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2012年3月14日(水)

【G-netプレイレポート】PSP『オレは少女漫画家』オールクリア後レビュー! 新規参入ブランド第1弾の評価は?

文:ごえモン

『オレは少女漫画家』

 どうも、ごえモンです。PSP用ソフト『オレは少女漫画家』の発売からそろそろ1カ月、皆さんとっくにオールクリアされていると思います。僕は昨日、やっとオールクリアをしまして(笑)、あまりのおもしろさに「こりゃもっと売れなきゃイカン」と思い、レビューを書こうと思った次第です。

 というわけで、オールクリア後の僕から見て、本作がどうおもしろかったのかを簡単にレビューしていきたいと思います。『オレは少女漫画家』のことを知らなかった人、気になっていたけど購入しなかった人、あるいはまだ積んでいる人……。ぜひ、参考にしていただければ幸いです。

 本作の概要や登場人物のことを知りたい人は、以前に掲載した体験版プレイレポートをご確認いただければと。

■AVGで重要な要素の1つ“テンポのよさ”は◎

 僕の持論として、“AVGは中盤~後半に盛り上がればいいという甘えをなくし、最初からおもしろくあるべき”というものがあります。その観点から見ると、本作はとてもよくできている作品と言えます。

 体験版のプレイ時間は約1時間。その中には登場人物紹介があり、主人公の現状を紹介する描写があり、女装をすることになった経緯があり、男とバレないための訓練描写があり、イベントでのサイン会を経て人気を獲得する描写まである。この1時間をプロローグとすれば、ものすごく濃密なプロローグです。

『オレは少女漫画家』 『オレは少女漫画家』 『オレは少女漫画家』

 その濃密なプロローグが、シナリオライター・箒星さんの得意とするコミカルなテキストでテンポよく、そしてサクサク進みます。プレイ中は終始ニヤニヤ。あまりのドタバタ、ハイテンション、キャラの行動の突飛さに腹を抱えて笑えるシーンもたくさんありました。やはりパロディも多めで、『オレは少女漫画家』の世界の有名女性漫画家・トガシ先生もよく逃げ出しちゃいます(笑)。箒星さんの持ち味がいかんなく発揮されていて、ともすればいつも以上にコミカルでおもしろいかもしれません。ムダを極力排除したおかげで、いつもより洗練されている印象ですね。

 また、次から次へと物語が新しい展開へ短時間で移行していくのも、テンポのよさの秘訣。読みきりを執筆→それが評判になる→○○化したりいろいろあったり(笑)。そして女装バレなどを経て個別ルートへと進んでいく。このテンポのよさのおかげで中盤で中だるみを起こしていません。最初から最後まで、一貫しておもしろいAVGになっていたと思います。

『オレは少女漫画家』 『オレは少女漫画家』

■ルートによって熱血もの、感動もの、コメディにもなる多種多様さ

 テンポのよさに加えて、ルートごとに展開がかなり異なるのも好印象です。また攻略ヒロインによって、主人公が描くことになるマンガの内容も変化します。ドタバタコメディ一色なのかと思われがちな本作ですが、中盤からはシリアスな展開になることも。かといって、重い話にはなりすぎないので、後半で展開が変わりすぎる作品が苦手な人も安心です。

 ライバル漫画家との対決を描いた熱血ストーリー、家族や姉弟との関係を描いた感動もの。コメディに特化し、コメディだからこそ得られるカタルシスと痛快さ。そして、主人公にとってマンガとはなんなのか? 恋愛を通して、改めて漫画家としての自分を見つめ直していく人間ドラマ……などなど、ルート分岐後の内容は多種多様。すべてがマンガにしっかりとかかわっています。

『オレは少女漫画家』 『オレは少女漫画家』
『オレは少女漫画家』 『オレは少女漫画家』

 ルート分岐後、ヒロインと主人公の2人の世界になってしまうのではなく、登場人物全員が活躍するのも魅力ですね。そのもっとも顕著と言えるのが、主人公が連載をしている雑誌で人気No.1の漫画家・秋月凛菜のルートかもしれません。さすがはメインヒロイン(?)、グランドルートと言ってもいいかも。

 すべてのルートにテーマがあり、総じてレベルが高いのですが、個人的にはマンガを嫌悪している同級生・紫堂楓のルートと義姉の担当編集・神尾千佳のルートが好み。非常に感動的で泣けます。ドタバタコメディと見せかけて、個別ルートにこんな感動ストーリーを持ってくるとは、にくいですね。

『オレは少女漫画家』 『オレは少女漫画家』
▲紫堂楓▲神尾千佳

 ちなみに、女装についてはあくまでも本筋を進めるための仕掛けの1つとして機能しています。結構あっさりとバレますし、その後の展開も明るいものがほとんど。女装ものにあるような展開は、あまり期待しないほうがいいでしょう。まあ、男に惚れられる展開はありますが(笑)。でも女装バレのシーンはある意味必見です。まさか箒星さん&あかざさんの過去作品から、どうどうとセリフ付きでキャラが数人出てくるとは思いませんでした。

 その他、わりとあっさりと主人公のマンガがヒットしていく展開が多いので、「リアリティがないからダメ!」と感じる人もいるかもしれません。でも、そのヒットしていく過程もコメディ調に進んでいくので、そこはノリで楽しんでいただければと思います(笑)。

『オレは少女漫画家』 『オレは少女漫画家』

■ローディング部分が非常に優秀

 物語だけでなく、システム部分も非常に優秀。音声の読み込み時やグラフィックの切り替え時でも、驚く程にロード時間がありません。PSPのAVGとしてはトップクラスかも。サクサクとロード時間に邪魔されずに読み進めることができるので、これもテンポをよくしている要因ですね。体験版の時はデータでしたから、それで快適なのかと思っていましたが、UMDでもほぼ体験版と同じ感覚で楽しめます。

 UMDの独特な「シャー!」という音も、発生する頻度が少ないのが素晴らしい。PSPのAVGはすべてGiza10に作ってほしいくらいですよ。ただし、テキストスキップの速度だけは、体験版のプイレイレポートでも書きましたが、並かなという印象です。それでも、数分で未読部分に進めるのでストレスはありませんでした。

■好きなことの真ん中にいる人たちの物語

 すべてのルートをクリアしてみると、昨年から今年にかけて発売されたコンシューマAVGの中で一番好きなゲームとなりました。ドタバタコメディ+青春ストーリーものとしては、かなり完成度が高い作品です。オールクリア後に、ギャラリーをざっとながめ、そして最初からプレイしてオープニングムービーを観て再び感動に浸る。そんなことをやったのは久しぶりです(笑)。

 周囲の心ない発言によって、激怒した主人公が叫んだ本作を象徴するセリフ「好きなことの真ん中にいて何が悪い!」。本作の主人公とストーリー、そしてこのセリフに出会えてよかったと思います。漫画家、それにかかわる編集者、アシスタント、声優……それぞれが自分の好きなことの真ん中で、熱意と信念を持って生きている。そんな青春ストーリーが描かれる『オレは少女漫画家』。

 体験版をプレイして、そのコミカルな雰囲気が自分に合っていると感じたら、製品版を購入して損は絶対にしないでしょう。マンガや創作物に対してなんらかの思い入れがある人にも、ぜひ体験してほしい物語です。ちなみに、体験版はPlayStation Storeと電撃オンラインでダウンロード可能ですよ!

 今後、第2弾、第3弾とGiza10からコンシューマ作品が発売されたら、何も考えずにブランド買いしてもいいと思える作品でした。こういったオリジナルのAVGがもっと売れるようになれば、AVG業界ももっと盛り上がると思うのですが……。もっと売れてほしい! と、仕事抜きで心から思える良作AVGです。(ごえモン)

『オレは少女漫画家』 『オレは少女漫画家』

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