2012年9月1日(土)
――特にお気に入りのシーンはどこですか?
共同生活のシーンはだいたいお気に入りなのですが、特に挙げるなら後半のパーティーの場面ですね。1カ月近く一緒に暮らしてきて打ち解けた面々が和気藹々と盛り上がってる感じが出せたかな、と思っています。酔っぱらいがどんどん増えていくあたりは、かなり楽しんで書けました。いやあ宴会シーン書くのって楽しいですね!
あと、ちょっと真面目なシーンでは、クライマックス直前、落ち込んだ護とフラウディアの会話が気に入ってます。何度か書き直したんですが、そのおかげで、しんみりしつつもほっこりした雰囲気になりました。
――今後の予定について簡単に教えてください。
6人のヒロインがいるので6ルートに分岐します!
というのは嘘ですが(やれるものならやりたいですけどね)、“護はヒロインの誰を選ぶのか?”という流れにはあんまりならないと思います。護へ好意を寄せるヒロインは出てくるでしょうし、恋愛要素ももちろん用意していますが、大勢での集団生活ものというポイントは変わらない予定。あと主人公以外のところでカップルができてくるかもです。……はい、好きなんです、カップリング。
また、“勇者”というものについては、いろいろ設定を考えてあります。勇者とはそもそも何なのか、誰がこのシステムを用意したのか、護の他にも勇者はいるのか、などなど。こちらも徐々に謎が解かれていきますので、ご期待くださいませ。
――小説を書く時に、特にこだわっているところはどこですか?
まず、文章のリズムですね。小説は口に出して読むわけではないのですが、読みにくいよりは読みやすいほうがいいですから、自分なりに心地いいリズムになるよう気を付けています。
それと、あまりシリアスにならないこと。緊迫したシーンを書くことももちろんありますが、息抜きになるような台詞や描写は忘れないよう気を付けています。ギャグよりはシリアスを書くほうが楽なのか、気を抜くとそんなシーンばっかりになってしまうので、後で書き直すことも多いですね。
あとは、えーと……オタク向けのマニアックなネタやネットスラングは使わない、くらいでしょうか? たまにぽろっと出ることもありますが(笑)、「わかる人だけわかってください」はお金を取って売る小説でやることではないと考え、基本的に禁止ってことにしています。
――アイデアを出したり、集中力を高めたりするためにやっていることは?
執筆中の集中のためには、ガムか禁煙パイプをよく使います。タバコは吸わないのですが禁煙パイプはよく買うので、近所のスーパーでは「あの人いつまで禁煙挑戦中なのかしら」とか思われているかも。また、原稿はPCですが、プロット(ストーリーの構成)は手書きでやってます。ものを考える速度と手書きの速さがちょうど合うようで、PC使うよりもいい感じにまとまるんです。まあ、その後PCに打ち込むので二度手間なんですが。しかも思いついたまま書いてるのでノートの字が汚くて汚くて!
アイデア出しについてはこっちが教えてほしいくらいですが(笑)、本や映画の感想をちょこちょこメモしてますね。この展開は良かったとか、あそこはこうしたほうが好みだ、とか。アイデアを出すと言うより、「自分がどういう話を書きたいのか」をはっきりさせるための方法ですが。
――高校生くらいのころに影響を受けた人物・作品は?
椎名高志さんの『GS美神 極楽大作戦!』に大ハマリしておりました。欲望全開の主人公っていいですよね! 真面目に戦おうとしてる相手を策略で陥れる展開とか大好きでした。他の漫画では、あさりよしとお先生の『ワッハマン』、武井宏之先生の『シャーマンキング』、ゆうきまさみ先生の『機動警察パトレイバー』なども熟読していました。深刻な状況でも肩の力を抜くのが好きなのは、間違いなくこのへんの作品群の影響です(笑)。
あと忘れがたいのは長谷川裕一先生の『マップス』。勇者もの兼SFもののお手本みたいな作品で、風呂敷の広げっぷりとたたみ方に心底感心しました。ここで挙げた漫画家さんたちは今も大好きです。
小説だと、海外のSF作家の小説をいろいろ読みあさってました。お気に入りだったのは、アイザック・アシモフのミステリ短編集『黒後家蜘蛛の会』。推理要素よりもキャラクターの掛け合いが面白くて、オチを知ってるのに何度も読み返した覚えがあります。また、高校を出てすぐの頃に読んだ北野勇作先生のSFには、小説って情景や雰囲気をこんなにじっくり伝えられるんだ、と驚かされ、それ以来ずっと大ファンです。電撃文庫・メディアワークス文庫合同の忘年会で北野先生にお会いできた時のうれしさときたらもう。
あと、やたら怪獣とかヒーロー出すことでおわかりかもですが(苦笑)、特撮作品にもかなり影響受けてます。『ティガ』『ダイナ』『ガイア』の平成ウルトラマン3部作をリアルタイムで見られたことは、すごく大きな経験だったと思ってますし、戦隊ものの枠の中でパロディとギャグをやりまくった『激走戦隊カーレンジャー』が大好きでして。ここまでやっていいんだ、と驚いたものです。
――現在注目している作家・作品は?
上の質問で挙げた作家さん以外だと、『エリア51』の久正人さんですね。ハッタリの効いた台詞と絵を描かれる漫画家さんで、「スタイリッシュやなあ」とほれぼれしながら読んでいます。「世界中の怪異が集められた町」って設定も上手で、スピンオフ勝手に書きたいくらいです。小説では田中啓文さんの伝奇ものをずっと追っかけています。「あの伝説の裏には実は○○が!」というストーリーはもともと好きなのですが、深刻にならないノリであれを書けるのがすごいなあと。僕もああいう作品を書きたいと思っているのですが、できるのやら、いつになるやら。
――今熱中しているものはなんですか?
もちろん、次巻の執筆です!
――ゲームで熱中しているものがあれば教えてください。
あんまり熱中しておりません、ごめんなさい……。追っかけてるのはDSの『逆転裁判』シリーズでしょうか。個性的なキャラの立たせ方、伏線の張り方、クライマックスの盛り上げ方などなど、勉強になるなあと感心しつつ楽しんでおります。
あと、PCゲームでは、ライアーソフトさんのスチームパンクシリーズのファンをずっと続けてます。ていねいに作り込まれた世界観や濃密な人物描写が圧巻で、真似したいとかそういうのではなく、単に「すげえなあ」という感じで楽しんでおります。ちなみに、僕がよく使ってる「良き青空を!」って挨拶の元ネタはこのシリーズで、それくらい入れ込んでいます。
――それでは最後に、電撃オンライン読者へメッセージをお願いします。
居心地のよさを大事にして書いた作品です。個性的な仲間たちとのわいわいとした賑やかな生活を、どうぞお楽しみくださいませ。あと、お気に入りのヒロインを見つけていただければ、もっと楽しくなると思います! さあ、君はどのルートを選ぶ?(だから分岐はしないと言うのに)
(C)峰守ひろかず/AMW
イラスト:京極しん
データ