News

2012年10月4日(木)

こだわったのは中国の釣り肉!? 『バイオハザード6』リレーインタビューの第4弾でグラフィックチームの開発秘話が明らかに

文:電撃オンライン

前へ 1 2 3

■思い切ったビジュアルチェンジ

――クリーチャーだけでなく、主人公の描かれ方がいいと思ったのですが、モデルを作っている上でのこだわりは?

『バイオハザード6』

福井:今回は主人公としてレオンが登場します。彼は女性に人気があって、これまではちょっと王子様的なイメージがあったのですが、『6』では30代後半のリアルな男性としての渋さ・カッコよさを出したいということで作成しました。クリスも『5』から年月が経っているのですが、年月以上の苦悩を感じさせるためにあえて老け気味にするなど、これまでよりも人間性の部分を重視して作成しています。

高野:ゲームの中だけでなく、ユーザーさんも年月を重ねている。見た目をはじめとするキャラクター性については、自分らと同じ価値観で見ていると感じたので「今の若い子にはこっちの方が受けるのでは?」など、変に気を使ったりはしませんでした。なので、思い切って路線変更したキャラもいます。

――レオンは特に変わったという印象ですね。

高野:様変わりしていますね。チーム内にいる女性スタッフからは「こんなのはレオンじゃない!」という意見もあったのですが、いろいろ相談しました。髭の量や濃さを、微調整に微調整を重ねて、ようやくできたのが完成形のレオンです。

福井:男性にカッコいいと言わせるためのモデルだったのですが、いろんな過程を経て、最終的にはいいバランスに落ち着いたんじゃないかと思います。

――本作において、好きなキャラクターは誰ですか?

『バイオハザード6』

高野:僕はジェイクですね。これまでは坊主頭にできなかったのですが、そこをやれたことが大きいです。遊ばせてもらえたのかなと思うのですが、思い切ってやれたので、気に入っています。

津田:僕はピアーズが好きです。控えめで縁の下から支える感じが。クリス編のシナリオが進むにつれ、ピアーズというキャラクターがより好きになりました。ユーザーの方もそういう風に感じていただければうれしいですね。

宮崎:僕はクリスが好きですね。モーションを作る時に一番イメージしやすくて、楽ではないのですが作りやすかったので(笑)。

『バイオハザード6』

黒田:レオンも『4』から久々なので思い入れはあるのですが、明るい性格を持っているカワイイキャラクターのシェリーですかね。『バイオハザード』のおどろおどろしさの中に、ちょっとした明るい一面がある所が好きです。

宮崎:今でも、デスクトップの画像をシェリーにしている人が何人かいるよね?

――ヘレナではなくて、シェリーが人気なんですね?

宮崎:シェリーですね。あとはモデルになったアクターさんも綺麗な人だったので、その印象もあるのかもしれません。

福井:かぶってしまうんですが、僕もシェリーです。うちの山形というスタッフが『5』のシェバや今回のシェリーのモデルを作ったのですが、彼独特のタッチがあって、彼の作る女性キャラはカワイイと思いますね。

■中国でこだわったのは……釣り豚!?

――中国のビジュアルは、1報の時からかなりインパクトがありました。

『バイオハザード6』

津田:中国特有の雑多な雰囲気を『バイオハザード』に落とし込んだ時に、違和感のないものなるよう気を使いました。やりすぎると安っぽくなってしまうので。

――プランナーの田岡さんによると中国に旅行で行かれたということですが、いかがでしたか?

津田:エネルギーがすごかったです。夜遅くまで沢山の人が街中に溢れていたり、ネオンの看板などの派手さも相まって非常に活気があるように感じました。そういった雰囲気をゲームに落とし込めればいいなと思いながら現地を見て回りました。

――中国は建物が密集している上に光源も多い場所。これまでにない空気感を作る際に、心がけたのはどこでしょう?

津田:『5』よりもステージが少し広くなっているので、容量上の問題もあるのですが、密度を出す絵作りというのが重要になる。熱いや寒い、湿り気があるなどの雰囲気を絵として表現できるように、工夫して作っています。ライトや効果と連動して、構成しています。

 建物の間隔や看板の種類は取材してきたことを生かしました。メインストリートは看板があってきらびやかなんですが、一歩裏路地に入ると薄暗くて、先に進むのが怖い。それを感覚的に感じされるようなライティングや物の置き方を工夫しました。

――『5』の冒頭部分の街の生活観も驚きましたが、中国の生活観はそれを上回るものでした。

『バイオハザード6』

津田:特に中国では生活観を強調しています。反面、東欧では無機質な感じにして。別のステージに行った時に、それを強く感じさせるような対比的な作りにしました。新鮮さやマンネリにならないように、同じ中国内部でも、映画のポスターが張り出されているところもあれば、文字だけでさみしい看板もある。看板の配置や置くものにしても、このエリアにはこの種類があって、こっちのエリアにはふさわしくないということを話をしています。使い回しをすれば楽ですが、その場所に適したものを考えて、注意しました。あと中国でこだわったのは、ぶら下がっている肉、釣り豚です。

――ああ、あの肉はよく見ますね。

津田:あれには……時間がかかっています(笑)。

――ビルや竹で作られた道の方が、時間がかかりそうな印象ですが……。

津田:いやいや、肉です。肉の揺れ方ですね。

(一同爆笑)

『バイオハザード6』

津田:ただ、ああいうイメージなんですよ。悪く言ったら、俗っぽい感じなんですが、俗っぽさを出しすぎないようにして、『バイオハザード』らしくする必要がある。でも肉がないと、あの中国の世界観を出せない。

 テクスチャーを張りかえたり、揺れ方や肉の数を変えたりとかして、細かい要素の積み重ねで世界観を作ろうしました。……肉でこれだけしゃべる必要はないかもしれませんが(笑)、それだけ細部にこだわって作っています。

――肉は撃てるんですか?

宮崎:武器によりますが、当たると反応はあります。

津田:あるエリアでは演出にも、使われています。作った人は配置に苦労していました。「ここの豚をどけて」と言われて「こだわって置いているんですが……」って。そういう風に、中国ならではのものを配置することで、新しさを感じてもらいつつも、『バイオハザード』として違和感のない物になるように注意しています。

――ライティングについてはどうですか?

『バイオハザード6』

高野:本当に手さぐりでしたね。佐々木の方からのイメージの伝達があったのですが、実際に足を運んで中国を見た時に、そのイメージにマッチしずらいと思いました。そこから大きく路線変更して、わかりやすい褐色系にしました。火のイメージや肉のイメージだったりを、そのテイストで表現して、色数を絞るにあたり、参考にしました。

津田:肉の話題を拾っていただき、ありがとうございます!(笑)

黒田:時間はかかりましたね。色だけでも緑から青、赤と変わってきました。

津田:情報が多いので、色数も多くなりがち。ただしやりすぎると安くなったり、バランスがとれなくなったりする。背景だけでなく、全体の色を変えると効果も変わるので、全体の調整は最後まで時間がかかりました。

『バイオハザード6』

黒田:特に看板まわりを引き立てるような配置には、神経を注ぎましたね。

高野:看板の配置を、無理言って変えてもらうこともありました。

津田:ありましたね。例えば、ドアで立ち止まる時に真上に看板があるより、少し横にあった方が光がずれて、待機しているキャラがカッコよく見える。そのために修正したこともありました。

――通常の『バイオハザード』では考えられないようなことを、結構やっているようなイメージですね。

高野:最初に作り始めた人は、後発の部隊のことをそこまで見られない。無理言って変更してもらったり、相談した際に中身が変更されていて他のスタッフに迷惑をかけたりしました。逆に後発組が思いついたことによって、前半作業していた人に修正してもらうのも多かったです。

――シリーズと違う手法や新しく取り入れたものがあれば、教えてもらえますか?

高野:物が多いので、統括する順番が大事。また、ステージのロケーションが数多くあるので、中国ステージや東欧ステージなどのエリアごとに背景のリーダーを立てて、エリアごとに統一感のあるステージ制作ができるように工夫しました。

――イメージボードも先ほどは多いと話していましたね?

高野:イメージボードを手掛かりに、皆が絵作りに向かってくれたのはありがたかったです。これまでのカプコンの作品では、イメージボードを使って、それに向けて動いていくことは少なかった。今回に関しては、逐一、多いところは5メートルごとにイラストを書いて、意思を伝えて共有を図りました。

 自分1人で絵を完結させるならそこまでする必要はないのですが、統一感を全体で出すためには必要。1個のイメージの絵素材に向かって実行したのは、初めてかもしれませんね。

『バイオハザード6』

津田:あとは、中国には看板がたくさん出てくるのですが、それを専属で制作する人がいました。日本や欧米で見る看板とは若干異なる。何の看板でどういう場所に置くのか、この言い方で違和感がないかを確かめる人が、できました。写真を撮ってきて、現地で見たような映画のポスターを作ることもしましたね。

福井:本作はプレイヤーの数が多く、場所によって衣装も違うので、元々かなり物量が多い状態でした。そのうえ、今回はカットシーンで外部の制作会社との絡みもあり、通常の進行では考えられないくらいにデータ提出が早くなってしまったんです。

 その為、普通だとモデルを作ってテクスチャーも張ってと、一通り完成してから渡すのが理想なんですが、可能な限り要素を分解して、これだけあればなんとかカットシーンが着手できるという状態でデータを提出し、後から細切れに完成させていくというやり方を行いました。フローが煩雑になってしまった為、担当スタッフにはだいぶ嫌がられました。

――最後に、本作の魅力を伝えていただけますか?

福井:本当にいろいろあるんですが、これまでとは違って渋い路線にいったプレイヤーキャラと、欠損・再生・変異と絶えず変化していく敵を見てもらいたいですね。そこから来る驚きや恐怖を味わってもらえればと思います。

津田:アクションの部分やゲームの部分は当然なんですが、キャラクターがたくさんいる上でそれぞれが丁寧に描けている。ドラマの部分もしっかりしていて、全部やった時に本作がどういうものかわかると思うので、楽しみながら最後までプレイしてもらえるとうれしいです。

高野:僕らが気を付けていたのは、なんとなく足が止まった時にキャプチャーしたら、ポスターや絵になるようなグラフィックを意識していました。戦闘でなくていいので、何かのタイミングで、ビジュアル全体を見てもらえればと思います。ゲームに関しては、中にお遊びが入っています。キャラクターセレクト画面にも遊びの要素が入っているので、そこらへんも見てもらえればと思います。

黒田:ゲーム全体としては、もちろんおもしろい内容になっています。本作は演出が贅沢なくらいに盛りだくさんで、エフェクトもあらゆるシチュエーションに対応したものを用意しているので、本作はその辺りも見どころとして見てもらえればと思います。

宮崎:最初からキーワードに上がっていた“クロスオーバー”というものを、感じられるようなものを演出チームは作っています。シリーズのストーリーを楽しみにしている人はもちろん、ゲームの遊びとして楽しみにしている人も満足できる作りになっています。キャラごとに異なるゲームの遊びと、主人公たちの人間ドラマ、どちらも味わっていただければうれしいですね。

『バイオハザード6』
▲さまざまな困難を乗り越えて、一致団結して『バイオハザード6』を開発したという5人。2周目以降は、グラフィックや演出などにも注意して遊んでみては?

(C)CAPCOM CO., LTD. 2012 ALL RIGHTS RESERVED.

データ

関連サイト

前へ 1 2 3