2012年2月4日(土)
電撃文庫で活躍する作家陣のメールインタビューをお届けする“Spot the 電撃文庫”。第22回となる今回は、『VS!! -正義の味方を倒すには-(以下、VS!!)』の作者・和泉弐式(いずみ にしき)先生のインタビューを掲載する。
▲白羽奈尾先生が描く『VS!!』の表紙イラスト。 |
本作は、怪人ですら敵わない無敵のヒーローに挑む、悪の組織の下っ端戦闘員を描いた熱血ストーリー。「正義の味方に勝てるわけがない」とあきらめ、戦いに参加しても生き残ることしか考えていない主人公“ニーイチ”。そんな彼がとあることがキッカケで“戦闘員の誇り”を賭けて、正義の味方に立ち向かう様子が熱く描かれていく。
和泉先生には、本作を書いた経緯やオススメシーンなどを伺った。なお、電撃文庫 新作紹介ページでは本作の冒頭部分が読めるので、ぜひチェックしてほしい。
――この作品を書いたキッカケを教えてください。
『VS!!』は、いわゆる戦隊モノに出てくるような“悪の組織の戦闘員”を主役に置いた物語です。悪くて弱い。そんな戦闘員について書こうと思ったのは、ある時、作品中に出てくるひと言が頭をよぎったからでした。その言葉とは“怪人が●●●”。一応ネタバレになるので伏せていますが、おおげさに言えば、そのセリフを書くために本作は書かれました。
――作品の特徴やセールスポイントを教えてください。
最大の特徴は、やはり“悪の組織の戦闘員”を主人公に置いている点だと思います。ザコである戦闘員が、圧倒的な強さを誇る正義の味方たちにどう立ち向かうのか。この問題が『VS!!』の軸となっています。また、戦闘員と怪人のドタバタした共同生活も、本作のウリの1つです。
――作品を書く上で悩んだところはどこですか?
本作を書く上で意識した点に“悪の組織は悪で、正義の味方は正義”というのがあります。ただ、主人公としてどこまでの悪をOKとするか、そのバランスの取り方に苦労しました。たぶん、これからも悩むことになると思います。続きを出せればですが。
――執筆にかかった期間はどれくらいですか?
本作は、電撃小説大賞への応募作を改稿したものですが、応募作を書き上げるのには約半年、その改稿には1年ほどかかっています。この筆の遅さは今後改善したいところです……。
――主人公やヒロインについて聞かせてください。
『VS!!』の登場人物の中から、メインとなる4人について簡単に紹介します。まずは、主人公である戦闘員21号。仲間たちからは“ニーイチ”と呼ばれています。悪の組織によって創られた“人工生命体(ホムンクルス)”である彼は、戦うために生まれました。ですが、他の戦闘員たちと違い、正義の味方に勝てるわけがないとあきらめています。
そんな彼をいつも心配しているのが、戦闘員22号、“ジジ”と呼ばれている少女です。いたずら好きな21号に振り回されながら、人間社会で彼と一緒に暮らしています。次に、怪人“ジャバウォック”。史上最強と称される悪の怪人ですが、普段はコケティッシュな少女の姿をしています。彼女の起こしたある事件が、物語の始まりとなります。
そして最後に、21号たちの敵となる姫宮桜。正義の味方である彼女は、“鎧”と呼ばれる機械装甲を身にまとい、仲間たちと一緒に怪人や戦闘員を倒す日々を過ごしています。戦闘以外では、穏やかで心優しい少女です。
――お気に入りのシーンはどこですか?
2つ挙げます。1つは、ベランダのシーン。物語の転換点となるシーンです。もう1つは、シーンというには長すぎるかもしれませんが、全4章中ラスト1章をまるまる使った戦闘パートです。この章で展開される悪と正義の戦いは、書いていて非常に楽しかったです。
――執筆中に起きた印象的なエピソードがありましたら教えてください。
改稿作業中、何度か応募作を読み直したのですが、現在とのギャップを見ることができておもしろかったです。例えば、応募作と『VS!!』の大きな違いに、主人公である21号の性格があります。彼はグレました……。昔はもっといい奴だったんです。なので、たまに応募作を見ると「誰だこいつ?」となります。
――今後の予定について教えてください。
出せるかどうか微妙なところなのですが、次巻では、1巻の出来事によって悪の組織にある変化が起こる予定です。
――どういうキッカケで小説を書こうと思ったのでしょうか?
おもしろい小説を読んで、自分でも書きたくなった……よく覚えていませんが、おそらくそんな感じだったと思います。
――小説を書く時に、特にこだわっているところはどこですか?
もともとミステリ好きなせいか、伏線の張り方やどんでん返しに気を使っています。ですが最近では、むしろ展開が予想されても楽しんでもらうにはどうすればいいのか、ということを悩んでいます。
――アイデアを出したり集中力を高めたりするためにやっていることは?
アイデアは、歩いている時などに、ふと思いつくことが多いです。思いついたアイデアを具体化する段階で詰まった場合には、とりあえず、ノートに考えを書き出すことにしています。状況を整理し、問題点を明らかにしてから、どう解決すればいいのかを考えるのです。この方法の欠点は、そうそう上手くはいかないということと、人に見せられないノートがどんどん溜まっていくということです。
――初の商業作品になるわけですが、その感想を教えていただけますか?
うれしいのはもちろんのことですが、あまり実感がありません。ただ、せっかくの機会なので、とにかく1人でも多くの方に読んでいただければと思います。
――今後、どういった作品を発表していきたいですか?
機会とネタ次第ですが、あえて挙げるなら、ミステリっぽい作品でしょうか。
――現在注目している作家・作品を教えてください。
『烙印の紋章』の杉原智則さん。『サクラダリセット』の河野裕さん。オススメです。
――高校生くらいのころに影響を受けた作品は?
伊坂幸太郎さんの作品には、少なからず影響を受けていると思います。『陽気なギャングが地球を回す』を初めて読んだ時、衝撃を受けました。読み始める前、いろいろあって少し落ち込んでいたのですが、気づいた時には悩みごとがどうでもよくなって夢中でページをめくっていたんです。うさんくさい通販番組のようですが、事実です。あの時感じた「小説ってすげえな!」という想いは、これからも忘れないと思います。
――ゲームで熱中しているものがあれば教えてください。
『スーパーストリートファイターIV アーケードエディション Ver.2012』です。上級者の対戦動画を見るだけでもワクワクします。そろそろキャラ替えを考えていますが、やる時間がありません……。
――その他に熱中しているものはありますか?
仕事、小説、ゲームの3本です。これ以上はキャパシティオーバーになりそうで手が出ません……。
――それでは最後に読者へのコメントをお願いいたします。
『VS!!』は、悪くて、弱くて、だけど明るく生きているヤツらが、正しく、強く、カッコいいヒーローたちに立ち向かう話です。イロモノに見えるかもしれませんが、バトル、コメディと、やっていることは意外に正統派だったりします。ぜひご一読ください!
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表紙イラスト/白羽奈尾
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