2012年1月21日(土)
電撃文庫で活躍する作家陣のメールインタビューをお届けする“Spot the 電撃文庫”。第21回となる今回は、『乙女ゲーの攻略対象になりました…。』の作者・秋目人先生のインタビューを掲載する。
▲森沢晴行先生が描く『乙女ゲーの攻略対象になりました…。』の表紙イラスト。 |
本作は、なぜか“乙女ゲー”の世界に放り込まれ、“攻略対象”になってしまった主人公・武尊湊(ほたか みなと)の苦難の日々を描いた一風変わったラブコメディ。最初のうちこそ「もしや美少女たちにアタックされまくり!?」と浮かれていた湊。しかし、攻略フラグが立っていくと死亡ルートに突入するかもしれないという設定を思い出した彼は、美少女たちから身を遠ざけようとするのだが……。
秋目先生には、そんな本作が生まれたキッカケや、今後の展開などについて答えていただいた。また電撃文庫 新作紹介ページから本作の試し読みができるようになっているので、まだ読んでいない人はこちらもチェックしてもらいたい。
――この作品を書いたキッカケを教えてください。
担当さんに出した企画書に、「こんなのも考えてみました」と初期案を数行羅列して入れておいたのがキッカケです。その時はわずか2行でした。そして、他の企画も含め「もうちょっと詳しく話そう」とのことで後日詳細版を作ったんです。その時、スラスラっと軽く読めて笑える話を猛烈に書きたい気分だったので、企画書の最初にこれを書いておいたら見事担当さんに願いが通じました。
――作品の特徴やセールスポイントを教えてください。
“乙女ゲーが題材で舞台”というところでしょうか。また、主人公がヒロインを口説く側ではなく口説かれる側であるところ。実は乙女ゲーこそ、攻略対象の側から見れば、青少年にとってのウハウハ世界だと思います。あとはそうですね……リンリンさんです!
――作品を書く上で悩んだところを教えてください。
自分の脳がいつの間にかゲーム脳――乙女ゲーやギャルゲーに最適化された脳――になっていたことですね。恐ろしいことです。例えば、自分は知っているので別段疑問に思わず、“一枚絵”“スチル”などとなんの説明もなしに書いてしまうんですが、「これって、どういう意味ですかね?」と打ち合わせで担当さんに突っ込まれ、「! そうか……これはゲームオタク用語だったか……!」とカルチャーショックを受けることがしばしばでした。しかし私は胸を張ってこれからもこちら側で生きていきます。
――執筆にかかった期間はどれくらいですか?
企画から第1稿の完成、その後の改稿まででだいたい5~6カ月だと思います。
――主人公やヒロインについて聞かせてください。
主人公については、フツメンで攻略対象です。美形一家に紛れ込んだフツメンで、「きっと姉貴に俺の分の養分が」などと言いますが、実はそれほど気にしていません。それより名字を間違われることを気にします。他の特徴としては、声フェチです。
メインヒロインについては、乙女ゲーのプレイヤーキャラクターということで、どういう個性付けをするか悩んだキャラクターです。ただし名前は主人公より先に決まりました。彗星のごとく頭に降ってきました。もし変えろと言われたら、主人公の名前は変えてもいいが、このヒロインの名前だけは変えられねえ! という勢いの決まり具合(私の中で)でした。
――お気に入りのシーンはどこですか?
リンリンさんの活躍により主人公一家の家族会議が開かれるシーンです。
――本作の執筆中に起きた印象的なエピソードはありますか?
祝日。改稿原稿の締切日。見知らぬ携帯番号から電話が……! 1回出てみて相手の出方を伺ったら、「もしもーし」と知らない人の声が……! いたずらか……! プチッ。切りました。しかしまた同じ番号から長い着信が……! よーし着信拒否だ。
2~3時間後、夜、メールチェックをしたら担当さんからのメールが。今日中にこちらからの連絡が必要な内容で昼間に送信されている……。現在時刻はもう少しで明日になろうかというころ。ここで私は閃きました。……あれ? もしかしてあの着信拒否した携帯電話の番号……担当さんの? メールを返信し、そのことに触れてみたらなんと正解でした! 知らない人じゃなくて知ってる人だったよ! なんてこった……! 着信拒否は解除しました。担当さんからの電話を本気で着信拒否した大失態のおもしろエピソードです。
――今後の予定について教えてください。
2巻は出るんじゃないだろうか、と思います。3巻以降は……どうなるか私にもさっぱりわかりません。神のみぞ知る、です。書きたいエピソードはあるので、すべて出し切れることを願うばかりです。
――ゲームで熱中しているものがあれば教えてください
熱中というか、これから買ってたぶん熱中するであろうゲーム、になりますが、PSP『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』です。続編も決定しているようで楽しみにしています。
――その他に熱中しているものはありますか?
エポック社さんのガチャガチャで、『和の心、仏像コレクション4』。このガチャガチャだけはふらふらと引き寄せられ、つい300円を投入し、回してしまいます。
――小説を書く時に、特にこだわっているところはどこですか?
“自分でおもしろいと思えるものを書くこと”です。おもしろい、つまらないの感性は多様で、たとえ自分がおもしろいと思っても、読者の方にとってはつまらない……などということは日常茶飯事です。それでもやはり、まずは自分がおもしろいと思うもの。これを心がけています。
――アイデアを出したり集中力を高めたりするためにやっていることは?
本、漫画を読む。ゲームをする。レンタルDVDを見る。毛布にくるまってミノムシ化する。近所の猫とモフモフたわむれる。あとは締切間近までひたすら粘る。などです。
――現在注目している作家・作品を教えてください。
怪談実話の『震』『痕』『無惨百物語』などを発表されている黒木あるじさん。こちらも怪談で『赤いヤッケの男』『黒い遭難碑』の安曇潤平さん。読んだ後に頭がよくなった気分になれる芸術ミステリ『エコール・ド・パリ殺人事件』『トスカの接吻』の深水黎一郎さん。
――高校生くらいのころに影響を受けた作品は?
小説だと京極夏彦さんの『姑獲鳥の夏』『魍魎の匣』『狂骨の夢』などの『京極堂』シリーズや、綾辻行人さんの『十角館の殺人』からはじまる『館』シリーズ。須賀しのぶさんの『流血女神伝』シリーズなど。
漫画だと『GS美神 極楽大作戦!!』『動物のお医者さん』『HIGH SCORE』など。映像作品だと、時代劇『必殺仕事人』『三匹が斬る!』、海外ドラマ『ナイトライダー』『素晴らしき日々』『宇宙船レッド・ドワーフ号』『アルフ』『サブリナ』『アンジェラ』など。アニメだと、『ルパン三世』『新世紀エヴァンゲリオン』『21エモン』など。
――それでは最後に読者へのコメントをお願いいたします。
乙女ゲーをプレイしたことがある方は、乙女ゲーあるあるネタなどで楽しんでいただければと思います。乙女ゲーを知らない方も、これを機に新しい世界への入門編として一読してみるのはどうでしょう。潜在的な乙女ゲープレイヤー人口は多い、と私は踏んでいます。ですので、男性も女性も、この本をネタにリアルでの交流のとっかかりを持つのもありなんじゃないでしょうか。成功したら教えてください。
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表紙イラスト/森沢晴行
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