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2012年7月5日(木)

PSP版『Dies irae』をレビュー! これこそ珠玉の中二病バトルAVGだ!!

文:ごえモン

 どうも、電撃オンラインのごえモンです。僕の渇望(ねがい)は“ギャルゲー世界の主人公になりたい”です! このルールが最強だと思うんですけどいかがでしょう? だって女の子にモテモテになれるし、主人公補正のおかげで敵に負けないですからね!!

『Dies irae ~Amantes amentes~』

 ……えー、意味不明な前振りでごめんなさい。“G-netプレイレポート”第39回でお届けするのは、lightから6月28日に発売されたPSP用ソフト『Dies irae ~Amantes amentes~(ディエス・イレ ~アマンテース アーメンテース~)』のレビューです。ファンの皆さんはすでにオールクリアしていると思うので、ここでは「『Dies irae』って何?」という人に向けて本作の概要や魅力をお伝えしますよ!

■ディエス・イラエじゃなくて“ディエス・イレ”ですよ!

 この機会に声を大にして言いたいのが、『Dies irae』の読み方は“ディエス・イレ”だってことです。電撃オンラインの人間は、「ディエス……なんだっけ?」とか「ごえモン、ディエス・イラエってさぁ」みたいなことを言いやがるんですよ。何度教えたって覚えやしねぇ(笑)。

 ちなみに、“ディエス・イレ”とは“怒りの日”というキリスト教における“終末思想”のこと。そっち系のゲームや本に詳しい人であれば、知っている可能性もありますが、実は音楽として非常に有名。「ディー、エース、イッレッ♪」という壮大なメロディは、映画やCMなどでも使われていて、たぶん知らない人はほとんどいないんじゃなかと思います。耳にすれば「あ! 聴いたことあった!!」と気が付くはずです。そんな“終末思想”の1つ“怒りの日”を題材にした“学園伝奇バトルオペラアドベンチャー”が本作。ちょっと長いので「何そのジャンル?」と思うかもしれませんが、プレイすれば、このジャンル名がいかに的確に本作を表しているかがわかります。

『Dies irae ~Amantes amentes~』 『Dies irae ~Amantes amentes~』
▲個性的な登場人物が紡ぎ出すこの壮大なオペラを、ぜひぜひ多くの人に体験してほしいものです。本当におもしろいので!

 元々は、2007年にlightから発売された『Dies irae ~Also sprach Zarathustra~』がこのゲームの初出。通称2007年版と呼ばれるこの作品のシナリオに、大幅な加筆修正が行われて2009年7月に発売されたのが新装版『Dies irae Also sprach Zarathustra ~die Wiederkunft~』です。

 そこから、さらに2つのルートが追加されたのが『Dies irae ~Acta est Fabula~』になります。俗に2009年版と呼ばれるこの作品をPSPに移植したのが、今回の『Dies irae ~Amantes amentes~』というわけ。「たくさんあってよくわからないよ!」と思う人も多いと思います。でもPSP版をプレイしておけば、すべてを補完できるので何も問題ありません。……エロい人は、2009年版をプレイしてね(笑)。個人的にはPSP版か、PSP版をさらに移植したPC版をプレイするのが一番な気がしています。

『Dies irae ~Amantes amentes~』 『Dies irae ~Amantes amentes~』
▲画像左が新装版で右が2009年版。2007年版をプレイしたのもいい思い出ですね。僕は螢が好きだったので当時はいろいろとありましたが、その後の無料パッチのおかげで2009年版をプレイし、無事にファンになることができました。

 PSP版で追加された部分を紹介すると、まずはアフターストーリーが2本。戦闘シーンの追加。そして、これまでに発売されたドラマCDのAVG化です。ちなみに、ドラマCDがAVG化されたものはDisc2に収録されています。メインメニューのExtraに分類されていて、本編のルートをクリアするごとに開放されていく仕組みです。

 ドラマCD部分をプレイするにはDisc2に、本編をプレイするにはDisc1に入れ替える必要があります。本編とオマケ、きっぱりDiscを分けたのは、入れ替える手間が少なくなるので評価したいです。ただ、本編の中に入れ込んでほしかった、という気持ちも少しだけあります……が、画像などをもっと圧縮しなければならなくなるので、やっぱりこれでOKです(笑)。

『Dies irae ~Amantes amentes~』 『Dies irae ~Amantes amentes~』
▲ドラマCDを今から集めるのは大変。なので、PSPから始めるのが一番の近道です。ドラマCD部分が収録されたおかげで、さらにキャラに愛着を持てますし、物語を深く知ることができます。
『Dies irae ~Amantes amentes~』
▲ドラマCD部分以外に、一部アフターストーリーがDisc2に収録されています。

■圧倒的強者と壮絶バトル! 中二病心をくすぐる至高の能力系バトルAVG

 ゲーム外の概要はここまでにして、ここからはゲーム本編の概要に触れつつ、作品の魅力をご紹介します。本作の舞台となるのは、日本の諏訪原(すわはら)という地方都市。ここで「これからの人生、ずっと未知な出来事が起きないで、変わらない平和な日常が続けばいいのに~」なんて考えを持って暮らしているのが主人公・藤井蓮です。

『Dies irae ~Amantes amentes~』
▲藤井蓮

 そんな蓮の日常は、博物館に展示されている“ギロチン”を見てから一変。毎夜、断頭台に上る夢を見るようになります。さらにそこから、諏訪原市で謎の連続殺人が発生。その被害者は、“刀のようなもので首を切られている”のだとか。さらにさらに、その連続殺人事件の夢を主人公が見るようになり、夢から目が覚めると事件現場にいるという……「もうこいつが犯人じゃねーか!」と考えてしまう状況が頻発します。

 序盤は、上記の通り“いかにも伝奇モノ”と感じられる展開が続きます。“伝奇モノ”のノベルは“主人公の見る夢”が1つの転換期になっている作品が多く、そのままストレートな結果が描かれる場合もあれば、ちょっとひねった結果になるものもありますよね。まあ、本作がどちらになるかは、実際に自分の目で確かめてみてくださいな。

『Dies irae ~Amantes amentes~』 『Dies irae ~Amantes amentes~』
▲人を殺す夢と言えば伝奇、伝奇と言えば人を殺す夢、なんて言えるぐらい僕にとってはなじみ深い要素です。

 物語はここからさらに進展。“ギロチン”と“連続殺人事件”に呼応するかのように、今度は1945年から第三帝国の闇が生んだ超人たち“聖槍十三騎士団”がよみがえり、蓮を襲うのです。“聖槍十三騎士団”なんて、蓮とはまったく関係がない存在に思えますが、どうやら“ある目的”のために蓮が必要なご様子。これによって、平和な日常系AVGの主人公として生きたかった蓮が、突如として壮絶なバトル系AVGというジャンル違いの主人公に抜擢されてしまうことになります。さて、これからどうなってしまうのか……!? と、ここまでが大まかなあらすじ。

『Dies irae ~Amantes amentes~』 『Dies irae ~Amantes amentes~』
▲ヴィルヘルムとルサルカに出会った時のひと幕。毎回、ルサルカの「ばあ」にキュンとくるのは僕だけでしょうか?

 この作品のおもしろい点は、まず“聖槍十三騎士団”の団員たちが持つ“聖遺物”というマジックウェポンの存在。“聖遺物”を持った人間は、超人のように強くなり、“聖遺物”でしか倒せない存在になります。普通に殴っても弾かれますし、拳銃で撃っても死にません。そして“聖遺物”には、それぞれ固有の能力や必殺技があるのですが、この設定がとにかく僕の中二心を刺激してくれるんですよ(笑)。

 自分に念●力があるとしたらどんな能力か? 自分のオーラの系統は? いつかは血継●界が覚醒するのでは? 五行説だときっと自分は風の能力使いだと思うの……などなど、昔からいろいろと妄想していた僕にとって、“固有の能力”、“個々の渇望(ねがい)が力になる”という要素は、もうドンピシャ! 記事冒頭で暴走してしまったように、自分の固有ルールを想像してしまうんですね。僕と同じような経験がある人は、間違いなく本作を楽しめます!

『Dies irae ~Amantes amentes~』 『Dies irae ~Amantes amentes~』
▲さまざまな能力、形状がある“聖遺物”。“位階”と呼ばれるレベルも存在します。

 もう1つ魅力を挙げるなら、やっぱりキャラクターの存在でしょう。一見すると、主人公の蓮は巷にあふれる無気力系主人公っぽく見えるのですが、実はものすごくアツい漢。愛するもののためならば、自分を極限まで高めてしまうような素晴らしい主人公です。

 そんな主人公に負けず劣らず、とにかく敵たちがカッコいい! バトル系AVGの場合、“敵の個性”だったり、敵のことを好きになれるかどうかで、作品に対する印象がだいぶ変わってくるはずだと、個人的には考えています。敵にもいろいろ事情があるわけですが、そこで主人公が「おまえも大変だったんだな……そんなかわいそうなおまえを俺は倒せないよ(泣)」なんて展開になったら萎え萎え。しかし本作のキャラの場合は、昔はいろいろあったけど、「それがどうした! それも含めて俺だ!!」と強い自分を持っている。主人公も敵もお互いが一歩も引かず、どんどん前に出てきます。ほぼ全員が、とんでもなく強い思いを持った非常にカッコいいやつらばかりなんです。

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▲左からヴィルヘルム、ヴァレリア、エレオノーレ、シュライバー。特にこの4人が大好きです。
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▲でも、ラインハルト(左)、メルクリウス(真ん中)、ルサルカ(右)はもっと好き。

 もう少し詳しくキャラの魅力を挙げると、男たちがカッコいいことが1つ。最近の美少女ゲームの場合は、女性キャラが優位な場合が多いです。その結果、主人公よりもヒロインのほうが強く、ヒロインを応援しているだけになったり、主人公が戦うと展開がショボくなってしまったり……。僕はそれが苦手。女性キャラばかりにいいカッコされたくないわけです。見ているだけ、横で応援しているだけなんてもってのほか。やっぱり、主人公を含む男性陣には強くあってほしいし、活躍してほしいじゃないですか!

 その点『Dies irae』は男同士のガチバトルが胸をアツくしくれます。しかも、ほとんどのキャラに見せ場があり、ちゃんと活躍するのがアツい! かといって、女性キャラの影が薄いのかと言えば、それも違います。男性キャラ&女性キャラがそれぞれ同じくらい活躍する、このバランスのよさが気持ちいいです。バトル系のAVGとして、ここはかなりほめられる点じゃないでしょうか?

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▲男だけじゃなく、女性キャラも魅力的に描かれているのが本作のいいところ。女同士の戦いも燃えます。

■極限まで突き進む深度の深いシナリオが魅力

 ルートによって、まったく展開やストーリーの深度が違うところもおもしろいです。もちろん、深度が浅い最初のルートがつまらないということではなく、“その時々の全力”が描かれています。そして深度が深まることによって、やがて究極の存在とのバトルに進展するのです。その世界の最強を倒すアツさ。どう考えても倒せねーだろ! ムリゲーだよ!! 主人公よ、もう休め! ……プレイ中にそんなことを考えてしまうほど、敵の強さが圧倒的です。そんな存在に、どう立ち向かっていくのか。その辺りも注目ポイントの1つです。

 個人的に思っていることですが、やっぱりバトル系AVGでは“究極の存在を倒してこそ”物語は締まるしエンディングで感動できるんだと思うんです。最後に中途半端な強さ、あるいは能力のボスを出されても、尻すぼみ感が出てしまいます。後半にいくにしたがって、どんどんとんでもない敵が出てくるのが理想ですが、この作品は完璧です。ただ、能力をうまく使うような読み合い重視のバトルではなく、テンションや思いの強さがそのまま個人の強さになる部分があります。その辺りは好みがわかれるかもしれません。

『Dies irae ~Amantes amentes~』 『Dies irae ~Amantes amentes~』
『Dies irae ~Amantes amentes~』 『Dies irae ~Amantes amentes~』
▲敵の幹部クラスが出てくると、もう笑うしかないです。それぐらい圧倒的な相手を、どう越えるのかがポイント。

 もう1つシナリオについての魅力を挙げるならば、“突き抜けた中二病がカッコいい”という点。シナリオにおいて、僕はこの“突き抜けた何か”というところを非常に重要視しています。たぶん、ゲームをプレイしすぎて“普通”に飽きてしまっているんでしょうね。何をプレイしても“すでに知っている感覚”が邪魔するので、より刺激の強いものを求めてしまいます。

 中途半端な中二病や単なる演出の中二病は、“(笑)”というネガティブな評価になるのが世の常だと思っています。でも、この作品は突き抜けているからこそアツいし、カッコいい。本気の中二病がいかにカッコいいかを教えてくれる作品だと思います。突き抜けた何かが生み出すアツさということで、僕は『トップをねらえ!』や『天元突破グレンラガン』を思い出します。遠くから見るとバカな話に見えますが、登場人物たちの“本気”を肌で感じると、そのバカさがアツさに変わり、そしてカッコよさになるんです。人間vs人間のバトルモノで、最終決戦では生身の人間が宇宙空間で戦っちゃうような作品が好きな人は、たぶん楽しめます(笑)。

『Dies irae ~Amantes amentes~』 『Dies irae ~Amantes amentes~』
▲バトルの盛り上がりは天井知らず。「細けぇこたーいいんだよ!」という具合にどんどんアツくなります。

 最後にもう1点、詳しいことは説明できませんが、“ルートによって物語が変わる”ところも本作の魅力。そんなゲームはたくさんありますが、『Dies irae』は“ルートによって到達する深度が違う”ことも世界観にかかわっているところがすごい。付加価値が与えられているため、より深くシナリオを楽しめるのです。

■プレイヤーのテンションを底上げしてくれる秀逸な音楽

 本作は音楽も注目ポイント。バトル系AVGは戦闘描写やCG、能力も大事ですが、戦闘シーンで流れる音楽で、その時のテンションはまったくの別物になります。たいしたシーンではなくても、音楽が素晴らしければ気分が盛り上がってしまうものです。もちろん、展開がおもしろく音楽も素晴らしいと最高ですが、『Dies irae』は間違いなく両方高いレベル。テーマソングの使いどころもうまいです。

 ちなみに、音楽を担当しているのは与猶啓至さんで、『萌えゲーアワード2010』BGM部門では金賞を受賞しています。普段はサントラなんてほとんど買わない僕が、この作品では購入してしまうほどハマってしまいました。BGMに興味がない人間にサントラを買わせるというのは、本当にすごいです。

■システム部分は△なところも

 今まではほめてきましたが、システム部分ではちょっとほめられない部分も。ロード時間については、データインストールを行えば気にならないレベルなのですが、問題はスキップ。本作にはオートスキップがなく、常にボタンを押していなければスキップが続かないのです。わりと早い段階でシナリオが分岐するとはいえ、全体のシナリオが非常に長いため、その分ボタンを押している時間が長くなってしまいます。個人的には、スキップ(□ボタン)の速度自体はPSPとしてはそこそこと言えるのですが、周回プレイにはちょっと優しくないですね。

 もう1つ残念なのは、セーブ&ロード場面でリストが表示されるまでに時間がかかること。まっさらな状態だと早いので、おそらくサムネイルの読み込みで時間がかかっている気がします。細かい部分ではありますが、使用頻度が高い部分なだけに、若干ストレスを感じてしまいます。

『Dies irae ~Amantes amentes~』 『Dies irae ~Amantes amentes~』
▲他がいいだけに、システム部分がちょいと残念。でも、スキップとセーブ&ロードリスト以外は、特に問題は感じませんでした。

■おもしろいバトル系AVGを探している人にオススメできる良作『Dies irae』

 システムの部分で若干の難があれど、物語、世界観、音楽、キャラクター設定は非常に優秀。特にオススメできるのは、話のアツさ。これこそが中二病バトルの最高峰だ! と自信を持って言える作品なので、おもしろいバトル系AVGを探している人は、ぜひプレイしてみてください。ちなみに、僕が一番好きな肉体バトル系のAVGが、本作です。(ごえモン)

『Dies irae ~Amantes amentes~』 『Dies irae ~Amantes amentes~』
▲プレイ後のアフターストーリーは格別。思わず「ローーーーーーリィーーーー!」と叫んでしまいましたよ。

●ごえモン プロフィール

ごえモン

 ADVや美少女ゲームをこよなく愛する電撃オンラインの編集。その実態は……ただの爪牙。2007年版『Dies irae』をプレイして絶望し、2009年版で絶望から解放された。『ディエス』だと櫻井螢が好き……やっぱり全員好きだ!

・Twitterアカウント


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データ

▼『Dies irae ~Amantes amentes~(ディエス・イレ ~アマンテース アーメンテース~)』ダウンロード版
■メーカー:light
■対応機種:PSP
■ジャンル:AVG
■発売日:2012年7月5日
■価格:7,140円(税込)
▼『Dies irae ~Amantes amentes~(ディエス・イレ ~アマンテース アーメンテース~)』
■メーカー:light
■対応機種:PC
■ジャンル:AVG
■発売日:2012年8月31日
■希望小売価格:9,240円(税込)
 
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■メーカー:アスキー・メディアワークス
■発売日:2012年8月下旬
■希望小売価格:4,500円(税込)
 
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