたくさん出てきます。当然それらを知らなくても、ストーリーを追いかけながら理解できるように書いてありますが、さらに知りたい人のために、160~170項目ほどある“用語解説集”を用意しています。
現実にある概念だったり、この作品用にアレンジされた概念などが収録されているのですが、とても読み応えがあります。ただの設定集ではなくて、その解説を1つ1つ読み進めることによって、裏側にある何かが見えてくるんです。全部読めば、用語解説を語っている何者かの立場が見えてくる人もいると思います。もう1本のシナリオですね。作品をさらに深く読み込みたい人は、せひ“用語解説集”をコンプリートしてみてください。ものすごいボリュームですが、非常におもしろいです。
――頑張ってコンプリートしてみます! 現在、全力で『ルートダブル』を制作されているとは思いますが、この後の作品の構想などあったりするのでしょうか?
準備はしています。……と言いたいところなのですが、このタイトルに全力投球中なので、今は他のことは考えられないですね。これが最後になってもいいくらいの気持ちでやっていますので、全部出し切っています。なので、次を考えるとなったら苦労しそうです……(苦笑)。
――期待しています。それでは最後に、電撃オンラインの読者にメッセージをお願いします。
おそらくこの記事を読んでくれている人は、『ルートダブル』になんらかの関心を持ってくださっていると思います。その皆さんが持っている関心・興味・期待を必ず満たせる作品であると自負します。そういう作品になるよう、今も全力で頑張っていますので、発売までご注目ください。
(C)イエティ/Regista
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