2012年2月16日(木)
イエティから2012年春に発売されるXbox 360用AVG『ルートダブル -Before Crime * After Days-(以下、ルートダブル)』。その登場キャラクターたちを毎週紹介していく連載企画の第5回をお届けする。
『ルートダブル』は、“infinity”シリーズや『I/O』などを手掛けたクリエイター・中澤工さんが原案・監督・プロデューサーを務める新作サスペンスアドベンチャーゲーム。重大な事故が発生し、9人の人間が閉じ込められた巨大研究所“ラボ”を舞台に、救助に奔走するレスキュー隊員と閉じ込められた高校生の少年の2つの視点で物語が進行していく。
連載企画の第5回ではBルートの主人公・天川夏彦をピックアップ。開発スタッフのコメントやラフ画、色彩設定などとともに夏彦の魅力を解剖していく。
「興味ないね。そんなの、ぼくらには関係のないことだ」
市内の市立高校に通う少年。おとなしく、目立った行動を嫌っている。決して無感情ではないが、激しい感情を見せることがあまりない。視線はどこか遠くに向けられているような感じで、心ここにあらず。日々ルーチンワークをこなすように暮らしている。感受性が高く、他人の感情の機微にとても敏感。集団の輪に属しているととても疲れるので、1人でいることが多い。
母親・天川美夜子(てんかわ みよこ)は高名な科学者で、仕事が忙しすぎて滅多に家に帰ってこない。それゆえ、夏彦は1人暮し同然の生活を送っている。幼いころは今と正反対で、明るくてやんちゃな少年だったらしいのだが……?
9月16日に、なぜかラボに閉じ込められる。
CV |
市来 光弘(インタビュー記事はこちら) |
年齢 |
16歳 |
誕生日 |
2014年6月22日(蟹座) |
血液型 |
O型 |
職業 |
市立鹿鳴学園高等部1年B組 |
性格 |
まじめ。目立つことを嫌う。他人への干渉を極力避ける。 |
知力 |
高い |
体力 |
標準 |
趣味 |
なし(長期にわたって特定の何かにのめり込んだりしない) |
好き |
静かで穏やかな時間、親しい友だち、悠里の笑顔、ホットミルク |
嫌い |
考えなしの行動、誰かを傷つけること、群れること、昔の自分 |
エニアグラム |
Type7“情熱家” |
キャラクター |
みけおう |
■中澤工さんのコメント
“天川”“夏彦”――うーむ、なんとも象徴的な名前です。暗示的だとも言えます。
いったい何が象徴的で暗示的なのかは、本作をプレイしていけば、きっと伝わると思います。
夏彦は、渡瀬と対をなす、もう1人の主人公です。そして、渡瀬とは違った意味で自分を失っている存在です。渡瀬の場合は、記憶=過去をなくしたことで自分自身を失ったのですが、夏彦は過去のせいで自分を――未来への希望を失うことになってしまいました。
渡瀬には過去がなく、夏彦には未来がない。渡瀬は振り返る過去がないゆえに、未来に向かってがむしゃらに突き進みますが、夏彦は過去に束縛されているために、進むべき未来が見えない……と、そんな感じです。
ごく一部の友人(ましろや悠里など)以外との人付き合いを避け、日々を無為に過ごす夏彦。極端なことを言ってしまえば、外界の刺激を拒絶し、そのまま穏やかに緩慢(かんまん)な死へと向かっていくのが、彼の望みなのかもしれません。
シナリオ構成的にも、渡瀬のAルートは未来へ進むベクトルだけですが、夏彦のBルートは過去を振り返りながら進行していきます。とても対称的で、象徴的だと思いませんか?
エニアグラムについて。
すでにお気づきの方も多いと思いますが、なぜか夏彦と渡瀬だけは、エニアグラムのタイプが性格設定と合っていません。渡瀬は記憶喪失だから、喪失前と別人みたいになってるから……と解釈できますが、夏彦は一体どういうことなのでしょう? プロフィールには“幼いころは今と正反対で、明るくてやんちゃな少年だったらしい”とあります。幼少期(7歳ごろ)のキャラデザインを見てもらっても、今のような“冷たそう”な印象はなく、わんぱくな少年に見えます。まさに“情熱家”のタイプぴったりなキャラです。――9年前、一体何があったのでしょう?
このように夏彦のプロフィールには、渡瀬とは違った意味で謎が多いです。
実のところ、ユーザーの皆さんが夏彦のことをあまり知らないように、夏彦自身もあまり自分をわかっていません。皆さんがシナリオを読み進めるごとに夏彦を理解できていくように、夏彦自身も徐々に本当の自分を知っていきます。だから、Bルートは過去を再確認していくシナリオなのです。
自分のことは自分が一番よく知っているはず? 本当でしょうか? その認識に間違いがないかどうか、ぜひBルートをプレイしてみてください。きっと、何か感じるものがあると思います。
■月島総記さんのコメント
渡瀬と並ぶもう1人の主人公。この作品のテーマの体現者。それが天川夏彦です。彼もまた、渡瀬とは別のタイプの“男の中の男”。いや、正確にはそうなることを望んだ少年です。
夏彦は渡瀬とは違い、弱い部分やもろい部分が多々あります。鋼の肉体や無尽の勇気なども持っていない、決して孤高の英雄などではない、あくまで等身大の少年です。
もっとも彼も幼いころは、TVに出てくるような“正義のヒーロー”になることを望んでいました。しかし成長するにつれ、それはやはり難しいということを悟りました。
今では彼は、この世で起こる様々な災害や事件などを、自分に関係のない“TVの向こう側の出来事”と割り切り、日々を穏やかに過ごしています。むろん、それは悪いことでは決してありません。平凡な少年が、そんな危険な状況に踏み込むことなど、本来あり得ないことなのですから。
しかしある日を境に、彼を取り巻く世界には変化が訪れます。平穏な日常は不穏な非日常に変わり、否が応でも災害と事件の渦中に踏み込まざるを得なくなっていきます。そしてそれまで眼を背けてきた、本物の危機の到来。それに自分の大切な人たちが巻き込まれた時、彼は決断を迫られます。真実から眼を背け、これまで通りに生きるか。それともその危機に、自ら立ち向かうか……。
かつて己があこがれた“ヒーロー”になれるか否かを、彼は試されるのです。
そして夏彦は、この物語の主人公です。彼がその時どちらを選ぶのかは、わかりきっていますが――彼の本当の戦いは、そこから始まるのです。困難と痛みに挫けず、己の正義を貫ける否かの戦いが。
この少年の戦いを通じ、私は本作のテーマの1つを描きたいと思いました。そのテーマとは、“ヒーローとは何か”ということ。
それは頑強な肉体を持っている人や、特別な能力を持っている人を指すのではないと思います。たとえ無力でも、命脅かされている人や許し難い悪を見つけた時、自ら立ち上がり、行動できる人間のことを言うのではないでしょうか。
いや、条件はそれだけではないかもしれません。本物のヒーローの条件とは何か。正義とは、強さとはなんなのか……。回想と現実を幾度も繰り返しながら、夏彦は少しずつその答えに近づいていきます。
途方もない苦難の果てに見つける答え。それを皆様にも探し出していただきたいと思っております。夏彦と一緒に、ヒーローになってください。
→次のページでは、みけおうさんやおおたか鳴海さん、eco*さんのコメントをお届け!
(C)イエティ/Regista
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