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2012年2月29日(水)

一時はネットカフェ難民に!? Xbox 360『ルートダブル』シナリオライター・月島総記さんのすべてに迫るインタビュー

文:ごえモン

『ルートダブル -Before Crime * After Days-』

 どうも、ごえモンです。電撃オンラインでは、イエティから2012年春に発売されるXbox 360用ソフト『ルートダブル -Before Crime * After Days-(以下、ルートダブル)』の特集ページを展開しています。

 その特集ページでは、これまでキャストインタビューを3回、中澤工さんへのインタビューを前・中・後編の3回に分けてお届けしました。今回はインタビュー企画の7回目として、『ルートダブル』のシナリオライター・月島総記さんにお話を伺いました。

 インタビューでは、小説家になったきっかけや『ルートダブル』のシナリオについて、シナリオ執筆時に心掛けていることなどについて聞いています。この機会に『ルートダブル』のシナリオを手掛けたのがどのような人なのか、ぜひ確認してください!

●これまでのインタビュー記事
【第1弾】独占キャストインタビューその1
【第2弾】独占キャストインタビューその2
【第3弾】独占キャストインタビューその3
【第4弾】中澤工さんインタビュー 前編
【第5弾】中澤工さんインタビュー 中編
【第6弾】中澤工さんインタビュー 後編

■派遣切りとネットカフェ難民を経験して小説家へ

――まず、簡単な自己紹介からお願いします。

 ほとんどの方は初めまして。ご存知の方はお久しぶりです。小説家兼シナリオライターの月島総記と申します。これまでに小説やゲームシナリオなどいろいろな媒体・ジャンルの作品を書いてきたのですが、縁あって中澤工監督に声をかけられ、本作のシナリオを執筆させていただききました。私にとっては初の長編AVGのシナリオになりますが、よろしくお願いいたします。

――今までどんな作品を執筆されているのでしょうか?

 まず小説書籍では、ファンタジーや歴史ものなどです。スクウェア・エニックスから発売された長編ファンタジー小説『emeth~人形遣いの島~』(※1)、あるいはメディアファクトリーから発売された歴史小説『巴里の侍』(※2)、そしてPHP研究所から発売された歴史ファンタジー小説『刃の如く』(※3)といった作品を、今まで書いてきました。

 他にも、スクウェア・エニックスのモバイルアプリ『Imaginary Range(イマジナリー レンジ)』(※4)というゲームや、名作PCゲームをモバイル用にリメイクした『ひとかた』(※5)という作品など、モバイルコンテンツ業界でさまざまな作品を書いてきました。

 あと、携帯小説からWebアニメのシナリオまで、いろいろなジャンルの作品を。超仕事好きなので、どんな作品でも楽しみつつ、全力で書かせていただいております。もっともジャンル的には、どの作品も今回の『ルートダブル』とはかなり違いますね。しかしいずれも作品のノリや根底に流れるテーマなどは、ある程度共通していると思っています。

※1……2007年3月に、スクウェア・エニックスから発売された長編ファンタジー小説。第3回スクウェア・エニックス小説大賞入選作で、月島さんの商業デビュー作。

※2……2010年12月に、メディアファクトリーから発売された歴史小説。第1回ダ・ヴィンチ文学賞ASゼロワングランプリ大賞受賞作品。2011年12月に、宝塚歌劇団でミュージカル化された。

※3……2011年12月に、PHP研究所から発売された歴史ファンタジー小説。

※4……2011年5月に、スクウェア・エニックスから発売されたiPhone/iPad/android用アプリ。『ファイナルファンタジー』シリーズの名物キャラ“シド”が主人公の、スピンオフ作。

※5……2010年3月にtencrossから発売されたフィーチャーホン用アプリ。名作PCフリーゲームのリメイク作で、月島さんは追加シナリオやリライトなどを担当。現在はandroidにも対応している。

――『emeth』は複数の主人公の視点がよく切り替わり、それぞれの登場人物の行動や過去などが、物語に影響を与えるような作品だったと思います。『ひとかた』はループモノですが、もともとこういったトリッキーな作品がお好き、または得意だったのですか?

 拙作をお読みいただき、誠にありがとうございます(笑)。そうですね、構成がトリッキーな作品は、書くのも読むのも大好きです。最初に中澤監督にご連絡させていただいた時に、いくつかサンプルとして短編小説やシナリオをお送りしたのですが、それらも構成に凝った作品でした。そこを監督に見込まれて、今回のお仕事に誘っていただいたと伺っております。『ルートダブル』もそうですし、これからもそういう作品を書く機会は多いんじゃないかなと思います。

――『巴里の侍』が『SAMOURAI』として宝塚の舞台となりましたが、その感想をお聞かせください。

 舞台化のお報せをいただいた時は、とにかく驚きましたね。過去に宝塚さんで舞台化された作品といえば、ドストエフスキー先生や司馬遼太郎先生などの小説、あるいはハリウッド映画やシェークスピア戯曲など、正真正銘の超名作が大半だったので。なんだか光栄を通り越して、恐れ多かった感じです。

 しかしそうして舞台化された作品は、本っ当に素晴しかったです。私は3回観劇しましたが、観るたびに感動が増し、千秋楽では号泣してしまいました。約100年の歴史を持つ宝塚歌劇団の、実力や凄みというものに触れた思いです。

 原作は登場人物の90%が男という雄度の高い作品ですが、それを見目麗しい出演者の方々が演じることで、不思議な魅力が出ていたように思います。観劇されたお客様方にも大変好評で、「何度見ても号泣する」「(涙を拭くのに)ハンカチではなくタオルが必要」といった熱いご感想が寄せられており、とてもうれしかったです。原作者冥利につきました。

――宝塚の原作まで務められた月島さんですが、この業界に入ったきっかけや、シナリオライターになるまでの経緯はどんな感じだったのでしょう?

 大学時代に自主制作映画団体を運営しており、そこで脚本を書いておりました。それで文章を書く楽しさを知り、さらに周囲に小説や脚本を書く友人が多かったこともあって、自然とこの道を目指すようになりました。

――初めて書かれた小説はどのような作品だったのですか?

 デビュー作『emeth』の前身となったファンタジー小説です。それもデビュー作や『ルートダブル』同様、複数の人物の思惑と過去が絡み合い、1つの結末に向かっていくという構成になっていました。残念ながら某小説新人賞の最終選考で落選したのですが、この落選をきっかけに作家になることを意識しはじめるようになりました。

 しかし大学卒業後は、派遣切りにあったりとかいろいろありまして。一時期はネットカフェ難民になったり、タコ部屋に住んで肉体労働とかやったりしていたのですが……その時期にちまちま書いていた小説や脚本が、たまたま第3回スクウェア・エニックス大賞などの賞をいただき、作家としてデビューしました。

 正直助かりました。「貧乏生活脱出だぜ!」と思っていたのですが、作家になってからは小説と脚本だけではなかなか食えず、ゲームシナリオの仕事もするようになりました。するとその仕事が非常におもしろくて……すっかりはまり込んで、今に至るという感じです。

→『ルートダブル』の結末を巡って中澤さんと言い争いに

(C)イエティ/Regista

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