News

2012年3月27日(火)

違和感にはすべて意味がある! 『ルートダブル』延期後の改良点や体験版について中澤工さんにインタビュー

文:ごえモン

 どうも、ごえモンです。イエティから2012年春に発売されるXbox 360用ソフト『ルートダブル -Before Crime * After Days-(以下、ルートダブル)』。その特集企画として連載した発売前インタビューも、今回でおそらく最後となります。

 最後となる第9回では、本作の原案・監督・プロデューサーを務める中澤工さんに、延期の理由や3月28日に配信される体験版の見どころ、注目ポイントなどについて聞きました! ぜひ、体験版をプレイする前にご一読ください。

●これまでのインタビュー記事
【第1弾】独占キャストインタビューその1
【第2弾】独占キャストインタビューその2
【第3弾】独占キャストインタビューその3
【第4弾】中澤工さんインタビュー 前編
【第5弾】中澤工さんインタビュー 中編
【第6弾】中澤工さんインタビュー 後編
【第7弾】シナリオライター・月島総記さんインタビュー
【第8弾】キャラデザ&原画・みけおうさんインタビュー

■『ルートダブル』は“Senses Sympathy System”で選択肢のマンネリ感を打破

――今回の延期で決め手になった要素について、改めてご説明いただけますでしょうか?

 調整が不十分だと実感したことが大きいところで、それは主に“Senses Sympathy System(センシズ・シンパシィ・システム)”の操作周りやバランスです。きっちりと納得できる状態まで調整が行き届いたものを発売したかったのが、第1です。

 その他、公式サイトにも書いてありますが、『ルートダブル』はあちこちを移動しながら脱出をする物語なのに、テストプレイヤーから「頭がこんがらがってしまって、主人公たちが現在どこにいるのか追いつけなくなってしまう」という声が多発していました。それであれば、細かく情報が更新されるマップを用意しなければいけないなと、テストプレイすることによって課題が浮き彫りになりました。

 手前味噌ですが、本作はとてもおもしろいゲームになっていると思っています。なので、浮き彫りとなった課題をしっかりクリアした形で発売したかったんです。ユーザーの皆さんには本当に申し訳ないのですが、このようなことから、延期という形をとらせていただきました。

『ルートダブル -Before Crime * After Days-』 『ルートダブル -Before Crime * After Days-』
▲改良前(画像左)と改良後(画像右)の“Senses Sympathy System”。最新版では、十字ボタンの上下でキャラクターを選択し、左右でグラフの数値を上げ下げする。

――具体的に、“Senses Sympathy System”のどの辺りが改良されているのでしょう。

 操作周りが格段にわかりやすくなっています。実は、これまで“Senses Sympathy System”の仕様を5回変更しているのですが、最新版の1つ前のものは、レーダーチャート(エニアグラム)を直接操作するというものでした。でも、それだとどこを操作しているのか、どうしたらグラフを上げ下げできるのかが感覚的にわからなかったんです。

――それこそ入力装置がマウスであれば、ドラッグ&ドロップで感覚的に操作できそうですよね。

 そうなんです。PCの操作であればまったく問題ありませんでした。今回はコントローラで操作するために直感的ではなかったことに加え、入力できるキャラクターは最大9人いますし、その数値も多段階で変更できるので、パッと見た時に、どうやったら思い描いた通りの入力結果にできるのかが見えてこなかったんです。そこを何度も何度もスタッフと議論を重ねて、現在の形になったといった感じです。加えて、途中から“ゲームシステムの仕様を作るのが、とても得意なスタッフ”に参加してもらえたところも大きいです。おかげで、一気に完成形に近づけました。

 他にも、“いつ入力できるのか”“入力した結果がどう反映されるのか”が視覚的にわかりにくかったので、音などでプレイヤーに伝えられるよう試行錯誤しました。例えば、“ブルー分岐”“イエロー分岐”“レッド分岐”と分岐の重要度によって色を変えてあったのですが、最新版では音でも分岐の色を判断できるようにしています。

――分岐の色によって、出るSEがそれぞれ違うんですね。

 はい。しっかりと画面を見ていなくても、何か危険なことが起きているとわかります。音以外にも、プレイヤーが入力した数値が、きっちりと世界に反映されたとわかるような画面効果も入れています。おかげで、だいぶ直感的な操作ができるようになったと思います。

――システム改良後の手ごたえはいかがでしょうか?

 今のところ、“Senses Sympathy System”についてテストプレイヤーから特に不満は出ていません。改良によって解消されたのだと思います。“これまでのAVGと違った楽しみ方ができる”と非常に好意的な意見もあがってきています。現段階で、“Senses Sympathy System”については成功ではないかと感じています。

――私も実際に触りましたが、選択肢とそれほど変わらない操作感でした。

 選択肢と変わらない操作感ですが、独特な味わいがありますよね。また、テストプレイヤーからは“AVGの原点回帰である”という意見もありました。“分岐をこなす”という作業ではなくしっかりと物語を読み、考えながらプレイできると。

――選択肢だとどうしても機械的なプレイになってしまいますからね。

 昨今のAVGでは、選択肢だけを見て「これは正解だろう」と選択肢の内容だけで判断できちゃいますよね。もしくはどれを選べばいいかわからないから、とりあえず選んで失敗したら戻ってやり直す。最近のAVGの選択肢は、大抵この2つのどちらかです。ある意味、その行き詰まり感を打破できる1つの回答を提示できたのではないかと思っています。

――“Senses Sympathy System”のおかげで、本当に久しぶりによく考えてプレイし、そのためいつもよりのめり込んでプレイできました。

 『ルートダブル』の企画を立てた時に、選択肢のマンネリ感を変えたい、もっと話をしっかりと読み込んでほしいと思っていました。この思いはずっと持っていたのですが、昨今、ユーザーの皆さんも忙しくて“ゲームを速くクリアしたい”という方が多いんですね。速く解きたいがために、文章をナナメ読みしていって、選択肢まで辿り着いたら、選択肢のところだけ作業的に選んでグッドエンドを目指す……ブログの感想などから、そんなプレイスタイルであることを実感していたんです。

 なので、しっかりと描写して伏線を張ってあっても「唐突だ」「矛盾している」という意見が届くことがあって。ちゃんと書いてあるのに、読んでもらえていないのかとガッカリ感がありました。でも今回のシステムであれば、能動的に話を読み込んでくださるのかな? という期待もあります。

→10時間は全体のごく一部。体験版は『ルートダブル』を知ってもらうための入り口

(C)イエティ/Regista

1 2 3

データ

関連サイト