2012年5月5日(土)
電撃文庫で活躍する作家陣のメールインタビューをお届けする“Spot the 電撃文庫”。第29回となる今回は、『いるか寮の少女たちは恋できない』を執筆した辰川光彦先生のインタビューを掲載する。
▲Pikazo先生が描く『いるか寮の少女たちは恋できない』の表紙イラスト。 |
本作は、同じ寮で生活することになってしまった女性恐怖症の少年と、男ぎらいの少女たちの姿を描いたラブコメディ。転校し、新たに寮生活を始めることになった主人公・小熊浩一(こぐま こういち)。しかし、自分が暮らすはずの寮の部屋をのぞいてみると、そこにはなぜか着替え中の女の子が!!
学園の理事長に話を聞き、この寮はとあるメンタルテストで“恋愛適性度”が低いと判断された少女たちを集めた特殊な寮だと知る浩一。彼女たちが男子に慣れ、よりよい青春を送るために同居してほしいと依頼されるのだが、彼自身も実は重度の女性恐怖症で……。
辰川先生には、本作を書いたキッカケや、セールスポイントなどを語っていただいたので、興味がある人はチェックしてほしい。また、電撃文庫 新作紹介ページで本作の内容を少しだけ立ち読みできる。まだ本作を読んでいない人はこちらもご覧あれ。
――この作品を書いたキッカケはなんですか?
まず、“女子寮ものをやる”というのは編集者とかなり前から話していました。昔1度、女子寮ものを企画として出したこともあったんです。女子寮ものはマンガ、美少女ゲームなどで非常に多いですが、設定に変化をつければいけるということで。最初に提出した企画は“女性が苦手だけど恋愛誘発体質を持つ主人公が女子寮に放り込まれるドタバタラブコメディ”……だったかな? そこから編集者との話し合いの過程で少しずつ変化し、設定を取捨選択して、こういった内容に決まりました。
――作品の特徴・セールスポイントを教えてください。
“女性恐怖症の主人公が、女の子だらけの女子寮で暮らすことになる”という王道ラブコメです。しかも女子寮の寮生は一癖も二癖もあり、全員が恋愛ぎらい。そんなみんなの事情に主人公が勇気を出して踏み込んでいきつつ、やっぱりちょっとドキドキなシーンもある、というラブコメになります。とにかく王道のラブコメが読みたい! という方にオススメです。
――作品を書くうえで悩んだところを教えてください。
それぞれのキャラ設定ですかね……。今作は登場人物が多いので、それぞれどういうキャラクターにするか、という点で悩みました。やっぱり、修正もかなりの量になりましたね。これは毎度のことですが(笑)。
――執筆にかかった期間はどれくらいですか?
執筆は修正含めて3カ月ほどでしょうか。企画段階からだともっと長くなります。が、過去の経験からすると、企画のボツは奇跡的に少なかったです(笑)。
――主人公やヒロインについて、生まれたキッカケやキャラクターについて思うところをお聞かせください。
主人公、メインヒロインともに前作とまったく違うタイプにしたかった、ということが大きいですね。今作の主人公、小熊浩一はインドア派の大人しいキャラ、メインヒロインの如月美空は気が強い委員長タイプになります。他のキャラと違って、この2人は前作との対比で最初からある程度イメージができていました。
前作のキャラも好きですが、今作もそれぞれいいキャラになったと思っています。2巻以降、いい意味でさらに個性を増していくでしょうね。
――特にお気に入りのシーンはどこですか?
主人公とヒロインが、夜の女子更衣室に閉じこめられるシーンです。ここが一番書き直しが多かったので……。お気に入りというよりも、思い入れの強いシーンになりました。
――先ほど2巻について触れられていましたが、今後はどうなるのか簡単に教えていただけますか?
1作ごとに違うヒロインがメインになり、その子の事情について話が進んでいきます。ただ、メインヒロインは美空なので、彼女はどの巻でも主人公のパートナー的存在として物語の中心になっていきます。
――小説を書く時に、特にこだわっているところはどこですか?
ヒロインがビッチにならないように……というのは、ラブコメの基本かなと。これは編集者から何度注意されたかわかりません(笑)。
――アイデアを出すためにやっていることがありましたら教えてください。
とにかく書く。書くうちにアイデアが浮かんでくるので、書いたものボツにしてさらに書く。その繰り返しかなと。
――高校生くらいのころに影響を受けた人物・作品はなんですか?
そのころは、小説はまったく読んでいませんでした。読み始めたのは高校卒業直後くらいでしょうか……。高校時代はアニメの『スクライド』『おねがい☆ティーチャー』などにハマっていました。基本的に、変化球よりも直球でズバッとくるいい作品、おもしろい作品が好きです。
――現在注目している作家・作品はありますか?
貴志祐介さんは以前から追いかけている作家さんです。『黒い家』『青い炎』『クリムゾンの迷宮』『天使の囀り』など、傑作ぞろいです。そして、やはり五十嵐雄策さんですね。ラブコメはストーリーやキャラクター描写などのバランス感覚が大事なんですけど、五十嵐さんはそのあたりの書き方が抜群に上手なので。『乃木坂春香の秘密』は長く参考にさせていただいています。
――ゲームで熱中しているものがあれば教えてください
ツイッターで先輩作家の方がオススメしておられた『風来のシレン5』。3D酔いするので元々ゲームはあまりやらないのですが、これには久しぶりにハマりました。なかなかクリアできませんが、おもしろいです(笑)。あとは、これもツイッターで知り合った方が脚本を担当されている、『いろとりどりのセカイ』という美少女ゲーム。こちらはまだプレイしていませんが、PCを新しいものに乗り換え次第進めていこうと思っています。美少女ゲームも久しぶりですので、楽しみです(笑)。
――その他に熱中しているものがありましたら教えてください。
後楽園ホールでのボクシング観戦。ボクシングのテレビ視聴歴は10年以上なのですが、やはり昨年初体験したホールでの空気はまったく違いました。イヤなこともすべて忘れて楽しめます。後楽園ホールは最高の空間ですね(笑)。
――それでは最後に、読者へのコメントをお願いいたします。
設定を煮詰め、修正を繰り返し、最終的にはおもしろい作品に仕上がったと思っています。シリアスなシーンもありますが、基本的にはドタバタラブコメです。僕自身、ドタバタで楽しい気分になる王道ラブコメが好きなので(笑)。女子寮ものということで、主人公の周囲は女の子ばかり。そういう作品が読みたいな、ドキドキシーンもあったらいいな~っという方は、ぜひとも書店で手にとっていただければと思います!
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表紙イラスト/Pikazo
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